Get magic...6人のスレシル 

2006年05月28日(日) 3時44分
◇はじまりの章
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はじまりの章 

2006年05月28日(日) 4時47分
書斎。
乱雑に積み重ねられた大量の本と、パソコンと思われる機械。それに覆いかぶさるように置いてある大量の紙。

・・・ツー

・・・ツー

その一角から規則的な音が微かに聞こえる。

・・・ツー

・・・ツー

音の出所を探るように手が本を動かす。人間にしては長すぎる指を持つその手は、その音を発する機械を見つけた。
かぶった埃を軽く払い、飛び出した丸い部分を持ち上げる。

・・・ツ カチャ

「はい?もしもし?」
『サプリか?』
「・・・え?そうですけど、なんでしょう?俺なんかしたかな・・・」

受話器と思われる物を、これまた先のとがった長い耳に、肩で押しあてて手を離す。

『4度目だな』
「・・・?」
『俺からお前に電話をするのは4度目だな。サプリ。』

名乗りもあげず、相手は淡々と言った。

「父さん?」

1拍おいて、サプリは合点がいったように答えた。

『俺から電話が行った意味、分かるな?』
「・・・俺たちフェルが電話を使うのは、唯一、中央管理署からの異常事態の連絡だけ。電話の呼び出し音がなった時点で何か起こった事は分かる。」
『中央管理署の中でも、対人部で俺は働いているんだ。昔も、今も。対人部からの電話は2種類。一つは人間にちょっかいを出した奴への警告。そしてスレシル発生の通達だ。前3回の連絡と内容は━』
「あー、仕組みは言わなくても知ってる。・・・で、『また』ですか?」

『ああ。長い一生を持つフェルでさえ、1度起こるか起こらないか。そんな奇跡をお前は4回だ。何をやった?』
「だから、6年前も、24年前も、意図的なことは何にもしていない。って言いましたよね?」
『でも、原因はお前だ。』

「・・・ちっ。」
『起こってしまったことだ、面倒はお前が見るんだ。中央がやってやれることは少ない。』
「宣告と、召喚。」
『言い方が悪いな。こうやって、起こった事実を教えてやってるんだし、個人じゃどうにもならない召集を中央の力でやってるんだぞ。』
「・・・父親として、援助は?」
『無い。・・・召集までは3日だ。そこまでは中央でなんとかする。3日で準備をしろ。』

カチャ
受話器を元に戻し、サプリはパソコンの上においてあった紙の山から、写真付きの紙束を引っ張り出す。

「・・・スレシル、か。」

ため息とつくと、サプリは書斎を後にした。

はじまりの章 2 

2006年05月29日(月) 5時42分
━皆さんの学園生活の中の文化活動の発表の場で、大いに学び、語らい、楽しんでください。」

体育館。
整列した生徒たちが、校長の話をぼんやり聞いている。
その姿はダルイ様子が多少ありながら、そわそわとした活気に満ちていた。

整列した生徒とは別に、体育館の壁際に並んだ10人弱の生徒たち。いわゆる生徒会の列である。
一般生徒に向かって立ち、真面目に校長の話を聞いているのかと思いきや、その先頭に立った背の高い男子生徒が大あくびをした。

「ちょっと、生徒会長がそんな大欠伸してどうすんの!」
「・・・へーい。」

生徒会長と呼ばれたその男子生徒は、隣に並んでいる女子生徒に小声で怒られ、気を付けをした。

「もう、せっかく自分で『今までと違う文化祭にしたい!』って準備してきたんでしょ?もう少し気合入れて!」
「まぁ、その辺については、弥生に世話になったからな。」
「だって、裕紀一人で突っ走っていくんだもん。押さえないと全部一人でやるつもりだったじゃない。」
「ま、その辺が俺の力量不足と言うことで・・・」
「会長さ〜ん?リーダーはあなたですよ?そんなことじゃ困ります!」
「名目上・・・な。文化祭の準備に携わりてーなって、生徒会に入った訳だし。」
「ま、お陰でだいぶ新企画が出来たわけで。」
「企画の準備もスムーズに行ったしな。」
「それは、裕紀がやることリストなんか作って一人で一日にありえない仕事こなそうとしていたのを、暇している他の役員に割り振ったからです。」
「やっぱ、あれ無理あったか?」
「授業に出なければ、一人でも出来たんじゃない?確かにリストに無駄は無かったけど。リスト考える時に、指示が出なきゃ動かない役員もいるって事は忘れちゃいけなかったわね。」
「はは・・・」

2人の言い合いにすっかり慣れてしまった他の役員たちが苦笑している。ちなみに指示が無ければ動かない役員と言うフレーズも、裕紀に対する皮肉な事を周りは知っている。
裕紀が企画し、弥生が指揮を執る。そうやって迎えた学園祭が、今始まろうとしていた。


「・・・しっかし開会式だりぃ。開会式の進行まで手出せればなー。」
「裕紀・・・もう終わるから。」

ふと呟いた裕紀を、呆れ顔の弥生が溜息交じりに睨みつける。

「!!?」

その瞬間、弥生の目の前が暗転した。

はじまりの章 3 

2006年06月09日(金) 15時35分
「・・・かったるいわー」

2年E組。クラス順に並べば列は体育館のど真ん中。深希はその列中でもさらに中ほどに並んでいるため、先生からは目が届かない。ケータイをいじりながら、近くの誰かの呟きを聞く。
周りの生徒はそれぞれ暇を持て余し、深希と同じ様にケータイをいじっている生徒もいれば、小声で会話をしている生徒もいた。

「開会式。なんでこんなかったるいのかしら。楽しい文化祭なら、楽しい開会式にしなさいよねー。」
「深希ー。模擬店回り、一緒に行こうよ。」

深希は自分の後ろに並んでいた2人に声をかけられ、後ろを向く。

「聞いた?3年B組の話!なんかねー・・・」
「お前ら、少しは小さな声で話せないのか?周りに響いてるぞ。」

後ろの2人の影から一人の男子生徒が顔を出す。

「・・・びっくりしたー。」
「なによ雅俊、なんでこんな所にいるの。あんた「あけち」なんだから、列の一番前じゃん?」
「どうせまたお決まりの遅刻でしょ。いつまでも遅刻ばっかりしてると、さすがのあんたも落第するよ?」

女子2人にちゃちゃをいれられても、気にする様子も無く軽く手を振ると、雅俊は自分の並ぶべき場所に向かってさらに前進していく。
深希は雅俊の背中を見送りながら前を向き、友達2人ほど雅俊と親しくないため、相変わらず変な人。くらいに考えていた。

「優等生が。勉強できるからって先生が甘やかしすぎなんだよ。」
「それでいてアニメの下敷きでしょ?きもー!」
「げーなにそれ。あいつオタク?きしょーい!」
「それに比べて深希は学年一の美女!」
「しかも、性格マジ良すぎ!」
「同じクラスなのにこの差だよー。今年のミスコンも1位確実だしね!!」

「急に何言い出すの?」

雅俊の話がいきなり自分の話になって、再び深希は後ろへ振り向く。

「??」

そこに2人の姿はなかった。周りは真っ暗になり、大勢存在していた生徒の姿がまったく見えなくなっていた。

はじまりの章 4 

2006年06月13日(火) 0時44分
「・・ううーん」

勇は腕を組んで考え込んでいた。

「勇、何怖い顔して考えてんのか知らないけど、声は出さない方いいよ。仮にも大勢の中だし。」
「・・・え、声出てた!?」

隣に並んでいた部活の友達に指摘を受けて、勇は我に返る。周りを見れば、同じクラスにしても、他のクラスにしても数人が笑いをこらえている。

「最近部活中も、たまにそうやって考え込んでるけど、なんか気になることでもあるのか?」
「いや、別に大した事じゃないんだけど。」
「部活のこととか?」
「いや、申し訳ないけど、全然。」
「だよなー。たまーに考え込む事を抜かせば、お前の強さは相変わらずだし。」
「まぁな。おれ強いから。」
「むかつくなー。言い返せねーし。」

くすくすと笑いながら、勇はまた考える。

━最近、いきなり自分の中から自分が溢れそうな、そんな感覚に陥る。力が有り余っているような。初めは違和感だったけど。今ではこうして言葉で表わせる事の出来るくらいはっきりと、頻繁に。なんなんだ。一体どうしたんだ自分。

「こんな事誰に相談すれば良いかなんて分かるかよ・・・」
「え?なんだって?」
「あ、また声に出してたり・・・??」

勇が再び我に返った瞬間、目の前が真っ暗になった。

「・・・な、あれ?」

驚いて周りを見渡す。
隣にいたはずの友達も、密集していたはずの生徒たちの姿もすっかり消えてしまっていた。

「あれ、貧血?俺、倒れた?」
「そうじゃないみたいよ・・・」
「!???」

はじまりの章 5 

2006年06月13日(火) 4時08分
「え、なんだ、何が起こっているんだ?知っているのか?」

勇が声の方を向くと、不機嫌そうに一人の女子生徒が立っていた。

「この状況、おかしいと思わないの?」
「そりゃ、いきなり真っ暗になって・・・」

あまりに冷静なその女子生徒のせいで、逆に勇は頭が混乱してくる。
不機嫌そうに立っている女子生徒を勇は知っていた。あまり話をしたことはないが、1年の頃同じクラスだった。

「お、織乃さん、なんでそんなに落ち着いて・・・ん?あれは・・・」

勇は織乃のさらに奥にもう一人女子生徒が見えることに気が付いた。
相手も2人に気付いたようで、駆け寄ってくる。

「あ、あの。良かった、一人になっちゃったのかと・・・今の、これ、何が起こっているんですか?なにか知っていますか?周り手探りしても皆いないみたいだし。なんか、生徒会が新しい企画いっぱい準備しているっては、聞いていたけど、全校生徒がいきなり消えるような企画なんてありえない・・・」

深希だ。
深希が混乱している様子で、一気に考えていた事を口に出す。

「お、俺もさっぱり何がなんだか・・・いきなり体育館をこんな真っ暗にすることなんか・・・」

まっくら??どうやって・・・

何かおかしい。

勇は周りを見渡す。そして、さらに3人の姿を確認する。
痺れを切らしたように、再び織乃が同じ質問を投げかけた。

「ねぇ、本当にこの状況、おかしいと思わないの?」

はじまりの章 6 

2006年06月13日(火) 4時31分
「なに?何事?誰?誰が電気消したの?」
「・・・お、落ち着けって、弥生。」
「だって!・・・ひ・・・ろき?」

裕紀が弥生の肩を揺さぶっている。裕紀もまた、だいぶ混乱した顔をしている。
そこへいきなり声がかかった。

「電気を消したところで、こんなに真っ暗になるかよ。体育館にはカーテンも張って無いんだ。」
「え・・・あなたは・・・確かE組の。1位の人。」

2人に声をかけてきたのは、雅俊だった。

「なんだよ、1位って。ま、良いか。俺は明地雅俊。生徒会の人間の名前くらいは知ってるよ。弥生さんに会長さん。」
「俺は会長って名前じゃねェよ。真島裕紀だ。」

2人が悠長に自己紹介をしている中、弥生はあることに気付く。

「あれ、なんで、見える・・・んだろ。真っ暗なのに、2人とも姿がはっきり見えてる。」
「それだけじゃないぜ、お前さんたちは列が遠かったからあんまり実感無いかも知れないがな、目の前にあんなにいた生徒900人。どこに行ったんだ?」
「あ・・・」

雅俊にそう言われ、裕紀が見渡すと、遠くに別に3人が自分たちと同じように集まっている姿が見えた。

「向こうにも、見える奴がいるぞ。」

はじまりの章 7 

2006年06月13日(火) 21時13分
真っ暗な空間に6人。
ただ6人が立っていた。

「真っ暗でどこまで続いているのか分からないが、足元は意外としっかりしているな。」

雅俊が少し状況を楽しみだしたのか、こつこつと足元を蹴っている。体育館の床を蹴っているような音はしていない。

「俺たちが歩いていた所だけ、偶然にも床があって、それ以外は底なし。とか、考えなかった?」
「怖い事言わないでよ!」

弥生が雅俊の言葉に文句を言いながら周りを見る。

「真っ暗で、自分たち以外、床も何も見えないけど、そんな心配いらない。ってなんか分かるんだよな。何か見えない恐ろしいものがここに存在しているとか、床が無いとか。そんな心配をする余裕が無かっただけかも知れないけど。」
「うん。今、その可能性を考え始めても、やっぱりこの空間は危険な場所じゃない。むしろ何にもない気がする・・・」

勇と深希がそれぞれ感じている事を誰にとも無く口に出す。
今、混乱し怯えている者はいない。初めこそ驚いてはいたが、なぜか気持ちを落ち着かせる雰囲気が、その空間にはあった。
ただ、弥生と裕紀以外それぞれ同じ高校の同学年と言うだけで、今まで接点の無かった6人が集まっているため、なんとなくぎこちなく目を合わせられず、皆この真っ暗な空間を観察していた。

そして、周りを見ながら、6人が6人、あることに気が付き始めていた。

「解放された・・・」

「え?」

勇がつぶやいた言葉に5人が振り向く。

はじまりの章 8 

2006年06月14日(水) 7時27分
「解放・・・」

弥生がつぶやく。
織乃だけが怪訝そうに外を見渡し続け、他5人は勇の言葉を発端に向かい合った。
勇がぽつりぽつりと話し出した。

「ここしばらく、自分の中から自分の力が溢れ出す様な、そんな感覚があったんだ。どうにもその感覚が始まるとそれに集中してしまって。ずっと気になっていたんだけど、この真っ暗が始まってから、無理やり止まっていた力が解放された。そんな感覚があるんだ。こんな時に変な話して申し訳ないな。どうにも誰にも言えなかったんだけど、今この状況と何か関係あるのかもしれないと思って。」

しばらく誰も声を出さなかった。しかし、沈黙を破るかの様に雅俊が握っていた拳を広げ見つめた。

「俺も、そんな感じだ。もっとも俺の場合、掌からだけなんだが。」
「てのひら・・・」

勇は自分の掌を見つめたが、特に何も感じない。目を閉じて感覚と向き合う。
弥生は裕紀と目を合わせる。二人はこの感覚についての話をした事があった。

「生徒会の仕事の最中に、よく丁度同じタイミングで弥生がボーっとして、俺が周りからの刺激に反応が鋭くなる。って事が続いたんだ。」
「いつも自分の世界に没頭しがちの裕紀が、丁度私がいわゆるその感覚に気付いてぼんやりしている所を見つけて指摘するんだもん。初めはたまたまだと思ってたんだけど、あまりに毎回だから。ね。確かに歯止めが利かなくなったとは違うけど、溜め込まれていた力が自由になった感じ。」

「私も冬辺りから力の溢れそうな感覚が始まって、最近は浮遊感に変わったの。なんだか、力が溢れそうって言うよりも、他から吸収して溜まっていく。っていうのかな。」
深希がつられて話をする。
「誰に言っても分かってくれない気がしてたけど、似たような事を感じている人いたんだ。」

「そんな、少ないのに・・・」

その時、織乃が不安げに振り向いた。

はじまりの章 9 

2006年07月04日(火) 18時41分
固唾を呑んで、5人が織乃に注目する。
雅俊は織乃の言葉の後、その視線の先からなんらかの力がゆっくりと自分たちに向かってきていることに気付いていた。

「これは・・・いつも感じていたあの力と同じだ。」

深希が、織乃から力のやってくる方に視線を変える。つられて雅俊もそちらを向く。

「何が、始まるんだ。・・・織乃何か知っているのか?」

勇が不安を隠しきれない様子で問うが、織乃は暗闇を見つめるだけで口を開けなかった。
雅俊は、近頃感じていた感覚に再び襲われ、その感覚と迫ってくる力の侵食感に関係性を覚え始めていた。

「誰かの力が近づくたびに、自分の中の溜め込まれた力があふれ出しそうな感覚があった。そうだ、今この近づいてくるこの力だ。」

雅俊は熱を持ち、抑えが利かなくなりそうな自分の両掌を、お互い押さえつけるようにしっかりと握る。

ゆっくりと近づいて来ていた力が、6人から2,3メートルの所で止まる。裕紀が一歩後退るが、他の5人は動く事すら出来ず、力の方向をじっと見つめていた。

「うわ!」

突如力が増幅し、6人を包み込んだ。
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