人に抱かれ

June 15 [Mon], 2015, 17:51
の心の中はドロドロだよ。それはもうヘドロみたいにね。何十年も溜め込んできた黒いものが奥底に鬱積しているのさ。澪に格好つけようと証人を引き受けたんだろうけど、据え膳まで我慢できるとは思えない」
「…………」
 彼の言うことをすべて鵜呑みにしたわけで保嬰丹はないが、実際にその片鱗らしき部分は何度か目撃したことがある。無理やりキスしてきたときも様子がおかしかった。そして、今回の大地と同じような取引を持ちかけてきたこともあった。もし、そういう気持ちがまだ少しでもあるのだとしたら――。
「悠人が僕のお膳立てを断ると思うなら、条件を飲んだらどうだ?」
「えっ?」
「いまここで澪がその条件を飲むと約束してくれれば、僕は婚姻届に同意のサインをする。その後、悠人が断ってきたとしてもサインは撤回しない。君は悠ることなく、あのさえないへなちょこ刑事と結婚できるってわけだ」
 澪はこぼれそうなほど大きく目を見開いて息を詰めた。ゆっくりとうつむき、ほんのすこし眉を寄せたままじっと思案をめぐらせる。正直にいえば心が揺れた。それでも――決意を固めると、迷いなくはっきりと首を横に振ってみせる。
「へぇ、悠人を信じてないんだな」
「そうじゃなくて……」
 大地の挑発にも落ち着きを失うことはなかった。小さく息をついて言葉を継ぐ。
「この条件を飲むこと自体が裏切りになると思うから」
「そんなの馬鹿正直に言わなければわからないだろう」
「わかるわからないの問題じゃありません」
 誠一をもう二度と裏切らないと決めた。誠一に対して誠実でいようと決めた。だから、そこは決して曲げてはならないところなのだ。この
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