ハボ日記H 

October 14 [Sun], 2007, 23:34

そんなわけで、俺は魔女と婚約する羽目になった。
呆然として何もできない日々。俺を取り残したまま、周囲はエルリック家の令嬢と俺との結婚へ向けておおいに盛り上がっている。
シャチョウをはじめとする社内の人間から続々と届く祝いの品と言葉。そして逆玉への嫉妬めいた中傷。
魔女の家族にもあった。ちなみに、俺はまだ固まったまま。
魔女父は「娘はちょっと変わったところがあるが、自慢の娘なのだ。どうかよろしく頼む」と俺の手を握りしめて熱く語った。
・・・ちょっとどころかかなり変わってますよ、親父さん。
魔女母はかなり美人でテンションが高く、のっけから孫孫と五月蠅かった。
・・・俺の意志は無視ですか。
魔女弟はシスコンらしく、貴方と姉の結婚など認めないと鼻息が荒かった。
・・・君とは気が合いそうだな、魔女弟。俺だってお前の姉なぞと結婚したかねーや。



石化したまま家族への挨拶はいつの間にか終了し、俺はどんどんと身動きが取れなくなった。
どうしよう、どうしよう。このままじゃ俺、魔女と結婚・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
嫌だーーーー!!
俺は、俺は、田舎に帰って美人で純で性格が良くて明るくてボインなコと明るいカントリーライフを送るんだー!
魔女との結婚生活などかなりブラック。超絶嫌。
お願い誰かタスケテ。
唯一の救いであるはずの魔女弟は・・・見当違いの嫉妬も甚だしく、俺に壮絶な嫌がらせをスタート。
机の引き出しに雨蛙がびっしり詰まっていた時は死にそうになったぜ。
同僚に不平不満を吐けば、お前には勿体ないぐらいの良縁だ文句言うなと非難囂々。
居酒屋で主人相手にくだを巻けば、隣にはいつの間にか魔女。
トイレに行こうと席を立ち、窓から脱出を試みようとしたのは当然。だが、開けた窓の向こうには・・・魔女。
社内食堂で飯を食おうとすれば、差し入れられる暗黒の魔女弁当。開けた瞬間にハートマークが飛び出る仕掛けで、でも中身はゲテモノで俺様死にかけ。
家に帰れば・・・・。
何もなかった。
「ここだけが俺の聖地!」
思わず拳を握ったぜ。


ダイニングテーブルの上を散乱する結婚情報誌はホークアイ女史の差し入れだった。
それをぼんやりと見ながら、俺は決心を固めた。
逃亡だ。
逃亡しかない。


そして、俺は荷物を背負って愛するボイン2号(バイク)にまたがり、何もかもを捨てて逃亡する事にした。
もう嫌だ、こんな生活。
今は深夜。逃亡にはぴったりじゃないか。バイクに乗るので雨が降っているのはいただけないが、それでも雨に濡れたい気分の俺にはちょうど良い。
さあ、行くぞ!
目指すは安住の地。
俺は、軽快にバイクを飛ばした。



どれぐらい走っただろうか。
雨はどんどんと酷くなり、ちょっと危険を感じる状況になってきた。道路はつるつると滑って、まるで氷が張っているようだ。
事故になったら洒落にならん。
少し速度を下げ、俺は更に走る。
頭の中はバラ色の未来でいっぱいだった。ああ、俺、もっと早くこうすれば良かったんだ。
何も言わずにすべてから逃亡なんて社会人にしてはあるまじき行為だと気を遣ったからこんな羽目になったんだ。
もっと賢く立ち回れ、俺。
でも、今こうして俺は自らの手で幸運を掴み取ろうとしている。
もうすぐだ、もうすぐ。


更に走り続け、とある公道にさしかかった時、俺はふと違和感を感じた。
・・・なんだ?
何かがおかしい。
何か。
何か。
バックミラーをちらっと見る。何も映ってない。
だが、この感じは・・・・・・。
固くシャッターが閉じられた店の前を走り抜け、とある洋品店の前を通り、何気なくその暗いショウウィンドゥに視線を投げた瞬間・・・。
俺は死にそうになった。


・・・バイクの後方3メートルの位置に、魔女がいた。
魔女はローブの裾を蹴立て、陸上選手も真っ青な見事なフォームとスピードで俺のバイクに迫っていた。

ひ、
ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


こわ、マジ怖!!!


俺は更にスピードを上げる。雨足は強くなる一方だが、危ないとかそんな事言ってられない。だって、俺の未来がかかっているんだ。
振り切れ、振り切るんだ、魔女を。
頑張ってくれ、俺のボイン2号!
またしてもショウウィンドウに視線を投げた。
よし、魔女はいない。
どうやら撒いたらしい。
ほっと息をついたその時、俺は凍り付いた。
映っては途切れ、また映っては途切れ。でも、確かにそこに魔女は映っていた。
そう、俺のボイン2号の後部席に・・・魔女が・・・。
慌ててバックミラーを見る。危ないとわかっていても、肩越しに振り返る・・・・でも魔女はいない。
もう一度ショウウィンドゥを・・・・ああ、魔女はやはり映っていなかった。
どうやら俺の見間違いらしい。良かった。
ずっと走り通しだから疲れているんだろう。だから妙な幻覚を見るんだ・・・・。



するり、と俺の腰に背後から細い腕が巻き付いた。



俺はそのまま意識を飛ばした。

ブラックアウト。

ハボ日記G 

October 11 [Thu], 2007, 22:45
管理人よ、漸く俺の存在を思い出したか・・・。(すまん、本気で忘れてた・・・by kyo)



あれ以来、俺は職場でも家でも心休まる時がなかった。
トイレだろうがどこだろうが、部屋の扉や引き出し、蓋なんかを開ける際は魔女がいるんじゃないかといつもドキドキ。
正直、心臓がもたん・・・。
昔付き合った女に、よく綺麗な筋肉のついた身体だと誉められた自慢の肉体はどんどんと痩せていった。
っつーか、やつれた?
顔もげっそりとこけたみたいになってるし、目の下には濃いクマ。
鏡見る度にどこの幽霊かって驚くんだよな。
上司は上司でにやにや笑いながら「死相が出ているぞ〜。モテる男は大変だなー」などとからかってくる。
いつもこのロイ・マスタングという男のモテっぷりには憧れ半分、嫉妬半分だったが、魔女が引っかかるのならば俺は生涯モテないままでよかった。
モテる事を自慢するのなら、いっそ替わってくれ。ああ、替わってくれよ!
だがやっぱり。
「ふっ。彼女は私の手に余る」
とか逃げられた。
ち。ロイ・マスタングめ。(←八つ当たり)
他の連中も触らぬ魔女に祟り無しとばかりに無視を決め込んでやがる。
頼りのホークアイ女史は、いつの間にかすっかり魔女の傀儡と化して「あの方に慕われるなんて光栄だと思いなさい」とか説教をかましてくる始末。
俺にはもう味方なんていないんだ・・・。



実は俺、会社を辞めて田舎に帰ろうと思っている。
ああ、勿論本気さ。本気だとも!
給料良いし待遇も悪くないけど、でも・・・もう限界なんだよ!毎日毎日毎日毎日魔女の脅威と同僚の失笑にさらされて、俺様の繊細なハートは壊滅寸前。
そんなわけで、潔く辞表書いてみました!
通常こういったモノは一身上の都合により云々と書くものだが、俺ははっきりとこう書いた。
”魔女と離れたい(切実)”ってな!
これをばしっとシャチョーに叩きつけたら、その足で俺は新幹線に飛び乗って田舎に帰る。
そして、のんびり穏やかなカントリーライフを楽しむのさ。あわよくば、田舎に埋もれているであろう可愛い子ちゃんと×××・・・。
ふふん。都会暮らしで洗練された俺様の手管にかかれば、田舎の純朴なコなんてチョロイもんさ。
待ってろよ、俺の愛しのベイビー!!!



ついにこの時がきた。
魔女と同僚どもの見守る中、俺はスキップをかましそうな足をなんとか押さえて、平常を装って社長のデスクに近づいた。
「何か用か、ハボック?」
「ええ。社長に受け取っていただきたいものがありまして・・・」
「男からのラブレターなら受け付けんぞ」
「誰がアンタにそんなもん渡しますか。・・・これです」
にたにた。にやにや。
俺、もう我慢できねーぞ。
緩む頬。口の端から漏れる含み笑い。
ぐふっふ。ぐふふふふ。
ヘイカマン、素晴らしきカントリーライフ!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハボック・・・・・・・・・・・・・お前・・・・・・・・・・・」
社長は長きに渡る沈黙の後。
青空に映える白い歯をキラリと光らせて笑った。
(な、なんで?)
そして立ち上がって俺の所まで来ると、肩をがしっと掴んで。
「おめでとう、ハボック君!!」
と宣った。
意味不明。
何がどうして”おめでとう”?
普通、部下から突然辞表を叩きつけられた上司が示す反応っつーのは
『どうした?何があった!?』とか
『もっと良く考えたまえ。待遇面で不満があるのなら改善しようではないか』とか、そんなんじゃねーのか?
なのに、オメデトウ?
首を捻る俺の耳に、とんでもない言葉が飛び込んできた。
「そうかそうかハボック。お前、ついに魔女・・・じゃなくてエルリック嬢と結婚するのか!」

・・・は?
・・・・・・なんですって?
・・・・・・・・・ケッコン??



「結婚!!!!!?????」



冗談はよしこさん!(←表現古)
誰が誰と結婚するっつーんじゃ!魔女と俺が?結婚??有り得ん!!!!!
唖然呆然。絶句する俺の目に飛び込んできたのは、シャチョウの手に握りしめられた辞表・・・じゃなく、結婚式の招待状。
「え?え?ええ??」
俺、確かに辞表書いたよな。そして、入れたよな?



『ふふ。ふふふふふ。
狙った獲物は逃がさな〜イ』




うお!テレパシー!!
突如頭に響いた声。
同僚達によるおめでとうの嵐の中、おそるおそる魔女を伺うと。


ニターーーーーッ。


フードに隠れているので表情は見えなかったものの、だが、口元がそれはそれはナイスな角度につり上がっていた。
ああ、あれは笑っているのか。
ちらっと見えるのは牙か?血のようなモノがついているのは気のせいか?
あは。あははははは。
ほら、あんな所にお花畑が見えるよぉ〜♪






今日、俺は魔女と婚約した。







マジっすか。

ハボ日記F 

July 25 [Wed], 2007, 22:01
長い間日記を書けなかった・・・。それだけ、俺の心の傷が深いんだって(しかも現在進行形)わかってくれるか?
俺、もう本気で遠くへ行きたい。どこか・・・そう、魔女のいない場所へ!!!!!



最近、どうにも家の中で視線を感じるんだ。それもちらっと見てます的なものじゃなく、じろじろと嘗め回して見ています的な気色悪いものだ。
盗撮でもされてんじゃないかと思って調べてみたら、調べて・・・みた・・・ら。
俺の部屋のクローゼットの中に、いつの間にか手の平サイズの魔女人形があったんだよ!しかも、暗闇で目が光る!!!
まじかよ!!!って思うだろ?気のせいだって何度も目を擦ったけど、消えないんだよ。
捨てるべきだと手を伸ばしたら、その魔女人形の首がぎぎぎ、とこっちを向いてニヤッと笑ったんだよーーーーーーーー!!!!!
イヤー!チャイルドプ○イの○ャッキーより怖い!!!!
(俺、子供の頃にアレを観てショックだったなぁ。怖くて暫くは人形ってものを正視できなかったぜ)
慌てて閉めたさ。
その後、通販で買った工具セットをダッシュで取りに行って、そのままクローゼットが開かないように釘で打ち付けてやったぜ。
勿論、釘で扉を固定したら、今度はその前に本棚を置いた。これでもう出てこれまい。
はっはっはっはっは・・・ははは・・・。
いつでも逃げ出せるように玄関で布団にくるまって寝たんだが、起きたらさ、元に戻ってるんだよ!全部!
クローゼット前に置いた本棚も、打ち付けたはずのクローゼットも全部元に戻ってたんだ。
そうか、これは夢だ。夢なんだ。夢に決まっている。夢にして〜。
釘を打ち付けた痕跡なんて、そんなものは俺には見えなかったぜ!
あははははははは!!!!



その日以来、俺は一度もクローゼットを開けていません。
引っ越しも検討しています。セキュリティも万全な・・・うちの会社の息のかかっていないマンションをな!
なんで一軒家じゃないのかって?
決まってるだろ!ひとりじゃ怖いからだよ!
超美人なルームメイト絶賛募集中・・・。

ハボ日記E 

May 29 [Tue], 2007, 22:46




ストレスが溜まってたせいか?万年健康優良児だった俺が、なんと熱を出して寝込んでしまった。
それも2日間も!
朝起きたら立てないでやんの。無理矢理立とうとしても膝が笑っちまって・・・。
仕方なく会社を休んだ。職場への電話連絡の声がどうにも明るく弾んじまって、仮病じゃないかと疑われちまったけどな!
看病してくれる恋人がいないのが寂しいところだが、それでもあの魔女から解放された2日間は最高だった。
インフルエンザじゃないかとチラリと疑ったが、2日であっさり下がったから、ただの疲労だろう。
労災は・・・無理だよな、やっぱり。



会社に赴く足取りは熱関係なく重かった。魔女と顔をあわせると想像しただけで、下がったはずの熱すら急速に上がってきそうな勢いだった。
が、しかし。
天は俺を見放さなかった!
なんと!
魔女が休みだったのだ。
社長からそれを聞かされた瞬間、俺は拍手喝采の嵐!
会社のどっかに住処があるんだから遭遇する可能性はなきにしもあらずだが、それでも遭遇率は随分と低くなる。
束の間の平和だとわかってはいても、有り難いものは有り難い。



社長の警護や身の回りの世話・・・ぶっちゃけ、雑用が俺の仕事。
身体を動かす事に慣れているので、デスクワークはあまり得意ではない。
書類を差し出されたら、思わず「ウゲッ」って声に出しちまうぐらいには苦手だ。
魔女がいないという事実が余程嬉しかったのか、絶賛舞い上がり中の俺は、休みの間に溜まった書類の山を見ても愚痴ひとつ零さなかった。
偉いだろ。
魔女不在効果抜群。
書類に目を通しながら、鼻歌なんざも出ちゃったぜ。
はっはっは。



が、事件は起きたのだ。



俺らのデスクは社長のものも含め、かなり値段の張るものだ。
桜の樹で作られたそれは、どっしりとした重厚感がいかにも重役!といった感じで、俺は気に入っている。 
最上段の引き出しには鍵がかかっているのだが、それはなんと指紋照合と鍵の両方が必要なのだ。さすがだ。
重要書類や機密の詰まったメディアはここに保管するのを義務づけられている。
その下2段は、私物が入っていたり、まぁ・・・いろいろぐちゃぐちゃーっと。
で、一番下はちょっと深い引き出しになっていて、ここはファイルや本やかさばる図面なんかを収納する・・・ん・・だ・・・が。



魔女が入ってたんだ。



え?って思うだろ?
いや、マジなんだよ!信じてくれよ!!!



社長が必要だって探してる図面を俺が持っているのを思い出したのが失敗だったな。
「ここにありますよー」
って引き出し開けたら。
魔女が・・・赤ん坊ぐらいしか入れないであろうスペースに、魔女が・・・・!!
ぴっちりと収まっていたのだ。



無言で閉めてみた。
何かの間違いだろう。そうだろう。
だって、ここには確かに人ひとり入れる(あくまでも赤ん坊サイズ)が、だが、常に書類なんかでいっぱいになっているのだ。
開ける時に上の段に引っかかるぐらいには荷物が詰まっている。
そんな引き出しに、よりにもよって人間(?)がジャストフィットするなんて、そんな馬鹿な。



「どうした?ハボック。早く図面を寄越せ」
せかさないでください、社長。
俺は人生の岐路に立たされているんです。
「ハボック!」
あーはいはい。
開けますよ!
高鳴る鼓動。俺は心筋梗塞なんだ、きっとそうだ。それとも更年期障害?
どっちにしろ、ここを開けなければ図面は取り出せない。
男ハボック、いきます!



ふふ。
ふふふふふ。



出た・・・。

ハボ日記D 

May 26 [Sat], 2007, 22:53



俺・・・会社辞めたい・・・。
名の知れた一流企業に就職の内定を貰った時、俺は涙・・・は流さなかったが、おおいに喜んだものだ。
これで将来は安泰、左団扇!
なはずだったのに、あの魔女のせいですべてが狂った!
毎日毎時間毎分毎秒俺についてきて、一体何がしてーんだよ!?
社長は「モテモテだな」とか冷やかすし。(対岸の火事は面白いらしい)
同僚どもは見て見ぬふり。
頼りになりそうだと思っていたリザ・ホークアイ女史(社長秘書)は、いつの間にやら魔女の下僕と化していた。
「私はあの方を尊敬しているの。貴方、良い人に惚れられたわね」
とか表情筋ひとつ動かさない真顔で言われた時の俺の気持ち、お前らにわかるか!?ええ!?
味方など誰もいず、唯一にして最大の敵は、己の魔法で分裂し、複数になる事も可能。
つまり、絶体絶命四面楚歌。
俺、もう駄目かもしれない。



定時のベルがあんなに愛しいと思ったのは初めてだ。
手当ばっちりの残業を厭うのもまた初めて。
残業なんてして人気のなくなった会社にひとりでいたら、あの魔女がやってくるに違いない。
なんせ、魔女は会社のどっかに棲んでいるらしいからな。(どこかは誰も知らないらしい・・・。どっかに魔女御用達の洞穴でもあるんじゃねーの)
くそ!
残業手当とボーナスを見越してバイク買ったばかりなのに。
スーツも靴もパソコンも新調した。
これ以上残業を拒むとローンがやばい。だが、残業すると俺の貞操も危うい。
なにより、魔女の住処で働いているななんて怖すぎだ!
辞めたい、だが辞められない。
魔女め!!



・・・なんか、見られてる気がするんだよ。
気のせいだよな?
今、俺の部屋には俺以外誰もいないし。
気のせい、だ・・・。きっと。

今日は電気消さずに寝よう。

ハボ日記C 

May 25 [Fri], 2007, 23:59




夢は所詮夢ってか!!!



現実はそう甘くなく、出社した俺を待ち受けていたのは、やっぱり黒さ溢れる魔女だった。
朝の爽やかな挨拶のなんと似合わない女か。
それに、俺の至近距離に立つのはやめてくれよ。息がかかるくらい近くにいるんだぜ。嫌になっちまう。
俺が露骨に嫌がってるのが丸わかりなのに、社長の野郎・・・!!!
「エドワード嬢に社内を案内してやってくれたまえ」
とか言いやがるし!!!
「いや、それは俺よりファルマンとかに!!」
つったのに、ファルマンが何か言う前に魔女が。まーじょーがーーーー!



俺の背後を滑るように追いかけてくる魔女。
まるでハンターに狙われる獲物の気分だったぜ。
な、なんかふふふふ笑ってやがるし、おまけに変なBGMは相変わらずどっかからか聞こえてくるし、浮いてるし!
廊下ですれ違う連中なんか、露骨にぎょっとした顔してたもんな。
そらそうだ。



緊迫感漂う社内案内。
耳の傍でふーふー息遣いの音がするが、気のせいだ!
魔女の手が、さりげなく俺のあちらこちらに触れているのも、きっと気のせいだ!
ついでに、だ・な・な・さ・ま♪とかぶつぶつ言ってるのも気のせいだーーーー!!!
足が長い俺は、競歩なみのスピードで社内を歩き回った。
なるべく最短距離で自分の部署に戻れるように。
だいたい、廊下のあちらこちらに案内板があるんだから、社内案内なんぞいらんだろうが!!!



同僚の出迎えが痛かったぜ。
でも、奴らの顔があれほど恋しかった事はねぇ。



昼は魔女弁当の差し入れがあった。
そのことについて、俺は何も言いたくない。
ただ、昼飯後に、俺が救急車で病院に搬送された事は記しておこう。

ハボ日記B 

May 24 [Thu], 2007, 23:36



き、昨日は随分と取り乱しちまったぜ。
ははは・・・は。
エドワード・エルリック、エルリック会長の愛娘が、まさか魔女だなんて思わなかった。
このIT革命の時代に魔女なんてナンセンスって、俺だって本人を知らなければ鼻で笑い飛ばして終わってたぜ。
いや、むしろそうしたかった。
「彼女がエドワード・エルリック嬢だ」
と、なんだか憔悴した社長が朝イチのミーティングで紹介してくれたんだよ。
でもそこには誰もいなかった。
ついに社長も頭やられたかって俺達は期待・・・じゃなくて心配した。
一瞬の沈黙の後。
バッ!とかいう音とともに、いきなり天井から黒いものが・・・!!!
唖然としたぜ。
天井に穴があって、上の階から落ちてきたんだって言われた方が納得できるような唐突な出現だった。
穴なんかなかったけどな。
着地したそれを見て、更に唖然となった。
だってよぉ、魔女なんだよ、魔女!
それも、絵本とかに出てくるような”黒いローブ””顔の見えぬフード”を着た魔女!
大鍋でぐつぐつ怪しげな汁を煮てる、そんな雰囲気ばっちりだ。



「エドワード・エルリックだ」
ぬぼーっと立ったままの自己紹介。
「見ての通り魔女だ」
はぁ、そうですか。
頷く以外に俺らにどうしろっつーんだ!!!



魔女は名乗った後、突然ふらふら揺れ出した。
どこからか取り出された魔法の杖らしき棒っきれを一振りすると、カーテンが閉まって照明が消え、天井から生えた(としか思えない)ミラーボールが回転しだした。
どんな仕掛けだ・・・。
そして、すーっすーっと社長の背後や俺達の背後を円を描いて移動を始めたんだ。
俺は気づいた。
奴が宙に浮いている事に。
マジ!?
おまけに、でんでろとかいう変なBGMに合わせて、分裂してるし!!
夢なんかじゃねえ。本当の本当に魔女の数が増えていったんだよ!!!!
ぎゃー!怪現象!!!
あんまり怖いんで適当に「営業部に書類を届けに・・・」なんて嘘八百ついて部屋を抜け出そうとした時、事件は起こったんだ。



タイミングが悪かったんだよ・・・。
ただ、それだけなんだ。



扉を背に立っていた俺は、回れ右して歩き出そうとして。
ぐるぐる部屋を高速移動する魔女と衝突したんだ・・・。



そんで、そんで・・・・。



俺の唇に魔女の唇がーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
俺の唇が汚されたーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




ま、魔女は何を思ったのか・・・そのまま俺にしがみついて「伴侶ゲット」って言いやがったんだ!!!!



そのまま気絶した俺、目を覚ましたら自分の部屋にいた。どうやら、同僚どもが送ってきてくれたらしい。
明日(今日)は休めとメモを残すあたり、俺の心の傷を慮ってくれたみたいだ。
有り難く今日は休ませて貰った。
一日中、俺は歯磨きをしまくった。お陰で唇や口内がひりひりするぜ。歯茎から血が出たしな。
シャワーも浴びた。なんせ、服越しとはいえ、魔女に抱きつかれた身だ。何があるか知れたもんじゃない。
しかし、信じられない。
本当にあれがエドワード・エルリックなのか?
彼女の顔写真は公表されてないし、面識もないから間違いなのかもしれない。
通りすがり(?)の魔女が、勝手に身分を詐称しただけに決まっている。きっとそうだ。
は!
明日会社に行けばすべての謎が解ける。
あの悪戯好きのロイ・マスタング社長がエセ臭い爽やか笑顔を浮かべてこう言うんだ。
「はっはっは。ちょっと悪戯がすぎたね。本物のエドワード・エルリック嬢はこちらだ」
ってな。
んで、登場する深層のご令嬢。
魔女なんて似つかわしくない、清らかかつ美しい美少女だ!



あー明日が楽しみだなー!!!

ハボ日記A 

May 23 [Wed], 2007, 22:01



ま、魔女だ!
あの魔女が、俺に・・・俺にぃぃぃぃ!!!
ひいいいいいい!
黒い、黒いものが!杖がブンって!!!
でんでろでんでろでんでろでん。
あああああ!脳内までもあの魔女に侵されるーーーー!!!!!!!!!!!!!!
嫌だ、嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

ハボ日記@ 

May 22 [Tue], 2007, 23:15


突然だが、俺はジャン・ハボック。
高身長高学歴高収入が自慢の超絶美形モテモテのイケメン20代。勿論一流企業に勤めている。
ふっ。俺に惚れたら火傷するぜ。


なんだか知らんが、俺のマンションの管理人(キョウっつー名前の冴えないオンナ)がいきなりやってきて、日記を書けば家賃をちょっと安くしてくれると言う。
いや、俺様って高収入だから別にいいんだけど、でも安くしてくれるっつーんなら、なぁ?
んなわけで、今日から日記をつける事にする。
ま、忙しいから毎日は無理だけどな。最低でも週3は頑張るぜ。


俺の働いている職場は天下のRMサービス。
生活密着型の安全やパソコンなどネット世界の安全、要人警護などありとあらゆる安全を掲げる所謂セキュリティを専門とした会社だ。
全国規模の大会社で、その経営母体となっているのはあの天下のエルリック財閥。
世界でも有数の資産家のあの!エルリックさんがバックについてくれてるってわけ。もうこれで俺様の未来も安全安泰。
このRMサービスっつー会社はどんなに高学歴でも腕っ節が強くないと入れない。
社員全員が空手や柔道、合気道なんかのスペシャリストってのが自慢の会社だからな。
元警察官や元FBI捜査官や元傭兵なんつーのもわんさかいる。
ひょろっちい印象のある、インターネットセキュリティ部門の連中すらそうだってんだから徹底してるよな。
俺は小さい頃から実家の傍の道場で空手をやってて、自分で言うのもなんだが結構な腕前。
おまけに頭もいいし。
この会社に就職ができたのも当然って事!
俺様はなんと入社一年目にして社長補佐に抜擢され、以来5年近くエリート街道を驀進している。
社長補佐・・・聞こえはいいけど、俺のやってる事は雑用に近い。
いや、なんでも屋か?
茶淹れろって言われる事もあるし、書類作れって言われる事もあるし、ボディーガードにつけって言われる事もあるし・・・。
収入がずば抜けて良い上に、ボディーガードなんかにつくと危険手当として充分すぎる程の額を貰えるから文句はない。
これで社長がもうちょっと真面目だったらなぁ・・・。



社長はロイ・マスタングっつー俺より年下!の男。
身長は俺より低いけど、オリエンタルな顔立ちが結構魅力的だっつって人気がある。
若くしてアメリカのオックスフォード大学をスキップで、おまけに主席で卒業して、しばらくは軍隊にいたらしい。
警察機構にも所属していた事もあって、”D.A.”つまり、ドラッグアタッカー・・・麻薬取締官をやってたっつー話。
あれってかなり優秀じゃないとなれないんだよな・・・ちっ。
一見して優男なんだけど、腕っ節の強さは尋常じゃない。
・・・こう書くとかなり良く感じるだろうけど、現実はそう良くはないぜ?
この男、とにかく性格が悪い!
いじめっこ体質っつーのか?後はガキみたいな所もあるな。
女癖も悪くて、常にとっかえひっかえしてる。社長と社員じゃ与える印象が違うから、よく俺の彼女も毒牙にかかって・・・あくまでも肩書きのせいだぞ!
おまけに仕事はさぼるし、自分の仕事は部下に押しつけるしでもう最悪。
そんな人だけど、不思議と頼れるんだよなー・・・。
カリスマ性もある。この人についていけば安心ってな。



その社長から、今日ビッグニュースを聞かされた。
なんと!
明日からうちに配属される若い女の子、エルリック会長の愛娘らしい。
名前はエドワード・エルリック。
マジかよって思うよな?なんでエルリック会長の愛娘が数多ある関連企業の中からうちを選んだんだろう?
社長は「私が見初められたんだろう。これで私は次期エルリックグループ会長だ!」とか豪語してたけど・・・。
金持ちの娘って気位が高くて性格も悪い上に使えないのが多いから、俺はちょっと心配。
そんなんが来たら、いくら相手がエルリック会長の愛娘だろうと社長が追い出すだろうけどさ。
あれでいてうちの社長、仕事の出来ない奴は嫌いなんだよ。・・・ならサボるなっつーの。
まだ成人したばかりって話だけど、美人だろうか。ボインだといいな!
やらしい?
ふっ。
男は皆ケダモノだ。
どんなに性格が悪かろうと顔とスタイルが良ければちょっとはマシ。
これで性格も良ければ言う事はないんだが、贅沢は言うまい。
エルリック会長ってのはなかなかのナイスミドルだ。会長夫人も淑やかそうな美人。次期会長のアルフォンス(エドワードのひとつ下の弟)は俺様には劣るけど、これまた美形。
美形がそろってんだから、必然、そのエドワードってのも美女だろう・・・多分な。
どっかは知らないけど留学経験もあるそうで、才媛だって噂。
噂なんてあてには出来ない。期待半分でいよう。
そうすれば落胆する結果でも、そうは落ち込まないだろう?
ただなぁ・・・。
なーんかおかしいんだよな。
同期のブレダから妙な話を聞いたんだよ。



「エドワード・エルリックはやばい」
って。
何がどうやばいのかは知らん。ブレダを締め上げたが、教えて貰えなかった。ケチな野郎だ。
・・・っつーか、口を割らせようとしたら、ブレダの奴、突然顔面蒼白になってぶるぶる震えだしたんだよ。
なんなんだ、一体?
わかんねぇ。



とにかく、今日はこれで寝よう。すべては明日だ。
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:kyo
読者になる
腐女子です。現在腐った友達大募集・・・。
2007年10月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
最新コメント
アイコン画像ジャン・ハボック
» ハボ日記B (2007年05月26日)
アイコン画像華蓮
» ハボ日記B (2007年05月25日)
Yapme!一覧
読者になる