明日の傘 

2006年02月02日(木) 16時20分
人間ってものはすぐに変われるもんじゃない、と私は思う。

だって私は何度も学校で宿題を忘れるし、よく友達との待ち合わせには遅れていくし、ちょっと太りぎみだとわかっていても3時にカフェオレを飲むのはやめられない。
好きなものはいつになっても好きなんだと、私は思う。

最近気になっている優くんも元彼と同じように年下でほっそりとした感じの男の子。
二の腕は成人の男とは思えないくらいほっそりとしていて、顔も青白い。
それはスリムだとか、スマートって言う言葉とは程遠く弱弱しさすら感じる。
だから私の友達は優くんのことをよく女みたいで気持ち悪いと言うけど、私はそんな彼を守ってあげたいと思う。

「リサの趣味は本当に変わってるよね」

クラスメイトのソフィー(その友達の本名は昭子だが私はそう呼んでいる)が大学のいちょうの木の下で自分の家から持ってきた水筒の蛇口をひねりながら私に言った。
ソフィーはルイ・ヴィトンの20万もするというバッグを持っているわりにはコンビニでジュースを買うのももったいないと言う珍しい人だ。
あなたの方がよっぽど変わっているわよ、私はそう思いながら

「まぁね」

と適当に返事をした。
ソフィーの水筒の中身は紅茶だった。
私はコーヒーが好きだけどソフィーは紅茶が好き。
飲み物と男は変わらないのかな。

世界で最も深い溝 

2006年01月25日(水) 16時31分
あなたの瞳は出会ったときから輝いて見えて、僕は一瞬で恋に落ちた。

でもその中に僕の光と影は映らない。
電話をかけても返ってくるのは声ではなくただの機械音。

「用件のある方はピーという・・・」

またため息が部屋の中でベッドに包まれる。

僕が気持ちを伝えたあの日。

全てを伝え切れていたと思っていた。

わかれうた(女) 

2006年01月18日(水) 23時12分
どれだけ目を閉じていたかな?

どれくらい時間が経ったかな?

チクタク、チクタク・・・

時計が心臓に変わって命の流れを告げている。
真っ暗で静かな部屋、誰もいないのに私は獲物を狙う獣のように気配を消していた。
ベッドに寝転って冷え切った枕を抱きしめながら、ただ朝が来るのを待っているんだ。



今日は良い事も悪い事もあったな・・・


また目を閉じると、さっきまでと同じ言葉が頭の中を巡った。

良い事っていうのはようやく初めての内定が出たこと。
普通の人に比べれば遅いし、自分の行きたい会社じゃないけどとりあえず一安心。自分がどこかしらで必要とされているんだって思うことができた。それでもなぜかこころは晴れ晴れとしない。素直に喜べないのはなぜだろう?

私にはその原因がなんとなくわかっているけど、それを言葉にはしたくない。認めたくないから。

「どうして?」

こんな言葉をつぶやいても彼と私の関係は変わらないんだ。

わかっている、わかっているのに、こころのスピーカーは止まりそうにない。
なんで私は彼にそう素直に聞くことができなかったのだろうと問い詰められた。

強がってしまっただけ。

壁を作ってしまったの。



「左手の薬指に光った指輪は何?」



その言葉を言い出せなかったことを後悔した。
私は思い出したくないのに彼の長い指にある光を思い出さずにはいられない。

はぁ・・・

どうして今日彼の誘いに乗らなかったんだろう?
どうして今、家に一人でいるのだろう?
そう思ってため息をついたとき、私の携帯が鳴った。

「これから会って話がしたい。渋谷に来て」

彼からのメール。今更会って何を話せばいいの?

「喧嘩するんなら嫌だ」

またいつもように強がって私はメールを返した。

「仲直りするために私も会いたい」

って言えればきっとうまく行くんだけど、どうしても私は可愛くなれない。不器用な女。

でも結局今回は負けて渋谷に行った。

私なにやってるんだろう?

もう彼のことも好きじゃないはずなのに。
十二時で、髪もぼさぼさだし、安い女みたいな自分に嫌気がさした。

わかれうた(男) 

2006年01月15日(日) 22時12分
時間はもうすぐ夜の12時になるころだろうか・・・

ぱらぱらと雨が降り、当たり前だが渋谷の空には星ひとつ見えなかった。

黒い男が黒い女を求めて、欲望がネオンに綺麗に映し出されている。

「別れはいつもついて来る、幸せの後ろをついて来る」

中島みゆきの「わかれうた」の歌詞を聴きながら僕はひとりの女性を探していた。

こんな時間に誰かを呼び出すのは初めてだ・・・

僕の心は動揺していた。

素直に来てくれる彼女が嬉しかったからだ。

だけどもう終わりにしよう・・・そう自分に言い聞かせ、彼女の元に向かう。




彼女に別れを切り出したのはその前の日だった。

実際告白の答え待ちなので別れというのはおかしいかもしれない。

ただこれは明らかに別れだった。

僕は彼女の態度に我慢がならなかった。

僕とも会わずに、メールすら返さずにいる彼女が・・・

「忙しいの」

それが何の言い訳になるのだろうか?

そう言いながら友達とご飯を食べに言ったり、テレビを見ている彼女に僕は怒っていた。





そんなことを考えてるうちに壁に気だるそうに寄りかかっている彼女を見つけた。

彼女はいかにも急いで家を出てきたような格好で、僕が大好きな長い髪もぼさぼさだ。

お互い一瞬初めてあったような作り笑いを交わして、目が合う。

その目は僕が好きな目だった。

どれだけこのとき彼女を抱きしめたかったと思ったか今はわからない。

しかしそのとき僕の心は明らかに何かに締め付けられていた。

恋の連鎖 

2006年01月14日(土) 10時14分
今日の朝、起きると彼女は僕が昨日買ってきたヨーグルトを食べていた。

スプーンでその新雪のようにやわらかい表面をすくっている。
そしてそれは直接口の中へ。

一口、また一口。

そのヨーグルトを食べるのを眠れないほど楽しみにしていたわけではないし、実を言うとたまたまコンビニで安かったから買ったものに過ぎないのだが、朝は気分が悪い僕は自分の獲物を取られたような気がして妙に腹が立った。

「それ俺が昨日買ってきたんだけど」

と僕。

「また買ってくればいいじゃない」

と彼女。

「そういう問題じゃないだろ、勝手に人のものを食うなって言ってるんだよ」

僕の声は上ずっていて、部屋の中に醜く響いた。

「何よ、そこまで言う事ないでしょ。私がそんなに悪いことした?」

彼女は信じられないといったような表情で僕をにらんでいる。その視線は今まで一人で生きてきたんだと言いたいような強さを含んでいる。

そして沈黙の5分間の後、彼女はいつものように部屋に閉じこもってしまった。

僕は彼女の部屋のドアをただ寂しく見つめて、はぁ、とため息をついた。

またやってしまった。

最近はこんな喧嘩ばかりだ、と反省したのは何回目だろう。

ユキンコA 

2006年01月06日(金) 0時03分
翌朝いつものようにテレビをつけるとアナウンサーが深刻な顔をしながら専門家の意見を求めていた。先週、女の子を殺した犯人は近所に住む無職の男だったとのこと。彼は女の子とは仲が良かったらしい。

「親には子供に他の人には絶対についていかないということを徹底的に教えてほしい。」

専門家が豪語している。母はそんなニュースをお茶をすすりながら眺めていた。

「昔はね、近所の人とも仲良くてさ、いろいろな行事とかをやっていたんだけどね。今じゃそれを信じることができないなんて・・・本当にぶっそうな世の中になったもんだよ」

母は食べ終わった納豆のおわんを洗いながらつぶやいていた。
ああ、と私はつぶやき少し考えてから、さっきの事件のことか、と納得した。テレビはもうスポーツ特集をやっている。

「人を信じられない時代にどうしてなったのかねぇ」

 母の物思いは止まらなかった。それは本気で私に質問しているのではなく、単なる一人ごと。
それに付き合うのが面倒くさくなった私は、ちょっと出かけてくる、と言い昨日と同じように散歩に出かけた。

 昨日まで降っていた雪はもう固まり始め、その白さは土と混ざって汚い茶色になっている。缶コーヒーを買って公園に行くとまた昨日の子供たちが遊んでいた。今日は雪合戦。
 彼らの中の一人が私を見つけ、

「昨日のおじちゃんだ」

と声をあげたので仕方なく私も雪合戦をすることになった。

 私は彼らを思い、本気で投げることはしなかったが彼らはそんなことお構いなしに本気で私めがけて固い雪の塊を投げつけてくる。大人と子供の違いだ。
 
 雪合戦が終わると私はみんなにジュースを買ってあげた。こんなに寒いのに冷たいジュースをぐいぐいと飲み干す少年達。思い切り走って、思い切り楽しんだ証拠だろう。
 
きっと彼らのもとに悲しいニュースは届いていない。
 
「おじちゃん遊んでくれてありがとう、またね」

私はその言葉に隠された少年の無邪気さに嬉しくなってた。

こんな彼らに私は「人を信じるな」と言えるはずもない。

だから私は「人を信じなさい」というメッセージを込めて手を振った。

「また遊ぼうな!」

ユキンコ@ 

2006年01月05日(木) 23時46分
「おじちゃん、手伝ってよ」
 
手袋をして頬を真っ赤にしている子供が寄り添ってきた。
 
 ここは地元ふるさとの公園。おとといからぱらぱらと降り積もった雪は辺り一面を白銀の世界にしてから、子供達のおもちゃになった。
 
 少し「おじちゃん」という言葉にむっとしたが、私は手伝うことにした。彼らの雪だるまの胴体の上に頭をのせるという大事業を。
 
 よいしょ、と声を合わせて大きな雪の塊を並べると、それはどこか懐かしい形になった。そして彼らは枝や葉っぱを使って雪だるまを美しく可愛げに飾りつけ始める。すぐに、昔私が作ったことのある雪だるまが出来上がった。
 
 私はその姿を見てこころがなごやかになるのを感じた。そしてある一つのことに気づいた。懐かしいのは雪だるまだけじゃない、子供達の顔中いっぱいの笑顔やきらきらした目かもしれない。
 
 家に帰ると母はいつものように台所で夕食の準備をしていた。

「久しぶりにここに帰ってきてもやることなかと?」

「そうでもないよ、ここが一番落ち着くから」

私はそう答えてから風呂に入ることにした。

 実家の風呂は昔からのものなので狭くて足もろくに伸ばせないが、なぜか体があったまる気がする。東京にはないもの。それが私は大好きだった。温度のわりに家の中は暖かく感じた。
 

白い部屋 

2006年01月01日(日) 23時58分
ドアを開けるとそこはただ真っ白な部屋だった。
そして中央に一つのイスに座って本を読んでいる男がいる。

「ようこそ、ここは君の中だよ」

まこと、と名乗るその男は僕を和やかな目で見つめた。
どこかで見たような顔をしている。

「何を探してるの?」

そう聞く彼に対して、
僕は、特に何も、とつぶやくと

「それはいけない」

と戒められた。
何か探し物がないといけない、と。

部屋の隅に別のドアがあるのを彼が教えてくれたのは僕が何を探すか決めてからのこと。
僕が夢を探しています、と言ったあとだ。

ドアを開けると「こちらです」と言っているような矢印が僕をいざなう。
道は二手に分かれていた。

しかし少し悩んだあとに僕は矢印とは逆の方向に進むことにした。
矢印どおりに進むのが嫌だったのもあるが、こちらに進んではいけないと感じたから。
しっかりした理由などあるわけがない、ただの直感だ。

そしてその通りに進むと僕は新しいドアを見つけた。
どこかで見たような扉。

開けるとそこには真っ白な部屋。
一人の男が本を読んでいる。男は僕に尋ねる。

「何を探しているの?」

最初に 

2006年01月01日(日) 23時13分
こんにちは!

そして一応初めまして!

まことの世界にようこそ!

このページでは毎日の生活の中で簡単に読めるような話(小説)を掲載していきたいと思います。
僕が以前から書いている「泣いてないで手をつなごうよ」とはちょっと違う世界をお伝えしようと思っています。

ちなみにちょっと違う世界っていうのはダークなところもエロティックなところも見せようかなと。

ですので毎日のデザートのような感覚で読んで頂ければ幸いです。
そして僕が微かに残す暗号のようなものを見つけてそこから何かを感じ取ってくれれば、表現者としてそこまで嬉しいことはありません。

ちなみにタイトルは今のところ「まことの世界」ですが、良いのが思い浮かんだらその都度変えていきたいと思います。

ということで、みなさんよろしくお願いしま~す!
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