第一印象 

April 19 [Fri], 2013, 15:08
初めて彼に逢った日を自分は決して忘れないだろう。若い頃の妻が、青年の姿を借りて、自分を驚かしに来たのかと本気で思った。
 「何を言う!儂は爺さんと呼ばれる程老いぼれておらんゾイ!」
  今思ってみても彼にあれ程強く言うべきでは無かった。あの時はリルムの居る家を魔物に焼かれてしまい気が動転していたとは言え、あんなに強く彼に言うべきでは無かった。何故なのだろう?自分は何時でも「爺さん」と呼ばれる事には慣れていた筈だ。
  サマサの村のリルムと同い年の男の子や女の子からは名前では決して呼ばれず「爺さん」と呼ばれていたし、彼と同じ年齢の人間、カイエンと同じ年齢の人間からも親しみを込められて「爺さん」と呼ばれていた。中には「糞爺」と呼ぶ不逞な輩もいた。
けれども彼に「爺さん」と呼ばれた時、どうしても耐えられなかった。
  名前を呼んで欲しかった。
  彼からしても信用出来るか出来ないかの和平を結ぼうとする帝国側からの慌ただしい命令に心の余裕も持たないままサマサの村迄来たのだから名前を聞く機会の無かったこんな老いぼれに対して、「爺さん」と言うしかなかったのだろう。
  結局、帝国からは裏切られて、数々の愚行を犯したガストラ皇帝と魔導の力を人工的に注入された道化師ケフカにより世界は崩壊してしまったのだが。
  儂は、世界が崩壊し、魔大陸から振り落とされて意識を最初に取り戻した時、リルムに知られたら確実に怒られるが真っ先に彼の事を思った。妻の顔にとても似ていた、トレジャーハンターと言う少し怪しげな稼業を生業としている彼の事を。
  儂は運悪くケフカを崇拝する信者達に助けられた。
  魔大陸の戦いを考えたら生きていたのが奇跡的だった。空から地上へ叩き付けられた死に損ないの爺はケフカを崇拝する人間にとって、これ以上無い程の鴨だった。
自分ですら、生きている事実が信じられない位の奇跡だと思ったのだ。
  「こんな老いぼれが生き残ったのだから、リルムや他の仲間達も生きている」と考えるか、「運悪くこんな老いぼれが死に損なったのだから、もう自分の愛する孫娘と仲間達は…」と考えるか、どちらを選ぶとしたら、儂は希望を持つには年を取り、世の残酷さや理を知り過ぎていた。
  何の躊躇も無く後者を選び、ケフカを崇拝する狂信者と共に狂信者の塔で、毎日絶望の中で、狂った信仰をしていた。
  「くぉらーーーーー!!!!糞爺ィィィーーーーー!!!!!しゃきっとせんかぁーーーーい!!!!!!」
  まさかあの魔大陸から振り落とされて生き残っていた人間などいないと思っていた。
その後、世界が崩壊して世界の人口の半分は亡くなったと世間の噂で流れていたし、狂信者達からも聞かされていた。「私達は、ケフカ様を崇拝したから、ケフカ様の御情を直接受けられる事が出来て、助かる事が出来たのです」と。
だから最初この糞生意気な声を耳にした時、信じられなかった。思わず、目を見張った。
  「おじいちゃん!!!」
  生きていた…。あんな自分ですら生きていたのが信じられなかった状況の中で。
  この我儘で口の悪い、物凄く頭に来る、でも堪らなく愛しい孫娘は、世界の崩壊などものともせず、永く離れていたのにまるで、同じ家で寝て起きて挨拶する様に何も変わらない態度で儂の狂気を解き放ってくれた。
  リルムの他に共に過ごした日は短かったが一緒に魔大陸に突入した仲間である、国王と元帝国軍の女将軍と国王の弟である格闘家がいた。
生きていたんだ…。
  思わず涙ぐんだ儂にリルムは「仕様が無い爺ィねぇ、年取って涙脆くなったんじゃない?」と呆れた顔をした。儂は相変わらず口と態度の悪いこの我儘孫娘に少し頭に来たが、実際、自分でも年を取ったかなと思う。
  この時もそうだったが、これ以降に再会した仲間達の無事な姿を見て涙ぐんだ。
  儂は、年の所為か仲間達の名前を暫く覚える事が出来なかった。否、始めの頃は、逢って間もない内に、帝国の裏切りを知り、そのまますぐに仲間達と一緒に魔大陸に降り立ったのだから、歳を言い訳にしているのは重々承知だが、覚えられる訳がなかった。仲間の内一番最初に逢った、妻に似ていてビックリした印象を持った彼でさえ名前を覚えられなかった。
  エドガーとマッシュ、セリスとリルムと共に狂信者の塔から抜け出し、生きているのかすら分からない他の仲間達を捜す旅をしていく内に、リルムと仲間達に他の仲間達の名前を教えて貰い、彼を除く殆どの仲間達が揃う頃には全員の名前を覚える事が出来た。
  彼は最後に見付かった。
  灼熱の、少しの油断で足を滑らしたら、全てを溶かしてしまう様なマグマだらけの、そんな危険な洞窟の最奥に彼は居た。
  彼が儂等に気付いて振り返った時、儂は又妻を思い出した。
  サリ…。
  その時の彼の顔は完璧に儂のかつて愛した妻、サリだった。下手したら「お前何でこんな処に…?」と言ってしまいそうだった。
  仲間達を捜す旅で知った彼の悲しい過去。
  かつて恋人を帝国によって殺されてしまい、帝国に復讐する為に、彼は単身で帝国にスパイとして潜り込んで動いていた。
  その時に表向きは帝国と同盟を結び、裏では密かに反帝国組織リターナーに加盟していたフィガロ城の国王エドガーにその才能を認められ、リターナーにスカウトされ、リターナーの有能な主力、戦力として暗躍していたらしい。
  この話は仲間達から聞いた訳ではない。この仲間達は本人が居ないのに、その人の過去を本人の承諾も得ず勝手に他人にベラベラ喋る様な無神経で愚かな者達では無かった。
  セッツァーを見付け出し、ファルコン号と言う飛空艇を手に入れた日の夜、年寄りである儂は早々に眠りに就いた。が、初めての空の上の睡眠に緊張した所為かたまたま、その日は寝つく事が出来ずに、仲間達と話そうと思い、飛空艇のサロンの扉の前に足を向けた時に、仲間達の会話が漏れ聞こえた。
  「…ロックは、あいつは一体何処に居るんだろうな?」セッツァーが苛々した様な口調で彼の名前を出した。
  「…本当。これ程捜しているのにいないと言う事は…。…もしかしたら」
  それに応えるセリスの口調には苦痛が感じられた。
  何となく、入ってはいけない様な雰囲気だった。 彼の事を話しているのは分かっていたし、仲間達は儂が入って来ても歓迎してくれるだろうが、どうしてもサロンに入る気がしなかった。だからと言ってその場から立ち去れる程、儂は出来た人間ではなかった。彼の事が知りたかった。
「んもう!年増女!!アンタ傷付いた鳥に巻き付けられた泥棒のバンダナを見てあの絶望だらけの世界から自殺するのを止めたんでしょ?アンタが信じなきゃ、誰がロックが生きてるって信じるのよ!!!」
  叫ぶ様にセリスに強く応えたのはリルムだった。リルムめ、早く寝ろとあれ程キツく言っているのに…。けれどこの我儘孫娘を責める事は出来なかった。
リルムが彼の事を得意の渾名だけでなく名前で呼んでいたから。
リルムは、大抵出逢う人間に悪意すら滲んでいるのかと思われる様な酷い渾名を付ける。それは或る意味、過去の体験に因って人間不審に陥っている彼女の心の防衛手段でもあった。しかし彼女は渾名を付けた人間が心から信用出来る人間だと分かったら、名前で呼ぶ様になる。
  だから儂は、ビックリした。昂奮していたとは言え、否、昂奮していたからこそリルムが彼を名前で呼んだ事に。
  しかし考えてみるとリルムが彼を名前で呼ぶのも当然の事だった。彼は、魔大陸に降り立つ前迄の短い期間、この我儘で傍若無人な孫娘に対してまるで実の兄の様に面倒を見て可愛がってくれたのだから。 幾らリルムが「泥棒」と連呼しても一度も怒る事なく、優しく微笑み、リルムを子供扱いせず、或る意味エドガーよりもリルムを一人前のレディとして一人の人間として向き合っていたのだから。
そんな彼にリルムはわざと怒らせる様に馬鹿にした口調でからかったりもしたが、彼は一度もリルムに怒鳴ったり、怒ったりはしなかった。
この我儘な孫娘が悪い事や度の過ぎた悪戯をした時には、優しく、機嫌を損ねる事の無い様に上手に諭した。
  仲間内で温厚と呼ばれ、リルムの理想のタイプで「大きい人」であるマッシュですら、リルムの度の過ぎた悪戯、悪口や行いに一度、本気で怒り、往復ビンタを食らわした事があった。
  その時はマッシュの余りの剣幕振りに誰もマッシュを止められる者がいなかった。マッシュの双子の兄でありフェミニストと自認するエドガーですらマッシュの剣幕を恐れて止められなかった。
  儂はこう言えば育児を放棄した馬鹿で愚かな糞爺だが、マッシュの逆鱗に触れたリルムが往復ビンタをされていた時、「これも良い経験じゃ、最近図に乗り過ぎていたのじゃから」と思っていた。
しかし彼は怒りで我を忘れてリルムの頬を叩き続けるマッシュの前に出て、勢い付いて止められなくなってしまったマッシュのビンタをリルムの代わりに一度受ける事で、マッシュにリルムの頬を叩くのを止めさせた。
  マッシュは突然出て来てビンタを受けた彼を見て冷静さを取り戻した。
  彼はマッシュに向かって怒った。「幾らリルムが度の過ぎた事を言ったとしてもマッシュ、やり過ぎだ」彼は、怒っていたが、怒鳴る訳でも無く、落ち着いた声で淡々と言った。そして儂の方を向いて「ストラゴス。アンタも幾らリルムが悪い事をしたから自業自得だと思ったとしてもこの態度はないだろう?女の子なんだぞ?マッシュみたいに力の強い人間にこんなに顔を叩かれたら顔に一生消えない傷が付いてしまうかもしれないんだぞ?孫娘なんだから少しは気にしろ」。
  マッシュに加減されないで本気で頬を叩かれている間ですら黙っていたリルムが、その時初めて絶叫し、彼の胸に顔を埋めて号泣した。
  儂を怒った彼がその日の夜に、儂の部屋を訪れて「ストラゴスさん、今日はすみませんでした。言い過ぎました」と謝罪の言葉を述べて去った後、儂は彼の優しい気遣いに逆に激しい自己嫌悪に陥った。
  優しくて誰よりも自分に気に掛けてくれる仲間。そんな彼だからこそリルムは彼を名前で呼んだのだろう。
  「……ロックは多分、生きている」
  今迄、ずっと黙っていてまさかその場に居たとは思えなかった、エドガーが口を出した。「レイチェルを生き返らせると言う野望を捨てない限りアイツは絶対に死なない…」
  レイチェル?生き返らせる…。?何の事だろうか?
  気になってずっと扉の前に立ってエドガーとセッツァー、リルムとセリスの話を聞いた。
  そこで初めて儂は彼の抱えていた心の闇を知った。あれ程明るく自分よりも他人に優しく気を遣う彼がまさかそんな悲しい過去を持っているとは年を取っている儂にも分からなかった。
儂は彼の何を見ていたのだろう。妻に似ている彼に「爺さん」と呼ばれたくないだけで勝手に怒り、我儘で傍若無人な孫娘の面倒を見てくれる気の良い青年としか見ていなかった。
  最低だと思った。つくづく自分は無駄に年を重ねただけの糞爺だと思い知らされた。
「皆!!やっと…見つけたんだ。魂を蘇らせる伝説の秘宝…」そう言う彼は明るく喋る声に反して悲しい顔をしていた。まるであらゆる痛みを受け止めてそれを必死に耐えている様な苦痛な表情。
  彼はもしかしたら、この後にある彼の恋人「レイチェル」の別れを心の何処かで予想していたのかもしれない。そうでなければどうしてあれ程悲しい顔をしていたのだろう。
そして皮肉にもその予感は当たり、悲しみを湛えた彼の表情はサリの生き写しだった。
  儂は正直に語るのならば、彼を抱き締めたかった。抱き締めて「大丈夫だ。もう何も恐れるな。儂が居る」と言いたかった。 自分よりも24cmも身長が高く年齢も45も離れている彼を抱き締めたかった…。
その後初めて彼の恋人「レイチェル」を儂は見た。「レイチェル」は綺麗な娘だった。
もし生きていたならきっと彼とお似合いの素敵な恋人同士になっていただろうと思った。
  彼が傷付いたフェニックスの魔石で一時的とは言え「レイチェル」を蘇らせた時の出来事は今でも目を瞑ってありありと思い出せる。
  「レイチェル」は彼に「私の感謝の気持ちで、貴方の心を縛っている、その鎖を断ち切って下さい…」と伝えたが、儂からすればそれは土台無理な話だと思った。幾ら死者から許しの言葉を得ても生き残ってしまった本人からすれば喩えそれが相手が望まない思いだとしても贖罪の念しか湧かない。
  これは儂の一方的な考えであるし、彼の「レイチェル」に対する気持ちが分かっているなどと不遜な事は言わない。けれど、大切な人が先に亡くなったと言う体験や心情はそれを体験していない人よりは分かっていると思うから…。
  だから、彼が「大丈夫。レイチェルが俺の心に光をくれた。もう…大丈夫だ」と儂等に告げた時、儂は信じてなかった。彼がそんな簡単に「レイチェル」の事を吹っ切れる事が出来る筈が無いと。
  実際、儂から見た「レイチェル」との別れの後の彼はこちらが心配してしまう程の空元気だった。
  「お願いだ。どうか…、どうか傷付かないでおくれ…。お主が心から泣いて笑ってくれるのなら、儂は何でもする…」
  言えない思いだけが心の中でグルグル回っていた。
  けれど彼がそんな事を望んでいないのも分かっていた。
  本当に彼はサリにそっくりだった。
  サリと出逢ったのは、儂が26歳、彼女が16歳の時だった。
その頃の儂は「ヒドゥン」と言う魔物をガンホーと共に倒す事を夢見る世間知らずな青年だった。
  彼女はサマサの村の母子家庭の娘だった。
例に漏れずサリも魔力を持っていた。ただ、村の中で桁外れの魔力を持っていた為、村の人間からは、邪険にされていた。父親が居ないのも、彼女の母親の驚異的な魔力に取り殺された為だろうと噂されていた。
  そんな環境で育って来たのにも関わらずサリは優しくて明るい娘だった。 サリはいつも「ヒドゥン」を捜して戦いに出向く儂等に食糧や水、薬草や薬、テントにコンパスなど、外に出る時に必要な物を用意してくれた。
  儂は気付けばサリに惹かれていた。ガンホーも彼女に惹かれていたのは分かっていたが、儂はその時、初めて本気で親友を出し抜いても「欲しい」と言う感情がある事を知った。
  だから儂は26歳の最後の日、サリに思いを告げた。彼女は承諾してくれた。そして儂等は夫婦となった。同時に儂とガンホーは共に「ヒドゥン」を捜す事を止めた。
その事については後悔していない。していたら逆にガンホーの方が怒るだろうと思う。      
後悔しているとしたら、…これは結果的にリルムを否定する事になってしまうだろうが、事実これが後悔した事だ。
  サリは、子供の出来ない体だった。サマサの村では子供の出来ない女はサリ以外にいなかった。村の人間は彼女を「石女」と罵った。
  しかし儂は構わなかった。子供など好きではなかった。サリを「石女」と罵る輩を儂は片っ端から男女幼子、年寄り問わず老若男女構わずボコボコにした。
サリは本当に子供を欲しがった。欲しくて欲しくてどうしようもなかったのだろう。儂等はとうとう養子を迎え入れる事にした。儂はサリとの二人きりの生活に何の不満がなかったし、子供など大嫌いだったが、サリが望む事なら何でもしてやりたかった。
  迎えた養子は娘でリプナと言う名前を付けた。
  サリは、リプナを、腹を痛めて産んだ子供の様に大切に可愛がって育てた。
リプナを引き取って15年後、リプナは16歳の時、妊娠した。相手は流れ流れ気付いたらサマサの村に辿り着いた得体の知れないクライドと言う名前の男だった。
  サリはリプナを激しく罵った。腹を痛めて自分で産んだ子供でないのに、実子の様に可愛がって大切に育てた娘が得体の知れない男性との間の子供を突然妊娠した事はサリにとってこれ以上ない裏切りだったのだろう。
リプナの妊娠を知った日の夜、嵐が吹き荒れていた。サリはリプナを罵り泣きながら、子供を堕ろせと懇願した。しかしリプナも泣きながら拒絶した。愛しているの、彼を。クライドを。と言って、母さんだけには分かって欲しい。と絶叫した。
  サリはその言葉を聞いた途端、嵐の吹き荒れる外に、飛び出して行った。儂は慌てて追い掛けたが、間に合わなかった。サリは信じられない速さで儂の前から姿を消した。
  数日後、サリの遺体が海岸に打ち上げられた。
  儂は世の父親が思う様に娘が突然妊娠した事を知っても特別に狼狽たりはしなかった。別に産みたければ産めば良いと思っていた。
  事実サリより先にリプナから妊娠を告げられた時、「自分の好きな様にしろ」とだけ伝えた。
  それは多分人が聞いたら実の娘では無かったからだと言うかも知れないが、別に儂はリプナが実の娘であったとしてもリプナが得体の知れない男性との間の子供を産む事を許したと思う。
  ただサリとは何時迄も共にいたかった。病気なら仕方ないと思えるが、サリの死は明らかにリプナと腹の中の子供が原因だった。サリの遺体が打ち上げられた日、儂はリプナに一言だけこう告げた。「そのお腹の子供を産みたいと思うなら、子供の父親と共にこの村から出て行け。二度とこの村に戻って来る事は許さん」。
  リプナは傷付いた表情をしたが、何も言わずに出て行った。
  リプナが出て行ってから後に、風の噂でリプナは儂とサリの義理とは言え孫である女の子を出産後、産後の肥立ちが悪くなり亡くなった事を知った。
リプナが出て行ってから4年後の深夜、来客があった。それは、リプナと共にサマサの村を出て行ったクライドと彼が何時も従えていた黒い犬と幼女だった。幼女は、クライドの腕の中でスヤスヤと眠っていた。
  「…お久し振りです。突然こんな時間にすみません」クライドは余程急いで来たのか、息が上がっていた。
  「今更、こんな事言えませんが、この子を…リルムと言います。リルムをお願いします…」
  こうなる事は何となく分かっていた。クライドは以前サマサの村に流れ着いた時も、何か過去に対して、恐れみたいなものを抱いていて過去から逃げようとしても逃げられない闇を携えている様な男だった。
あの時何故儂は何も言わずに突然現れた娘の夫からの要望を聞いてしまったのか自分でも未だに分からない。
  ひょっとしたら、自分でも気付かない心の奥底に「家族」を求めていたのかも知れない。例えそれが血の繋がったもので無かったとしても。
  儂は何も聞かずにクライドからリルムを預かった。クライドは一度深々と頭を下げて、自分の愛娘と愛犬に振り返る事なく夜の闇の中に消えて行った。
その後が大変だった。「パパは…パパは何処に行ったの?…もう逢えないの…?」
目を覚ましたリルムが自分の父親の不在を悲しんで泣き出した。それはそうだろう。目を覚まして見たら愛しい父親が消えていて、代わりに一度も逢った事のない爺が側にいたのだから。
  儂は何とかリルムを泣き止ませようとした。別に一度も逢った事の無かったこの孫娘に対して不憫に思った訳ではなく、本当にただ困ったからだ。その後リルムも諦めたのか、儂と共に生活をする様になった。
  そして今に至る。
  儂は正直に言うと未だに子供は大嫌いだ。リルムですら最初の頃は何度施設に入れようかと考えた位だった。けれど出来なかった。
  これも血が繋がっていないからと言っても自分の孫だから愛情が湧いて来たとかそんな綺麗な話では無い。
  サマサの村は閉鎖的で、悪い事や隠しておきたい事、知られたくない事があっと言う間に噂として広まってしまう村であった。
  もしリルムを孤児院に入れたとしたらこの閉鎖的で意地の悪い人間共しか居ないこの村の人間は、退屈凌ぎの材料を入れたとばかりに儂の悪口を言い触らす事は火を見るよりも明らかだった。
  実際、リルムが儂の家に住む様になって暫くは、「淫乱娘の子供が爺の家に捨てられた」と言われていた。
  だから儂は未だにリルムを心から愛しているかと問われたら、即答は出来ない。6年間共に暮らしただけあって、愛しいと思うし、ただの知り合いには持てない親愛の情は持っているが、家族として無償の愛を捧げるとか、自分を犠牲にしても、この子を守ってやりたいとは言えない。
  結局、儂にとってリルムは儂とサリが迎えた血の繋がらない娘であるリプナが勝手に流れ者の男性との間に作った子供でしかなかった。
恐らくはリルムも儂のこう言う考えが分かっているのだろう。
  リルムの他人に対する悪意の込めた様な酷い渾名付けは父親に捨てられた事も原因としては勿論あると思うが、実の処は儂のリルムに対する愛情の無さが一番の原因なのかも知れない。
  クライドの犬は気付いたらいなくなっていた。
  何処かで死んでしまったのか?それとも…?
  その後クライドとクライドの 犬とは思いも掛けない形で再会したが、これは儂の心の中にしまって置こうと思う。出来るなら永遠に。リルムの為でなく、クライドとリルム二人の為に。
  サリは彼に本当に良く似ていた。サリの髪は金色だったが、光りの加減に依っては彼の様な星屑を散りばめた銀色に輝いていたし、何よりも顔立ちが瓜二つだった。
紫水晶の大きな瞳に、綺麗な鼻梁、笑うと出来る笑窪など生き写しとしか思えない程だった。
  人に優し過ぎる程優しい処もサリそのものだった。
  「ヒドゥン」を倒す様にリルムに唆された時も彼が「頑張って下さい」と言ってくれなかったら絶対に、一生倒しに行かなかっただろう。
リルムは自分の計画に悦に入ってまんまと儂を騙せたと思い込んでいたが、儂は最初からリルムの思惑など分かっていた。ただそうまでして儂を奮い立たせようとしてくれるのなら、敢えて騙されてやる事にした。でも多分、リルムとガンホーだけでは儂は動かなかったと思う。
  やはり彼が「頑張って下さい」と言ってくれた事と、一緒に「ヒドゥン」倒しに向かってくれたから儂は孫娘と親友の大根芝居に騙されてやろうと思ったのだ。リルムが無自覚だったとしても彼の口から儂に「頑張って下さい」と言わせた事は儂を動かす事を考えたら計画として成功していた。
  伊達に6年間一緒に生活を共にした訳では無いのだなと嬉しく思った。
  「ヒドゥン」は呆気ない程簡単に倒せた。これがかつて親友と共に捜し求めていた魔物かと思う位の呆気なさだった。
  多分、仲間達と世界を巡って行く内に知らず知らず力が付いて来たのだろう。体は老いても力と気持ちは下手したら昔よりも若々しくなった様な気がした。
  しかし、一度隙を突かれて虫の息になって居た「ヒドゥン」に致命傷を負わされそうになった。彼はすぐに「ヒドゥン」の行動に気付き、儂を庇った。
  トレジャーハンターとして世界中旅をして居るにも関わらず白くて細い腕。その腕にざっくりと「ヒドゥン」の爪が食い込んだ。
  儂は怒りで頭が真っ白になって気付いたら、「ヒドゥン」に食らった技を「ヒドゥン」に食らわしていた。
  幻の青魔法「グランドトライン」を。
  戦いが終わって、ガンホーの前で得意になって「ヒドゥン」を倒した事を伝えると、儂は先に疲れた振りをして、サマサの村の自宅に休む振りをして密かに、飛空艇へと向かった。
  多分今頃リルムはガンホーに逢って、儂が巧く騙されたと思い込んで得意になっているだろう。
  儂は彼に逢いたくて堪らなかった。逢って傷の手当てをし、どれだけ彼に感謝しているかを伝えたかった。
  飛空艇に着くと、真っ先に彼の部屋へと向かった。彼の部屋は飛空艇の奥の奥の方に宛てがわれていた。彼の部屋の扉は少し開いていて、光が漏れていた。
  儂は扉の前に立って扉を叩こうとした。その時、 「…、駄目だって…。こんな時間に…。明日、起きられなくなる…」彼の声が聞こえる。
  儂は扉を叩くのを止めて少し考えてから、僅かな扉の隙間を覗いた。
  部屋の中は明かりを真っ暗にして、ベッドサイドにある小さな照明を点けていて、仄暗かった。
  …そして、ベッドの上には、彼と…エドガーが座っていた。否、正しく言うと彼を包み込む様にエドガーが、後ろに座り、自分の胸に彼の背中を寄り掛からせていた。エドガーは彼の背中越しから、白い項に口付けていた。
  「…ストラゴスさん、良かったよな」
  彼は、エドガーの口付けから逃れる様に言葉を紡いだ。
  「ずっと追い求めて居た魔物を捜し当てて、倒す事が出来たんだからさ」
  彼は本当に嬉しそうに、まるで自分の事の様に言ってくれていた。
  相変わらず、サリと瓜二つの表情で。
  「…俺と一緒に居る時と仲間達と共に居る時は、名前に`さん'付けするな」
  エドガーが咎める様に少し強い調子で彼に言った。
  確かに彼は、一対一で仲間と接する時、必ず名前に`さん'付けをした。最初は儂だけに言っているのかと思ったが、彼に恋心を抱いているセリスや、あの口の悪いセッツァーに迄、`さん'付けする事が仲間達の話で後から知った。
  まさかエドガーが、仲間達が揃った時には「名前を呼び捨てにしろ」と彼に伝えていたと思ってもみなかった。勿論、エドガーと彼が二人きりで話す時も呼び捨てにする様に伝えていた事も…。エドガーが彼と居る時は自分の事を「俺」と言うのも驚きだった。何時も仲間達と共に居るエドガーは王族らしく気品の溢れる口調で自分の事を「私」と言っていたから。
  「エドガーは嬉しくないのかよ?」今度は彼が咎める様にエドガーを見詰めた。
  エドガーは少し困った表情をして彼の身体を愛しそうに抱き締めた。
  「嬉しくない訳じゃ無いさ。ただ…少しストラゴスには嫉妬するな…」
  「何だよ、それ…」彼は、不機嫌そうに、エドガーの答えを聞いていた。
  「分からなかったら分からないで良い」エドガーは再び彼の白い項に口付けた。口付けながら器用に彼のジャケットを脱がし、手を彼のタンクトップの中に沈める。彼が微かな喘ぎ声を上げた。サリが他人の男に犯されてる様だった。居た堪れなくなり、儂はその場を後にしようとした。が、儂が余りにも、凝視していたからだろうか、エドガーの視線とかち合ってしまった。
  エドガーは、少し困惑した表情をしたが、儂を見て何も言わないでくれと静かに訴える様に彼の唇に人差し指を添えた。
  快感に流されている彼は、何も気付かず、ただただ、喘ぎ声を大きくしていった。儂はその場から離れて、サマサの村の自宅に戻り、ベッドの上で突っ伏して号泣した。70年の人生の中であそこ迄泣いたのは、もしかしたらあれが最初で最後かも知れない。
  分かっていたつもりだった。彼とエドガーが、普通の友人関係では無いと言う事位。
幾ら、反帝国同盟を結んだ主人とその連絡役と言う関係だったとしても二人の間には何処か、それ以上の雰囲気が漂っていた。
  エドガーがリルムを口説いた時も儂は信じて無かった。目が笑っていたからだ。本気で堕とそうとしていない目だった。しかしエドガーの彼を見る目は何処か、淫靡で熱を湛えていた。笑ってなどいなかった。分かってはいたが、実際に二人の関係を見て儂は動揺した。サリが、他の男に身体をまさぐられ、淫らに喘いでいる様にしか見えなかった。
  信じられない事に儂は彼に欲情していた。エドガーに快楽を与えられて喘ぐ彼は、とんでもなく淫靡で美しかった。本当に自分は最低だと思った。彼に妻の面影を追っているだけでは無く、肉欲の対象として彼を見ていたのだから。
  儂は、ひとしきり泣いた後、何十年か振りに自分を慰めた。
  翌日、飛空艇の食堂に仲間全員が集まって朝食を摂る時に「ヒドゥン」に傷を付けられた彼の腕を盗み見た。傷は完璧に無くなっていた。恐らくエドガーが丹念に治療したのだろう。
  朝食後、エドガーが儂の方に来た。エドガーが言う前に儂は先手を打った。
  「儂は誰にも言わないし言うつもりも無い」
  虚を衝かれたエドガーは、弱々しく微笑み、ただ「有り難う御座います」とだけ言った。
  この日を境に儂は彼に対して、極力関わるのを止めた。今迄もそれ程深く関わって来なかったので、それは簡単な事だった。そうでもしないと自分自身、感情が爆発してしまいそうだった。彼に妻の面影を投影しているだけでも最低なのに、もし彼と深く話す機会が出来たら、彼にこの醜い、無様な思いを打ち明けてしまいそうだった。
  しかしそんな儂を叱咤する様に、神様は、一度だけ彼を儂に引き合わせた。
  あの日は、ケフカ討伐の前夜だった。儂はいよいよ明日の決戦に備えて、年寄りだからと言って、仲間達の足手纏いにならない様、夕食後、部屋に戻り、就寝の準備をしていた。飛空艇に宛てがわれた儂の部屋はかなり良い部屋で、口と態度は悪いセッツァーが実は高齢の自分に対してかなり気を遣ってくれていたのだと分かった。
  その心遣いも含めて明日の戦いは必ず勝たなければならないものだと思った。始めの頃は「儂が世界を救う?何を冗談な事を」と思っていたが、今では儂を含むこの仲間達でなければ出来ない事だと思った。
  幻獣と人間のハーフ、一国の国王、国王の弟である格闘家、魔導の力を人工的に注入された元帝国軍の女将軍、ドマの国の侍、さすらいの賭博師、野性児、得体の知れない物真似師、…暗殺者、モーグリに雪男、魔導の力を注入されなくても魔力が元からあった絵描き娘と老いぼれ爺。…そしてトレジャーハンターである彼…。
これ程、種族、身分、年齢、性格、立場がバラバラな者達が集まって纏まって此処迄来たのだ。大丈夫、きっと巧くいく。否、巧くいかなくてはならないのだが、儂は確信していた。多分大丈夫だろうと。
そんな事を考えている時だった。扉が遠慮深げに叩かれたのは。
「はい」
誰だろうか?他の仲間達は皆、各々、明日の計画を立てるか、儂の様に、自室に戻る者ばかりだったので、怪訝に思った。
「…ロックです。ストラゴスさん…、少し良いですか?」
胸がドクっと揺れた気がした。何故彼が。何の為に儂の処に来たのか。明日、世界を賭けた命懸けの戦いが待ち受けていると言うのに。何故エドガーの許に行かないのだろう。
こんな老いぼれの処に来て何をしようと言うのだろう。
「少し待っててくれぬか?」そう言って心を落ち着かせなければ儂は、激情のまま行動してしまいそうだった。妻にとても似たトレジャーハンターを傷つけてしまうかも知れなかった。「…どうぞ」儂の声は、彼に不快に聞こえて居ないだろうか?緊張の所為か声が強張っている気がした。
扉は先程のノックと同じ様に遠慮深げに控え目に開けられた。
「…すみません、もう寝る処でしたか?」開口一番、彼は言った。
「否、まだ寝るつもりではなかったし、明日の事を思うと、とても眠れないから誰かと話したいなと思っていた処じゃ。来てくれて嬉しいよ」儂は彼に気を遣わせ無い様に笑いながらそう告げた。
儂は緊張していた。彼はどうなのだろうか?相変わらずサリと瓜二つの瞳、鼻梁、形の良い唇、笑うと出来る笑窪。星を散りばめた様なサラサラの銀髪。…そして、愛されている者特有の光輝く美しさと雰囲気。淫靡なのと同時に、何にも犯されて無い純潔と無垢を携えている。
そんな彼を飽きもせずに眺め続けていたいと思った時、彼は口を開いた。「俺は…怖いです…もし明日の戦いで、皆…」
最後迄言わなかったが彼が何を言いたいのか、聞かなくても分かった。それが、彼が儂の部屋に訪れた、最大の理由だったのだろう。彼はまるで、幼子の様に、不安に満ちた表情を浮かべた。ただでさえ年齢の割に若く見える童顔なのに、その表情は彼を余計に若く幼く見せた。
「…儂もそうじゃよ。怖いのはお主だけでは無い」
 彼は驚いた様に儂を見詰めた。
「信じられないじゃろうが、もう70を超えた、こんな老いぼれでも怖い。否、死ぬのが怖いのでは無い。明日の戦いで、何も残せず、無駄な戦いになるのが怖い。犬死にだけはしたくないんじゃ」
彼は、じっと儂を見詰め続けていた。…嗚呼本当に、サリと瓜二つだな。今までは、こんな間近で彼の顔を見た事がなかったので分からなかったが、彼の顔は本当にサリそのものだった。体付きは男なのに、それ以外はサリと生き写しだった。儂は、ベッドに腰掛け、彼に隣に座る様、促した。
「思えばこうして話すのは初めてじゃな」隣に座った彼は、儂の顔を見ながら、話を聞いてくれた。「最初はビックリしたよ。まさか『爺さん』と言われると思わなかったからの」何の気なしに、そう、ただ話の流れを円滑にするだけの為に出した話題だった。本当に、彼に厭味のつもりで言った訳では無かった。
「あの時は、本当にすみませんでした。『爺さん』なんて言ってしまって…」彼が本当に済まなさそうに言った。
儂は慌てて、弁解した。「良いんじゃよ、儂も普段なら聞き慣れている言葉じゃったんだが…、ただ何故か、お主にだけは、『爺さん』と呼ばれたくなかったんじゃ…」彼が今度は悲痛な顔をする。まるで、あの時の言葉で儂を傷つけてしまったのではないかと、そして儂を傷つけてしまった事に対して自責の念を感じている顔をする。そしてそのまま顔を俯けてしまった。
儂は、彼に対して申し訳無く思った。同時に、かつて、共に暮らした自分の妻の面影を、目の前の美しい青年に勝手に投影しておきながら彼に気を遣わせてしまった自分に怒りを覚えた。
気付いたら、儂は口走っていた。「違うんじゃ、お主を馬鹿にしていて、嫌いだから、お主に『爺さん』と呼ばれたくなかった訳では無い。お主が儂の大切だった人と生き写しだったから…、だからお主にだけは『爺さん』と呼ばれたくなかったんじゃ…」
彼は驚いた表情をして顔を上げた。
  もう止められなかった。儂は、彼の身体を抱き締めて、共にベッドに横たわった。彼は一瞬何が起こったのか理解出来ない様子だったが、徐々に状況を理解して来たらしく、躊躇いがちに、腰に回された儂の腕を解こうとした。
  「…お願いじゃ。勝手なのは百も承知じゃ、今夜…今夜だけは、何もせんから、こうさせてくれんか?」
  「ストラゴスさん…」
  「『ストラゴス』と呼んでおくれ…。お願いじゃ…。絶対何もせんから…。今夜だけは…このどうしようも無い老いぼれの願いを聞いておくれ…」
  こんなに無様でどうしようも無い姿を彼に晒してしまうとは思ってもみなかった。
  ただ今夜だけはどうしても彼をエドガーの許へ行かせたく無かった。
  彼は、優しく儂の手を解き、儂の方に顔を向けて又、儂の手を自分の腰に回した。      
  儂と彼は向き合って、横になっていた。彼は、何もかも分かっている様な表情をしていた。
  儂のこの歪んだ感情を総て理解していながら、まるで聖母の様に慈しみの表情を儂に向けてくれた。星を散りばめた様な銀色の髪に青いバンダナが薄暗い部屋でも映えていた。「サリ…」思わず声に出してしまっていた。彼は、少し驚いた表情をしたが、すぐに微笑み、儂の望んだ、儂の欲する言葉を掛けてくれた。「なぁに、ストラゴス?」もう止まらなかった。儂はまるで幼子に戻ったかの様に彼の胸に顔を埋め、何時かのリルムの様に泣き出した。「サリ…!サリ、サリ、サリ…!ゴメンな、助けてあげられなくてゴメンな。今更遅過ぎるけどゴメン…、ゴメン…!サリ、愛していたんじゃよ…、死んでからもずっと…!!」儂は自分でも何を口走っているのか訳が分からなかった。彼はサリではないのに、彼の方がずっと辛い恋人との別離を経験して居るのに…。なのに彼は儂の狂った様な、懺悔の言葉を聞いてくれていた。儂の背中を優しく撫でながら。
 彼はずっと儂の側に居てくれた。儂が泣きながら寝入った後も、ずっと背中を優しく撫でてくれた。本当なら儂が彼を優しく抱き締めて安心させたかったのに。彼には最後迄、迷惑を掛けっ放しだった。彼のサリに似た姿形、優しさ、総てが儂を絶望や失意の底から引き揚げてくれた。
  …ロック。儂は幾ら感謝してもし足りないんじゃよ。お主のおかげで儂はどんな
事でも頑張って来れた。あの閉鎖的なサマサの村で詰まらない生涯を閉じずに済
んだんじゃ。お主はきっと、そんな事夢にも思わないじゃろうが。
 儂はお主のおかげで、又夢を見れたんじゃ。一生無理だと思っていた「ヒドゥン」を倒す事も出来た。本当に有り難う。
 ロックはもう儂の許に訪れる事はないだろう。彼は、ずっとエドガーの側で、愛を受けるのだろう。ロックに愛を与えられるのは、悲しいが儂ではないのだ。
 姿形だけでなく優しさ迄サリにそっくりな彼は、一度だけとはいえ、世界の平和を賭けた闘いの前夜に儂の許を訪れて儂の心の声を聞いてくれた。それだけで十分だ。
  嗚呼、儂は、決して忘れないだろう。彼に初めて逢った日を。若い頃の妻が、青年の姿を借りて、自分を驚かしに来たのかと本気で思った。
                   (完)
P R
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