まよっちゃう

September 17 [Sat], 2016, 17:23
(イヤ、絶対にイヤよ)
 背筋に寒気が走った。そうでなくても、不気味な触手が、ねっとりと巻きついていて気持ち悪いことこの上ない状態なのだ。
(せのびーる、せのびーるったら……ああ……このまま食われたら、末代まで祟ってやるからね)
 テレパスで呪いの言葉を吐きまくる。
「……ちょ、ちょっとタンマ。ほら、どうせ食べられるなら、身体を洗って身を清めてからのほうがいいじゃない。アタシさ、三日もお風呂入ってないし、アハハ」
 愛想笑いを浮かべつつ、呪縛からの脱出を試みる。触手を引きよせるようにして、藤沢の身体が、徐々に近づいてくる。
「フッ、嘘を言え。お前の身体からは、ちゃんとシャンプーの匂いが漂ってくるぞ。この香りの強さからすると、出かける前にシャワーを浴びてきたな」
「げっ……」
 図星だった。
「変態っ! こっちこないでよ」
「くっ、私を変態呼ばわりするとは、赦さんぞ、小娘!」
 人間でも、ラルヴァでも痛いとこを突かれると、反対に怒りだすのは変わらないようだ。
「助けてっ、法城!!」
 ジャッ──
 一陣の疾風が二人の間を駆け抜けた。
 ばさっ、と触手が大地に落ちる。
 藤沢は一瞬何が起こったのか、わからない。自分の身体の一部が切断されたことにすら気付いていなかった。それほど、鮮やかな切り口だった。
 咲耶を呪縛していた力が消失する。それを見た藤沢がやっと事態を飲み込んだ。
「そのへんにしておくのですね」
 鈴を転がしたような涼しい声が、澄み渡った空の下に響いた。

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