ぼくの愛した渡利(8)

January 17 [Tue], 2012, 7:30
昨年9月に出版された一冊の本。

福島県九条の会『福島は訴える』(かもがわ出版・2011/11)

帯封には、「いま、福島の人びとが、原発を、放射能を、
自分の声で語りはじめた。」
とある。

教育、医療、農業、漁業に携わる計27人の「訴え」のうち、
3人が渡利の当事者によるもの。

まずはその中から、3児(15歳、11歳、3歳)の母である
佐藤晃子さんの訴えを一部紹介したい。

「疎開したら」と言われるけど
 このような状況下で生活し続けることについて、「子育てをする大人としての責任放棄じゃないか」「子どもを疎開させたら」と、複数の友人からメールやら電話やらが来た。マスコミやインターネットの情報も、福島市で子育てする親を追い詰める内容が多かったように思う。転校していく子どもたちが増え、夏休み中に子どもたちを線量の低いところで生活させるための企画の情報も学校などを通じてどんどん知らされた。そのような中で、私の職場である県労連(福島県労働組合総連合)には、「子どもと県外に行くために、少し長めの休暇を願い出たら『辞めろ』とわれた」という相談が寄せられた。また、ある小学校では、「ほかの子どもたちが動揺するので、転校する場合には『あいさつなし』で転校してください」という話をされたという。福島市で子育てすることは「児童虐待」だという者までいた。

 ……原発事故は大小さまざまな「分断」を引き起こした。有無を言わせず避難を余儀なくされた原発周辺の人々はもちろん、それ以外の地域では避難に対する考え方やどの情報を基本に考えるかで地域や学校PTAの中での分断が起きた。家庭菜園の野菜を子どもに食べさせるかどうかで母親と祖母の関係が悪くなったり、夫婦間でも意見が分かれケンカが増えたという人もいる。仕事がある父親だけを福島に残し、母子だけが避難している家庭も相当な数にのぼる。大切な友達とサヨナラも言えずに別れた子どもたちもたくさんいる。あらためて思う。この福島に、日本に、原発はいらない。

「究極の選択」ではない選択をしたい
 今、福島市で子育てする人々には「究極の選択」が突きつけられている。「将来の健康不安を抱えながら福島市で暮らす」のか、「生活の見通しはつかないけど、福島市を出る」のか。でも、私たちは、それ以外の選択をしたい。「避難生活」も「福島市に住み続けること」も、どちらも安心・安全の中で自由に選択できる世の中にしたい。


内部被爆の不安と日々向き合いながら生活するストレス
それに追い打ちをかけるように、マスコミを含む当事者から
「避難」を迫られるプレッシャー。 
同じ子をもつ親として、同じ渡利に実家をもつ者として、
「避難」させたくても様々な事情で「避難」させられない親たちの
苦悩の深さは察するに余りある。

(3)で紹介した「きりん教室」で指導員をする佐藤秀樹さんは、
渡利の現状が「子育てには相応しくない」と認めた上でこう指摘する。

 しかし、子どもの健全な成長を願うのであれば、放射能への対応だけでなく、はっきり言えば、避難した先に、子育てをし、生活できる給料のもらえる仕事があるのかということ、渡利に住み続けている場合でも、子どもたちがその年代で味わうはずの経験をどう積んであげられるかということや、知識、体力などの点からも屋外での経験と遊びを放射能の問題とどうバランスをとっていくのかということを考えなければいけないと思っています。子どもたちが独自に持つ社会(友人関係など)も壊し、新たに作ることのストレスをどう考えるのかということも(一定の年齢に達している場合)、子どもが判断する必要があるのではないかとも考えます。仕事柄いえることは、家族は出来るだけ一緒に生活するようにした方がよいということです。

 少なくとも、渡利で生活していこうと考えるならば、どうやって子どもたちを放射線から守り、安心した生活を送れるかと努力をすることが必要です。同時に放射線と子どもの健やかな成長を育むことを日々、天秤にかけながら生活することが大事だと思っています。

*太字は引用者


渡利には今も、人々の生活がある。

同じ本の中で、「県民全員避難」の主張には
「生活者の視点が欠けている」と批判した
医療従事者の「訴え」にも耳を傾けたい。

 私たちはこれまでどおりこの地で生活し、この地で生産し、この地で消費していかなければならないのです。何の生産もしない200万の県民を30年間養い続けるだけの覚悟がなければ、全員避難などと言わないことです。

(9)へ続く
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福島県出身。TV局勤務の後、5年間の小学校教員生活を経て、長男の出産を機に転職。現在、季刊「Ministry」(キリスト新聞社)編集長。被爆体験を語り継ぎ、核兵器の使用を許さない北区青年の会「VOICE」事務局。2児の父として育児ブログを執筆しながらイクメン修行中。「松ちゃんの教室」本サイトはこちらから。
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