大河ドラマの脚本家の問題 4 

January 22 [Sun], 2006, 12:25
トレンディドラマの人気脚本家の起用の別の問題は、既に述べたことだが「歴史的構想力」が欠けているように思えることである。「武蔵」のような浪人は別として、大河では、歴史の流れの中にある、組織の中の人間が描かれる。歴史の潮流の中で、どう抗い、従い生きていくのかということが物語の展開の重要な要素であるが、単に、歴史の流れを抑えているということだけで十分ではない。それを抑えた上で、現代の視聴者のセンスにあった、物語の再解釈がさらに必要なのである。つまり、今の人が見て面白い、というふうにしなければならない。(三谷幸喜はもちろんこういった点を十分意識して、彼なりの再解釈で『新撰組!』を描いたが、そのユニークさがかえって視聴者に受けなかったと思う。)

例えば、週刊モーニングのマンガ『バガボンド』は、吉川英治の『宮本武蔵』を原作に置いてはいるものの、完全に新しい解釈のストーリーである。しかし、鎌田敏夫氏の『武蔵』にはそうした脚本家自らの解釈というものが感じられない。その点で、ジェームス三木、竹山洋、中島丈博らベテランは、歴史をきちんと押さえながら、それを現代風に再解釈し自らの新しいストーリーをつくることができる脚本家である。

特に竹山洋の「利家とまつ」は、利家とその友人らの信長の若手近臣に焦点を絞り、全く新しい織田家臣団の描き方をしている。若手家臣団に焦点の出世をめぐる競争や葛藤を面白くストーリー化し、さらにそうした競争の裏方にいて、互いに嫉妬したり、励ましあったりする妻ら(松島奈々子、酒井法子、天美祐城)の関係も描いている。

要するに、歴史の大きい流れという制約の中で、独自のストーリーをつくっていく能力が脚本家に問われるのであり、そういった構想力はトレンディドラマをつくるものとは大きく異なっている。

大河ドラマの脚本家の問題 3 

January 22 [Sun], 2006, 11:50
大河ドラマと民放のトレンディドラマはストーリー構成に求められるものがかなり違っている。

一つは、登場人物の多さである。オープニング曲に合わせて、キャストの紹介をするだけで二分ぐらいかかってしまうほど、登場人部の数は多く、さらに役者の格も超ハイレベルである(『徳川葵三代』の初回のキャスティングの豪華さには正直圧倒された。)

豪華さはともかく、トレンディドラマでは、主要登場人物7〜8人に焦点をしぼって、キャラクター設定を行い、ストーリーを展開させていけばいいが、大河ではそれが数倍になる。それが四十数回のストーリーの中で出たり入ったりを繰り返し、無数の登場場面の中で、実に多様な人物どうしの組み合わせでしゃべりあうのである。そうした多様な登場人物どうしの会話自体がいきいきとして面白くなくてはならないし、そうするためには、よほど入念に長い時間をかけて人物設定をしなければならない。

このように何十人もいる登場人物にしっかりと人物設定をして、かれらの対話が歴史の流れにそってストーリーを盛り上げていくようにするのは並大抵のことではない。一人ひとりの人物が魅力的に、個性豊かにつくられていなければ、ドラマ自体も魅力に欠けてしまう。このキャラクター作りにおいて、2003年度の「武蔵」ははっきり言って完全に失敗。魅力的な人物が一人として見当たらなかった。同様に、2005年の「義経」も失敗である。キャスティングは豪華であり(滝沢君が義経、松平健が弁慶。南原清隆など個性的な役者も起用)キャスティングを見る限り「まじで面白そう」、「これはイイ線いくやろう」と思ったが、実際のドラマを見てがっかりである。松平健も、南原清隆も、うじきつよしも、よくもこんなに役者の個性を抑えることが出来るものだ、という感じに、魅力的ではなかった。脚本家の力量不足をまざまざと感じさせられ、正直もっと勉強してほしいと思った。

大河ドラマ脚本家の問題 2 

January 22 [Sun], 2006, 11:11
@であげた近年の脚本家は、その全員が向田邦子賞を受賞しているか、その候補者にノミネートされており、全て業界で評価の高い脚本家であることに違いはない。

ただ、近年の(竹山洋やジェームス三木らを除く)トレンディ系の脚本家は、現代を舞台にした民放のサスペンス、恋愛、コメディのドラマを書くことに関しては一流であるが、歴史モノ、時代物を扱った経験はないようである。トレンディドラマを書く上では、社会や時代のうねりが長い時間にわたって、登場人物に与える影響などはほとんど考える必要がないし、かれらは基本的に歴史モノを書く上で必要とされる歴史的構想力を持っていないのではないかと思う。

確かに、金子成人は「残九郎」のような時代劇を書いたことがあるし、三谷幸喜も坂本竜馬を主人公にしたドラマ、映画を書いている。しかし、時代モノのドラマと大河ドラマは違う。「残九郎」は、「仕事人」のように、あらかじめ設定された登場人物が毎回登場する、一回読み切りのフィクションで、歴史的な動きは関係ない。一方で、三谷幸喜は、基本的に「古畑任三郎」のような一回読み切りフィクション、もしくは映画や演劇など比較的短くまとまった喜劇を書くのを最も得意としているが、一年も長々と人間関係をゆっくり描く作品はあまり書いたことがない。本人も、「橋田壽賀子の『渡る世間は・・・』みたいな話は書けない」と言っている。

三谷幸喜はさらに、歴史ドラマの脚本に関しては、「竜馬におまかせ」というどうしようもない汚点的な作品を残している。企画の段階からミスっていたのかもしれないが、ダウンタウン浜田が竜馬をつとめたこの作品は、記録的な視聴率の低迷により、ドラマは途中で中断された。

何が言いたいかというと、NHKは単にトレンディドラマで売れているから、大河ドラマの歴史物語も現代風にアレンジして面白くしてくれるだろうと安易に期待して、そうした人気脚本家を起用しているふしがある。しかし、大河ドラマとトレンディドラマでは求められる要素やストーリー構成の条件などが異なっており、そのため、出来た作品の多くが空振りに終わっている。(Bに続く)

大河ドラマ脚本家の問題 1 

January 22 [Sun], 2006, 9:47
ここ数年の大河ドラマの脚本家の起用の面で特徴的なことがいくつかある。
下は、過去十年の作品の脚本家と彼らが担当した他の代表的な作品を示している。

97年 「毛利元就」   内館牧子 (ドラマ『私の青空』、『ひらり』、『週末婚』)
98年 「徳川慶喜」   田向正健 (大河 『信長』、『武田信玄』他)
99年 「元禄繚乱」   中島丈博 (大河『炎立つ』、映画『壬生義士伝』)
00年 「徳川葵三代」 ジェームス三木 (大河『独眼流政宗』、ドラマ『西遊記』)
01年 「北条時宗」   井上由美子 (『Good Luck!』、『白い巨塔』、『天の瞳』)
02年 「利家とまつ」  竹山洋  (大河『秀吉』、映画『四十七人の刺客』)
03年 「武蔵」      鎌田敏夫 (ドラマ『男女七人夏物語』、『29歳のクリスマス』)
04年 「新撰組!」   三谷幸喜 (ドラマ『古畑任三郎』、『王様のレストラン』)
05年 「義経」      金子成人 (ドラマ『御家人残九郎』、『終わりのない童話』)
06年 「功名が辻」   大石静  (ドラマ『ふたりっ子』、『新・ニューヨーク恋物語』)

特に増えてきている(?)と思われるのは、内館牧子、井上由美子、大石静のような女性脚本家の起用である。また05年は金子氏が脚本をしているが、原作は女性(宮尾登美子)。時代物、歴史モノといえば、男性脚本家が主流を占める世界であるが、特に近年では、より積極的に女性の視点を物語の中に取り入れることを重視し、それが脚本家起用にも反映されていると思われる。

もう一点は、歴史モノのベテラン脚本家ではなく、トレンディドラマの人気脚本家を起用する傾向である。特に01年以降は、竹山洋氏を除けば、全員が民放のトレンディドラマで売れっ子の脚本家が大河をつとめている。特に、三谷幸喜や井上由美子は視聴率30%をとるようなトレンディドラマ界の旗手のような存在である。金子氏と鎌田氏も過去に民放のドラマでヒット作をいくつか出している。大石静は、「オードーリー」、「ふたりっこ」と過去に人気の高かった連続テレビ小説を担当し、それ以外に民放でもヒット作を多く出している。 (Aに続く)

桑田(う〜ん。よく出来た記事だなあ) 

January 20 [Fri], 2006, 13:18
このニュース記事がけっこう気に入りました。(桑田のセリフと顔が異様にマッチしている)
 桑田スリスリお上手、変心?改心?現役続行点数稼ぎ

桑田の性格が、ちょっと変わっちゃったようだ。協調性が出てきたみたいである。
なんでもいいです。球威はともかく、なんとか制球力を磨いて、200勝に意地でも近づいてほしい。

今年のプロ野球の目玉はやはり、桑田、清原、中村ノリ、そしてもちろん阪神の濱中です。

質的調査法について A 

January 19 [Thu], 2006, 11:09
近年の質的調査法の伝統として、Creswell(1998)は、生活史(バイオグラフィー)、エスノグラフィー、ケーススタディ、グランディッドセオリー、現象学の五つを大別しています。この分類では、グランディッドセオリーは独立した方法論上の伝統としてとりあげられているのですが、現実には、グランディッドセオリーに特徴的な質的データの分析方法は、他の伝統、とりわけケーススタディや現象学にも用いられています。こうした方法論は社会科学だけでなく、医学や看護学の領域にも浸透しています。

このように、日本で質的調査の方法論がほとんど知られていない間に、アメリカではその方法論の開発が進み、かつ様々な分野に波及し、研究者コミュニティの中でのパラダイム化が進みました。こういった波及とパラダイム化は、(日本人の自分の目から見ると)実証主義の基本路線にのっとったものであり、それゆえに、量的調査法が支配的であった研究領域にも、量的調査法と仲良くしながら浸透していくことができたのだと思います。実際、社会学、心理学、教育研究、看護学等の領域では、同トピックでの質的調査、量的調査の協働が当たり前のように見受けられます。

もちろん、実証主義といっても、質的調査法においては、インタビューにしても、参与観察にしても、データの収集、整理、分析、解釈、まとめ、の全段階において、調査者の主観が入ってくるのは避けられないのですが、『グランディッドセオリーの発見』において、できるだけそうした調査の諸作業を(とりわけ分析・解釈部分)システマティックかつ帰納的に行うことを明記し、実証主義の方向性を打ち出したことが、後々の質的調査法の拡大の大きな促進要因になったと考えられます。

このように質的調査法は米国では実証主義として拡大してきたため、現在ほどシステマティックな方法をとっていなかったかつての人類学者とか、実証主義とは異なるパラダイムをとる社会的構築主義は、現在の方法論の主流からは、あまり思い返されることがなくなっているように思います(もちろん、会話分析やエスノメソドロジーのような構築主義をベースにした方法論はちゃんと残っているが)。

質的調査法について @ 

January 19 [Thu], 2006, 10:28
質的調査法Uの授業の教科書を買いに駅前の大学の書店に行きましたが、三冊中あったのは副読本の一冊だけでした。他は先に代金を払っといて、後で本屋に届きしだいピックアップします。全部で130ドルもしてしまいました。
 その三冊は紹介しますと以下の通りで、いずれも質的データの分析と研究知見のまとめ方に関して定評のあるものだと思います。

*Coffey, A., & Atkinson, P. (1996). Making sense of qualitative data: Complementary research strategies. Thousand Oaks, CA: Sage.
*Wolcott, H.F. (2001) Writing up qualitative research (2nd ed.) Thousand Oaks, CA: Sage.
*Strauss, A., & Corbin, J. (1998). Basics of qualitative research: techniques and procedures for developing grounded theory. Thousand Oaks, CA: Sage.

 三番目のグランディッドセオリーについての解説書で、確か自分はその翻訳書を日本にいるとき買った覚えがあります。(でも英語版も買っちゃった。)
 日本でも、質的調査者を自認している方ならばご存知でしょうが、この三番目の本の著者のひとりであるA・ストラウスがグランディッドセオリーの提唱者の一人です(もう一人はグレイザー)。1967年に彼らは、「グランディッドセオリーの発見」という質的調査方法論の代表的な著作を発表しますが、日本語で翻訳書が出されたのは30年後の1996年でした。

実際には、この本の出版後も、「グランディッドセオリー」は日本の社会科学の中ではそんなに活用されていないのが現状だと思います。一方でアメリカの場合、先に述べた30年の間に、質的調査法は様々なジャンルに分かれ、社会科学のほぼ全領域に広がっていきますが、その方法論は実証主義という基本線にのったまま、より厳密に議論されてきました。そして、主に社会学、心理学(そして教育学)の分野で質的調査法に関する方法論の巨匠みたいな人が(自分の印象では)両手の指ほどの数存在して、彼らの分析方法の細部や使っている用語は少しずつ異なります。ですが、彼らがインタビューデータやフィールドノーツの部分々々をコーディングして、解釈する方法のルーツを探っていくと、結局、67年にストラウスらが書いた『グランディッドセオリーの発見』に行き着くと思います。

やっぱはずかしかった。。。 

January 19 [Thu], 2006, 1:53
朝六時におきて、大学に行き、みっちり準備して授業にのぞんだつもりが...しかし、初めて見る学生が三十人も目の前にいてむっつりしていると、緊張してひたいに汗でまくりでした!(しばらくして、おさまったが)。ぜんぜん成長していない自分にショック。。 だって、やっぱはずかしいんだも〜ん。やだよーん。というわけで、いつもどおりしょっぱなは醜態をさらしてしまったが(まあ、想定内やけどね)、二回目から挽回しようっと。。。で、その二回目はいきなり明日たです(水・木と連続している)。とりあえず明日またがんばるでー。

新学期始まりました。 

January 18 [Wed], 2006, 20:38
今日から新しい学期です。自分の三年目のシーズンということになります。

新しい授業が始まりました。ひとつは、教授と一対一で指導してもらうインディペンデント・スタディで、主にパイロットスタディの理論的ベースとなるような文献のレビューを行っていきます。自分のこの授業におけるトピックは、日本の教師の指導・学習観(beliefs)と教育システム、文化との関係です。この先生はとてもやさしくて、将来的なPublicationや学会発表も念頭において、いろいろ指導してくれます。

この教授が、質的調査法Uの先生でもあり、今日の夕方にその授業が始まりました。かなりたくさんの数の生徒(23人くらい)が受講しており、一人ひとりが前の授業で組み立てたプロポーザルに基づいて、それぞれのパイロットスタディを行っていきます。半数ぐらいが教育関係者で博士号をめざす人であり、年齢も様々です。平均年齢32か3くらいじゃないでしょうか。一人ひとりにとって、けっこうどきどきな授業です。

明日から自分の日本語の授業も始まります。夜の質的調査法の授業のあと、空き教室を使って、いつものように授業の練習をしました。3週間くらい、あまり英語をしゃべってなかったせいか(いかんなあ)、一時間半くらい練習しても、なかなかレクチャーのカンが戻ってきませんでした。いかんなあと思いつつ、でもあんまり緊張はしてないです。授業は朝の9:50〜11:10の時間帯で月水木の三回あります。

新しい生徒ばっかり32人もいるので、緊張するけど、とにかくがんばりますわ。。
どきどきするなあー。。

キング牧師の誕生日・続き 

January 17 [Tue], 2006, 13:01
ぼくは、アメリカの9・11以降の安全保障政策、戦争に対する個人的な失望の反動で、せめて、自分の生まれた国である日本と、日本人は、まともであってほしいと思うようになった。

一方で、悲観的なことを言えば、日本もまたこれから、若い世代ほど保守的に、ナショナリスティックになっていく可能性が高い。過去の戦争について親類から直接聞く機会もなく、戦争の悲惨さ、非人道的な面を反省し、学んでいくこともますます少なくなっていく。憲法を改正する、正当な国の軍隊をもつ、ということも、より容易に認められるようになっていくだろう。

大阪の修士課程にいた頃、大阪での調査の過程で出会った人がいて、その人は昔で言う被差別部落の地域の全体的な環境改善にあたっている人だった。その人は、かつて公害病で多大な損害をこうむった水俣市が、今は過去の反省を生かし、環境面での先進地域をめざして動いていると言い、そうした運動の中心にいる人から、次のような話を聞いて、心を動かされたという。「かつて、その地域が差別を受けたり、大きな損害をこうむったという事実が振り返られ、その地域の改善のためにプラスに生かされないとするならば、その過去の歴史を空費したことになる」。

この考え方を、戦後の反省という点におきかえれば、日本が関わった戦争の歴史は、我々が今後平和を批判的に考えていくために必要な大きな遺産なのであって、忘れることは歴史の浪費である(これは自虐史観というのとは違うと思っている。)過去に日本が侵した戦争の、アジアにおける積極的な意味を評価し、戦争は日本にとっていたし方がない選択だったという見方を立てようとする動きが日本の中でもある。そういう見方は、反省の苦しみにカタルシスを与えてくれるかもしれないが、過去に日本がアジアで行った非人道的な出来事や、結局、日本人自身を敗戦に追い込んで苦しめたことなどを、十分に振り返る人々の動機を失わせてしまう。既に事実として、敗戦を経験したことが、「戦争は平和な明日を彫るための貧弱な彫刻刀だ」という批判的認識をもつための基礎として生かされないならば、我々は辛く情けなかった敗戦を、何十年もかけて空費しただけに終わるだろう。
P R
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