四角都留造の場合  シーン10

2007年05月24日(木) 0時56分
徳井がゆっくりと話し始める。

「自分ひとりで決めるのが怖くて仕方がない。だから、誰かに同意してもらいたい。それはいい考えだ、と賛成してもらいたい。明るい声でGOサインを出してもらいたい。そういうことだ。人間なんて、そんなものだよ。これが、営業で修羅場を潜り抜けてきた俺が悟った悲しき結論だ。悪いが四角。お前さんもそうだ」

「……と、と、徳井……あんたって……」

「勘違いするなよ。別にそれが悪いってわけじゃないんだ。さあ、四角。お前さんの決心を聞かせてもらおうじゃないか。俺の意見はそれからだ」

「……ああ、わかった」
都留造は目を閉じ、大きく息を吸った。アゴの先端から、汗が滴り落ちた。
「わかった。徳井、聞いてくれ。実は俺」

 都留造が手の甲で額の汗を拭った。

「実は俺、なぁ〜んにも考えてないんだ。悪いけど。たぶん、お前の言うところの『天然記念物的少数派』ってやつかも。そうかも。あはははは」

「……なんだ、そうだったのね。都留造ちゃんてば、『天然記念物的少数派』だったのね。あっははははは」

 誰もいない営業部の部屋に、しばらく和やかな二人の笑いが響いた。

 しかし、徳井の目に、なぜかうっすらと光るものが浮かんでいることに、都留造は気づいていないようだった。


     (第1部 了)


本日のポイント:人の心ほど不可解なものはないかも……。
          走りすぎには、くれぐれもご用心を。


☆★☆今回のシーン10にて、『基本問題1:四角都留造の場合』の第1部を
     終了します。

     なお、第2部の開始時期は未定です。今まで読んでいただけた方々、
     どうもありがとうございました。

     では、またお会いしましょう!(Thanks So!)
  • URL:http://yaplog.jp/shikaku_novels/archive/12