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2009年12月10日(木) 20時49分
完璧であることは、こうも自己満足の極みと見られるものなのか。


人に見られることの、いわゆる外見の重要な要因であるファッションに関して、その男は明らかに意識していた。
部分部分を見れば、どの点に対しても文句のつけようがなかった。


これから流行るのであるかはいささか疑問であるが、キーボードのごとくキーの並んだ携帯を持ち、両の手の親指を忙しげに動かしていた。
腕の程よい白さが、きちんと洗濯されたシャツの袖口から伸び、網棚を支えにすることで時折揺れる車内に乱されることがない。
カジュアルでもフォーマルでもなく、薄いグレーのジャケットを羽織り、そこから覗くのは上品に結ばれたタイが細くスマートに収まっていた。
目立たないようにパンツと同色のベルトによってだぼつくことない腰回りから、体の線をさも披露するような細身のパンツ。
ファッションのもっとも重要な足元は言うに及ばず、洗練されたブーツである。


上から下まで、余すことなく紳士を貫き、手を抜かずにいるその姿が、全体像としてあまりにこっけいと見えるのは、私の目が曇っているためであろうか。

黒のハットは目元の深いところまで影を落として、表情を伺わせないのは最後の演出。
その視線の先、操作する携帯のディスプレイで繰り広げられるメールのやり取りは、

「オレ、イチゴオレがいい」


携帯の中は存分に内面の世界が繰り広げられている。

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