〆切という名のもとに3 

2007年03月15日(木) 1時12分
とりあえず、寝たい。
このところ、午前様が続いてしまった。
それも、自分のせいなんだと、わかっている。
仕事を抱えたとき、誰かに助けてもらうということが、できない。
頼っていいのに、自分がそうしない。なぜだろう。
だから、いつも全部自分で抱えて、途方に暮れる。
よういドンで一緒にこの仕事を始めた同期たちは、
もっと、上手いやり方でやってるんじゃないか。
こんなことでちんたらしているのは、私だけなんじゃないか。


もうそんなことを考えている時間がもったいない。
ベッドに入って、梨夏は思った。
今日も、2年付き合っている崇に電話をしていない。
今日で何日目なのか、もうそれも思い出せない。
崇からもかかってこないのだから、私だけ責められることじゃない。
とにかく寝よう。

携帯のアラームをセットする。
明日も、時間通りに起きれますように。
願うのは、ただそれだけ。
この瞬間が、仕事から離れられる唯一の時間。
梨夏は、目を閉じて、ある風景を描く。
いつも描く同じ風景。
だから、描く順番ももう決まっている。
坂道を上がると、広がる緑と青に混じった住宅街。
そう、私たちは、確かに、4年前、そこにいて、
今では想像もつかないような、生活を、当たり前の顔をして、送っていたのだ。

〆切という名のもとに2 

2007年03月12日(月) 22時11分
フロアで、1人になってしまった。
もう、全員帰宅しているのだ。
あぁ、昨日だったらとっくにベッドに入っている時間だ…と、
梨夏は、途方に暮れた。

とりあえず、帰ろう。
明日、起きられなかった時のための手をあらかじめ打っておく。
そういえば、昼から何も食べてないな・・・。
会社近くのコンビにに寄り、お茶とパンを買った。
そして、コンビニに横付けしているタクシーに乗り込む。

家に着いてからパンを食べてたんじゃ、太るかも・・・
もはや、数分の違いでしかないかもしれないが、
こんな生活でも一応、健康と美容には気をつけているつもり。
「運転手さん。パン食べていいですか?」
一応、声をかける。
タクシーの車内は、お店みたいなもんだからね。汚しちゃいかん。

タクシーの窓から臨む、夜の東京はなかなかいい。
煌々しいネオンがひしめいているが、人気はない。
皇居の周りを通ると、ライトアップされる木々が美しく感じた。
上京して、あっという間に1年。
この仕事のせいなのか、東京のせいなのか、
日々が3倍速で過ぎていく。


このまま走ったら、どこにたどり着くのだろう。


〆切という名のもとに 

2007年03月12日(月) 2時08分
音楽は、じゃまだと思うことがある。
音が、いらなくなる瞬間がある。

「ダメだ。もう頭が全然回ってない!」

梨夏は、誰に言うでもなく、そうつぶやいて右手をマウスから離した。
午前2時にもなると、オフィスのフロアはがらんとする。
外は闇。
窓に自分の姿が映る。
疲れた女が1人、そこに立っている。
自分の姿が窓に映し出されているなんて、日中は気がつかないのに。

制作会社に勤める梨夏と〆切の関係は、まだ始まったばかり。
大学を卒業して、少しプラプラした後、制作という仕事に就いた。
広告をつくる仕事。
文章がうまい、書くことが好き、という気持ちで始めたものの、
書きたいことを書く仕事ではなかった。
とにかく、毎週2回ある〆切を目指す。
それが、当面の梨夏の仕事だし、やらなきゃ今日は帰れないのだ。
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社会人にも、青春があっていい。 キラキラしてて、 泣いたり怒ったり笑ったり忙しくて、 明日が待ち遠しくて、 未来は、限りなく広く感じて、 そして、切ない。 社会人にも、そんな時間がある。
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