『葬想―Heart's Funeral―  後編』 

2005年02月14日(月) 17時00分
たとえ、どれだけ俺が微細な妨害を続けたところで、既に形が出来上がっている計画を潰すことなど出来はしない。
悲しいかな、それだけを見通せるだけの頭は既にあった。
何も知らず、笑っていただけの子供であったなら、あいつにとっても俺にとっても幸いであっただろうに。
その日は、近づいていた。
男の気配が日が経つにつれて、鋭敏になっていくのを感じる。
殺気にも等しいそれを感じながら、表面上は普段と変わりなく過ごす男を見つめた。
秀でた額に、眉間を寄せる癖。
いつも気難しそうな顔をしているけれど、本当は意外と表情が素直なこと。
自分を落ち着ける時に、親指と人差し指を擦る事も。
分からないはずが無かった。
今まで、一番近くに居たのだから。
だから、男が何食わぬ顔で差し出した薬入りの盃を、何も知らない顔で飲み干した。
一瞬だけ、男が見せた苦みばしった表情を信じたかった。
けれど、盃を空けてから直ぐに襲ってきた強烈な眠気は、俺の最後の望みを砕いた。
薄くかげる視界の向こうで、男が部屋を出て行ったことを知る。
知らず涙がこぼれた。
それでも。
眠りに引きずり込む手を振り払って、万一のためにと枕の下に忍ばせてあった短刀を取り寄せた。
睡魔で覚束ない手で、柄を握り締め、ためらいなく振り下ろす。
太ももを貫いた刃の傷みは、薬の効力を一時的にでも振り払ってくれた。
流れる血もそのままに、部屋を出る。
あの男が目指した場所に、行かねばならなかった。

『葬想―Heart's Funeral―  前編』 

2005年02月14日(月) 16時53分
本家で書いている創作の番外編です …微妙に女性向け

初めて、顔をあわせたのはまだ、子供の頃。
本当に、どうしようもないくらい子供だった頃。
色の薄い自分の髪とは違う、何かの鉱物のような髪に心引かれたのを覚えている。
父親の隣で、控えるようにして立っていたその男。
幼かった自分には、成人になろうかと言う男は、とても大きく、立派に見えた。
ドキドキして、くすぐったい様な興奮と緊張。
無表情なその顔を見たときから、ずっと囚われている。

そいつは、父が俺の目付け役として雇ってきた、言わば子守だった。
子供の頃は、周りが手を焼くほど活発だった俺に父が遊び相手を兼ねた守役として何処からか連れて来たらしい。
それまで、広い館で遊び相手といえば、歳の離れた従僕や小言のうるさい乳母しかいなかったから、俺はすぐにそいつに懐いた。
今、思えば、とても煩わしかったに違いない。
けれど、男はそんな本心など気付かせもしないで、俺の遊びに付き合ってくれた。
滅多に笑う事もなかったが、頭ごなしに否定することも無かったから。
俺は、幼い子供の世界でとても幸せに過ごしていた。
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