創作『ヴィリアの歌』

April 11 [Fri], 2008, 22:49






オペレッタ『メリーウィドウ』の中に、主人公の未亡人ハンナが歌う『ヴィリアの歌』がある…。




ある朝、若い狩人が森の中で、美しい妖精ヴィリアを見かけた。

狩人はヴィリアの神々しい奇跡的な美しさと、魂を溶かす妖しい魅力に心を奪われる…。








森が静かにお喋りを始めた朝。




光がこぼれる木々の間を、白いレースがふわりとすり抜けたように見えた。





きっとヴィリアだろう。





人間の時間を持たないヴィリアは、いつも、時よりも素早い速度で動く。




なかなかその美しい肢体をじっくりと眺めるのは、難しい。






ヴィリアに魂を奪われたあの日から、生け垣のハイミストは5回花をつけたはずだ。


もうそんなに経つのだな…。




私はヴィリアのすべてを手にいれたはずだった。



美しいヴィリアを青いツタで自分に縛りつけ、常に隣で過ごし、ヴィリアのすべては自分のものだと思った…。



なのに、この空虚はなんだろうか。




それは、やはりヴィリアが妖精で、禁じられた恋だからか…。


私は今、空虚の出処がもっと恐ろしい物であることに気づきかけている…。




ヴィリアは、幾夜も幾夜も私に縛りつけておいても、私の身体に溶け込むことはなく、ヴィリアはヴィリアのままだった。



私はヴィリアのすべてを欲しかった。



身体や心だけでなく、ヴィリアの時間も思考も視線も纏う香りに至るまで、私の物にしたいと思うようになっていた…。



近くにいればいるほど、二人がお互いに違う生命を生きていることを痛感した。





ヴィリア、私は欲張りすぎたようだ…。




少なくとも空虚と言う言葉は撤回しよう。



そんな言葉を出したことの方が空虚だった。



あなたを森で見かけたこと、そして恋に落ちたこと、そしてあなたがまだ私の前で微笑んでいること。




それらの事実が私の持つ事実であり、おそらく幸せと呼ばれるものだ。







心が落ち着いたら、ヴィリアへの花を摘みに渓谷へ出かけよう…。








《おわり》



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ソプラノ歌手

国立音楽大学声楽科卒業
二期会オペラ研修所42期マスタークラス修了






歌は人の心をつなぐものだと思います。

ずっとずっと昔から。









自分の力は些細なものですが、音楽で受けた感動を少しでもほかの誰かに伝えることができたらいいな、と思っております。


企業情報管理士、個人情報保護士、文書情報管理士でもあります。

企業情報管理士(2010年取得)

個人情報保護士(2010年取得)

文書情報管理士2級 (2011年取得)

マイナンバー実務検定1級(2016年取得)

マイナンバー実務検定2級(2016年取得)



趣味は、短いお話を書くことと、絵を描くことです。

絵は、アクリルでキャンバスに描いたり、PCで描いているものがあります。


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