遅れた話 その2

April 22 [Sun], 2012, 18:21
できました〜!


遅れた話の続きです。


絵もつけました〜







どこだろう…、ここ…


周囲は一面、薄いピンク色の綿菓子みたいなフワフワに覆われている。



ほんわりとキャラメルみたいな甘い匂いもする。


誰かが片付けたのか、バラバラに砕けたわたしのロッキードSR−71偵察機が、少し離れたところに小山になっていた。


小山からは薄い灰色の煙が二本、ゆらゆら立ち上っている。


あ〜あ、家族共用なのにお母さんに怒られるわ…



ポロッとほっぺたから何かはがれ落ちた。

じっと見る。


うーんっ


ぼんやりした頭が手のひらのかけらに焦点を合わせ始める。


カロリーメイト、フルーツ味。


そうか、そうだよ、

時間に乗り遅れて、どこかに激突して…、

お腹が空いてたからカロリーメイト食べながら運転してたんだ。


あっ、自己紹介


わたし、まあこ



あれ?



事故ってすぐに自己紹介しなきゃって思っちゃうなんて、打ち所、悪かったのかもしれない。


しかも、誰に?



いたっ

痛い痛い痛い!


右のわき腹あたりが強烈に痛い!


右手で押さえた右わき腹あたりは、白いシャツがパックリと10センチほど切れて、白いわき腹が裂けていた。


うわっ!?


大変だ、死んじゃいそうだよ、わたし。


なぜか血は出ていない。


わき腹を両手で押さえて、ぎゅっと目をつぶる。

お母さんが言ってたことが耳の奥でエコーする。


まあこはオッチョコチョイだから、移動機保険は厳重に掛けておこうね。


対人賠償保険、対物賠償保険、自損事故賠償保険、車両保険



手厚くいろいろ入っておいて良かったよ、お母さん。


でも、時間事故は保障が効いたかな?


万が一、免責事項に盛り込まれていたらまずいな。


時間に乗り遅れて、ってところがネックかな。


いやいや、そういう問題じゃないや。

わたしは大怪我をしているんだった。


人って、緊急事態の時ほど、かえってトンチンカンな考え事をするって、じいちゃんも言ってたな。


わたしも前にプールで溺れたとき、友達に貸したままのクマのボールペンのこと、思い出した。


手を当てた傷口に再び目を向ける。


やっぱりまだわき腹は裂けたままだ。

不思議と最初に襲ってきた痛みはすっかりなくなっていた。


一瞬、まさかもう命が終わってしまったのかと、不安になった。


すると急に傷口がうずうずとして、ピコっという音といっしょに、手のひらサイズの白い羽が生えた。

うわぁっ!

なにこれ?

意味わかんない。




「まあこ、それは時間事故傷害保険の付録です」


背後から急に声をかけられ、びっくりして振り返った。


三匹のコアラが座っていた。

あんたたち、なあに?


まあこが聞くと、三匹のコアラは口を揃えて答えた。


「時間事故の係員です。みんな三級です。」



へ〜、


まあこは三匹をじろじろ見た。

で、なんでわたしの名前、知ってるの?


「自己紹介を聞きました」


またも、三匹は口を揃えて答えた。


はぁ、なるほど

で、この羽、わたし嫌なんだけど、どうにかならない?


「なかなか人気の付録でキャンセル待ちも出てますし、第一、今後はその羽なしに時間移動は不可能です」

一番右のイケメンコアラが答えた。


あ〜、そう。

なんか位置が悪くて右手にぶつかるのよ。


「羽が生えただけでも感謝してくださいよ。まあこが破壊した壁は普通の毎日が普通に来る時間調整専用壁で、時間事故の中では事故等級が非常に高いものの一つなんですから。」


左の生意気そうなコアラが答えた。


あら、そう、わかったわ。


で、わたし、死んだのか、わかる?


「シンダ…?そんな単語、聞いたことないな。」

真ん中のはげぎみのコアラが答えた。


そっか、わかった。


わたしはまた家には帰れるのかしら?


「それはわからない。そういうの、人生って言うんだ」


三匹はまた口を揃えて答えた。


「あっ、そろそろタロリントのリンゴが落ちる頃だ。本日の最終便機関車、どうせそうだよ号が到着するよ。まあこ、必ず乗って。」


なんの最終便?


家に帰れる?


「時間から取り残された人間を運ぶ機関車だよ。機内販売の駅弁はまあまあさ。冷たいがね。」


確かにお腹はすいているから駅弁はうれしいけど、その機関車はどこに向かうの?


「時間の損益分岐点だよ。ただ、道中かなり無理な経路を選択したりするからきをつけて、また怪我しないように」


わかった、ありがとう



まあこがふらつきながらゆっくり立ち上がってみると、右わき腹に生えた羽がまあこのバランスを支えていた。


付録、まあまあね。


最近じゃ、付録と言ってもあなどれないわ。



本当のことを言えば、時間に取り残されて、はっきり言って怖かった。


人間の世界では、時間を持っていないことは、存在していないことを意味する、と、生物2の教科書に書いてあったはずだ。

家族や友達にもう一度会えるかも不安だった。



三匹のコアラに案内され、ピンク色のフワフワをかき分けながら歩いて行くと、
背の高さほどのなんでもない白いドアにたどり着いた。


はげぎみのコアラが細くドアを開けた。


深いブルーの宇宙が広がり、無数のキラキラが上からも下からもひしめき合っていた。


「ほら、きたきた。」

三匹のコアラは口を揃えて言った。


遠くから細く白い光の帯がこちらにやってくる。


まあこは三匹のコアラの方を向くと、言った。


時間事故の係員さん、ありがとう。
わたし、行くね。
できたら、またもとの時間に追いつきたいと思う。
でも、もしムリなら、また新しい時間に乗ることにする。




そう言っておきながら、心の中では割り切れていなかった。


詳細はどうせそうだよ号に乗ってから、駅弁食べながらゆっくり決めようと思った。



機関車が大きな汽笛を鳴らしながらまあこの前に滑り込んできた。

爆風で、まあこの長い髪が一気に吹き上がる。




最後に…


寝坊にはきをつけて




三匹のコアラにそう言い残すと、まあこはどうせそうだよ号に消えて行った。



三匹のコアラは並んで座り、機関車がはるかかなたに消えていくのをしばらく見ていた。

おわり
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ソプラノ歌手

国立音楽大学声楽科卒業
二期会オペラ研修所42期マスタークラス修了






歌は人の心をつなぐものだと思います。

ずっとずっと昔から。









自分の力は些細なものですが、音楽で受けた感動を少しでもほかの誰かに伝えることができたらいいな、と思っております。


企業情報管理士、個人情報保護士、文書情報管理士でもあります。

企業情報管理士(2010年取得)

個人情報保護士(2010年取得)

文書情報管理士2級 (2011年取得)

マイナンバー実務検定1級(2016年取得)

マイナンバー実務検定2級(2016年取得)



趣味は、短いお話を書くことと、絵を描くことです。

絵は、アクリルでキャンバスに描いたり、PCで描いているものがあります。


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