想定外だらけ その一

February 10 [Fri], 2012, 10:25
 今日の記事は前回の続き。

 配水管内の洗浄が失敗に終わった私は、現在ポンプから出ている二本の給水パイプを切り落として、各パイプへのショートカットを地上から直接繋ぐことにした。
 
 しかし、壁の中や、地下に埋まっている部分のパイプには手を出せない。さすがにそれをやるには、この家を大々的にぶっ壊さなくてはならなくなるからだ。

 基本的にタイの水道管はPBCパイプと呼ばれ、青い樹脂で出来ていて、各種の太さが用意されており、普通4m単位で売られている。これはノコギリで切るのに造作ない。また、接続する場合も、専用の接着剤があって、ジョイント部品も各種販売されているから、全く苦もなく繋ぐことができる。

 それらを用意して、まずポンプから猿嫁の部屋エリアと台所へ繋がっているパイプを直した。
これは大成功。試しに元栓を開けたら、シャワーから物凄い勢いで水が飛び出した。

 次に問題のオフクロ様の部屋に隣接するバスルームに取り掛かったのだが、ここで大誤算が発生。
なんとこの水道管だけ、樹脂製ではなかったのである。外壁と同じ色のペンキが塗ってあったので判らなかったのだが、このバスルームに配管されている全てのパイプだけ、亜鉛合金製と思われる金属で出来ていたのだ。

 それでも切るしかない。意を決した私は、金属用の糸ノコを持ち出してきて、シコシコとパイプに当てて動かした。ところが皮肉にもこんなところだけ頑丈に出来ている。パイプの直径はせいぜい4センチ程度のものなのに、大汗をかきながら一時間糸ノコをひいても穴が開いて水が染み出した程度だった。

 よほど電動のカッターマシーンを買いに行こうか…と思ったけれど、あまり使うこともない高価な機械を買うのも悔しい。諦めてエアコンを効かせた部屋で30分ほど休み、また作業を開始した。

 それから一時間後、ようやくパイプが切れた。しかし、新しいポンプからのパイプを繋ぐには、最低でもさらに五センチ下をもう一度切らなければならなかった。土中から突き出ている金属パイプは硬くて、とても曲げられなかったからである。

 さらに二時間半。また金属パイプを切ることに没頭した。
 そしてようやくカランと5センチ長のパイプが落ちたときは、すでに日暮れ。その日はタイムアップで終了した。

 翌日、切ったパイプから太い針金を通して中を掃除したら、赤茶けた錆の塊みたいなものが、止め処もなく出てきた。これではオフクロ様のシャワーの温水器がうまく作動しないはずである。

 小一時間掃除して新しいパイプを繋ぎ、期待と供に元栓を開放。しかし、またしても期待は木っ端微塵に打ち砕かれた。

 確かにオフクロ様のバスルームのどの蛇口からも、水は勢いよく出るようになったのだが、ふざけたことに切って使わなくなったはずの廃パイプからも、ポンプと繋がっていたところの古いパイプからも、水が噴水のように飛び出すのだ。

 もうそんなことが起きる原因は、オフクロ様のバスルームの壁の中に埋め込まれたパイプが、複雑に配管されてポンプから相互に2ラインが繋がっていたとしか考えられない。

 こんな想定外は全く考えてもいなかった。解決するにはやはり壁をぶっ壊し、土を掘り返して、古いパイプを一掃するしかない。

 よほど、業者を頼んで壁をぶち壊そうかと逡巡したが、とりあえず当面の大問題であった蛇口からの水の勢いは、完全に改善されている。また、そんな大工事をするとなったら軽く一週間以上は掛かるし、費用は馬鹿にならないし、タイルも貼り替える必要が出てくるし、オフクロ様のバスルームは絶対にその間使えなくなる。そこで、思い直して、ポンプのスイッチを入れると水が噴出す2本の廃管にキャップをすることにした。

 さすがにこれは簡単なので大成功。

 そうして長年の懸案であった水道の水の出という問題は解決したのだが、翌日、猿嫁の部屋の洗面所を改装しようとした私は、またしても想定外にぶち当たってしまったのであった。
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プロフィール
  • ニックネーム:小林龍彦
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  • 誕生日:1959年
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  • 趣味:
    ・アウトドア-Fishing
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1998年度JTB旅行記賞受賞。
他にハービス旅大賞、PROMISE.ESSAY大賞・優秀賞、三省堂「私の辞書活用法」エッセイ・優秀賞、男の生き様コンテスト・優秀賞、北海道池田町百周年記念事業、ワインにまつわるエッセイ・入賞、東京都近代水道百周年記念、水のエッセイ・優秀賞、他・・01年までにエッセイ・紀行文で入賞十数回。
02年三月号から03年十月号まで月刊誌【つり人】に《世界の釣流》連載。
著書に《人生を激変させた神の魚サハール》【つり人社刊】がある。
【略歴】 1959年東京都生まれ。 81年、大学中退後、シベリア鉄道経由で渡仏。釣り竿を抱えて欧州11ヵ国を放浪の後、帰国。 83年、渡米。4年後NY州マンハッタンにて日本レストラン開業、10年間経営。 96年、事業売却、帰国。その翌年釣り竿と供に中国、ベトナム、カンボジア、タイ、インド、ネパールを半年間漂流。初めて未知の大魚サハールの存在を知り魅せられる。同年、中国茶輸入業開始。 98年、タイ経由でネパール訪国。同年ラオスを一ヶ月間放浪。 99年、大河産のサハールをターゲットに三度ネパールに飛ぶ。また、オーストラリア、ニュージーランドなどに釣行。 03年、タイ王国に移住。
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