山あいを走る列車に乗っている。キャンプかなにかの引率のようで、周囲には小さいこどもたちが大勢騒いでいる。
視界が急に開けたかと思うと、眼下に集落、そしてその向こうには海も見えた。
再び両側に山並みが迫ってきた。トンネルのようなところをしばらく走ると、列車は駅に到着した。
駅は高い陸橋の上にあった。ホームから見下ろすとそこは小さな町だった。
都会でも目にすることがある企業の看板が三階建てほどの小さなビルの屋上に載っている。通りをオート三輪が走って行く。その横を、荷物を抱えたおばさんが歩いて行く。
ホームの一角が凸の字型に出っ張っていて、そこがそのままエレベーターになっている。おれはこどもたちを載せると下行きのボタンを押した。
まだ小学校にも入っていないような小さなこどもが、柵から身を乗り出した。頭が大きくて、バランスを崩して今にも外側に落ちてしまいそうだ。
「ほら、あぶないから身を乗り出さない!」
おれはそう叫んだがこどもは聞く耳を持たないで、へそのあたりを柵に載せて体を揺らし始めた。思ったとおり頭がくるんと回ってこどもは柵の外に落ちた。瞬間、横にいた中学生くらいの男子が柵を越えてこどもを抱えた。柵の外にはへりが出ていて、こどもたちは下に落ちずにすんだ。乗客たちが安堵のどよめきを上げた。
ホームの真下にもうひとつホームがあって、路面電車のような小さな車両がおれらを待っていた。乗り込むとすぐに、車両はすべるように走り出した。
林の中を右に左に大きく傾きながら車両は走る。線路は上下にたゆんでいるようで、車両は何度も跳ねた。そのたびこどもたちが歓声を上げた。
そうだった。ここには3日前にも来たのだった、とおれは思い出していた。それまで初めて見たと思っていた景色は3日前にも見たはずだ。そうだ。確かに見た景色だ。間もなく車両は終点に着くだろう。そしてさらに小さなトロッコに乗り換えるのだ。
思ったとおり、車両は間もなく終点に到着した。
ホームの階段を降りると、コンクリートに囲まれてひんやりとした駅舎の中だ。トイレに行くというこどもたちを待ってしばらくぼおっとする。駅舎の壁には観光ポスターが貼ってあるが、節電のためか照明が暗くてよく見えない。向こうにキオスクがあって、そこだけぼんやり明るくなっている。
キオスクの先に進むとまぶしい光が射し込んで、外に出た。登山客のグループが集まっているすぐ横にトロッコ乗り場があった。切符売り場のところには列を作るように鉄製の柵がじぐざぐに置かれていて、ボーイスカウトの制服のこどもたちが並んでいた。少し年長の少年が二人、列の最後尾でふざけてじゃれ合っている。
「おい、邪魔だぞ」
おれが言うと少年たちは、すいませんと頭を下げて道をあけた。おれは自分の引率するこどもたちを列に並ばせた。
ふとおれは、自分が裸足であることに気がついた。靴をどこに置いて来たのだろう。さっきの路面電車か、それともその前の列車か。どうも列車のような気がするなあ。
そんなことを思いながらこどもたちを並ばせ終わって気がつくと、おれらの前後には鉄の柵が閉じられていて、もはや列から動くことが出来なくなっていた。さてはさっきのボーイスカウトのふたりの仕業だな。おれは少し離れたところに立っている、リーダーらしき大人を呼んだ。
「おたくのこどもが、こんなことをしやがった。早く出してくれ」
「ありゃ、これは困りましたなあ」
リーダーらしき大人はボーイスカウトの帽子を胸のあたりに持って顔を扇ぎながら近寄って来てそう言った。
「しかしうちらもねえ。カギ持って無いしねえ」
首を傾げて鉄の柵を眺めるが、外してくれそうな気配はない。おれはだんだんいらいらしてきたが、なにしろこどもたちと共に柵の中に入ったまま身動きがとれないので、ただもう早く出してくれと言うしかなく、しかし同じことをバカみたいに何度も言うだけというのも芸がないし大人げないし、これはまったくどうしようもないなあ、と思うのだった。
視界が急に開けたかと思うと、眼下に集落、そしてその向こうには海も見えた。
再び両側に山並みが迫ってきた。トンネルのようなところをしばらく走ると、列車は駅に到着した。
駅は高い陸橋の上にあった。ホームから見下ろすとそこは小さな町だった。
都会でも目にすることがある企業の看板が三階建てほどの小さなビルの屋上に載っている。通りをオート三輪が走って行く。その横を、荷物を抱えたおばさんが歩いて行く。
ホームの一角が凸の字型に出っ張っていて、そこがそのままエレベーターになっている。おれはこどもたちを載せると下行きのボタンを押した。
まだ小学校にも入っていないような小さなこどもが、柵から身を乗り出した。頭が大きくて、バランスを崩して今にも外側に落ちてしまいそうだ。
「ほら、あぶないから身を乗り出さない!」
おれはそう叫んだがこどもは聞く耳を持たないで、へそのあたりを柵に載せて体を揺らし始めた。思ったとおり頭がくるんと回ってこどもは柵の外に落ちた。瞬間、横にいた中学生くらいの男子が柵を越えてこどもを抱えた。柵の外にはへりが出ていて、こどもたちは下に落ちずにすんだ。乗客たちが安堵のどよめきを上げた。
ホームの真下にもうひとつホームがあって、路面電車のような小さな車両がおれらを待っていた。乗り込むとすぐに、車両はすべるように走り出した。
林の中を右に左に大きく傾きながら車両は走る。線路は上下にたゆんでいるようで、車両は何度も跳ねた。そのたびこどもたちが歓声を上げた。
そうだった。ここには3日前にも来たのだった、とおれは思い出していた。それまで初めて見たと思っていた景色は3日前にも見たはずだ。そうだ。確かに見た景色だ。間もなく車両は終点に着くだろう。そしてさらに小さなトロッコに乗り換えるのだ。
思ったとおり、車両は間もなく終点に到着した。
ホームの階段を降りると、コンクリートに囲まれてひんやりとした駅舎の中だ。トイレに行くというこどもたちを待ってしばらくぼおっとする。駅舎の壁には観光ポスターが貼ってあるが、節電のためか照明が暗くてよく見えない。向こうにキオスクがあって、そこだけぼんやり明るくなっている。
キオスクの先に進むとまぶしい光が射し込んで、外に出た。登山客のグループが集まっているすぐ横にトロッコ乗り場があった。切符売り場のところには列を作るように鉄製の柵がじぐざぐに置かれていて、ボーイスカウトの制服のこどもたちが並んでいた。少し年長の少年が二人、列の最後尾でふざけてじゃれ合っている。
「おい、邪魔だぞ」
おれが言うと少年たちは、すいませんと頭を下げて道をあけた。おれは自分の引率するこどもたちを列に並ばせた。
ふとおれは、自分が裸足であることに気がついた。靴をどこに置いて来たのだろう。さっきの路面電車か、それともその前の列車か。どうも列車のような気がするなあ。
そんなことを思いながらこどもたちを並ばせ終わって気がつくと、おれらの前後には鉄の柵が閉じられていて、もはや列から動くことが出来なくなっていた。さてはさっきのボーイスカウトのふたりの仕業だな。おれは少し離れたところに立っている、リーダーらしき大人を呼んだ。
「おたくのこどもが、こんなことをしやがった。早く出してくれ」
「ありゃ、これは困りましたなあ」
リーダーらしき大人はボーイスカウトの帽子を胸のあたりに持って顔を扇ぎながら近寄って来てそう言った。
「しかしうちらもねえ。カギ持って無いしねえ」
首を傾げて鉄の柵を眺めるが、外してくれそうな気配はない。おれはだんだんいらいらしてきたが、なにしろこどもたちと共に柵の中に入ったまま身動きがとれないので、ただもう早く出してくれと言うしかなく、しかし同じことをバカみたいに何度も言うだけというのも芸がないし大人げないし、これはまったくどうしようもないなあ、と思うのだった。
- ミタユメ |
- URL |
- Comment [0] |


