諸注意 

September 25 [Sun], 2005, 17:49
・このブログはノーマルとBLに境界線を作るために古い記事から表示されています。
ので、カテゴリアーカイブからお好きなカテゴリを選んで下さい。
・最新記事の方での見分けは、BLの方にはカップリング名や内容がBL系だとわかるものを題名に入れております。特に何も無いのはノーマルだと思ってください。
・話題は遙か中心です。話題の中心になりやすいキャラクター・シリーズ等については「初めまして」を読んで下さるともっとわかりやすいと思います。

初めまして 

September 26 [Mon], 2005, 18:37
初めてのブログで緊張しております・・・
何を書けばいいのやら(オロオロ)

話題はきっと「遙かなる時空の中で」シリーズ中心になると思います。
地朱雀大好きです。2の彰紋、3の武蔵坊弁慶最愛ですが、未プレイの身です・・・
一応十六夜記は買いました。ええ、でも何せ家にPS2が無いものでしてね。
買ってしまったからには全部やらねばということで、2・3ツインパックを購入して、今出荷待ち状態です。その前にPS2を買うべきだ。
ツインパックといえば、オフィシャルサイトやアマゾンさんで見ると「在庫切れ」になっているんですよね・・・おそらく2が十月頭にコーエーthe best というバージョンで発売されるからなのでしょうけど・・・あれ、ものすごく安いですよね?品質が落ちていると思って、慌ててベスト版じゃない方を買ってしまいましたが、ベスト版と通常版って特に品質とか内容とかは変わらないんですかね?だとしたらこのツインパックのためにいくらお金を損したか・・・
注文してからさらに安価で売ってるサイトを発見してしまいましてね・・・600円くらいそっちの方が安かったです・・・取りやめればいいんですけど、なんだかその過程が面倒だったので諦めました。・・・これからはちゃんといろいろ品定めしてから買おうと思います。
閑話休題、コミックスは全巻揃っております。そして未プレイのくせに「八葉花伝」を買ってしまいました・・・まあ、特にネタばれは気にしない性質なので、別にいいんですけどね!(投げやり)もういいんです、もともとファンサイト巡りまくって主要ネタは大体頭に入ってしまいましたし、もうネタばれ気にするのは手遅れです。
CDは、「ありあけの歌」、「花をとめ」「雪月花」「花鏡」「うしろ向きじれっ隊」があります。「紅葉舞」も予約しました。
CDについてはのちのちブログでどの歌が好きか、等語ろうと思います。

いろいろごちゃごちゃしててよくわからないですね・・・まあ、ということで遙かは全体に話をすることはできると思います。でもゲーム中の細かいセリフ・設定とかは無理です。だから語っている時に間違っている点等があると思います、ご了承ください。
あと私は腐女子です、BL好きです。その話題も多いと思われます。

いつまで続くかなこのブログ・・・とりあえず明日テストなので勉強してきます。

うしろ向きじれっ隊 

September 27 [Tue], 2005, 16:51
思い返せば、「うしろ向きじれっ隊」が遙かにはまるきっかけとなったものです。

遙かにはまる前、私は「爆転シュートベイブレード」シリーズにはまっていました。
それに宮田さんと保志さん演じるミステルとブルックリンというキャラクターが出ていたのですが、私はその二人が大好きでした。
そしてその頃は、CDショップで偶然見つけた保志さんの「Shining Tears」を買い、声優さんが歌を歌っていることを知り、声優さんご本人について興味が出てきたころでした。
そこで私は一番好きだったミステルの歌が聞きたい、と思いました。けれどもベイブレードのキャラソンはない・・・仕方が無い、ということで私は別ジャンルで宮田さんが歌っているCDを探し始めました。さまざまなファンサイトを巡り、どれが一番人気のある曲なのか、どれぐらいに歌われた曲なのか、ということを調べて・・・そこで「じれっ隊」の存在を知ったのです。
何と三人組のグループで、メンバーは宮田さんの他に保志さんもいるではありませんか!(この時点で、私は高橋さんを知りませんでした)大好きな二人が一緒に歌っている・・・これだけで買う理由は充分です。私は早速初めてのインターネット通販で、「うしろ向きじれっ隊」を手に入れました。

二、三日後、CDが届きました。早速箱を開けてみると、ケースには着物を着た美少年が三人・・・!
ええ、CDを買うというのにその作品の予習を全くしていなかったので、驚きました。どうしてこんな好みの人が沢山いるんだろうと昔から着物というか、和風な雰囲気が好きだったので。
ケースを開けてまず始めに歌詞カードを見ました。キャラクター&キャスト紹介を読むと・・・キャラ設定が、まあ、なんとなく狙ってるなぁといった感じがして、正直少し引きました。
そして「天の朱雀、地の朱雀、天の玄武って何だろう?」とひたすら疑問に感じました。ちょうどベイブレードにも青龍、朱雀、白虎、玄武が登場していたので、何となく親近感もありましたが。

うしろ向きじれっ隊・2 

September 27 [Tue], 2005, 19:05
その次「閃光と疾走の絆」。またまた「奇跡のプレゼント」と「永遠の水廻廊」とのギャップに驚かされました。「奇跡のプレゼント」では可愛い雰囲気が、「永遠の水廻廊」では静かな雰囲気があったのに、この格好良さは何なのだろう、と。この曲を聴いている途中からもう私は遙かの世界に引き込まれていたような気がします。
「花園への招待状」・・・初めて聞くミステル(宮田さん)の歌声にドキドキしつつ聞いていたのですが・・・あんまり声がミステルに似ていなくてその当時はがっかりしました。今思えば、宮田さんはキャラの演じ分けが素晴らしいので、当たり前なのですが。余談ですがミステルは、詩紋に似た声だと、どこかの宮田さんのファンサイトの管理人さんがおっしゃっていました。でも曲の内容にはしっかり感動しました。そして「この漫画で宮田さんが演じてるのはこういう人なんだ・・・いいかもこの人」と、歌詞の隣にいる彰紋を凝視していたのもちょうどこの時です。私は辛い過去を持った人が恋人に出会って変わっていく、というシチュエーションが好きなんです。
そして「風花昇華〜凛〜」。日本語の美しさを感じさせる歌詞ですね。序盤の宮田さんの歌声が冬の冷たい雪の中で一人でいる静けさを感じさせて・・・キャラクターも何も知らなかった当時、このアルバムの中で一番好きだった曲です。
「そしてお前に出逢えただけで・・・」で、高橋さんの好感度が上がりました。とてもお上手なんだな、と。じれっ隊ソロ曲の中での一番の歌詞の長さはそこから来ているのか、とも(笑)
最後のキャラメッセージは「・・・なんだろうこれ」と聞き初めはオロオロしていたのですが。彰紋のキャラメッセージが始まったと同時に彰紋の声がものすごく可愛くてプレーヤーに噛り付く私。(イサトのもしっかり聞きましたよ!)ああ、でもやっぱりミステルには似ていないな・・・と落胆もしました。でも、でも・・・泉水とブルックリンの声がそっくりで彰紋のとき以上にプレーヤーに噛り付きました。本当に声のトーンが同じなんです!目を閉じると本当にブルックリンが言ってくれているよう・・・!でも口調や性格の違いからか、本当にそう感じられるのは初めの一文の「ああ、雪が降ってまいりましたね」までなんですけど・・・ミステルに落胆した後だったので、この感動も一塩でした。

「舞い落ちる薄紅の花弁と貴方の緋色の髪の毛と」子ヒノ弁・小説 

September 28 [Wed], 2005, 17:33
ああもう、失敗した。

鬼若――後に武蔵坊弁慶と呼ばれることになるこの少年――は深く溜息をついた。

季節は春の候、そろそろ桜が満開になるころである。
それに朝からガタガタと戸を揺らす強い風が吹いていて、この様子だと桜が綺麗に舞うであろう。
太陽は頭上でぽかぽかと暖かい光を発する。
そう、今日は絶好の花見日和であった。
先ほどから家の者が酒はどこだだの、食べ物は足りているかだの忙しなく走り回っている。
花見に行くためだ。
本来ならばこの家の主、藤原湛快の弟である鬼若も花見の準備で走り回っているはずなのだが、当の本人はしかめっ面で机に向かっている。
机の上には二つの巻物があった。
一つは鬼若が無理を言って知り合いから借りてきたもので、お経が書かれていた。
鬼若はそれをもう一つの巻物に写すという作業をしているのだ。
巻物は明日返すという約束で借りてきた物だが、どうも気が緩んでいて中々作業に取り掛かる気になれず、明日やろう明日やろうと思いつつ、どんどん時間ばかりが過ぎてしまったのだった。
気付いた頃には鬼若にはもうすでに取り返しのつかない位の時間しか残されていなかった。
今からやって間に合うかどうかはわからないが、その借りてきたお経というのはとても貴重な文献で、鬼若はどうしても自分の巻物に写してから返したいと思った。
そのためにはせっかくの花見の宴を蹴らなくてはならなかった。

すっと障子が開けられる気配がして、ちらっとそちらを見ると湛快が出かける装いをして立っていた。
心配そうな顔をしている。

「鬼若、本当に行かないのか?」
「ええ、行きませんよ。僕はこのお経を明日までに写さなくてはいけないのですから。花見にいっては間に合わないのです」
「そうか・・・じゃあ、俺たちはいってくるから・・・頑張れよ」
「はい」

鬼若が返事をすると、湛快は未だに残念そうな顔をしながら障子をゆっくりとしめた。
鬼若は障子を睨みながら湛快の足音が遠くなっていくのを聞いていた。
暫くすると、屋敷の中は水を打ったように静かになった。
聞こえる音といえば、強風が戸を揺らすガタガタという音だけだった。
鬼若は本日何度目かの溜息をついた。

「舞い落ちる薄紅の花弁と貴方の緋色の髪の毛と」2・子ヒノ弁・小説 

September 29 [Thu], 2005, 19:01
花見、行きたかった・・・
このような強い風が吹いていたら桜が沢山散るでしょうに・・・

今年のことだが以前湛快が花見を計画したことがあった。
その時にも鬼若は多忙を理由にその花見に行かなかった。
つまり鬼若は今年の桜をゆっくりと眺めたことがないのだった。
鬼若は今まで毎年花見に参加してきたので、それだけは我慢がならなかった。
その上今日は風が強い。美しい桜吹雪が舞うはずだ。
鬼若は去年美しい桜吹雪を見て深く感動したことがあった。
それだけに、今日のような日に桜を見て桜が吹雪くところを見てみたいと強く思っていた。

自業自得、か

そのような言葉が頭をよぎり、再び鬼若は溜息をついた。
そして暫く二つの巻物を恨めしそうに見つめていたが、諦めたのか鬼若は筆を手にとり、お経を写し始めた。
ガタガタという音にさらさらと筆が紙を滑る音が加わる。

突然、玄関の方からガタンと大きな物音がした。
何事かと鬼若が巻物から顔を上げて、耳を澄ませる。
風の所為かと思ったが、暫くしてまた聞こえた同じような物音は戸が揺れるガタガタという音と明らかにずれている。
その不規則な音は風が立てる音ではない。
暫くするとその物音は歩いているかのような規則正しい音になった。
鬼若は即座に屋敷内に人が入ってきたことを理解した。

誰だろうか、皆は出かけたはずなのに・・・?

鬼若が耳を澄ませたまま、硬直している間にもトントントンという足音はこちらに近づいている。
大人のものにしては小さいその音は鬼若の不信感を煽るには充分だった。
泥棒が足音を忍ばせているように思えたからだ。
鬼若は傍に置いてあった薙刀を掴んだ。
足音は鬼若のいる部屋のすぐ前で止まった。
鬼若の手は薙刀を痛いほど握り締めている。
障子が音もたてずに滑った。

来る・・・!

だが次の瞬間、ひょこっと出てきた頭は緋色―――
鬼若は全身の力を抜き、大きく溜息をついた。

「・・・君だったのですかヒノエ」

泥棒かと思っていた足音は湛快の息子、つまり鬼若の甥にあたるヒノエのものだった。

通りで足音が小さかったわけだ

ヒノエはまだ成長途中の子供だ。

「なんだと思ったの?」
「・・・泥棒ですよ」

ヒノエの質問に答えながら、鬼若は薙刀を床に置いた。
するとヒノエはにぱっと笑い部屋に入り、鬼若の隣に座った。

「舞い落ちる薄紅の花弁と貴方の緋色の髪の毛と」3・子ヒノ弁・小説 

September 30 [Fri], 2005, 17:16
さて、自分の記憶が正しければ、この子は随分と花見を楽しみにして、意気揚揚と準備を進めていたはずだけど――
帰ってくるには早すぎるし、それにしたら兄上達も帰ってくるはずだし・・・

何故だか急に帰ってきて、自分の机の上に並べてある書物に興味津々で見入るヒノエに鬼若は質問をぶつけた。

「ヒノエ、どうして帰ってきたのですか?君は随分花見を楽しみにしていたではありませんか」

するとヒノエは頬を膨らましながら答えた。

「・・・だっておねえちゃんがいないのはつまらないんだもん・・・オヤジにおねえちゃんは今日お花見に行かないって聞いたからさ、もういいやって思った」
「・・・そうですか」

全くこの子は

鬼若は頭を抱えたくなった。
だがそんな鬼若の心情などいざ知らず、ヒノエは鬼若が写している方の巻物を軽く突付いていた。

「ね、これ何?」
「・・・それはお経です。僕はそっちの巻物のお経をこの巻物に写すという作業をやっているのです」
「ふぅーん・・・あ、もしかしてこれをやるからお花見こなかったの?」
「そうですよ。ではヒノエ、僕はこれからこの続きをしますから邪魔をしないで下さいね。この部屋にいてもいいですから」

そういうと鬼若は筆をとり、巻物にそれを滑らせ始めた。
ヒノエは鬼若に言われた通りに大人しくして、鬼若の手元を眺めていた。
暫くは例の物音以外の音はしなかったが、鬼若はどうも誰かに見られているような気がしてそわそわし始めた。
少し視線をずらすと、やることがなくてつまらないのか、しかめっ面をしている甥の視線とぶつかった。

こいつか

目が合っても悪びれもせず、相変わらずしかめっ面で睨んでくるヒノエに鬼若は咎めるように声をかけた。

「ヒノエ、どうかしましたか?」

だがヒノエの口から出てきた言葉は鬼若の予想とは全く違ったものだった。

「おねえちゃん、それ、楽しい?」
「・・・え?」

不意を突かれて間抜けな声が出た。
わけがわからずヒノエを見つめ返すと、ヒノエは鬼若を気遣うような顔に変えてその視線に答えた。

「そのお経、写してて楽しい?」

「舞い落ちる薄紅の花弁と貴方の緋色の髪の毛と」4・子ヒノ弁・小説 

October 02 [Sun], 2005, 17:10
鬼若は思わず黙った。
楽しいわけがない。
行きたかった花見を蹴ってやっているのだから。
でもそのような愚痴をまだ幼い子供に吐くわけにはいかない。
言ったって仕方が無い。聞かせるだけ、ヒノエにとって悪となるだけだ。
それに悪いのは他ならぬ自分だ。
鬼若はどのように答えるべきか考えた。
だがその間が嫌らしくヒノエがすぐに捲くし立てたので、鬼若はそのことをあまり考えずに済んだ。

「たのしくないでしょ。おねえちゃん、いやそうな顔でやってるもん。おねえちゃん、本当はお花見にいきたかったんでしょ?だから、そんな悲しそうな顔してるんでしょ?」

本心を突かれ、鬼若は面食らった。

まさかこんな小さな子供に感づかれるなんて・・・ヒノエも聡い子になったものだ

鬼若が暫く黙っているとヒノエが口を開いた。

「・・・いこうよ、お花見」
「え?」

何度この子は僕を脅かせば気が済むんだ・・・

鬼若はそう思ったが、当のヒノエはいたって真剣に鬼若を見つめている。

「ね、いこうよ二人で。おねえちゃん、行きたいんでしょ?じゃあオレと一緒にいこ?」

その目は悪戯を思いついたかのようにキラキラ輝いている。
誘いを断ってその輝きを曇らせることはいささか気が引けたけれども、生憎鬼若にはやらなければならないことがある。
そのためにわざわざ花見を蹴ってここに残っているのだから。
ここでこの誘いを受けるのは道理に適わない。

「いけませんよヒノエ。僕にはやらなくてはいけないことがあるのです」
「やらなきゃいけないことって、これ?」

そういってヒノエはお経を指差す。
その通りなので、鬼若は正直に答えた。

「そうです」
「じゃあいいじゃん。いこ?」

そういってヒノエは鬼若の腕を掴み、無理やり外に連れ出そうと障子の方に引っ張っていく。
鬼若が思っていたよりその引っ張る力が強く、鬼若は思わず立ってしまった。
鬼若は抵抗して、机の前に踏みとどまろうと体に力を入れた。
それでもヒノエは相変わらず顔を輝かせて鬼若を外に連れ出そうとすることを諦めない。
ヒノエと引っ張り合いをしている間に鬼若は何回か少し気が挫け、暫くヒノエの思うが侭にやらせるがすぐに正気を取り戻す、という行動を繰り返した。
その度に何度ヒノエの体と引っ張られた自分の体を鬼若が机側に引き寄せても、ヒノエはまた障子の方へ鬼若の体を少しだけ近づける。

「舞い落ちる薄紅の花弁と貴方の緋色の髪の毛と」5・子ヒノ弁・小説 

October 03 [Mon], 2005, 18:26
このままでも埒があかないので、鬼若は口に出して抗議することにした。

「君はよくても僕はよくありません。駄目です」
「やだやだやだ、いくの!」

ついにヒノエは鬼若の水干の袖にすがりついて半べそを掻きつつ抗議し始めた。

もう、大人なのだか子供なのだか。
・・・子供か。

鬼若の口から思わず溜息が漏れた。
しかし鬼若は諦めずにもう一度抗議した。

「ヒノエ、離してください」
「いや!おねえちゃんがいやな顔しながらこれやるの見てるの、もういやなんだもん!」
「じゃあ見なければいいじゃないですか・・・」
「やだやだ〜!おねえちゃんにはいつも笑っていてほしいんだもん!それに、おねえちゃんだって本当は花見に行きたいんでしょ!?」
「ヒノエ・・・」

甥の切実な願いと瞳に少しぐらりときたが鬼若は自分の自尊心を持って何とか立て直した。

「・・・駄目です」
「ね、本当に少しだけだから!はんこくもかからないから!ね、おねがい、いこうよ!」

半刻もかからない?

その一言で鬼若の決心はいとも簡単に崩れ去った。

「・・・それだったら」
「ほんと!?いってくれるの!?」

ヒノエはしがみつく腕の力を強くしながら瞳をさらに輝かせた。

ああ、僕はやっぱりヒノエに弱いなぁ

鬼若は頭の隅でそのようなことをぼんやりと考えながら、ヒノエに笑って頷いてみせた。
ヒノエは笑顔を太陽のように輝かせた。
そしてそれならば善は急げだと、ぐいぐいと鬼若を引っ張り部屋から連れ出そうとした。
鬼若は行く気満々のヒノエに腕を引っ張られて、仕度をする暇さえなくなってしまったので急いでいつも被っている外套を掴んだ。
急に鬼若の体が進まなくなったのでヒノエは振り返って、外套を被ろうとしている鬼若を見て言った。

「そんなもんかぶってても意味無いよ!風が強くて、それじゃまになるだけだから、置いといた方がいいよ!」
「いいのです。とりあえず被るだけ被っときますよ」
「今から行くとこオレのかくれがだから人いないよ!だいじょうぶだってば!」
「でも僕は被っていたいのです。邪魔になったら持ち歩きますよ」

鬼若が頑なな姿勢を崩さないのでヒノエはまあいいか、と諦めて鬼若をぐいぐい引っ張ることに専念した。

「舞い落ちる薄紅の花弁と貴方の緋色の髪の毛と」6・子ヒノ弁・小説 

October 04 [Tue], 2005, 19:41
あまりにヒノエが引っ張るので伸びかけた水干の袖を見て、鬼若は早足になった。
ヒノエはそれに気付いて自分の足をさらに速く動かす。
いつのまにか、二人は走り出していた。


想像以上の強風だった。
鬼若は何度も何度も吹き飛ばされかける外套を掴み、自分の体に引き寄せたがそれも虚しく、すぐに強風が外套を鬼若の手から逃がしてしまう。
また強い風が吹いて、外套がはためく。
暫く立ち止まってはためく外套をしっかり自分の体に巻きつける鬼若をヒノエはいわんこっちゃないといった風に見つめた。
そのような視線を気にしないようにしながら鬼若は足を速めた。

ヒノエの言う通りにしておけば良かった

心の中で小さく舌打ちをしながら鬼若は再び強風が吹き飛ばした外套を引き寄せた。

今日は後悔してばかりだ。後悔するような選択をしてしまう自分が憎い

外套を何度も吹き飛ばされるので、鬼若のイライラは募りそのイライラは自分に向けた。
ヒノエはそのような鬼若を気遣ってか、咎めるような視線は向けても、その言葉を口にすることはなかった。
数回目の外套の逃亡に鬼若は痺れを切らし、とうとう外套を脱いで手に持った。
ヒノエは安心したのかさらに足を速めて鬼若との距離を広げた。
置いていかれては適わないと鬼若もヒノエを追うようにして走った。
二人は無言のままだったが、顔は不思議と笑顔だった。

どのくらい走ったのだろうか。
二人の目の前に小高い丘が見えてきた。
ヒノエはそれを見つけるとより一層嬉しそうな顔でさらに早く走った。
あそこに桜があるのかと鬼若は悟った。
早くその場に行きたかったが、鬼若にはもうこれ以上速く走る力が残っていなかった。
仕方なく鬼若はそのままの速さで走った。
その間にもヒノエは小高い丘の頂上まで登り終えて、鬼若の方を振り返りながら叫んでいた。

「おねえちゃん、こっちこっち!」

その顔はとても嬉しそうにキラキラ輝いていて。
目の前にあるものの素晴らしさを伝えるには充分すぎるほどに。
鬼若は転びそうになりながら丘を走り上がった。
やっとのことで鬼若が頂上にたどり着いた瞬間、また強い風が吹いた。
今度は目も開けていられないほど。
鬼若は思わず目を閉じた。
風はすぐに通り過ぎた。
そこでゆっくりと目を開けた鬼若の目に映ったものは―――