第2章・第6話 捜索指令

October 18 [Mon], 2010, 22:12
レイ達はウルフェンとの話を終えると、ホテルへ戻る。
そして部屋へ帰る道中、ルナがレイに話しかけた。
「……探索はどうするの?」
するとレイは少し考えて、答える。
「探索ねぇ……、一先ずテラとジャイロに行かせようかなと。
仕事ぶりも見てみたいし」
「ふぅん」

そう言うと、レイ達はテラとジャイロの部屋に向かった。
そして中に入ると、テラとジャイロと共にファルも居た。

「あら? ファルも居るんだ」
ペレが意外そうに言うと、ファルは微笑んだ。
「戦艦の修理が時間掛かりそうだからな。
向こうでジッとしてるのもなんだから、ホテルに来たんだ」
「ふーん」

そこでレイはテラとジャイロに話しかける。
「テラ、ジャイロ、貴方達に頼みがあるんだけど」
するとテラは怪訝そうな面持ちでうなずく。
「はい、何でしょう?」
「貴方達、蟲殺(むしごろし)って知ってる?」
テラは即答する。
「もちろん存じていますよ。
最強といわれた殺し屋ですよね」
「そう。で、頼みというのは、貴方達にその蟲殺の子供を探して欲しいの」
レイの話に、テラとジャイロは少し驚いた表情を見せる。
「蟲殺の子供を?」
「蟲殺に子供が居たのか……」
レイはうなずくと続ける。
「蟲殺の子供と思われる人物は大方目星が付いてるわ。
一先ず、クラムスイヤ共和国のインデダム地域南部に有る、
マーテタウンという町に向かって。
そこに居るセマという少年に会ってちょうだい」
「はぁ……。
それは良いですが、蟲殺の子供であるか否かは、
どの様にして見定めれば……」
テラは少し困惑した様子で問いかける。
「それが難しい問題ね」
レイはそう言うと少し考え、答える。
「蟲殺はサタンスペルに犯されていたから、蟲殺の子供にもそれが遺伝しているはず。
だから証拠として紫色の傷跡のような物が体に有る筈だわ。
前にエレに調査させた時には、セマの左腕に紫の傷跡の様な物が確認できていたわ。
とりあえず蟲殺の写真を渡すから、
これを参考に見つけ出して傷跡が有ったら私の元へ連れてきて頂戴」

「かなりアバウトですね……」
「だってこれしか方法が無いんだもん。
情報が皆無なんだから」
レイは両手を腰に当てて毅然と言う。
そしてレイは、
「はい、これが写真」
と言って写真を差し出した。



テラは受け取ると、写真をまじまじと見つめる。
「所々、見た事の有る面子が有りますね……」
テラは少し驚いた表情を浮かべた。
そこへルナは写真を覗き込むように見ると、
「あっ、これオーラン王国の内戦の時の写真ね! なつかしー!」
と、懐かしそうに叫ぶ。
「王都決戦の一週間くらい前に撮った写真よ」
「サン変わってないわね〜。アルフォンヌも全然だし。
レイはこの頃の方がキリッとしてたのね」
ルナの言い草に、レイは眉をひそめる。
「まるで今は緩みきってるみたいな言い方ね」
「生き生きしてたと言いたいのよ。
今はなんか余り活気が無いというか……、疲れてるような感じ」
「そう?」
レイは腑に落ちない様子だ。

そこへテラはレイに尋ねる。
「それで、蟲殺というのはドナタです?」
テラの問いかけに、レイは答える。
「一番前で肩を抱えられている女の子よ」
するとテラとジャイロは意外そうな表情を浮かべ、写真を繁々(しげしげ)と眺め込む。
「この娘(こ)が……」
「蟲殺は女だったのか」


レイは写真に写っている人たちを説明しはじめる。
「蟲殺の隣に居るのがワグナー・ストリングス」
テラはワグナーの名を聞き、驚く。
「ワグナー!? 内戦で数多くの戦功を上げた英雄ですよね!」
「そう。で、ワグナーは蟲殺の彼氏だったのよ。
この内戦が終わったら蟲殺は、ワグナーと結婚する約束をしてたんだけど、
王都決戦の時、ワグナーが敵総大将と相打ちで死んじゃったのよね」
「そんな事が……」

そしてレイは説明を続ける。
「それで一番右に居るのがサンで、その隣でVサインしてるのがアルフォンヌ、
後ろに居るのがアタシ。
腕組みをしてる男性がセマ・ルロース・グライシスで、
その隣の槍を持った女性がミラルカ・アンジェリカ・ルロース・グライシス・オーラン。
一番左の太った男がイェメス・クラリオ・ピピロリッチ」
「き……綺羅星(きらぼし)※集結ですか」
テラはその並ぶビッグネームの数々に唖然とする。
レイは笑って答える。
「フフ、そうね。
セマはオーラン王国国王、ミラルカはその王妃で、イェメスはそれらの補佐官。
アルフォンヌは書記官だから、オーラン王国の現首脳陣、勢揃いね」


そこへファルは呟く様に言う。
「蟲殺か……」
「ファル、興味有る?」
「まあな。ガキの時に一度だけらしき人を見かけた事があるからな。※序章・第3話参照
そいつが蟲殺だったのかが気になったりする」
するとレイは言う。
「それじゃ見せてあげましょうか」
「え? いや、でも俺の眼は……」
「大丈夫よ。私が見ている光景を貴方の頭の中に送れば見る事が出来るわ」
レイはそう言うと、テラから写真を受け取ってファルの傍に行き、
ファルのおでこに左手を添えた。
そしてレイが写真を見つめると、ファルの頭の中にその光景が映し出される。
「……ああそうだ、やっぱりあの時見た少女……」
「確か、ファルは小さい頃オーラン王国の王都に住んでいたのよね」
「ああ。五つの時に内乱が終わって、その後共和国に引っ越したんだけど……。
何で引っ越したんだっけな……、思い出せないなぁ、
…メルが生まれたのは共和国に来てからだっけ……?」
そこで、ファルは思い出したように言う。
「そういえば、前々から蟲殺が誰かに似てると思ってたんだが……」
「? ……どうしたの?」
「いや、改めてよく見たらメルに似てるなーって……」
「何ですって!?」
レイは驚く。

そこでペレが思い出したように言った。
「そういえば、メルの左肩辺りに紫色の傷跡が有ったわね……」
「たしかに有ったな」
ファルも同意する。

「……なんて事」
レイは驚きの表情を隠せない。
そしてルナも動揺している。
「という事は、メルがウルの子供ということ!?」
「それは直接会ってみなきゃ分からないけど……」
レイ達の話に、ファルは困惑した様子で言う。
「オイ、ちょっと待てよ、メルは俺の妹だぜ!?
何で蟲殺の子供になる訳!」
するとレイは話す。
「貴方達に血縁が有るとは限らないわ。
ウルの子供は、普通に生きて欲しいというウルの願いで、
一般人に養子として出したからね。
だから養子に出た後どうなったのか分からないし、
私達も誰に出したのかを関知してない」
「誰に養子に出したのかも分からないのか」
ファルは怪訝な表情を浮かべて言った
すると、レイは言い放つ。
「イェメスに全部一任してたから。
それに一般人の捨て子として部下に全部任せて養子に出されたから、
イェメスも養子縁組には直接関与してないし」
「丸投げっすか……」
「イェメスの担当範囲外だから。担当部署に任せただけよ」
レイは平静に言った。




「――さーて、それじゃメルをどうしようかしらね……」
レイはメルの対処を考える。
連れてこようにも、ソレイユに囚われている以上、
無事に連れてくることは出来ないだろう。

そこへルナは言った。
「今はソレイユの幹部達の下に居るんじゃないかしらね。
ユグドラシルは不在だし」
「そうか……、それじゃあメルの事はペレに任せましょうかね」
「私に!?」
ペレは驚く。
だがレイはそれを気に止める事も無く、うなずいて話を続ける。
「そう。無理に連れ戻す事は出来ないからね。
それに、ソレイユの動向も探っておく必要があるし」
「私にスパイしろと……?」
「そういう事。別に嫌なら良いんだけど?」
レイは不敵な笑みを浮かべる。

レイにはペレが断れないのが分かっているのだ。
ペレは、レイの要求を断れば唯では帰してくれない事は理解しているだろう。
であるからして、何としてもソレイユに帰りたいペレが断れるはずがない。
ペレは渋々うなずいた。

するとレイは続ける。
「それじゃ、ペレはソレイユに戻ってもらおう。
何処へ送れば良い?」
ペレは少し考えると答えた。
「……マーテタウンで良いです」
「そう。じゃ飛空船を用意するから、テラとジャイロと共に向かえば良い」

レイはペレにそう言うと、テラに向き直した。
「それとテラ。セマは今、ディティールス家に使わされているらしいからな。
もしセマが蟲殺の子供だと確信が持てたら、
ブラックドラゴンの事務所経由で私に連絡しろ。
ディティールス家の主人は、インデダム地方地方長官。
素直にセマを引き渡すとは思えないからな」
「はい」
テラはうなずく。
そして、レイは話を締めくくる。
「それじゃ、準備が整いしだい空港に行け。
飛空船を手配させておく」





注訳
『綺羅星』
地位の高い人や明るい物が多く並ぶようす。


あとがき
大変お待たせいたしました。
第6話公開です。公開が遅れてしまって申し訳ありません。

今回はテラとジャイロを蟲殺の子供の捜索に向かわせるという話と、
ペレをソレイユへスパイとして戻す、そしてメルが蟲殺の子供なのではないかという疑いが出た話でした。

殆ど会話のみの話は書くのが難しいです。
かなり時間がかかってしまいました。


それと挿絵は結局トーンを貼りました。
トーンだと早いですね。


それと最近ケロロ軍曹を見ています。
子供向けのアニメですが、内容は結構大人でも楽しめますね。
特にパロディーが子供は知らないようなのばかりで……。
そして、外国語版のケロロ軍曹を見ちゃったりもしてます。
外国でもケロロ軍曹は放送されてるんですね。
外国語吹き替え版のケロロも、結構新鮮で楽しめます。
イタリアとかノルウェー、スペイン。意外にもタイでも放送されてたようです。
ケロっとマーチのスペイン語版とかまであったり、
イタリア版オリジナルのケロロ軍曹オープニングソングがあったり。

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第2章・第5話 サードヒューマンプロジェクト

October 01 [Fri], 2010, 20:28
レイは話を一区切りさせると改めてウルフェンに向いた。
「ま、それはともかくとして、
何でウルフェンがここに居るわけ?」
するとウルフェンは即答する。
「お前が寝過ごしたからだろ」
「あ、そういう事……」
レイは苦笑した。
そしてウルフェンは続けて言う。
「私にわざわざ会いに来るということは余程の話なのだろう?
カフェで話すのは余り好ましくない、私の家へ来い」
ウルフェンがそう言うと、レイはうなずいた。
「そうさせてもらうわ」



――ウルフェンの家はホテルから東へ徒歩十分ほどのところに有る。
ウルフェン達は家に向かって行くと、道の横に大きなレンガ造りの塀が
延々と続いているのが見える。

そして暫く歩くと大きな門の前へ出た。
「ここだ」
ウルフェンが言った。

ルナは驚いた様子で言う。
「派手な事が嫌いなアンタが、こんな立派な家に住んでるなんてねぇ」
「利便性を考えての事だ、色々な施設を入れてある。居住スペースは僅かだよ」


門の前には衛兵が両側に立って警備していた。

「お帰りなさいませ、ウルフェン様。そちらのお方々は?」
衛兵が尋ねると、ウルフェンは答える。
「私の知人だ。こちらは、アラレマス帝国陸軍ルナ・ヴェリオス少将、
そして、ワールドワイド・カンパニー社会長メナーディー・フォートネル殿と、
社員のペレ殿だ」
「了解いたしました。どうぞお通りください」

ウルフェン一行は門をくぐり、家へと向かう。
五分ほど歩くと、五階建ての大きなゴシック様式の建物が見えてくる。

そして玄関から中に入ると、大きなエントランスの先にある階段を上り、
三階に有る応接間に通される。

そして中にあるソファに皆が座ると、ウルフェンはレイに尋ねた。
「――で、話とは?」
「ユグドラシルの事とセカンドヒューマン計画だ」
レイは即答すると、ウルフェンは意外そうに聞きかえした。
「ユグドラシルは分かるが…、セカンドならルナに聞けば良いだろう?」
「聞いて素直に答えてくれるなら良いけど」
「確かにそうだな」
皮肉っぽく言うレイにウルフェンは笑って言う。
「まぁ、ユグドラシルについては私もかなり気にかけているからな。
それなりに知識は持っているが……、何を聞きたい?」

「ズバリ、ユグドラシルが何を考えているか」
「…ユグドラシルか……。
正直、私にも何を考えているかは分からんよ。
奴は神出鬼没、その上たいして行動は起こさないし証拠も残さない。
そもそも何のために行動しているのか、その目的すら分からん」
レイもうなずく。
「そうよね。私もだから不思議なのよ。
ここまでずっと私の思い描いた通りに順調に進んでいる。だから余計に怖い」
ルナも同じく同意する。
「確かにね……。
今まで計画を邪魔された事も無いし……」
「かえって協力しているくらいじゃない」
レイの言葉に、ルナは怪訝そうに聞き返す。
「……協力って、どういう事?」
「知らないの? ソレイユのボス、ルドラ。彼がユグドラシルよ」
「何ですって!?」
ルナは驚く。

そこでウルフェンは納得の表情を見せる。
「ルドラがユグドラシルという事ならば、奴の目的はハッキリする」
「何?」
レイが聞き返すとウルフェンはつづける。
「奴は、歪(ひずみ)を消すのが目的だろう。
その為にはセカンド計画の終了は好都合、いや不可欠だ」
レイは少し考えると呟く様に言う。
「……という事は、今まで特に行動を起こさなかったのは、
利害が一致していたからという事か」
ルナは続けて言う。
「それなら、本格的に行動を起こすのは歪が消えてからという事になるわね」
「選択肢は多くあるまい。奴がどんな行動を起こすかの予想は容易いが、
アルフォンヌと相談しておく必要はあるな」



「今の所、やるべき事はセカンド計画の推移を見守っていく事かな」
レイは呟く様に言った。
するとルナは続けて言う。
「Ω(おめが)計画も順調に進んでいるみたいだしね」
「まだΩ計画は動いてるのね」
「セカンドとサードの積み立てがあるからね、
かなり凄いのが出来るみたいな事を聞いてるけど……」

ルナの話を聞いて、レイは少し驚いたような表情を見せる。
「サード……、サードがまだ生きている」
「計画自体は終了したけどね、被験体が存在する限りサードの灯火は生きている」
するとウルフェンがポツリと言う。
「サード計画か……、結局セクレツム村は見つからなかったな」
ルナはウルフェンの話にうなづいた。
「戦争で全部吹っ飛んじゃったからねぇ。
ヨトゥンヘイム全域を探しても無かったし……」
「もう見つからないかもしれないわね。
記録が全く残ってないし、記憶も曖昧だし」

そこへ、ペレが怪訝そうに問いかけた。
「あの、セクレツム村というのは?」
するとウルフェンは答える。
「……生まれ故郷だよ。私達の」
「生まれ故郷……」
ペレは少し興味深げな様子だ。
そこへ、ルナは続くように言った。
「私達は幼馴染なのよ。メナーディーもね」
「幼馴染!?」
ペレは驚く。意外過ぎる事実だ。
「そう。そしてレイは、メナーディーの妹」
「メ、メナーディーの妹!?」

レイはうなずく。
「そうよ。ちなみに、この三人の中では私が一番最年少。
ルナはウルフェンの一つ下ね」
「けど、ルナは人間でしょ?
魔術師という訳でもないのに、百年以上生きていられるなんて事が……」

するとルナは小恥ずかしげに言う。
「まぁ、元は人間だったんだけどね……。
今は人間じゃないって言うか……、半分人間って言うか……」
するとウルフェンが言った。
「サイボーグなんだよ」
サイボーグと聞いて、ペレは首をかしげる。
見た目は唯の人間のように見える。
「全然サイボーグには見えないけど……」
「サイボーグと言っても、唯のサイボーグではない。
魔法金属で出来たミクロマシンの集合体が全身を構成しているんだ。
だから、見た目や肌の感触は完全に人間だ」
「唯一生身の部位は脳だけ。他は全部機械よ」
ルナは淡々と話す。
そんなルナに、ペレはとても信じられない様子で言う。
「そこまでやって生きていられるのが信じられないわね」
だがそんなペレを余所目に、ルナは平然と話を続ける。
「……私はね、サードヒューマン計画で生まれ、
そしてΩ計画でサイボーグ化されたのよ。
セクレツム村はサード計画によって生み出された人たちが住んでいた村。
私たちはサード計画で生み出された人間なのよ。
そしてそれはペレ、貴女も関与しているわ」

「……私も?」

「知らない筈は無いわ。
メナーディーとレイは、貴女の遺伝子を利用して生まれたんだから」

ペレは考え込む。
一体何の事なのか。記憶を隅々まで探る。



『――素晴らしい力だ』
その時、記憶の奥底に眠っていた強く鮮烈な言葉が浮かんだ。
(……っ)
蘇る記憶。

雷雨の降る夜、クラムスイヤ帝国軍が火の一族の村へ押し寄せてきた。
長をやっていた私は、帝国軍に抵抗するも及ばず捕らえられた。

そして何処ぞと知れない施設へと連れて行かれた。


「――……インスクレトーラ生理生体分子化学研究所」
ペレは呟いた。
「覚えてるじゃない」
ルナは笑みを浮かべて言った。

そこへレイがルナに問いかけた。
「ルナはサード計画の事をどれくらい知っているの?」
「大体の事はね。
今では記録はすべて抹消されてるから、計画自体が無かった事になってるけど。
セカンドも恐らく同じ扱いになるでしょうね。
インスクレトーラ生理生化学研究所はまだヨトゥンヘイムに残っていて、
今はセカンドの研究所になってる」
「……なるほどね」
「サンにとっても因縁の有る所よね。
ウルも昔連れてかれたし、今度はウルの子供か……」

そこへウルフェンは険しい表情を浮かべて言った。
「……ウルの子供の発見、急がねばならんかもしれん」
「どういう事?」
レイが聞き返す。
「ユグドラシルがアラレマス帝国と組んだという事になれば、
間違いなく世界統一の時期が早まる。
歪を消すのは恐らく統一後か直前。
ならばその前にウルの子供を見つけなければ、
歪の消滅後に世界を揺るがす大事件が起こるやもしれん」
するとルナが問いかける。
「例えばどんな?」
ウルフェンは首をひねる。
「それは分からんが……、例えば生体兵器が暴走するとかだな」

レイは腕を組むと、どうしたものかと思案する。
「……ならサンだけに任せては手遅れかもしれないわね。
ウチでも独自に捜索させようかしらね」
「それが良いかも知れんな」
ウルフェンはうなずく。



あとがき
大変お待たせ致しました。
第5話公開です。

今回は何と言うか、余り纏まりの無い物になってしまいました。
歪やヨトゥンヘイムに関しては、いずれ解説します。
今はマズイです。けど、これらの単語も入れないと会話が成立しないので、入れました。

それからルナが実はサイボーグだったという事実が発覚しました。
これは、当初から考えていた設定です。
詳細はアラレマス帝国に到着した時に描く予定です。
しかもそのときはアレクスが登場します&レイがとんでもない事になるかもしれません。
どうなるかは構想中。

そして、次回はウルやレイたちの挿絵を入れようかと思っています。
絵は一応描きあがっていますが、着色するのが面倒なのでトーンを貼ろうかと思ったりしてます。
けど、トーンでは色の表現が難しいので、着色しようかどうしようか迷っています。

……多分、トーンを貼る事にすると思う。


それと、前回のあとがきを書くのを忘れてました。完璧に。
けどもう良いですよね。よく考えたら書くこと無いですし。

後書きはこんな所でしょうか。
それでは、次回をお楽しみに!

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第2章・第4話 ウルフェン

September 14 [Tue], 2010, 21:45
レイ達はアゲオン空港の傍にあるホテルに入っていた。

レイにルナ、ペレに、ツァルムとネパティロ、テラとジャイロ、
それぞれ一つずつ、計三つの部屋をとる。
だがルナとペレは部屋に入らず一階のエントランスに有るカフェでくつろいでいた。


ペレはコーヒーを飲みながら、エントランスを出入りしている人たちを眺めている。
「……すごいですね。
人間だけじゃなくてウルフ族やエルフ、虫族や鳥族まで、色んな人種が入り混じってる」
するとルナは言う。
「ここはミトラス教の総本山だからね。世界各国から信者がやってくるのよ
それにこの街は聖地とされているし」
「へぇ〜」
ペレは感心すると、ルナに話しかけた。
「…ルナもウルフェンに会うんでしょ?」
「そうよ」
ルナはうなずくと、ペレは続けて言った。
「ウルフェンってどんな人なんですか?」
するとルナは考え込む。
そして、しばらくすると答えた。
「そうねぇ……、一言で表すのは難しいけれど、簡単に言えば優しい人ね」
「優しい人ですか」
「ええ、彼が怒った所は殆ど見た事が無いわ。
常に人を気にかけていて、困ったり悩んだ入りしていると
自分の事の様に心配して悩んでくれる……」
「……面識があるんですか?」
ルナはうなずく。
「ええ、かなり長い付き合いよ。
私が帝国軍に入隊する前からだから」
「へぇ〜。すると、ウルフェンとは昔話とかするんですか?」
「ん〜、そんな所かなぁ。
別に特別話す事は無いからなー……。唯一有るとすればユグドラシルについてかな。
アルフォンヌは頼りにならないからねぇ」
「確かにあの人は駄目ですね……」
ペレも同意する。
アルフォンヌは力を持っているが、ヤル気が無いのが玉に瑕(きず)、全く役に立たない。
そしてルナは話を続ける。
「私が一番気になるのは、レイがウルフェンとどんな話をするかよ」
「レイが?」
「ええ。レイが何を聞きたいのかを知ることで考えている事が分かるわ。
貴女を捕虜にしときながら殆ど自由に行動させている。
それは何故かしらね」
ルナはそう言うと、鋭い目でペレを見つめる。
「確かにそうですね……」
ペレはルナに言われて初めて疑問に感じた。
レイには普通に扱われていて、殆ど束縛されていないので、
捕虜であるという感覚すらなかった。
尤も、レイが自分からは逃げられないと確信している為とも言えるが、
それにしても、戦艦内のコンピューター室に容易に入る事が出来たり、
艦橋にも自由に出入り可能、ホテルに着いても外へ出ようと思えば可能だ。

ルナは続ける。
「ま、レイはいつも尤もらしい事を言ってるけど、考えている事はいつも同じよ。
それはブラックドラゴンをより発展させる事。
その為に、障害となる物は徹底排除するわ。
その障害がユグドラシルでありアラレマス帝国。
貴女達ソレイユに協力しているのも、利用価値があると考えているからよ。
利用価値が無くなれば、すぐ見捨てるでしょうね」

「……そういう人なんですか、あの人は?」

「結局は自分の為なのよ。アイツは組織のことしか考えていない。
組織の為なら他の犠牲もいとわないわ。
サンに蟲殺の子供を探すのを協力しているのも、
帝国に蟲殺の子供が渡ったら困るから。サンの為じゃあないわ。
サンは賢いからそこら辺は理解してるでしょうけどね」
ルナは険しい表情を浮かべると、言い放つ。
「レイの為に苦しみ死んでいく人が何万何千とも居る。
だからアイツを必ず処刑台送りにしてやるのよ。
私が今レイと一緒に居るのも捕まえる為。今はチャンスをうかがっているの」


そこへ遠くから声がした。
「だが、我々も同じ様なものだろう?」
二人は声のした方を向いた。
すると、そこにはウルフ族の男性が立っていた。
男性はくすんだ青色の毛色をしており、
全身をすっぽり覆うフード付きのマントを頭まで羽織り、左手には木の杖をついていた。

ルナはそのウルフ族の男性を見ると少し驚いた表情を見せ、呟く様に言った。
「……ウルフェン」
するとウルフェンと呼ばれた男性は少し微笑んだ。
「久しぶりだな、ルナ」
ウルフェンがそう言うと、
ペレはウルフェンを興味深げにまじまじと見つめ回した。
そして言う。
「この人がウルフェンですか」
ルナはうなずく。
「そうよ」

すると今度はウルフェンがペレへ向くと怪訝そうに顔を見つめる。
「……レイ……ではないようだな。君の名は?」
するとペレは笑顔で答える。
「ペレといいます。貴方の武勇伝は予々(かねがね)伝え聞いてます」
ペレはそう言うと、ウルフェンは椅子に座りながら言葉を返す。
「ありがとう。私はグレイア=ウルフェンだ。
昔はクラムスイヤ帝国とアラレマス帝国で軍人をやっていたが、
今は引退してこのミトラス教国で管区大司教の役職に居る」

そこへルナがウルフェンに問いかける。
「……で、私もレイと同じというのは?」
するとウルフェンは、静かにゆっくりと話す。
「人を苦しめ殺してきたのは、レイだけでは無いという事だ。
我々も人を苦しめ殺してきた。
それは軍人が故の悲しい性であるが、レイと何が違うというのだ。
レイが組織を思うのを同じく、我々軍人も国の為に敵を苦しめ殺してきたのだ」

ルナは視線を落とす。
「……つまり、人の事は言えないって事ね」
「そういう事だ。やっていることはレイと大して変わりはしない、
唯一違う事といえば大義名分があるかどうか」

ウルフェンの語りにルナは顔を伏せると、右手の手の平を見つめる。
「まあ、ね。暗部に生きてるから汚いことも数多くやってきたし、
今はセカンドヒューマン計画の責任者だし……」
ルナの、眼を覆う髪の間からチラリと見える眼は、どこか悲しげな感情を表していた。
ウルフェンはそれを察してか、話題を変える。
「…まあでも、お前がアイツを毛嫌いするのはそんな理由だけでは無いだろう?
最後に逢ったのは三年ほど前になるが、年月を追うごとにメナーディーに似てきている」
「…っ……」
「……まだ、彼女を死なせてしまった事を引きずっているのか?」
「………」
ルナは黙り込んだ。
「レイを見るたびに彼女の事を思い起こすんだろう。
もうあの事は気にするな、彼女の死は免れなかったのだ。
それが戦争というものだ」
「けど、あの時私がもっとしっかりしていれば……」
「過去の事を言っても、彼女は戻ってくるわけではない。
重要なのは彼女を忘れないこと。
そして、死んだ彼女の分まで生きること。
そうする事で彼女の志半ばで散った無念も晴らされるだろう」
ウルフェンは諭すように言うと、ルナは神妙な面持ちでうなずいた。
「………うん」

そこへ、ペレがウルフェンに尋ねる。
「……あの、メナーディーというのは?」
「…元空軍大佐メナーディー・クロス。
私やルナの親友にして元同僚だ。
天才的な指揮能力と状況判断力で、次々と指揮を取った作戦を成功させ、
戦闘機に乗れば、五機撃墜すればエースパイロットと呼ばれる中で479機も敵を撃墜。
これら数多くの勲功を上げ、メナーディーは二十五歳の若さにして
大佐の座までのし上がった女性なのだ」
ウルフェンの説明にペレは感嘆する。
「……凄い人だったんですね………」
「ああ。だが彼女は戦争で死んだ。
メナーディーは、私とルナと同じ部隊にいてな。
ルナが敵軍の本陣に潜り込んだんだが、敵にバレて捕まってしまったんだ。
それで私とメナーディーが、ルナの救出の為に本陣に突入して
ルナを牢から無事助け出したんだが、脱出する途中、敵に見つかり銃撃戦になったんだ。
その中でルナが足を撃たれて倒れた。
メナーディーが助けようと駆け寄った時に、敵に足を撃たれ倒れこんだ。
その倒れこんだ所が運悪く敵の真ん前で、メナーディーは蜂の巣さ」
「……酷いですね」
「それが戦争というものだよ。やさしい戦争など有りはしない」
ウルフェンは鋭い眼でペレを見つめる。




「――さて、それにしてもレイは遅いな」
ウルフェンは時計を見ながら呟く。
するとルナはウルフェンに尋ねた。
「ところでウルフェン、貴方が何でここに居るの?
こちらから出向く予定だった筈だけど」
ウルフェンは答える。
「約束の時間を三十分も遅れているからな。
何か有ったのではと心配になってきたんだよ。
時間にうるさいレイが遅刻する事は、まず無いんだが……」
するとルナは話す。
「大方、部屋で熟睡してるんでしょう。
彼女かなり疲れた様子だったから」
「それなら良いんだがな」
「あ、でも貴方の予定が狂っちゃうわね」
「大丈夫だ。今日はもう公務の予定は無い。
レイにはゆっくり休んでもらうとしよう」
「良いの?」
ルナは申し訳無さそうに聞くと、ウルフェンは笑みを浮かべた。
「構わんよ。その間、ゆっくり昔話にでも興じようではないか。
お前と逢うのも十年ぶりだしな」
「もうそんなになるかしら?
確か前逢った時は杖をついてなかったっけ」
「フフ、もう146だ。人間で言えば七十過ぎの爺。
足腰も弱ってくる」
するとルナは怪訝そうに言う。
「けどその割には、存在感が昔より有ると思うんだけど。
とても風格が有るわ」
「先が無いからな。堂々としていられるんだよ」
ウルフェンは自虐気味に言う。
そこへペレが割り入ってくる。
「いやでも、ルナとの話を聞いていると、さすが司教様だなと思うもの。
いぶし銀って感じですよ」
「そうでもないさ。そもそも私はミトラス教信者じゃない」
この発言にペレは驚く。
「え! でも大司教なんですよね?」
「大司教だがミトラス教信者ではない。
一応、表向きはミトラス教信者だが、
私はミトラス教の最高神ソルを信仰しているんだよ」
「???」
ペレはウルフェンの言いたい事がイマイチ分からない。
するとルナが言った。
「ウルフェンはソル教信者なのよ」
「ソル教…といえば、確かオリュンポス教国の宗教でしたよね。
今はアース神国になってますけど」
ウルフェンはうなずく。
「そうだ。元々はオリュンポス教国に住んでいたんだが、
戦争で国がメチャクチャになってね。
戦争が終わった後、ミトラス教国へと移り住んだんだ」
「へぇ〜」
「そしてその後、様々な事情からミトラス教国の管区大司教となったのだ。
本音を言えば、そろそろ隠居してのんびり暮らしたい所なんだが、
そうもいかない世界情勢になってきてな……」
するとルナが問いかけた。
「アラレマス帝国? それともブラックドラゴン? それともユグドラシル?」
ウルフェンは答える。
「全てだよ。レイによって、世界の勢力図が書きかえられようとしている」
「勢力図が?」
ルナとペレは聞き返した。
するとウルフェンは鋭い視線を二人に向けた。
「そうだ。レイが企んでいる事。
それは世界統一」

「世界統一!?」
ルナとペレは驚く。レイが世界統一を企んでいようとは思いもよらなかった。
ウルフェンは頷(うなず)く。
「そう、それもアラレマス帝国によるな」
だがルナは腑に落ちない様子で聞き返す。
「ちょっと待って、それ変じゃない?
だって、アラレマス帝国はブラックドラゴンとは犬猿の仲。
最大にして最強の宿敵なのよ」
するとウルフェンは笑う。
「フフ……ルナ。暗部に居りながらレイの影響力を認識しておらんのか」
「ええ?」
「アラレマス帝国皇帝は、誰のおかげで皇帝の座につけたと思っているんだ?
レイのお陰だぞ?」
ウルフェンの話にルナは喫驚する。
「え……!? けど、レイが皇帝陛下に接触した痕跡は全く……」
「フ、何を言っている。あの皇帝は五代ぶりの文人出身の皇帝ではないか。
しかも外部出身の皇帝だ、成り上がりじゃ無い」
「!! ……という事は」
「当然、政治はブラックドラゴンに寄った物になる。
そして今、クラムスイヤ共和国に大事件が起こった。
これにより共和国と帝国の関係は非常に微妙なものになる。
これが意味するものは何か。……分かるだろ?」
ルナは呟く様に言う。
「……戦争。けど共和国と戦争をして一体何の得が……」
「さっきも言っただろう、世界統一をする為だよ。
お前も皇帝から何を考えているか聞かされているだろう?
だったら、世界統一の意味が、そしてその先に何が起こるか。
おのずと答えは見えてくるはずだ」
「……!」
ルナの表情が険しい物となった。
ウルフェンは話を続ける。
「今やこの世界はレイによって動いているも同然だ。
裏社会の帝王と呼ばれるレイが、表社会まで影響を及ぼすようになっている。
そして、ユグドラシルがそこへ出てきたことで更に厄介な事になってきた」

そこへ三人が囲むテーブルへ、女性が歩み寄ってきた。
「やれやれ、よくもまあ私の悪口を並べ立ててからに……。
感心するわ」
女性は三人の傍まで来ると言い放った。
するとウルフェンが言葉を返した。
「遅かったな、レイ」
「いやぁ、ごめんなさいねぇ。豪快に寝過ごしちゃったみたい。
おかげで悪口をたっぷり聞けたわ」
レイは皮肉たっぷりに笑顔で返す。
するとウルフェンは笑って返した。
「フフフ、陰口ほど聞いて後悔する物は有るまい」

そこへ、ペレがレイに言う。
「けど、まさかアンタが世界征服なんて大それた事を企んでるなんて、
思いもよらなかったわ」
するとレイは怪訝な顔をする。
「はぁ? 世界征服なんて狙ってないわよ」
「何よ、シラをきる気?
ウルフェンがキッチリ教えてくれたわよ」
するとレイは冷めた表情で言った。
「人の話はしっかり聞く事ね。
ウルフェンは、私が世界征服を企んでるなんて一言も言ってないわよ。
私が企んでるのは世界征服ではなく世界統一」
「どっちも同じようなものじゃない」
ペレがそう言うと、レイは否定する。
「いいえ違うわ。
私は全世界を治める気は、さらさら無いわ。
同じやるなら、わざわざ帝国の皇帝を自分ひいきの奴に挿げ替えるなんて
面倒な事はせずに、一つずつ国を潰していくわよ。
私にとって重要なのは、アラレマス帝国が世界統一する事」

「……そんな事をして一体何の得があるというの?」
ペレは険しい面持ちでレイに言い放った。
するとレイは鋭い笑みを浮かべる。
「その時が来れば分かるわ」



あとがき
大変お待たせ致しました、第2章・第4話を公開しました。
今回は時間が無いので後書きは後にします。


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