第2章・第13話 確信

January 20 [Wed], 2016, 3:10
ディティールスはペレとパリスの戦いを会場の上にある特別観覧席から見ていた。

ディティールスはこの戦いを見ていて、テラの言っていたことが事実なのではないかと思い始める。
パリスの扱う千音雷鳴拳は、闘気を自在に操り振動を共鳴させて対象を破壊する拳法。
共鳴させる音が雷鳴のような音から雷鳴拳の名が付いている。
習得が極めて難しい上、一撃必殺の拳法故に最強の拳の一つとされている。
千音空界拳の亜流とはいえ、同等レベルの強さのはずにもかかわらず、簡単にペレは撃ち破った。

これほどの強さならば、セルでも勝てるかは怪しい。

……決勝は、見逃せない戦いになる。



――決勝。

ペレとセルが会場の所定の位置につく。
ペレはテラの言う通り本気で戦っても良いものだろうかと迷いを感じていた。
セルが強いのは確かだろうが、そこまでして意味があるのだろうか?
ペレはそう思いながらセルの顔を見ると、待合室で見せていたのとまるで変わっている事に気が付く。
目付きが違う、目が血走っている。まるで獲物を狙う猛獣のようだ。顔つきも険しくなっている。これが同じ人なのだろうか。
ペレは怪訝な顔を浮かべるとセルに話しかけた。
「かなり……ヤル気なようね」
するとセルは鋭くペレを見つめ、言った。
「マスターに殺す気で戦えと命令されたのも有りますが……」
そこで一旦言葉を切ると体を少し右へ向け、軽くその場でステップをし始める。
そして、覚悟を決めたかのような顔を一瞬した。
「テラさんに出生を知りたければ貴女と死ぬ気で戦えと言われましたので」

ペレはそれを聞くと、腹をくくる。
本気で相手をしよう。
そして言った。
「良いだろう、死んで後悔するなよ」

そしてアナウンスが鳴り響く。
『ついに決勝戦となりました!
観覧席は満員御礼の大観衆です!
それでは選手のご紹介といたしましょう!
片や、初出場にもかかわらず、数々の強者達をたった一撃で倒してきたペレ選手!』
ペレの紹介で物凄い大歓声が沸き起こる。
『続いて!
昨年度世界大会優勝者にして、今大会でも数々の猛者達を倒して余裕の決勝進出!
セル選手だーーーッ!!!』
セルの紹介で今度は地鳴りのような大歓声が沸いた。

『一体今大会を制するのはどちらなのか!?
それでは試合開始のカウントダウンです!』
会場内が一気に静まり返る。
皆が緊張の一瞬を待って見つめている。
『5、4、3、2、1、
GOーーーッ!!!』
「疾風!」
刹那、セルが右足で地を蹴り、目にも止まらぬ速さでペレに向かい左足の飛び蹴りが襲う。
ペレは瞬時に右手の平をセルの左足に合わせるように向ける。
「空破爆烈掌!(くうはばくれつしょう)」
手の平から炎と共に閃光が走るとほぼ同時にセルの蹴りが衝突、空裂音と共に衝撃波が発生しペレは上後方に吹き飛ばされるがセルは衝撃波をものともせず、その場に着地すると、闘気を纏ってペレに向かって跳び、右足で跳び蹴りを放つ。
「鷹翔爪襲蹴撃!(ようしょうそうしゅうしゅうげき)」
だが、ペレは宙で体勢を瞬時に立て直すと、両手をセルに向ける。
そして魔力を練って魔法障壁を発現しようとする、が間に合わず、ペレは瞬時に避けようとするも避けきれずに両手をかすめて左肩に直撃しマントが千切れ飛ぶと共にペレも吹き飛ぶ。
そして、ペレは受け身をとれずに地面へと叩きつけられた。

セルもそばへと着地する。その距離およそ十メートル。
セルはペレに近づこうとせずにじっとしてそのまま様子を伺うかのように見つめている。
ここで安易に近づくほど愚かなことは無いと悟っているからだ。

するとペレは、ゆっくりと上体を起こす。
左肩には獣に引っ掛かれたような傷が入っており、血が流れていた。
だが、ペレは傷を気にする様子もなく、ゆっくりと立ち上がる。
すると傷口の周辺から炎が立ち上ると、出血が止まり、みるみる内に傷が治癒していく。
まるで何も無かったかのように、綺麗に傷が治癒する。

そしてペレは左肩を回すと、言う。
「なかなかやるようね」
するとセルは、またその場でステップしだした。
ペレの目をじっと見つめる。
「僕の牙無岐拳(がむきけん)は誰にも負けません」
それを聞くとペレは両手を前で合わせ、親指を下に他の四指を上にして指を合わせてダイヤのマークのような形にする。
そして、ペレの顔に笑みが浮かぶ。
「……良いわ。なら、私に攻撃を当てた褒美に、闘鏖燬炸拳の真髄を見せてやろう」
するとペレの周りに闘気と魔力が互いに回りながら生じていく。
そしてそれらが交わりながらペレの身体へと纏わりついていく。

相反するはずの闘気と魔力が混じりあっていく怪奇な現象に、セルだけでなく会場内の誰もが信じられないとばかしに息を飲んでいる。

闘気と魔力が交わった魔闘気はペレに纏うと、ペレの全身から、まるで燃えているかのような小さな炎が生じていく。
そしてペレは両手を広げると、セルを真っ直ぐ見据えて言った。
「闘鏖燬炸拳は、闘気と魔力を混じ合わせた魔闘気を扱う。今の今まで見せてきた技は、技とも言えない基本中の基本の技」
そして身体を右へ斜めにずらすと両腕を軽く曲げて前に少し出し、手を掴むような形にして構える。
「次に出す技こそが、本当の闘鏖燬炸拳よ」
ペレの身体から一気に炎が立ち上る。

それを見るやいなや、セルは闘気を練って脚に纏わせていく。
「……お相手します!」

刹那、ペレはセルに向かって左手を前に右手をその少しあとにして突きだしながら走り出す。
ペレの両手に激しい炎が纏い、眩しいほどの光が生じる。
「闘鏖燬炸拳奥義 焔燬纏滅波掌!(えんきてんめつはしょう)」
セルは闘気を右脚に纏わせるとペレの攻撃に合わせるように蹴りを放つ。
その纏った闘気は獅子の形になると、強烈な閃光と共にまるで噛みつくように襲い掛かる。
「牙無岐拳奥義 獅子閃光襲牙撃!(ししせんこうしゅうがげき)」
セルの獅子の闘気を纏った蹴りがペレに向かって襲い掛かり直撃!
が、ペレに直撃した部分が炎となり空振りした。
セルは突然の事に戸惑いを覚えて顔をしかめるが、その刹那、ペレの炎がセルを纏うように襲い掛かる。
炎はセルが驚く間もなく全身に伝播し、炎上する。
何とかしようと必死で考えるも何も思い浮かばない。それどころか苦しさで頭が白くなってくる。

ペレはセルの後ろで炎を纏ったまま背を向けて立っていた。
まるで何事もなかったかのようにすました顔で佇んでいる。
「……終わりね」
そう言うと指をならす。
するとセルを纏っていた炎が爆発した。



――セルの立っていた場所は激しく燃え上がり、これで勝負が決まった。
会場内の誰もがそう思った。

ペレは炎上している炎を向いて見ると、炎が微妙に揺らいでいる事に気付く。
おかしい……、そう思った刹那、
炎の中から何か人形のものがペレに向かって飛んでくる。

ペレはすぐさまそれが人であると認識すると同時に、その飛んできたものは右足で跳び蹴りを放ってきていると気づいた。
「飛躍破頭脛蹴!(ひやくはとうげいしゅう)」
右脚のすねの部分でペレの頭部に向かって蹴り飛ばす、が、頭部は炎に変わり空振り、そしてペレの後ろに着地する。
ペレはすぐさま振り返ると、そこには全身が炎で燃えて焦げたセルの姿があった。
これほどの火傷を負いながらな何故平気で立っていられるのかが不思議だ。
ペレは怪訝に思うも、考えている暇はない。
間髪いれずにセルの背中向けて右手で手刀を放つ。
手刀は炎と閃光を放ちながら襲い掛かる。
セルは避ける間もなく、背中に手刀が突き刺さると、刺さった部分と周りが炭化した。
ペレは刺さった手から伝わってくる感触に違和感を覚える。
セルの身体の中には魔力で満ち溢れている。
普通ならば死んでいる程のダメージを受けながら、何故これほど豊富なのか。
疑問が浮かんでくる。

刹那、セルがその刺したペレの右腕を右手で掴んだ。
ペレはそれに仰天する。

セルの右腕が有り得ない方向で曲がって掴んでいた。
(何よこれ……)
そう思うとほぼ同時に、セルがペレの右腕を背中から引き抜くと、右腕の力のみで前方にペレを放り投げた。

そしてペレが空中で受け身を取る間もなくセルはペレに向かって跳ぶ。
「牙無岐拳奥義 狼虎襲牙齧鏖脚!(ろうこしゅうがげつおうきゃく)」
脚に瞬時に闘気が纏うと狼と虎に変わり、右脚の回転蹴りと同時にペレに襲う。

ペレは空中で姿勢がままならないまでも、蹴りを一瞬のタイミングを計り左手でセルの右足を掴んで止めた。
が闘気は止まらずペレに襲いかかる。闘気が直撃すると上半身に無数に切れこみがはいっていき、血が吹き出す。
その刹那、ペレはすぐさま右手の平をセルに向けた。
「空破爆裂掌!」
炎と閃光と共に衝撃波が発生し、セルを直撃、吹き飛ばした。

ペレはその場に着地する。
大量の血が地面へと滴り落ちている。
が、出血した血が炎上していくと徐々に傷が塞がっていく。

そこへセルは受け身をとって着地するとペレに向かってすぐさま走ってくる。
ペレのもとへ来るまで傷は完治しそうにない。
それを見てペレは舌打ちをし、
「休む間も与えてくれないか」
そう言うとペレの全身が炎で包まれる。そして、セルに向かって跳ぶと、両手を手刀の形にして両腕を横へ広げた。
「闘鏖燬炸拳奥義 紅蓮焼燬隕断撃(ぐれんしょうきいんだんげき)」
ペレの両手が紅蓮の炎を纏うと共に光り輝く。
セルはそれを見て闘気を脚に纏わせるとペレに向いた。

ペレはセルの側まで距離をつめると両手をセルに上から降り下ろす。セルはその攻撃が直撃する寸前にペレに向かって左足で後ろ回し蹴りを放つ。
「牙無岐拳奥義 天狼襲牙脚!(てんろうしゅうがきゃく)」
脚に纏った闘気は狼の形になり、前足で切り裂くように襲い掛かる。
攻撃は直撃する、が、ペレの身体が炎となり空振り、そしてペレの両手がセルの双肩に上から直撃、胸元まで手刀と共に一気に切れ込んで炎上。
その衝撃でセルの足元の地面まで砕けた。
セルは苦悶の表情を浮かべる。
「何で……当たらないんだ……」
ペレの身体は炎から元に戻るとセルに言い放つ。
「これこそ闘鏖燬炸拳の真髄、究極奥義 緋焔陽炎纏華(ひえんようろうてんか)。
魔闘気により私の身体は炎と化し、相手の攻撃が効かない上に、炎が相手にまとわりつきダメージを与える」
そう言い終わるとペレは、セルから手を引き抜いた。
傷口から大量の血が流れ落ちる。
セルはその場で膝をついたが辛うじて倒れない。
ペレはそれを見ると言った。
「……勝負はついた。お前の敗けだ」

だがセルは全く反応を示さない。
ペレはそれを怪訝に思うと、ふと何かに気付く。
セルがうっすらと笑みを浮かべたような、そんな気がした。

刹那、ペレの顎に向けてセルが跳び膝蹴りを打ち込んできた。
ペレは突然の事に不意をつかれ避ける間もなくセルの攻撃が直撃するも、緋焔陽炎纏華のお陰で炎となり空振り、そのままセルはペレの2mほど後方に着地した。
ペレはすぐさま後ろを振り返ると喫驚する。
セルの両肩から流れ落ちる血が全身まで巡り、まるで服のようにまとわりついていた。
一体何が起こっているのか、ペレには理解できない。
そしてセルはゆっくりとペレに振り返る。
「手加減……したね?」
セルの顔からは一切の表情が消え失せていた。
ペレはそれを見て背筋の凍るような感触を覚える。
生きた人のする顔じゃない、そう思った。
そしてあることに気付く。
セルの顔が傷も火傷もなく、綺麗な状態になっていたのだ。
身体も、皮膚が見えている部分を良く見ると綺麗になっている。
完全に無傷の状態になっているのだ。

ペレは、魔法も何も行っていないにも関わらず、無傷になっている事に戸惑いを覚えるとともに、まさか、本当に彼がサタンスペルの持ち主なのではないかと思う。
ただの人間に、これほどの治癒能力があるはずがない。
ここで、ペレはテラの言っていた事の本当の意味に気がついた。
殺す気で相手をしろというのは、ペレがレイであると信じ込ませるだけでなく、サタンスペルの持ち主の場合、普通の人間ならば死んでしまうほどのダメージを与えなければ勝てないという事なのだと。
ペレは、セルの言う通り少しだけ手加減をしていた。
さっきの攻撃も、本気で攻撃していればセルの両腕を切り落としていたが、そこまでする必要はないだろうと、敢えて力をセーブしたのだ。



――そこまで思考を巡らせた所で、セルが猛烈な速さでペレの両手首をつかんできた。
ペレは避ける間もなかったが、緋焔陽炎纏華がある限りペレに触れることはできない、そう思って余裕で構えていた、が、セルの手はペレの手首を掴んだ。
これには仰天して、反射的に振り払おうとするが、強烈な力で抑えられて振り払えない。
セルの手からは目に見えるほどの強大な魔力があふれでていた。
そしてセルはペレの目をじっと見つめると鋭い笑みを浮かべた。そしてペレに言い放つ。
「この手を……この両腕をさっき落としておけば勝てたかもしれないというのに……甘過ぎるなぁ」
(……何なんだこれは)
ペレは、強烈な魔力の力で無理矢理手首を押さえられているのを感じた。
そして、このままではヤバイと本能的に感じ、一端距離を取ろうと両手に魔闘気を集中して両腕から強烈な炎と閃光を伴う爆発を発生させる。
爆発でセルの掴んでいる両手は吹き飛び、衝撃でペレとセルが互いに後方へ吹き飛んで、ペレは受け身をとって着地し、セルは受け身を取れず地面に転がるように落ちる。
だが、セルは何事もなかったかのように冷静に起き上がると、吹き飛んだ両手が大量の血でまた形作られた。
そしてまた手が再生される。
セルはペレを真っ直ぐ見据えると言った。
「何をしても無駄だよ。僕は何度でも立ち上がる」
「………」
ペレは険しい表情を見せる。
どうすればセルに勝てるのか、必死に頭を回転させる。
どれ程のダメージを与えても完全に再生されてしまう。これではじり貧になって意味がない。どうすべきか……。

そこで妙案を思い付く。


――動けなくする必要は無い、再び起き上がれなくすれば良い。


ペレは精神を集中させると両手を前で合掌し、全身から炎が立ち上る。
セルはそれを見ると、ペレに向かって走り出す。
「何をしようと無意味。絶対に僕には勝てない!」
そう言うとペレに向かって跳んだ。脚に闘気が纏う。
「牙無岐拳奥義 飛翔鷲嘴爪襲蹴脚!(ひしょうしゅうしそうしゅうしゅうきゃく)」
闘気が大鷲の形になりペレへと強烈な跳び蹴りが襲い掛かる。
そのまま直撃する刹那、ペレが炎で包みこまれた。
そしてセルの攻撃が直撃するも炎の中にペレは居なかった。
セルの攻撃は空振りし着地する。
すると、炎がセルを包み込む。
セルはどこにペレが居るのか周りを見回すも見つけられない。そうしているうちに、炎は大きくなり燃えている範囲も広がり勢いもどんどん激しくなり、セルは身動きをしにくくなってくる。
セルの身体は魔力のお陰か燃えていないが、熱と酸欠により余裕がない。
その時、炎が急に手となりセルの首を掴んだ。セルは驚きどこにペレが居るのか探す。
すると目の前の炎がペレの顔となっていくのに気付き喫驚する。
「何だよそれ……!?」
そしてセルの眼前までペレが顔を近づけた。
「……闘鏖燬炸拳究極奥義 緋焔宇燬纏界(ひえんうきてんかい)
この炎は私自身でもあり、意思を持って燃えている。この炎のある領域では、全て私の意思で炎が燃え、形作られる」
炎はセルの身体にまとわりつき身動きが取れない。
そしてペレがセルの首を掴んだ手に炎からもう片手も形作られて両手となり、強烈な力で首を締める。
セルは抵抗しようにも、それまでとは比べ物になら無いほどの炎の勢いと熱、そして燃焼により酸素が不足しているところへ更に首を締められ、酸欠状態に。
全身から力が抜けて意識が遠退いていく。

そして頭が真っ白になり、
……スッと意識が飛んだ。



■あとがき
今回はかなり苦労しました。
どういう展開にしようか迷って、こういった展開に。

今後も出来れば十日前後で更新できればなと思っています。


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第2章・第12話 策略

January 11 [Mon], 2016, 9:22
ペレが待合室へと戻ると、何か部屋の中の空気が変わっていることに気づいた。
皆の様子が変わっているようにも思う。
険しい表情で見つめてくる人がいれば、あえて避ける様に背を向けていたりもする。
さっきのペレの戦いを見聞きして、確実に警戒されている。ペレはそう感じる。
ふと見るとセルは、定位置のように座敷に座ってまた本を読んでいた。
セルはペレが帰ってきたことに気づいていないのか、それとも気づいていながら敢えて反応を示さないのか、ペレには分からなかった。
テラは先程までペレが座っていた椅子の側に座っていた。
ペレはなにも言わず、敢えてすました顔をしてテラの元へと歩み寄る。
そしてそのまま椅子に座って足を組んだ。

するとテラは笑みを浮かべると、そっと周りに聞こえないように言う。
「ちょっと派手さが足りなかったんじゃないかい?」
ペレはそういわれるやいなや腕を組んで言い返す。
「そう言われても、殺さないように手加減するのは結構難しいのよ。ただでさえ人間は貧弱で死にやすいのに」
だがそう言われてもテラは気にも止めない様子で軽く言った。
「それをするのが君の役目さ」
ペレは苦笑いを浮かべる。
「簡単に言ってくれるわね」



――第二回戦が始まると、同じようにスタッフに呼ばれては出ていき、そしてまた一人戻ってくる。
セルも順当に勝ち抜き、テラもすました顔で戻ってきた。
ペレもまた一撃で余裕で勝利した。


そして次は準決勝だが、ここで一時間の休息が入ることをスタッフから案内された。

ペレは、さてどうしようかと思って考えていると、そこへセルが近づいてきた。
テラはそれを見ると、ペレに向かって「適当にくつろいどいてよ」と言うと、セルをつれて待合室を出ていった。
ペレはなんとも言えない様子でそれを見送った。
テラが何を考えているのか、本当に分からない。

部屋にはペレと、その準決勝の対戦相手だけが残っていた。
相手は小太りで身長が175くらいで横長のサングラスをかけた中年の男性だ、紺と朱色のストライプ模様と黄色の稲妻の模様が組み合わさった変わった着物を着ている。
ペレが考え込んでいると、その男が近づいてきた。
ペレは表情を変え、男へ鋭い眼差しを向ける。
そして男が側まで近づいて来ると、声を掛けてきた。
「……お前は強いのか?」
するとペレは答える事なく右手の人差し指と小指を立てて男のサングラスに向かってゆっくりと向けていく。
男は動じる事なく表情も変えず動かない。
そして人差し指は右目側、小指は左目側に触れると、ペレは表情を変えずに冷めた口調で言った。
「……面白いことを言う」
そしてペレが指をゆっくり離していくと、指の触れていたところにポッカリと穴が開いていた。
その刹那、男が右手の人差し指をペレの額に向かって指突してきた、ペレは瞬時にその指突してきた人差し指の先に闘気が出ていてパチパチ弾けた音を発しているのを確認すると、すぐさま左手で男の右手首をつかんで止めた。
そして男に言った。
「……珍しい拳を使うのね」
すると男は少し驚いたような顔を見せた。
「この拳を知っているとは、かなり博識なようだな」
そして男が笑みを浮かべた。
「お前の思っている通り、我が拳は世界でも数えるほどしか扱う者の居ない三大拳の中でも最強の拳、千音空界拳(ちおんくうかいけん)だ」
それを聞いたペレはフッと笑うと鋭い笑みを浮かべ言った。
「よくもまあそんな嘘が言えたこと。お前の拳はその亜流の千音雷鳴拳(ちおんらいめいけん)だろう?」
「何?!」
男は驚きの声をあげる。

まるで信じられないかのような表情をしている。
「この一撃でそこまで見破るか……!」
と言うと、ペレがつかんでいる右腕を振りほどいた。
ペレは余裕の表情を向ける。
「千音空界拳は闘気でパチパチ弾ける音は出さないからな。出すのは雷鳴拳しかない」
そうペレが言うと、男はサングラスを取って、側に投げ捨てた。
そこには細長の鋭い眼光が光っていた。
それを見てもペレは一切怯む事なく、あくまで余裕の表情である。

男はそれを受けて何を思ったか待合室の出口へと歩きだした。そして出口の側までいくと少しペレの方へ顔を向けると
「試合が楽しみだな」と言い放つ。

それを聞くとペレは笑みを浮かべて言った。
「……お前では私には勝てん、止めておけ」
男はそれを聞くと出口から出ていった。



――テラはセルをつれて人気のない倉庫までやって来た。
そしてテラは適当な箱を見つけると座ってセルに向かう。
そして問い掛ける。
「……気になるんだろ、昨日の事が?」
するとセルは少しの沈黙のあと答える。
「気になると言うほどのものではありません。少し興味が有るだけです」
それを聞くとテラは懐から一枚の写真を出した。
「蟲殺の子供は双子らしくてね、一人は見つかってるんだ」
そう言うと写真をセルに見せた。
それはファルの妹のメルの写真だった。
顔立ちや身長の低さや髪の色など、セルと同じ特徴が多く見られる。
セルはこれを見て驚き、食い入るように見つめこむ。

――一体これはどういうことなのか。
他人のそら似にしては似すぎている。

幼き頃より奴隷として転々とし、ディティールスに買われてからは闘技場で勝つ事にしか生きる価値を与えられなかった。

故郷もわからず親兄弟の顔も知らない。

闘技場に見に来ていた親子を見たりすると、胸の奥に痛みが走る気がするのはなぜだろう……?

……何かが足りないような気がしていた。
それが一体何なのかは分からないけれど、今の自分の心に何かが足りない気がする。


自分は一体どこからきて一体何者なのか……。

もしかすると、これは自身の出生の謎を解くきっかけになるのかもしれない。

セルはそう思った。


するとテラはセルの目をじっと見つめる。

何か確信をついた言葉をかけてくるのではないか、セルは何の根拠もないがそういう気がした。
そしてテラは言った。

「自分が何者なのか、知りたくないか?」

この言葉に、セルの心は大きく揺れ動く。

この人に付いていけば、分かるかもしれない……。

セルはゆっくりと首を縦に振った。
それを見てテラは笑みを浮かべると、
倉庫のドアが急に開いた。
そこにはディティールスが仁王立ちをして立っていた。
「とても面白い話をしているなあ小僧」
ディティールスは眼光鋭くテラを睨み付けていた。

だがテラは怯む事なかった。それどころか余裕の表情を浮かべると、ディティールスに言い放った。
「もっと面白い話をしてあげても良いですよ?」
ディティールスは表情を変えることもなく、返答する。
「ほぉ、言ってみろ」
するとテラは足を組み、勝ち誇った顔を見せた。
「この大会、うちのボスの優勝は確定してるんで」
それを聞き、ディティールスは鼻で笑うと、愚かしげな者を見るかのようにテラを見下げる。
「何を言うかと思えば、いかなエルフとてセルに敵う者がそうそう居るわけあるまい」
だがテラはキッパリと断言する。
「そうかもしれません。ですが、ボスに敵う人間が居るとでも?」

――ディティールスは考える。
もしかして本当にあのエルフは本物のレイなのか?
これほどの自信は、本物だからこそのものなのだろうか?
確かに、もし本物のレイならば、いくらセルでも勝てるかは怪しい。
だがこれはテラのハッタリかもしれない。
昨日会ったときは、やや頼りなさ気に見えた。
あんなのが話に聞くレイだとは思えない。
だが、だからといって本物か否かを今確かめる事は難しい。
本物である証拠を出せと言っても出してくるか分からないし、そもそも本物のレイと会ったことがない以上、何をもって本物と断定すれば良いか分からない。

……ならば、確認する方法は1つしかない。
「……そこまで言うならば良いだろう」
ディティールスはそう言うとテラに背を向けると、セルに向けて言う。
「セル、決勝であのエルフの女と戦うことになったならば、本気で相手をしてやれ」
セルは少し驚きの表情を浮かべると返事をする。
「……承知いたしました」
するとディティールスは一言付け加える。
「殺しても構わん」
そう言うと部屋から出ていった。

テラの顔には笑みが浮かんでいた。



――準決勝。
会場にはセルとテラではなく、ペレと千音雷鳴拳の男がいた。
なんと、テラは棄権したのだ。
突然の棄権に会場内はざわついていた。
ペレもテラの突然の棄権に驚いたが、考えあっての事だろうと気持ちを入れ換えて、所定の位置で待機する。
相手の男は静かに所定の位置で瞑想していた。

そして会場内に選手紹介のアナウンスが鳴り響く。
『テラ選手の突然の棄権に会場内のざわつきは収まりませんが、次の試合を開始させていただきたいと思います!
片や、すべての相手を一撃で倒してきて、本当の実力が今だ見えないペレ選手!
そして片や、こちらもすべての相手を一撃で倒してきた、パリス選手!』
紹介が終わると、会場内に大歓声が沸き起こる。
皆、本当の実力を見れるのではないかとと期待しているのだ。
『遂に二人の本当の実力を見ることができるのか?!
それともどちらかが一撃で倒してしまうのか?!
開始のカウントダウンです!』
会場内に緊張が走る。
『5、4、3、2、1、GO ! 』

試合が開始したが、二人はその場で構えることもなく、ただじっとしている。
ペレもパリスもただお互い見つめあっている。
『どういう事なのでしょうか?!
二人とも動きません!』
アナウンスののち、会場内が再びざわつき始める。

パリスはペレがあまりにも構えようとしない事に疑念を持ち、問い掛ける。
「……なぜ構えない?」
するとペレは平然と答える。
「その必要はない。お前こそ構えていないではないか」
すると、パリスはペレに右手の平を向ける。
「我が拳、千音雷鳴拳は一撃必殺の拳。
構える必要はない」
パリスの右手の平に闘気が浮かぶ。
そして右手からパチパチと弾ける音がすると、辺り一面に雷鳴が鳴り響いた。
「千音雷鳴拳奥義 震鳴波動(しんめいはどう)」
パリスの周りから地面が地割れを起こして、一気に波状に広がっていく。
だが、ペレの回りだけは地割れを起こさず、他の会場内の地面が地割れを起こして所々隆起した。
ペレの回りだけ地割れを起こさなかったのを見て、パリスは怪訝な表情を見せる。
「貴様……、千音雷鳴拳の仕組みを知っているのか?
だから効かぬのか?」
するとペレは笑みを浮かべる。
「千音雷鳴拳の武器は音だろう?
音の振動で対象を破壊する。
だから振動を闘気でまた変えればいい」
それを聞き、パリスはペレに向かい歩き出す。
「面白い。だが、我が拳はそんなに単純ではないぞ!」
パリスはペレの側まで来ると、右手の平をペレに向けて突きだし、そのまま一気にペレへ突いてくる。
「千音雷鳴拳奥義 共振滅波掌!(きょうしんめっぱしょう)」
右手に闘気が纏いパチパチ弾けた音を発してペレに襲いかかってくる。
だがペレは余裕の表情を浮かべると左手の中指一本でそれを受け止めた。
パリスはそれを見て笑みを浮かべる
「終わりだ。我が闘気は相手の体内に入り込み、内部より破壊する!」
「……それで?」
ペレの表情は崩れない。

そして5秒ほど経過するが、何も起きる様子がない。
これにはパリスの表情が険しくなる。
「……そんな馬鹿な?!」
するとペレは余裕の表情のまま言った。
「相手が千音空界拳のクリスティナだったら、私は負けていただろう。
だが、この程度の気功術ならば少しの気で揺らぎを生じてやれば一気に無効化される」
パリスはそうペレに言われると信じられないとばかりに狼狽する。
「なん…だと……。有り得ない、絶対に有り得ない!」
そう言うとパリスは左人差し指でペレの額に向かって指突を繰り出す。
ペレは避けようもせず、そのまま直撃し炸裂音が鳴り響く。
だが、ペレは平然としている。全く効いた様子がない。

そしてペレは右人差し指でパリスの左のこめかみを軽く突いた。
パリスは全身に電気が走ったような感覚を感じる。
「何をした……?」
「これは闘鏖燬炸拳奥義 焼燬宇零波と言ってな、燃える闘気を体内へ送り込み、体内で炎上させる技だ。
気功術が上手く出来ていれば、この程度効かないんだが……な?」
ペレが鋭く笑みを浮かべると、パリスは顔を強張らせる。
そして口から炎を少し吹き出した。

ゆっくりとパリスは後ろへ倒れ込んでいき、倒れる。

会場内がどよめき、そして歓声に変わるとアナウンスが鳴り響く。
『一撃で決まったーーーッ!!!
なんと今回もペレ選手は一撃で決めた!
パリス選手の攻撃を一切ものともせず余裕の勝利!
強い!強すぎるッ!
ペレ選手の決勝進出だーーー!!!』



■あとがき
マーテタウン編もあと数話で終わりそうな気がします。
その後の展開は数パターン考えているんですが、なかなか悩みます。


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第2章・第11話 閃き

January 05 [Tue], 2016, 0:06
テラ達三人は各々売店で飲み物を買うと、側のベンチに座って本選のチラシを見ながら作戦を練っていた。

本選の対戦相手は抽選によって決まるようで、肝心のセルはシード枠で本選に出場するようだ。
これを見てテラはどうしたものかと唸る。
「う〜ん、セルと会えるのが誰になるかは運次第だねぇ。
セルに自身の出生に興味を持ってもらえる様にするには相当骨がおれそうな気もする。
第一、会える機会がそうそうないからね」
それを聞いたジャイロは何の迷いもなく言い放つ。
「ディティールスの屋敷の前で待ち伏せすれば良いんじゃないか?」
テラとペレは呆れたような顔を見せるとペレが言う。
「あんたあの屋敷で何があったか覚えてないの?」
ジャイロは平然とした様子で答える。
「ディティールスの怒りを買ったな」
これには呆れ果て、ペレは自分の額に手を当てて上を見上げた。

――そうこうしているうちにテラが何かに気づく。
エントランスの奥からセルがディティールスと共に出てきたのだ。
その様子をジッと見つめていると何かピンと来る。
「……そうか」
テラがそう呟く。
そして段々と具体的な案が次々と浮かんでくると、頭を高速フル回転させだした。
まるでパズルのピースをはめ込んでいくかのように、案を次々とまとめて解を導き出していく。
そして、スッと立ち上がった。
「その手にしよう……いや、そうするしかない!」
急に叫んだテラにジャイロとペレは怪訝な面持ちを浮かべている。
するとテラはジャイロに向き鋭い笑みを向けた。
「ナイスだぞジャイロ。たまには良いこと言うじゃないか」



――夜になり、ジャイロとペレは闇市に有るとあるレストランで食事をしていた。
そこにはテラの姿は無い。
ジャイロはその事で非常にイラついている様子だ。
「……あの野郎、ここで待ってろと言ったくせに一時間以上待っても来ねえじゃねえか」
その様子を見たペレは諭すように話しかける。
「落ち着きなさいよ。テラは無意味に行動するような人じゃないし、何か念入りに策を講じているのよ」
だがジャイロは納得のいかない様子だ。
「それは良いんだが、この俺に何も話さずに勝手に行動するから腹が立つ。そんなに信用なら無いか?」
ペレは思い当たる節がありすぎて苦笑する他無い。
そこへテラがジャイロの後ろからやって来る。
「脳筋に何か言って得なことでもあるのかい?」
早速嫌みったらしく言い放った。
それを聞いたジャイロはブチキレてすぐさまテラの胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「てめえ、もういっぺん言ってみろ!」
だがテラは動じることもなく続け様に言い放つ。
「良いよ、何回でも言ってあげるよ。
ノーキン」
「なんだとゴルァ〜!」
ジャイロがテラを上まで持ち上げると、ペレが手を叩いて止めにはいる。
「はいはいはい、止めー止め〜!
喧嘩なんかしてる場合じゃないでしょ?」
「……ちっ、分かったよ」
ペレに止められ、ジャイロは持ち上げた手を離す。
するとそのままテラは落ちて着地する。
テラは乱れた胸元を直しながら「これだから馬鹿の相手は疲れる」と呟く。
ジャイロは睨み付けるがテラは気にもとめず、椅子に座ってテーブルにつく。

そしてペレに向かい、作戦を話し出す。
「ここに来るのが遅くなったのは大会の責任者に会って根回ししてたからなんだ」
「根回しを? 一体どんな?」
そうペレが聞くと、テラはニヤリと笑みを浮かべた。
「ペレとセルが決勝で戦う組み合わせになるように対戦相手を調整してもらったんだ。そして自分はペレの前に対戦するようにしてもらった」
ペレはそれを聞いて、何の意味があるのか理解できなかった。
「対戦相手を? それに一体何の意味があるの?」
「一つは、自分がセルに自身の出生に興味を持つように仕向けられるように、もう一つは、ディティールスにペレがレイであると信じこまさせるためさ」
それを聞いてもペレにはよく理解できない。
一体なぜそうする事が出来るのか分からない。
その様子を見てテラは深くは語らない。
「事細かく言っても分からないだろうから、君がすべき事だけ言っておくよ。
君は決勝でセルに対しては、本当に殺す気で相手をして欲しい」
その言葉を聞き、ペレは驚きの表情を見せ、テラに問いかける。
「……本気で言っているの?」
「本気も本気、大マジさ。
何しろ、セルも君と対峙したときは、絶対に君を殺す気で戦うからね」
「…本当に…?」
ペレはテラの言っている事が信じられないようで疑いの目を向ける。
だがテラは気にする事なく続けさまに言った。
「もう一つ、君にはレイとして振る舞って欲しい、特に闘技場の待合室に入ってからは」
テラにそう言われてもペレには理解できない事ばかりだ。
果たしてそんなことをしてレイと信じてくれるのだろうか。
だが例え聞いたとしてもテラは教えてくれないだろう。
その様子を見てテラは笑う。
「ま、頑張ってよ」



――翌日、三人は闘技場に来た。
テラとジャイロはいつも通りの格好だったが、ペレは、ドラゴンの刺繍をしてある真っ黒のマントを全身に纏っていた。
これで少しでもレイと思わせようと言う魂胆である。
ジャイロは何かあったときのためにエントランスで待機してもらう。
テラとペレは受付を済ますと、対戦相手のリストを渡される。
ペレはリストを見て驚く。
前日、テラが言った通りの組み合わせになっていたからだ。
これでテラの言っていたことが本当だと確信すると同時に、一体どこまで考えて行動しているのか、末恐ろしく思う。
ペレはチラリとテラを見ると、平然とした顔でリストを見つめていた。
そしてこちらを向くと、笑みを浮かべたあと待合室に向かって歩き、言った。
「頑張ってよ」
そして、待合室へと入っていった。ペレもあとに続いて入る。



待合室の中は予選の時とうって変わり十畳はある座敷と大きなテーブルのそばに椅子が八個置いてある。

待合室には既に他の参加者が一様に揃っていた。
そこにはセルの姿もある。
座席に座って本を読んでいた。
テラはペレに対し耳打ちをするとペレから離れてセルの元にそっと近づく。
セルはテラの存在に気づくと不思議そうな顔でセルを見つめる。
テラはそれを見て微笑むとそっと言った。
「君とは準決勝で戦うことになりそうだ」
セルはそれを聞いて、一体何を言いたいのか計りかねたようで怪訝な表情を見せる。
するとテラは、それを待ってましたかのように鋭い笑みを浮かべると言った。
「その時に話そう」
そう言うとテラはセルから離れる。
セルはその様子をずっと見ているとペレのもとへと向かっているように見えた。
ペレは部屋の端に置いてある椅子に座って足を組み、こちらをジッと見つめていた。
何か雰囲気が違う、セルはそう感じると共に、昨日予選前にテラ達と話したことを思い出す。

―――自分が蟲殺の子供なのではないか……。

そこへ本選開始の案内でスタッフが入ってきた。
最初に戦うの第一シードのセルなのだ。
ここでセルは考えるのを止めて気持ちを入れ替え、待合室を後にする。

テラはペレの側でそれを見送ると笑みをペレに向ける。
「……順調みたいだ」
ペレはそう言われても一体何が順調なのか分からない。
「ねえテラ、彼と何を話してたの?」
するとテラはさも満足したかのような様子で笑顔を見せ、さらりと軽く言った。
「特に何も」
それを聞き、ペレはこれ以上は聞いても教えてくれないだろうと思い、聞かないことにする。
そして今度は待合室の中を見渡し、対戦相手を確認する。

ペレの対戦相手はスキンヘッドで筋骨隆々の体つきの男だ。
話に聞けば、金剛拳の流れを組む剿鏖金剛拳(しょうおうきさくけん)を扱うらしい。
油断ならないが、こんなやつに圧倒的な力で勝てとテラは言う。
ペレはどうしたものかと思考を巡らす。
そうこうしているうちにセルが勝ち抜いて戻って来ると、入れ替わり立ち替わり呼ばれては出ていき、そして一人戻ってくる。
テラも余裕で勝って来た。
そしてペレと剿鏖金剛拳の男は呼ばれると、会場へと出ていく。

途中スタッフから戦闘開始の所定位置の目印が会場内に有るのでそこにたって待つようにと言われる。
そしてペレは会場へ足を踏み入れると、予選からの変わりように仰天する。
まず観客の数が違った。
予選では席は埋まってはいたが、一杯と言うほどではなかった。
だが今は満員御礼で立ち見客も出るほどのぎゅうぎゅう詰め。
そして闘技場のあちこちにきれいな飾りもしてあり華やかさに満ちている。

ペレが見とれていると相手の男が話し掛けてくる。
「お前はダークホースと見られているらしいな」
するとペレは意識して表情を一変させる。
いつもレイが見せている全てを見下しているかのような冷たい視線を男に浴びせ、淡々と聞き返す。
「……それで?」
男はそれを聞いて癪に触ったのか顔をしかめると、大声で断言するように言った。
「この大会のダークホースは俺だ!」
だがそれをペレは無視するかのように所定の開始位置へと歩きだした。
そして後ろの男に手を振りながら言った。
「そうか……頑張れよ」
その態度に男は怒りの表情を浮かべるが、なにも言わずに所定の開始位置へと向かってあるきだした。

二人が所定の開始位置に着くとアナウンスが鳴り響く。
『二人とも所定の位置へと着いたようです!
片や剿鏖金剛拳を扱い圧倒的な強さで予選を勝ち抜いたオーヴェン!
そして片や、初参加で全く注目されなかった存在にも関わらず、わずか三回の攻撃で他の参加者を全滅させたとんでもない実力者、ペレだーッ!』
このアナウンスで観客がドッと沸く。
『さあ、それでは準備はよろしいでしょうか?』
会場内に緊張が走る。
『開始のカウントと参りましょう!
5、4、3、2、1、
GOーッ!!!』

開始の合図の後、ペレは一切構える事なく、オーヴェンに向いている。
対するオーヴェンは中腰になり両腕を左右に広げている。
オーヴェンはペレが一切構えないことにイラついた様子で声をかける。
「……なぜ構えない」
するとペレは表情を変えず、言った。
「その必要はない」
その言葉にオーヴェンは怒りの表情を見せると「その余裕が貴様の命取りだ」と吐き捨てるように言う。
そして左右の腕を徐々に上へと上げていく。
オーヴェンの体から闘気があふれでてくる。
そして両手を片手でお椀を持つように上へ向けて両腕を一気に下へおろすと一気にペレに向かって走り出す。
「一瞬で決めてくれるわ!
剿鏖金剛拳奥義 闘滅羅漢撃!(とうめつらかんげき)」
オーヴェンの闘気が両腕にまとわりつくように溢れるとペレに向かって両腕を一気に突き出し、闘気が幾多もの腕になってペレに襲いかかる。
その突きは目にも止まらぬ早さで、並みの人なら攻撃を認識することすら困難であろう。
だがペレは一切避けようともせず、そのままジッとしている。
このまま直撃する、
誰もがそう思った刹那、
ペレの姿が消え、オーヴェンの攻撃は空振りする。

突然姿が消えたことにオーヴェンは困惑し辺りを見回す。

その時、
オーヴェンの双肩にズシンと衝撃がきて全身に電気が走ったような感覚を覚えた。
これに仰天したオーヴェンは横の肩を見る。
するとそこには靴があった。
これが意味することに気づき、オーヴェンはそのまま上を見上げると、そこにはペレの姿が見えた。
ペレは腕を組み冷静な面持ちでいた。
そして目と目が合うと、ペレが言った。
「奥義 焼燬宇零波(しょうきうれいは)」
その刹那、オーヴェンは口から炎を小さく吐き出した。
そしてそのままゆっくり後ろへと倒れていき、ペレは完全に倒れる前に側に着地した。
オーヴェンは動くようすがない。

『き、決まったーーッ!!!!
実力者オーヴェンに一体何が起こったのでしょうか?!
ペレ選手がオーヴェン選手に何をしたのか全く分かりませんでした!
これはペレ選手がダークホースなのは間違いなさそうです!
訳も分からぬ謎展開のまま、ペレ選手の二回戦進出です!!!』
会場内に割れんばかりの大歓声が沸き上がった。



■あとがき
続けて続きを書いてしまいました。
自分のPCが壊れてしまったのでスマフォで書いているのですが、つくづくPCの良さを実感しますね(´д`|||)


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