短編「白い珊瑚と私の骨」2

November 09 [Thu], 2017, 0:46
冷たさに震え、強張った全身。激痛は、止まない。皮膚が、悲鳴を上げる様に、毛が逆立つ様に、浮き、ぶつぶつとした何かが、きらきらと、光るものへ変わって行きます。皮膚の一部を、残し、鱗が、黴の様に、浮き出ていきます。血を、吹流しながら、浮いた、鱗。魚の、鱗。まるで、虹を蓄え、彩る、オパールの、シラーを蓄えた、青い色彩は、惨たらしい痛みに耐えただけに、褒美の様に、煌めく宝石が、この皮膚に生えた様でした。
 見れば、私には、脚が、ありませんでした。あの、縫合されている感覚は、気のせいでは、無かったのです。浮いた鱗と、同じ青の鱗を持つ、長い尾鰭に、変貌していました。三つ編みに、していた、黒髪は、水に揺れながら解け、沈む前よりも、長く、伸びていました。とても、長く、この身に纏える程の、長さでした。ゆったりと、揺れながら、未だ、未だ、沈む、身体は、今度は、どの様に変化してゆくのか、等、私は、判りませんが、未だ、変化すると、思います。
 人間では無いものに、なってゆくのを感じています。きっと、地上の、生き物としての姿は、もう、無いのです。泡ばかりを零す口も、この、揺蕩う水中に適応しているらしく、苦しいとは、感じません。呼吸が、出来ました。私の鱗、尾鰭、鰓呼吸。手の平を開くと、薄っすらと、水掻きが、あります。
 この、変わってゆく身を、何かで、確かめる事が、出来ないのは、残念でしたが、想像するに、私の今の、姿。人魚の様に、なっている。
 
 海を、綺麗な世界を、見たい、と、知りたい、と。今迄生きてきた、地上は、悲しかった。息をするのも、苦しい世界だった。生きるのが、嫌になる程、醜いと、思った。海の見える地上には、もう、美しいと、綺麗だと、感じるものは、無いのでしょう、と。
 これは、絶望。私は、逃げる様に、海へ、走り、冬の始めの、肌を突き刺す冷風に、身を震わせながら、特別、何かを意識せずに、飛び込んだのです。

 泡となって、消え逝く事が出来たら、楽なのか、判らない。私の行為は、罪なのか、今の現象は、罰なのか。誰もが、今の世に、希望を、夢を、抱く訳では無い、私は、抱けなかったので、逃げました。これは、地上の醜さに絶望したが故に、生きる為の、進化をしたのか、とすら、思ってしまいました。
 
 地上に、あの、膿が溢れ腐り果て逝く処に、未練等、ありません。
 
 【続】
 
  
 
P R
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