パンズ・ラビリンス

November 05 [Mon], 2007, 0:16
El Laberinto Del Fauno

スペイン内戦下を舞台に、現実と虚構のラビリンスが紡ぎ出されるダーク・ファンタジー。少女に課せられた3つの試練は、自らの人生を切り開く鍵になる?

戦時下のリアルな現実と並行して描かれる、イマジネーション溢れる幻想世界の扉を開くと、そこには誰にでも踏み越えられる境界線の先にあるパンの迷宮が広がるのだ。
アカデミー賞で撮影賞、美術賞を受賞し、話題になっていた作品でとても楽しみにしていたんですが、何だかんだとすっかり遅くなってしまいました
過酷な現実を生きる少女が与えられた試練は、虚構の世界でありながら現実を生き抜くための苦しさに満ちている。ここで描かれるのはヒロイックで理想主義なファンタジーの世界では全くなくて、現実の厳しさはそのまま幻想の世界に持ち込まれるのだ。

現実と幻想の交錯、という意味ではどうしてもその幻想を作り出す個人のパーソナルな内面のみに焦点が当てられがちだと思うのだけれど(ある種自己満的な)、それがあるいち少女の妄想(?)だけにとどまらず、誰もが持っている内なる心の世界の葛藤にまで昇華しているのがこの作品の完成度の高さではないかな。そういう意味では、ファンタジー的な部分であっても、ものすごく臨場感があるというか、迫ってくるものがあるのだよね。ヒロインのオフェリアの心の動きが、迷宮世界のフィルターを通していながら、まんまダイレクトに伝わってくるというか。

想像力っていうのは、人間には必ず必要なもの。
それが発達しているかどうかは個人によるとしても、現実の埋まらない溝を満たすためには、どうしてもそういう部分が必要なわけで。だからこそ人間は本を読み、映画を観る。なんて。自分自身ではどうにもできないものを動かすために、オフェリアには「物語の世界で読むような」試練が与えられる。それをクリアすれば違う未来が待っている・・・。
映画を観て意外だったのは、思ってたよりずっと現実のパートの占める割合が多かったこと。それでいながら、全く違和感を感じさせず、尚且つファンタジー部分と見事にリンクする、緻密な構成に驚かされます。

戦争が作り出した悪の権化のような義父から逃れるためにオフェリアが作り出した迷宮。その道案内人は牧神(パン)である。
ギリシャ神話に出てくるパンのイメージを裏切り、ちょっと怖いビジュアルのパン。登場シーンの印象は強烈です。「まあそう怖がらず・・・」って、いやアンタ、怖いわ!みたいな。
迷宮の世界は、基本的にダークで血や泥にまみれ、ちょっと残酷な童話の世界のよう。他にも森の中のシーンでも、きらきらと舞う羽虫が幻想的だったり。特にオフェリアが白いチョークで扉を描いて地下に潜り込むシーンの緊迫感ときたら、もうのめり込むみたいに見ちゃったよ。

黒髪に黒い瞳のオフェリアことイバナ・バケロちゃんは、ヨーロピアンな影のある美少女ぶり。彼女に抑圧を与えるオフェリアの義父の大尉(セルジオ・ロペス)の鬼っぷりときたら!絶大な力を持つ父による人格形成への影響をちらつかせてはいたけれど、私としてはちょっとああいう理不尽な暴力行使はいかなる理由があろうと同情の余地はないんだよね・・・。戦争のもたらす、人間の残酷性の露呈を見せ付けられたような気がしました。
そして物語の中での鍵を握る存在になる気丈な女性、メルセデス。彼女、どこかで見た顔だな〜と思ってたら、『天国の口、終りの楽園。』で年上の人妻、ルイサを演じていたマリベル・ベルドゥーでした。男顔なんだけど、不思議な魅力のある女優さんです。

人間は体だけでなく、心でも血を流す。それがそのまま反映された地下の迷宮。
「従うばかりだったら、それは人として死んだことだ。」
という印象的な言葉が劇中にあった。
最後に訪れる瞬間、オフェリアが着地した地点は、生と死の狭間に浮遊する切なさとほろ苦さに包まれる。
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