「斜陽日記」   太田静子  

2009年03月02日(月) 2時10分
 そもそもこの本を手に取ったのは、すでに「太宰治」の『斜陽』を読んだから。
最後の貴婦人である「お母様」の晩年を見つめる和子の日記である。

太宰の『斜陽』は実在する女性の日記を元に書かれた・・・というのは有名な話。
太宰小説が大好きな私が読まないでおれる理由はない。

太宰の『斜陽』と、この『斜陽日記』とは、やはり何かが違う。
その違いをうまく説明する自身はないけれど、太宰の文章には暗いイメージの中に、
不思議な美しさがある。
アゲハチョウの羽にある光沢のある紫色のような・・・。
それに対して、静子の『斜陽日記』は、読者に対して情景や心情を太宰の様に、
「まるで自分の身に起きているよう」に表現する術を持たなかった。

ただ、平々凡々の中に、かわいらしさがあった。

夜のピクニック   恩田陸 

2009年02月16日(月) 6時17分
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。
それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩きとおすという
北高の伝統行事だった。
甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。

三年間、誰にも言えなかった秘密を精算するためにー。
学校生活の思いでや卒業の夢など語らいつつ、親友たちと
歩きながらも、貴子だけは小さな賭けに胸を焦がしていた。
本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。


大学時代のナイトハイクを思い出した。夜通し歩く企画。
夜7時に出発して翌朝8時に到着。
この小説では、昼頃出発して次の日の朝だから歩く時間は
こちらの方が長い。出発して、その日の夜中まではクラス単位での
歩行。翌日は自由歩行。この構成は面白い。

歩き続けるという行為は、体と精神の関係とを比較することも面白かった。
最初は友だちとおしゃべりしながら歩くが、体が疲労すると、黙々と
歩くようになる。
そうすると頭で考えることも体の状態に引きづられて来るようになる。

今、私自身がそこまで体を酷使することがなくなったので、
懐かしい気持ちで読んだ。

アンフェアな月    秦建日子 

2009年02月16日(月) 5時16分
生後三ヶ月の赤ん坊が誘拐された。
錯乱状態の母親、具体的な要求をしない奇妙な誘拐犯。
翻弄された捜査本部。
そんな中、遺留品が発見された山中から掘り出されたものとは・・・?

「アンフェア」シリーズの第2弾。筆者の職業がシナリオライターだからだと
思うが、ものすごく読みやすかった。
映像を見るかのように、読むことができた。
わざと黒ページに白抜きの大きな文字を使い、目に字が飛び込んでくるさまは、
映像を意識しているからこそ。
最後まで結末が想像できなかった。

この筆者、とても活発でブログもやってるし、いろんなドラマの脚本も
手がけている。自作が出たら、ぜひ買おうと思わせるヒト。

みずうみ  よしもとばなな 

2009年01月19日(月) 3時35分
大好きなママが、パパとの自由な恋をつらぬいてこの世を去った。
ひとりぼっちになったいま、ちひろがいちばん大切に思うのは、
幼児教室の庭に描く壁画とか、か弱い身体では支えきれない
心の重荷に苦しむ中島くんのことだ。
ある日中島くんは、懐かしい友だちが住む、静かなみずうみの
ほとりの一軒家へと出かけようとちひろを誘うのだが・・・。

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主人公ちひろが、現実的ではない方法(お互いのアパートの窓から
あいさつをするようになることがきっかけ)で徐々に中島くんに近づいていく。
その中島くんはこの世界に深い根をはっていないような感じを受ける。
その理由を追求しようとすることはないが、避けることは出来ないという
ストーリー。
よしもとばなならしい、浮世な感じを受けた。
お勧め!!というのではないけれど、よしもとワールドに浸りたいヒトにはお勧め。

よしもとばななの公式サイトがあることを知った。
公式サイト

容疑者Xの献身  東野圭吾 

2009年01月19日(月) 3時26分
天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の
石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな思いを寄せていた。
彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うために
完全犯罪を企てる。
だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の
湯川学が、そのナゾに挑むことになる。

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なんだかんだ言って、ガリレオシリーズは全て読んでいることに驚く
前2冊の短編よりも、はるかに読み応えがあったので、直木賞受賞というのもうなずける。
前作を読んでいなくても、問題なく読むことができるのも魅力。
最後、読者も想定外の終わりにおもしろさを感じた。
サクラは数学が苦手なので、この話を読んでどう数学と結びつくのかは
あんまり分からないけれど、単純におもしろいと思った。

古道具 中野商店  川上弘美 

2009年01月19日(月) 3時17分
東京近郊の小さな古道具屋でアルバイトする「わたし」。
ダメ男漂う店主・中野さん。きりっと女っプリのいい姉マサヨさん。
わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。
どこかあやしい常連たち・・・。不器用でスケール小さく、
けれど懐の深い人々と、なつかしくもチープな品々。
中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋と
世代をこえた友情を描く傑作長編。

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深みはない。
これを読んだことで、得る知識も、古道具に関するうんちくもない。
ただ古道具屋を切り盛りする中野商店を舞台に、小さな人間関係の中で
起こる出来事をテーマ「古道具」で描かれている。
川上弘美の書く世界観が好きであれば、それだけで良いという感じ。

徳川将軍家 十五代のカルテ  篠田達明 

2009年01月19日(月) 3時04分
健康オタクが過ぎた家康、時代劇とは別人像「気うつ」の家光、
内分泌異常で低身長症の綱吉、飲酒が高じて食道がんで逝った光圀、
そして実は三人も将軍位についた障害者・・・。
芝・増上寺にある徳川家霊廟で発掘した遺体や文献をもとに
歴代将軍を最新医学で診断してみると・・・。

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はっきり言って、毒にも薬にもならない本。
ただ歴史好きのサクラにとっては、徳川歴代将軍のゴシップ的な内容に、
手を叩いて喜んだ。
参考文献は非常にすくなく、本当に医者なのか?と思うような診断。
そして、歴史家なのか??と思うような断定がおもしろかった。

人体 失敗の進化史  遠藤秀紀 

2009年01月19日(月) 1時24分
「私たちヒトとは、地球の生き物として、一体何をしでかした存在なのか」
二足歩行という、ある意味とんでもない移動様式を生み出した私たちヒトは
その為に、身体全体にわたって「設計図」をたくさん書き換えなくてはならなかった。
そうして得た最大の”目玉”は巨大でとびきり優秀な脳だったといえるだろう。

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私たちヒトと他の動物を比較しながら、解剖の話を盛り込みつつ進む。
肺や、手、足、脳といったパーツの進化をたどりながら、要は新しい機能を付け加えて
ではなく、元々あったパーツの仕様を変更しながら進化したと筆者は言う。
生物学や、進化論の知識のない私には、その後のヒトがたどるであろう
進化の姿は見えないのが残念。

当たり前に過ごしている自分の身体を見直してみる、とても興味のある本だった。

天帝妖孤  乙一 

2009年01月19日(月) 1時11分
とある町で行き倒れそうになっていたナゾの青年・夜木。
彼は顔中に包帯を巻き、素顔を決して見せなかったが、
助けてくれた純朴な少女、杏子とだけは心を通わせるようになる。
しかし、そんな夜木を凶暴な事件が遅い、ついにその呪われた
素顔を暴かれるときが・・・。

娯楽小説としては、なかなか面白かった。
ドラマやアニメにしても、おもしろいと思うだろう小説だった。
「A MASKED BALL」は時代反映をした意味では、とてもおもしろい。
インターネットの掲示板を連想させる。

乙一作品が好きな人は、必読書。
それにしても、新作はいつ出版されるのでしょう。。。

真夜中の五分前  本田孝好 

2009年01月19日(月) 0時43分
少し遅れた時計を好んで使った恋人が、六年前に死んだ。
いま、小さな広告代理店に勤める僕の時間は、あの日から
ずっと五分ズレたままだ。
そんな僕の前に突然現れた、一卵性双生児のかすみ。
彼女は秘密の恋を打ち明けたとき、現実は思いもよらぬ
世界へ僕を押しやった。

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大学時代の恋人が死んでしまうという出来事の中で、
僕は何の悲しみも喪失感も感じなかったという事実に嫌悪する。
それ以降、誰かと付き合っても真剣になることもなく、体を
合わせることもない・・・。そんな僕に一卵性双生児のかすみと出会い、
彼女と向き合うことで、六年前に亡くなった彼女とも向き合うようになる。

最後のほうは、文章の流れとして、はっきり言って苦しい気がするが、
2冊ともハイスピードで読みきってしまった。