発ガンの仕組み

May 02 [Fri], 2014, 14:24
19世紀において、発癌の機構はデンマークのフィビガーの提唱する寄生虫発癌説とドイツの病理学者ウィルヒョウの提唱する癌刺激説が対立していたが、1915年に日本の病理学者である山極勝三郎と市川厚一が、ウサギを用いた実験において、コールタールを刺激物として実験的に癌を発生させることに成功した[1]。

その後、発癌に関する研究が進むと、化学発癌は正常細胞が潜在的腫瘍細胞に変化する不可逆的な段階である「イニシエーション」と、潜在的腫瘍細胞がクローナルに増殖し、最終的には悪性化する可逆的な段階である「プロモーション」の複数の段階からなるという、『化学発癌二段階仮説』が提唱された。発癌イニシエーション、プロモーション作用を持つ化学物質を、それぞれ「発癌イニシエーター」、「発癌プロモーター」と呼ぶ。発癌プロモーターは単独では発癌性を示さず、イニシエーターの作用を促進させる働きをする。

それまでに、化学物質だけでなく、放射線やウイルス感染が発癌に関与することが明らかとなっており、発癌イニシエーターが直接遺伝子に損傷を与えることは実験的にも明らかとなったが、「赤発」などの病理的関係はわかるものの、発癌プロモーションの機構についての解明は進まなかった。

1980年代以降の分子生物学の急速な進展により、プロモーター作用とされていたものが複雑な細胞内シグナル伝達と遺伝子発現制御機構であることが明らかとなった。現在では、発癌には複数の遺伝子の順次変化が必要であるとする多段階発癌説が提唱されている。

したがって、実際の発癌は、発癌性物質が遺伝子の実体であるDNAを損傷することに起因するが、多数存在するいわゆる、癌遺伝子と癌抑制遺伝子はそれ自身の発現や遺伝子翻訳産物を介して発癌に関係している。また、細胞内でのDNA修復や細胞免疫による微視レベル癌の排除などの複雑なプロセスが存在するため、何か1つの要素をもって発癌性への量的関与を計測することは事実上不可能である。

また、慢性肝炎からの癌化や、DNA損傷に起因しない発癌機構をもち、いずれも長期間にわたる炎症反応が癌化を誘導するとされている。 アスベスト吸入やたばこの喫煙による肺癌の発病などは、これらに含まれる微細な亜鉄が肺に入り形成される「フェリチン」というタンパク質が、大気中などにある放射性物質ラジウムを集めて蓄積させ強力な内部被曝が起きる事が原因と解明されている(日本学士院発行の自然科学系英文学術誌に論文掲載)。[要出典]

長期の炎症反応は、癌化を促す2つの効果、すなわち (1) 細胞増殖の活性化と、 (2) TNF-α、NF-κBを介した抗アポトーシス作用を引き起こす。癌化誘導において、(1) と (2) は癌の持つ槍と盾のようなものであるといえる。(1) で細胞増殖が活性化されると、DNA複製が通常より活発になる。その結果、DNA複製の際にエラーが起こりやすくなったり、外部因子に影響されやすくなって変異を導入してしまう。通常、このようなDNAの突然変異はp53タンパク質などの働きによって修復されるが、(2) の作用によってp53の作用が打ち消された結果、正常なDNA修復が行われなくなり、発癌が誘導されるのである。(Nature, 431, 461-466, 2004 および PNAS, 103 (27), 10397-10402, 2006)
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