出会い9 

March 21 [Tue], 2006, 9:39

 「それは今までルイがいい恋愛したことなかったから、そういう風に思うんだよ」
 「いい恋愛っていうのは、相手がどれだけいい人でも、自分が無理だって思ったらその時点で無理だよ。あたしは自信ない。前のカレもい色々あって、結局すごいカレに寄りかかっちゃう形になったし、もうそういう情けない人間にはなりたくない」
 「させないって」
 「キミ、物事を随分簡単に解釈するね」
 「だって簡単なんだもん」
 私は片方の眉にしわを寄せ、表情で返事をした。
 「俺もそういう風に考えてた時期があった。でも結局幸せで楽しい人生を過ごすために努力もするし、朝起きるんだよ。で、君といることも人生の楽しみの一つ」
 なんだか一月前まで付き合ってた彼氏に比べてかなり重さが違うようだ。とりあえず、そっちがその気なら、まぁいいや、という方向に歩み出した。そう考えると14時間も全く進まない同じような討論を続けていたんだな、ということにやっと気がつくことが出来たのだ。かなりあほらしい時間の過ごし方だと思った。夜の11時から話し始めたので、睡眠を犠牲にしてまでぶっしで話し込んだのかい!と一人突っ込みを心の中でした途端、笑い出さずにはいられなかった。
 「何?どうしたの?」
 「だって、付き合い申し込んで、最初は断ったのに、そこからまた説得して、やっと『じゃぁ、考えとく』に変えたら、今度は3時間おきぐらいに、『答え出た?』って」
 「ルイは俺の考えてること、この短期間でズバリ当てまくってたけど、一つだけまちがってることがあるよ。俺は、せっかちだ。待てって言って何週間も待てない」
 「じゃぁ、しょうがないね」
 「わかった、待つよ」
 「OK、じゃ、待って」
 「分かった」
 「うん」
 「うん」
 「うん」
 「・・・よし、待った。答えは?」
 私は、先ほど笑い飛ばした笑顔の残りに、再び笑顔を乗せ、それを彼の唇に重ねた。

出会い8 

March 21 [Tue], 2006, 9:39
 「え?最初は断ったの?」
 アパートの部屋の中。友人のクリスティが話を中断した。
 「うん、なんていうか、彼氏にするにはもったいなくて」
 「へぇ、そんなに買ってたんだ。でも彼氏にするにはもったいないって一体どんだけひねくれてんの、ルイは?」
 「う〜ん、買ってたっていうか…これは断った時の理由聞かれた時も言ったんだけど、友だちは一生もん、でも基本的に彼氏っていうのは一回ダメになっちゃうと、完全に失っちゃう可能性があるじゃん?だからそういうリスク背負ってまでって思ったんだ」
 「ふぅん、そんなもんかね。で?どうやって説得させられちゃったわけ?」

出会い7 

March 21 [Tue], 2006, 9:38
 つまらないことを理由にメールをしてきたり、チャットにメッセージをしてくるアとが多かったので、二週間後に付き合いを申し込まれても驚きはしなかった。でもちょっとせっかちな気がした。デートも一度しかしなかったし、正直、恋愛は付き合う前のさぐり合いが一番面白い部分だと思っていたので、あげ足をすくわれた気がした。初めは乗り気じゃなかったので断ったが、馬の合う人間なのでついついそこから14時間ぶっ通しで話し続けた。最終的には丸み込まれてオーケーしてしまったのだが。それにしてもこんなに話して飽きないのは女の子同士でも珍しい。ホントに男と話しているのだろうか。

出会い6 

March 21 [Tue], 2006, 9:37
 その席に腰をかけてから二時間ほど経過した時点で、自分たちは同じ人間だと確信した。錯覚だったかもしれない。いや、現実的に見て自分たち以外にも似た性格の人間は五万といる。自分が特別だと思っている人の方が無知なのだ。
 私は親友が出来たと素直に喜んでいたが、向こうは自分に似た人間と出会ったことがなかったらしく、痛く感動していたようだ。私は何度も自分と同じぐらい暗くて混乱していて幸せで楽しい人生を送っている人はいっぱいいると言ったが、リックはその発言を聞く度に目を見開き、しきりに頭を横に振った。男の子は心の内を開ける境遇にあまりいないからそういう人と巡り会っていてもそれに気がつきにくいのではないかと思った。人と繋がりを持つという喜びに増すものはなかった私にとっては、空っぽになった自分を見ているような錯覚を瞬間見たような気がした。

出会い5 

March 21 [Tue], 2006, 9:36
  コーヒー一杯でほぼ初対面の男の子と2時間半も話し続けることが出来ると思わなかった。
 「学校でスピーチとかディベートやらされるのが一番つらい」
 「俺、ドア開けてくれた時とか、エレベーターのドア押さえて手もらえた時とか、『どうもありがとう』を相手に聞こえるぐらいの声でちゃんと言うのが、なかなかできないんだよな」
 「あたし、人に足踏まれて、反射的に『ごめんなさい』って言っちゃったことあるよ」
 「高校の時、人と話すのにあんまり臆病になってて、一日中寮の部屋でゲームやってた」
 「あたし高校の寮生活一番辛かったのが…」
 「晩ご飯の時、周りは友だちと行ってるのに、自分は一人で食堂行かなきゃ行けない時?」
 私は、皮肉そうに目を閉じ、静かに笑みを浮かべながらうなずいた。
 彼は続けた。「でも別に友だちがいなかったわけじゃなくて…」
 「たまには窮屈な寮生活から逃れて一人で食事ぐらいしたかった…でしょ?」
 「俺、電話苦手で、ついこの間までピザのオーダーできなかったなぁ」
 私は、思わず甲高く笑ってしまった。
 「ホントだってば」
 学部も対照的な勉強をしてるし、学年も違う。共通の友だちは少なかったし、生まれ育った環境も、趣味もはたから見れば同じだとは言えなかったと思う。私立の高校は寮が多いので、うちの様な私立の大学には、私立高校を卒業している学生は珍しくなかった。でも不思議なことに私ほど色々悩みを抱えてここまで至った者は少なかったのだ。今までの苦労話の内容を振り返ると、人間の小ささを感じる。それを言ったら再び二人で笑った。

出会い4 

March 21 [Tue], 2006, 9:36
 ガラスに木製のフレームがついたドアは想像以上に軽くてその日の天気の陽気な雰囲気に乗せられているようだった。ドアを引くと右腕が勢いを付けて手前にスウィングし、その拍子に体が前へのめり込んだ。ドアにぶつかりそうになった。それで再びすでに半分にやついた顔つきが笑顔で満面になったのが分かった。頭を左右に軽く振り、両手をポケットに突っ込み前に進む。
 “Hey.”
 私は簡単に挨拶した。
 “Oh, hey.”
 声をかけられたことに驚いたのか、普段そのカフェで知り合いに会うようなことが少なかったのか、多分両方であっただろうが、リックはきっと愛想笑いではない、本当に快い表情をこぼした。
 “What’s all this?”
 私は早速納められないにやついた顔の理由を話した。
 「なぁに、新聞にパソコンにコーヒーに…それにその気むづかしそうな本は?」
 言いながらその本を軽く左手の中指と人差し指で持ち上げ、表紙のタイトルを見た。あまりにもお堅い経済関係の本だったので、はっきり言ってタイトルさえ覚えていない。
 少し恥ずかしそうに、でもなぜか少々自慢げそうに口元をゆるませ、読んでいる内容を教えてくれた。とても興味深いものだと言った。その間抜けに格好付けている姿で私は安堵のような物を感じた。隣の空いている席に座ってもいいかと聞くと、是非座ってくれと返事をしてくれた。

出会い3 

March 21 [Tue], 2006, 9:34
 あのドアを開こうと思ったのは対した考えもなくて、多分フレンドリーでいい人ならきっとそうしていただろうと思ったわけで、つまりはリックの為にしたという風に思いたかったのかもしれない。人と馴染ませようと、どこか誇らしげな所が初めてあたしがリックに会った時に受けた彼の印象と同じである。
 レストラン街と呼ぶには少々小さい下り坂の下の曲がり角にあるスタバを通りかかると、その大きなウィンドウの先にあったのは、ゆったりと背もたれに寄りかかり、膝の上に置く本を平和そうに眺めてる、スマートに足を組んでいるアジア人がいた。リックである。
 大学生とは思えない光景であったので、少々目を引いた。頭の固い若いサラリーマンがいかにも好みそうなことであったからだ。大学生らしくない童顔で、大学生には間に合わなさそうなそうな背丈で、なおかつジーンズにポロシャツ、ぼろいスニーカーとくれば少々ギャップを感じずにはいられない。一瞬通りかかった私はふと笑顔をこぼし四歩引き返しスタバのドアを開けた。

出会い2 

March 21 [Tue], 2006, 9:33
 正確にはそれ以Oから知り合いだったけど、大して話もしたこともなかったし、おしゃべりだってこと以上は知らなかったし、興味もなかった。強いて言えば背は高いとは言えないし、顔も薄かったし、初対面の人たちを仲間に馴染ませてくれようとしてくれてる姿が少し無理しすぎでこっちが恥ずかしくなってしまった。そういった所が妙に自分と似ていて、またその内心自分に自信満々らしそうな誇らしげな目つきがしゃくに障るとも言ってよかったが、その時のあたしは前の彼氏の異常なまでの僻みのせいで反対にどれほど嘘くさくてもそういう優しさは受け入れるべきだと思うようにしていた。つまり最初の印象は、「まぁ、いい奴なんじゃん?」という程度だった。

出会い1 

March 21 [Tue], 2006, 9:32
「もしそれが、もう一度時空をゆがめてあの瞬間に戻れるとして、またそのドアを開いてまたその席に腰を下ろすかどうかっていう質問だとしたら、答えは一瞬の躊躇もなくイエスだよ」

 初めての彼氏らしい彼は独占欲が卑怯なぐらい強くて、でも頭がよく切れる人で、いつも別れ話が出ると上手く丸め込まれてよりを戻してしまった。息が詰まりそうだった。だから地獄だったはずのここは天国みたいになった。
 彼とは大学が再会してから一週間で別れた。「まだ諦められない」って言われたけどもう耐えられなかった。友だちにはどんな彼氏であっても別れは辛いから同情してくれたけど、本当は一晩泣いたらせいせいしていた。寂しくないと言ったら嘘になるけど代わりに手に入れた一人の人間としての自由に比べると何のロスもなかった。
 リックに出会ったのはその一月後だった。

時間−始まり 

March 21 [Tue], 2006, 9:32
 車の時計の針が1:11を指した。
 「ねぇ、見てみて!一時十一分!」
 彼が、「ん?」と一瞬視界を道から時計に移した。
 「ちょっとしたことで、喜びを感じるのサ」
 私は答えた。 彼はふと笑った。その優しい笑顔が、決して苦笑いだったり、くだらない作り笑いでないことが伝わる。愛しさまでも感じ取った。それを見て、私も思わず笑顔をこぼした。
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