151 彼我境界 

January 03 [Thu], 2008, 22:52
 温泉街に住んでいる、ということはとても幸せなことかもしれない。

 温泉街と聞いてイメージするのは、なんと言っても夏の家族旅行で行った温泉街で、それらは決まって海か山の中にあって、平地に住んでいた僕には、夏休みと旅行という条件も加味されて非日常の光景だった。
 そんな、かつての非日常空間に当たり前のように暮らし、仕事場とアパートを往復している。
行きすぎる毎日のなかで、それでも温泉街に住んでいることを、ときどきどこか特別に思う。それがたとえ内陸の平地であってもだ。
 今住んでいるところは、有名な温泉場に囲まれてしまい今後の道筋がちょっと心配になってしまう温泉街で、当然ながらにぎわいは縁遠い。土産物屋の菓子なんかは賞味期限が余計なお世話で心配だし、おもちゃを見れば未だに火星大王なんてロボット玩具が出てきそうだ。でも、なんとか営業は出来るらしく、出勤する時間帯はほぼ開業している。
 
 久しぶりに温泉に入ってきた。
明日から仕事始めで、なんとなく身を清めておきたいのもあったし、温泉に入っていい感じに眠りたいと思うのもあった。
 いつもの行きつけ(といっても一月か二月に1回くらいしか行かないのだけど)に行ってみた。ここにはマッサージ器と椅子とテーブルとMATCH(大塚ベバレッジ)があって、かなりくつろげる。しかも風呂も新しくて広く、露天風呂付だ。
 中はかなり込んでいて、ロビーは座れないほどだった。
 脱衣所のカゴもかなりの数が埋まっていて、おそらく僕と同じ考えの人や、若い人も多いから、帰省してきて友達と入りに来た、というのも多いらしい。
 早速服を脱ぐ。大学時代くらいまでタオル何ぞで隠し、それなりに恥ずかしがっていたが、今じゃ全く隠すことはしなくなった。振るオープン、ではなくてフルオープンだ。自身、ではなくて自信があるとかそういうわけではなくて、なんとなくわずらわしく感じたのか、旅の恥は掻き捨てというか、どうせ誰も見てないし、だいたい知り合いにもあわないし、会ったところでなんともないので、何も気にしない。観察(?)してみると、オジサマ方がその傾向の多くにあり、若い人ほど隠す。それ以上に低年齢化すると、やっぱりどうでも良くなっているようだ。
 僕はいつも頭と体を洗ってから入る。いつでも、どこでも。
僕の住んでいる温泉街は、源泉が熱く、どこの風呂でも熱いので、全身が入るまでに覚悟と気合とそれなりの時間を必要とする。しかし、とにかくあったまる。
 あったまってきたら体を伸ばしてみたり、筋肉を自分で丹念に揉み解したり。職業柄、自分の筋肉の硬さや骨格のゆがみに危機を感じつつ、もむ。露天風呂は今日は空が見えなかったし、静かに入りたいところだが他の客のしゃべり声がにぎやかなので殆ど行かなかった。
 風呂につかりながら、髭をそりながら、ちょっとクールダウンしながら、いろいろなことを考える。悩みが筆頭に来て、仕事や、家族や趣味のこと、過去と今後と周囲。落ち込んで泣きたくなっても、湯気がベールを作り、汗と水滴が自然にカモフラージュしてくれる。それこそ、気にならない。今日はいろいろ考えがめぐったから、適温だったのかもしれない。
 考えることに飽きがくると、うっすら人の影をみる。あの人は腰がいたそうだとか、かなり肩がこおっていそうで触ってほぐしたいとか、膝は大丈夫か、とか、そんな具合に。これも職業柄だろうが、ときおり解したくてうずうずすることがある。
 そんなことをしながら、でたり入ったりを繰り返す。途中髭を剃る。端っこのシャワーを使うのが好きだ。少なくともどちらか開いてる一方は人をあまり気にしないで使える。温泉はとにかくのんびりだらりといきたい。風呂上りまで、一貫して一糸まとわず。

 体重計にのるのは必須だ。年末年始の暴飲暴食でやはり増えていた。増えるのは毎年のことだが、少しまずいと思う。思うのも毎年。適当にドライヤーで髪を乾かす。脱衣所は明るくていい。
 いつもアイスとジュースで迷うが、やはりここはジュースで、物はMATCHがべストで、なければエネルゲンでもいい。コーラやサイダーではちょっと甘ったるくてもたつくし、オロナミンCでは少なすぎて満足感が低めだ。それなりに甘く、後口があっさりしているのが入浴後にはベストマッチだ、MATCHなだけに。牛乳系は次点。
 マッサージ器に100円をいれ、飲みながらごろごろとやっているときが、至福のひと時だと感じる。特になにも考えず、不自然な圧力に身をまかせ、当たるところに当たるように身をよじらせたりしている。特に体はほぐれていないかもしれないが、その雰囲気とたまには体を解すだけではなく解してもらいたいという想いと、温泉にはいることとセットとして切り離せないという拘りを達成した満足感かもしれない。いや、単純に気持ちいいだけか。
 
 平日の昼間でも、寝る前でもほぼ一定のレベルで満足して帰ってくることができる。500円程度で数時間楽しめて、そんなに常習性があるわけでもないからお得だ。多分、精神衛生上でも良い感じだ、僕の場合。本当はサウナと水風呂にも入りたいけども、それはちょっとこの温泉街で言うのは酷かもしれない。
 仕事帰りに、入ろうと思えばいつでも入れる。出勤途中に足湯に浸かって体を暖めることだって、温泉卵でビールなんてことも出来る。贅沢だ、と思う。
 そして、いつも日常だが、どこか非日常感のある温泉街の佇まいと振る舞いも、贅沢だと思う。あるいは幸福だとも。
 今年はちょくちょく通って、全体的に洗濯してこよう。
 明日も温泉街を歩いて、職場に向かう。
 

 追伸:素っ裸が平気でも自分のカゴの両隣に人がいるときは、なんだか恥ずかしいぞ。
P R
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