先々週くらいに南関東で初雪が降った時の勢いで打ったもの。
ほのぼの。
最初の一文は銀河鉄道の夜のつもりですが記憶が曖昧
トンネルを抜けると一面の雪景色が広がっていた。
というのは少年の好きな小説から拝借した一文だが、開口一番の前に開けた出入口からは、それ以上の驚きと美しさが外には広がっていた。
初雪が降ったのだ。
ぽつぽつとテントが置かれたここの聖域は、戦いに疲れた戦士たちが休養を共にする場所で、足元には一面に水が張られている不思議な空間である。昼夜も天候も不安定な世界である為に突然雨が降りだすことも稀ではないが、雪が降ることは初めてだった。
少年の後から起き出してきた青年たちも同様に、ここでは初めて見る雪に感嘆をもらしていた。
「寒い……。と思っていたら、雪が降っていたのね……びっくり」
「っ!…、おはよう。そうだね、僕も驚いたよ」
「ふふ、おはよう」
少年と同じテントで過ごす少女が起き出してきた。流石の雪に少女すらも驚いているようだ。
そして少女が起床するということは、もうじき朝食を知らせに盗賊辺りがやってくるに違いない。予想した少年は、少女と一緒に中心へ向かった。
寒いと思わずはぁーと温かい空気を吐き出してしまうものである。そこから出てくる温かい空気は、目に見えるものとして現れる。それは不思議と心を弾ませてくれるものだ。
子供扱いをされることを嫌がる少年も、思わず吐き出してしまう。白い空気が宙に消えた。
隣で少女が吐き出した息が白くなる理由を疑問になって呟いていたのを耳にした少年は、持ち前の知識を使って説明をすると嬉しそうに知識の広さを褒めてくれた。嬉しさに少年の顔は熱くなる。あのおちゃらけた旅人たちが疑問に思っていたら、自信満々に答えてあげようと思った。
噂をすれば何とやら。盗賊が少女(と少年)を迎えにやって来た。寒さの所為か自慢の尻尾も縮こまっており、上着の中に隠れている。
「おはよう。レディに不安げな顔は似合わないぜ?」
少年へ朝の挨拶をさっさと済ませた盗賊は、待ってましたと言わんばかりに少女にまとわりついている。
あまり良くは思えない現状に少年の幼心は刺激されたが、ただ黙って二人を見ているだけに終わった。これくらいで動揺していては、リーダーの様な威厳溢れる勇者など、夢のまた夢のことだと思ったからだ。
ただし理想と現実は、どうやら違うらしい。
「ジタン・トライバル。皆の朝食が遅れるから急ぎなさい」
普段は後方から威圧感を放つ勇者が本日は珍しく、盗賊を催促しにやって来た。
勇者を何だと思っていたのだろう。後ろから見守るだけが名誉溢れる立場だとでも思っていたのだろうか。情けない。これじゃあ過去にオニオンナイトという称号を貰った彼らにも不名誉だ。情けない。決して非道な存在ではないのに。
少年は自分がまだ少年であったことに対して自己嫌悪に陥ったが、もう既に朝食の席に着いていた騎士や旅人に励まされたお陰で考え事は止めることにした。そして勇者の勇姿をこの目に、脳に、耳に、より一層焼き付けていこうと奮い起たせた。
主に準備をしていた義士が席に着くと、勇者よりも我が先と先陣を切った旅人と夢想がパンと勢いよく両手の平を合わせる。少女は彼らよりも少し遅れを取ってしまったが、皆同じことを考えている。呼吸を合わせて朝の挨拶。
「頂きます!」
不安定な聖域の中、戦士たちは新たな一日を始めた。
おわり
はらへった
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