りぼん 第3話

May 30 [Sun], 2010, 16:26
「どもっ!名前、何て言うのー?」
「・・・美弥!」

「美弥くん?美弥さん?美弥?」
「美弥さんとか無い無い!美弥でいいよ」

笑ってそういうと、これ以上無い笑顔で、その女も笑った。

「美弥!」
「はい」

「何か名前が似てるね。私雅花っていうんだけど、皆から「みや」って呼ばれてるし」
「そーなん?じゃあ呼ばれたらどっちも振り返りそう」
「あははっ、あるある!」
「美弥にみやって呼ばれると変な感じだから、美弥は雅花って呼んでくれていいよ」
「ん、わかった」

話してるとすぐに打ち解けた。
雅花がクラスの男女から人気があったのは絶対この性格のおかげだな。

でも、だからなお更、あの日の涙と紙ヒコウキに書かれた英文の意味が気になった。

聞きたくてもなかなか聞き出せなかった。





「はーい!じゃあ、ね!入学式から3日が経って、みんなもクラスに慣れてきたんじゃないの?ということで、学級委員決めます!」

めんど。
こーゆーのって絶対立候補でないからくじびきとかになんだよな・・・

「美弥やる?」
「やるわけねーじゃん。お前やんの?」
「やらねーよ!」

「じゃあ、立候補いる?」

「ハイ!!!」

急に、隣の雅花が立ち上がった。
先生も予想外の立候補にびっくりしたみたいだった。

「よ、みや!がんばぁ♪」
「みやが委員だったら絶対1年楽しいし!」
「立候補すると思ったぁー♪」

クラス中からそんな声が聞こえる。照れながら教卓の前に出る雅花。

「はい、じゃあ女子は雅花さんでいいわね?男子!男子は?」
「・・・・。」
「仕方ないわねー。じゃあくじ作ってきたから阿部君から順番に引いてって!」

くじを適当に選び、あける。

「え。」
「ん?美弥どーした?」

俺のくじには、赤い文字で大きくあたりと書かれていた。

「「ぎゃははは!!どんまい!」」
「うるせ!ったく・・まじでついてねー、当たりっつーよりハズレだろコレ・・・」

・・渋々教卓の前に出る。

「じゃあ、一言ずつどーぞ!」
「ハイ!知ってると思うけど雅花でーす♪1年頑張ります!」
「・・・・頑張りまーす」

異様なやる気の温度差の二人が、学級委員になった。





雅花side


「みや、今日あっちゃん達がカラオケ行こうって!みや誘いたいんだって♪行く?」
「行く行くっ★あれ歌いたい!学園天国」
「あははははっ!!みやが歌ったらやばい盛り上がりそーっ!」
「100均のアフロのカツラ持っていこーっと★」

「「あははははっ!!」」

私、雅花は周りから「みや」と呼ばれている。

たいてい、今みたいにカラオケだとか合コンだとかそういう行事にはお呼ばれするけど、
周りを盛り上げる役目なだけ。
合コンなんて興味ないし、本当は全然、こんなキャラじゃないんだ。

皆の知ってる「みや」と、私「雅花」は別人だなって最近思えてくる。
まぁ、これにも理由があったりするんだけど。

「ねぇねぇ、美弥クンてかっこいいよね!」
「なんかわかる!かっこいい!うちのクラスなんてチャラチャラしてんのばっかじゃん!」
「そうそう、尚更だよねー♪みやは隣だよね!どう?美弥クン」

「え?美弥ぁ?別に・・・どうとか思ったことないなぁ・・それより!からあげ食べたい!頼んでくる!」

「えー!?せっかく隣なのにもったいないなー・・・もう・・」


高校2年生の今年、隣の席の美弥は女子にモテる。
ワックスで整えられた黒髪、長身、運動神経抜群で、どっちかっていうと爽やか。

長い前髪に隠れたぱっちりした二重のたれ目、
特別イケメン!ってわけでもないのに、あの目で見られると確かにちょっとときめく。

しかも、話しててすごく面白い。
モテるのもよく分かった。


そして、同じ学級委員になった。
ふと美弥を見ると、前髪がうざそうに首をぷるぷると振っていた。
・・目が合った。

「ん?」

あたしが見てることに気付くと、真顔とはかなりギャップのある可愛い笑顔で話しかけてきた。

「いや・・髪じゃまなの?コンコルド貸してあげよっか」
「ん、さんきゅ」

あたしの紫のコンコルドで、慣れた手つきで前髪を止める美弥。

――邪魔なら切ればいいのにな。

でも、美弥の横顔に思わず見入っていた。
目が合った時、きゅんってした。





―――授業が終わって、返してくれたコンコルドを静かににぎりしめた。
.

りぼん 第2話

May 30 [Sun], 2010, 16:24
ごみを捨て、足早に家に着くと、朝食のコンビニパスタと500mlのペット茶をうまく持ち、
再び部屋のベッドに横になった。

プージャのポケットにとっさに入れた紙ヒコウキを取り出す。
ただの興味本位だった。

複雑な折り方をされた紙ヒコウキを丁寧にあけていく。
これを開けたらあの女の心の中をあけるような気がしたけど、所詮他人事にすぎなかった。

小さな折り紙には、あの姿から大いに想像できる女らしい小さい文字で、


「Je vous souhaite plein de bonheur.」 


と書かれていた。
意味なんてもちろんわからない、むしろ読めなかった。



-新学期-

春休み中、何度かその出来事を思い出したりしたけど、
新学期が始まるとクラス発表の方がよっぽど気になった。

バス停の近くのコンビニで、いつもどおり仲間とたまって、学校へ向かった。

クラス発表を見ると、
幼馴染で同じサッカーサークルに通っている、照(てる)と同じクラスだった。
親友が一人居る、とりあえず誰もいねーって状況だけは避けられた。

いつもよくつるむ仲間のクラスを確認して、あとはどうでもよかった。


俺は中学の頃、一回だけ付き合ったことがあったけど、それが最初で最後だった。
告白とか、アドレス教えてだとかはたまにあったけど、興味なかった。

いつもうまくごまかして断っていた。

でもどんどん彼女を作っていく周りにちょっとだけ一人浮いてるような気もしてた頃だった。



クラスに入り、照や新しく友達になったやつらと他愛無い話をしていた。

「んでさぁ、俺さ、照に言った訳!そしたらこいつがさー」
「ぎゃはははは!」
「ちげーって!美弥が言ったんじゃん!」

だんだん教室がにぎわってきた頃、うるさくドアの音を立てて入ってきた女に息が止まるかと思った。

「おはー!!!」

教室が一瞬静かになった。
その瞬間、クラスにいた女達が待ってましたと言わんばかりに彼女に群れた。

「おっはよー!雅花っ!」
「遅かったねー!今日遅刻決定かって話してたんだよー!?」

「あははっ、遅刻なんてしないよぉー」



――あの日、公園で紙ヒコウキを飛ばしていた女。

第一印象があんなんだったし、クラスメイトの中心で談笑する彼女は俺にものすごいギャップを与えた。



縁なのか運なのか、席が隣だった。


「どもっ!名前、何てゆーの?」

席についた途端、人懐っこい笑顔で話しかけてきた。
人気な理由が分かった気がした。

「・・・美弥。」

俺もその女に微笑み返した。

りぼん 第1話

May 30 [Sun], 2010, 16:21
-プロローグ-

「・・・や・・・っ、・・・や!、みや!美弥!起きな!」
「んあー・・・・るせー・・・・」

耳障りな掃除機の音と共に、姉の鼓膜に響く嫌な声が眠りを妨げた。

「るせー・・・、、、じゃない!!!いつまで寝てるの!??」

――こいつの「いつまで」の基本は異常なんだよ・・・・。
眠すぎる目をこすりながら携帯で時刻を確認すると、まだ7時だった。

「っだく、まだ7時じゃねーか!!てめーこそ何考えてんだよ!つーか俺休みだから!!!」

低血圧で朝に弱い俺が、睡眠妨害の不満を怒鳴り散らす。

「はぁ!?寝てるのはねー、あんただけなのよっ!いつまでもぐうたらぐうたら、何か家のためにしたことがあったっけ!?いいから早く起きなさい!」

結構声を張り上げたのに、俺の3倍ぐらいのボリュームで怒鳴り散らす姉の莉真。
ため息混じりにしぶしぶ体を起こす俺。

自営業で両親が小っちぇー美容院を経営してるため、朝に弱すぎる俺以外、うちは朝5時起きだった。

8時開店に備えて、早朝から1階の美容院をバタバタ走り回る両親に影響されてかしないでか、
こいつ、莉真はいつも2階の掃除を勝手に始める。

俺の部屋に勝手に入ってくる。すっげー困る。
そして勝手に掃除してくれるだけならまだしも、必ず俺を起こす。

「うわっ・・あんた、超ぶっさいくだよ!早く寝ないからでしょ?顔がむくんで酷いよ?」
「るっせ、ばばあ」
「あ、ちょっと!」

不機嫌なまま、洗面所へと向かう。鏡には確かに酷い顔の俺が写る。

スウエットからプージャに着替えて、冷水で顔を洗い2階に戻ると
莉真が仁王立ちで構えていた。

それを確認した瞬間、階段をUターンする。
それをものすごい速さと力で阻止する、二十歳の姉。ちなみに、喧嘩で勝ったことがない。

「んだよ!?」
「んだよじゃないわよ!いい仕事をあげるの、あんたゴミ捨てて来なさい!」

ものの数秒で俺とごみ袋は外に投げ出された。

ゴミ捨て場は小さい頃よく遊んだ近所の公園のそばにあった。
公園に着くと、朝7時にもかかわらず人が居た。

何気なく見ると、俺の足は歩くのをやめた。
ベンチに座っていたその女に目が離せなかった。



-濡れた笑顔-

淡いピンクのカーディガン、短く折られた制服のスカート、細い手足。
カーディガンのポケットからはじゃらじゃらと邪魔なキーホルダーがたくさん出ていた。
多分携帯かなんか。

どこにでも、この辺にありふれてる普通の女子高生。
視線を戻そうとしたとき、女の顔が見えた。

今は春休み、卒業式が終わったばかりの3月、散ったばかりの桜が吹雪をあげるなか、
その女は一人ベンチに座り、紙ヒコウキを飛ばしていた。

普通の折り紙の4分の1のサイズで売られている折り紙、あれと同じくらいの
小さな白い紙ヒコウキが何個か女のひざ上においてあった。

一個ずつ、それを手に取り遠くへ飛ばしていた。


笑顔で。

でも、ほんのり色づいた頬にはいくつも涙の跡があった。
笑顔で泣きながら、紙ヒコウキを飛ばしていた。

後から考えると意味わかんねーけど、実際そこにいると、心地いい違和感を覚える程度、
ずっとその女を見ていたかった。

――何か抱え込んでいると思った。

ギャルみたいな格好にかなり不釣合いな、長くてサラサラの黒髪に、色白で清楚な容姿だった。

桜吹雪の中を紙ヒコウキが俺の肩に当たって落ちた。
無意識にそれを拾うと、その女が気付かないうちに静かにそこを去った。



後に、俺がこの女と付き合うのはまだ誰にも想像できなかった。


これは、俺の高校時代――その女、雅花と付き合うまでの話。
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流羽(るう)です*
自作小説連載ちゅ.ゆったり更新します(b'`★)!
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