ほたる整骨院B 

2008年05月04日(日) 13時30分


「お待たせしました」

ベッドの周りに引かれたカーテンの中に入って行きながら、庵曽新はふと手元の問診表の氏名欄に眼を止めました。

『辰伶・・・? 変わった名前だが、どっかで聞いたことあるよな。何処で、だったっけ?』

思い出せないままに、そこに横たわった患者の顔を見て、庵曽新は息を呑みました。

『なんだこりゃ・・・? 男、だろう?この人。何で、こんなに綺麗なんだ?』

うっとひと息吸い込んで、何でもないような顔でいつも患者にしているように尋ねます。

「腰、ですよね? どんな具合ですか?」

「はい。ここ、なんですが」

辰伶は患部を庵曽新の方に向けて、かけてあったタオルケットを除けて見せました。

真っ白いきめ細やかな肌に、また庵曽新はうっと息を詰まらせます。

とりあえず鍼を打ちますが、つい手元が震えそうになり、ツボに刺すのに必死です。

『こんなことって、初めてじゃねえか?』

今まで、どんなに綺麗でセクシーな女性の患者が現れても、表情ひとつ変えず冷静に診てきた自分なのに。


額に脂汗を浮かべながら、庵曽新は何とか無事に鍼を打ち終えました。

「お疲れさまでした。次は、電気を当てますね。こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」


腰に電気を当てている辰伶を見ながら、庵曽新はハッと気がつきました。

同じく整体師で、一番の友人であるほたるが、ついこの間飲みに行った時にも、さりげなくのろけていたことを。

『しんれーってね、オレの大切な人、なんだけど。ほんとにキレイなんだよ。肌なんて真っ白で、すべすべしてて』


『そうだ。あいつ、確かにしんれーって言ってやがった。女だとばかり思いこんで聞いてたぜ。まさか、男だったとは・・・・・ん?』

庵曽新はもう一度、辰伶の問診表を手に取り直しました。

『やっぱり・・・・・嘘、だろう? なんだ、こいつら?!』

住所も、家の電話番号も、苗字も、ほたると全く同じ。

『男同士で、入籍まで済ましてやがるのか?! 何なんだ?!』

庵曽新の脳内を、大量の?マークと!マークが飛び交います。


電気治療を終えた辰伶が、看護師の指示で再びベッドに戻って来ました。

今度はマッサージです。

うつ伏せに寝かせて腰を揉むと、その手触りと程良い弾力に、庵曽新はしばし我を忘れてうっとりとしました。

『・・・あっと、いけね!』

気を取り直してつい辰伶の顔を見ました。

眼を閉じて、心地良さそうな表情をしています。

整った顔、長い睫毛。

『・・・・・・あっ///』

鼻の奥に冷たいものが流れる感じがしました。

「し、失礼」

庵曽新は慌てて控室に駆け込みました。

「やっぱり・・・・・」

鼻血でした。

「何興奮してんだ、オレ。しっかりしろ///」

白衣を汚さなくて済んでほっとしたものの、脱脂綿をきつく丸めて鼻の奥に押し込み、両手で頬をぱちぱちと叩いてから庵曽新は控室のドアを閉め、また辰伶のベッドに戻りました。


マッサージを再開しながら、庵曽新はどうしても聞いてみたくてたまらなくなりました。

『どうしよう。何から切り出そう。ま、とりあえず・・・』

「ほたる・・・君と、一緒にお住まい、ですよね?」

「えっ? 弟をご存知なんですか?」

『弟?! 嘘だ、全然似てねーじゃねーか! それに、ほたるのヤツ、たしかにのろけてやがったぞ?』

庵曽新の脳内を、?マークが乱舞しています。

「はい・・・専門学校が一緒でして、ずっと仲良くしていただいています」

「そうでしたか! いつも弟がお世話になっております!」

辰伶はマッサージ中であることも忘れ、ベッドの上に正座してお辞儀をしました。

その時、ズボンがずれて、下着と太腿がちらりと見えました。

『うっ///』

庵曽新は鼻の奥の脱脂綿が、また新たな血を吸ったのを感じました。

「お、弟さんがついていながら、何故こちらに?」

「は、はい・・・身内では、お互いにやり辛いものがございまして」

『そりゃそうだろうよ。これじゃ、ほたるのヤツ、治療の途中でサカってヤっちまうに違えねえ。きっと、それで、余計に傷めちまったんだぜ。気の毒に』


治療を終えた庵曽新は、表面は涼しい顔ながら、実は疲れきっていました。

「お疲れさまでした。当分の間、激しい運動は控えて下さいね」

「はい、ありがとうございました」

お大事に、と返しながら、「激しい」に余計なアクセントがついていなかったかなと庵曽新は気を揉みました。

『そうだ、ほたるにも一言、気をつけるように言っといてやろう。あいつの協力がなけりゃ、いつまで経っても治りゃしねえだろうよ』



その夜、ほたるは大層不機嫌でした。

「ねえ、辰伶・・・・・どうして、浮気なんかするの?」

「はあ? 何のことだ?」

「とぼけなくてもいいじゃん。ここ、揉ませたでしょ? 庵曽新に」

言いながら、辰伶の白い腰に手を這わせます。

「何を言っている。治療していただいたのだぞ。あ、そうだ、お前の友達なんだってな」

「友達だろうと誰だろうと、オレ以外、触らせちゃダメでしょ? オレが診てあげるのに、どうして、他所に行くの?」

「お前はいつも途中で別のことをするじゃないかっ! あれでは治療にならんだろうが///」

「何、言ってんの。あれも治療のうちなんだよ?」

「こらっ、また嘘をつく」

「嘘じゃない。だって、お前、すっごく気持ち良さそうだし?」

「マッサージで気持ちいいのと、アレで気持ちいいのとは違うだろうが!」

考えるより先に言葉が出てしまい、辰伶はしまったと臍を噛みましたが、もう遅かったのでした。

気がつくと、満面の笑みをたたえたほたるの顔がすぐ間近に。

「だから、ね。気持ちよく、シてあげる」

ああ、今の「してあげる」の「し」は間違いなく片仮名だな と、背中に冷たいものが流れるのを感じる間もなく、辰伶は押し倒されていました。


一方、普段よりも早めに寝床についた庵曽新は、悪夢にうなされていました。

「オレのここ、マッサージしてくれや」

「オレも。早く」

二人の兄が、腰から下をむき出しにしてくねくねと振りながら迫って来ます。

「うわ〜っ//// ・・・・な、なんだ、夢か。・・・あー、気持ち悪りい」

今日は余程疲れているのでしょうか。

「あり得ねえ・・・・兄弟で、なんて。・・・ぜってーあり得ねえ・・・・」

庵曽新はぶつぶつ言いながら、また布団にもぐりこんだのでした。

ほたる整骨院A 

2007年11月02日(金) 1時48分

「あ、おはようございますv」

「調子はいかがですか?」


受付の女の子たちが声を弾ませて応対するのを耳にしただけで、ほたるには入って来た患者さんが辰伶だとすぐにわかります。


『何、あの子たち。他の患者さんの時と、声、違ってるし』

内心、おもしろくありません。



待合室に坐って待っている辰伶と眼が合うと、中に入るよう顎で促しました。



ベッドに辰伶をうつ伏せに寝かせ、カーテンを引き、ズボンをずらしてマッサージを始めます。

滑らかな肌、そして弾力のある、触り心地の良い身体。

ほたるはうっとりとして、つい、仕事中であることを忘れそうになってしまいます。


『あ、いけない』

気を取り直して、念入りに揉み解していきます。

「どう?」

「うん・・・とても、気持ちがいい。でも、まだ少し痛むんだ」

「治りがいまいち遅いよね。今日は鍼、試してみようか」

「えっ?」


辰伶の顔色が、一瞬、蒼白になりました。


「針・・・・刺すのか?」

いつもの辰伶らしくない、弱気な声と不安そうな表情が、またほたるの胸をキュンとさせます。

『ツボに鍼打って痛みを取るのがオレの仕事だけど、辰伶はオレのツボを刺激してくるんだよね。可愛いったらv』


「針って言ってもね、普通の針と違うから。ほら、こんなに細くてちっちゃいんだよ。痛くないから、大丈夫」

「本当、か?」

「オレを信じて。」


ほたるは消毒綿で辰伶の白い肌をさっと拭くと、慣れた手つきですっと鍼を打ち、抜きました。

「どう?」

「ん? 今、何かしたのか?」

「鍼、打ったんだよ」

「はあ? 本当、か?」

「うん。次、打つね。どう?」

「今のも、何も感じなかったぞ。全然、痛くないんだな!」

「でしょ」


ほたるは手際よく、次々と鍼を打っていきます。

「うん、たまに、ちょっとつついたような感じがする時もあるが、本当に痛くないな。凄いな!」

「腰の痛みの方は、どう?」

「楽になってきたぞ♪」

辰伶はうれしそうです。


『じゃ、ついでに、こっちのツボも打っとこう』

ほたるが、今、鍼を打った箇所は、痛みを取るツボではありません。

性感をより良くするツボ、なのでした。


「ありがとう。おかげで、すっかり良くなったぞ! じゃ、ほたる、また後でな♪」

辰伶は上機嫌で、足取りも軽く、整骨院を後にしました。


「お大事に」

ほたるの黒い笑みに、誰も気づいていません。


『今夜が、楽しみだしv』

副作用 

2007年09月17日(月) 16時42分


ふわふわと、身体に力が入らない。

寝ても寝ても、眠い。



ああ、起きてしゃきっとしなくてはな。

わかっているのだが、どうしても眠い。



やっぱり、あの薬のせいだな。

それも、わかってはいることなのだが。




俺は、毎年、かなり酷い花粉症に悩まされている。

スギ花粉の時期は言うまでもないが、秋になっても、イネ科植物などに反応するのだ。




このところ、早めに手を打つように心がけているので、眼も鼻もそんなに酷くはならないで済んでいる。


だが、一つ、困ったことがある。

薬の副作用だ。



薬はとてもよく効く。

それはうれしいのだが、反面、副作用がかなりきつい。


そう、眠たくて眠たくてたまらないのだ。


病院で言って、なるべく眠たくならないものに変えてもらったはずなのだが、それでも眠い。

そういう体質なのだろうな。




重要な会議の前や、運転する時などは、少々花粉症が出ても居眠りするよりはましだと割り切って、飲まないようにしている。



だが、ずっと飲まないでいるわけにはいかない。


そこで、飲むとすぐにこうだ。




どうせ日曜だからと、昨夜はしっかり飲んだ。


まあ、休みだから寝てても構わないが、やはりずっと一日中寝ているのもどうかと思う。



と頭では思うものの、眠たくて眠たくて仕方ない。



・・・・・・ん?

何だ、これは。


ぺたぺたと手に触れる、暖かいものの正体がつかめず、俺はぼやけた頭でそれを撫で回す。



「ん、くすぐったい。しんれー、起きたの?」


「はあ? な、なんでお前まで/////」



ほたるが一緒に寝ている。

しかも、裸で。



「こらっ、こんな所で何をしている?」

「何って、見りゃわかるでしょ? 添い寝、だよ?」

「はああ?!」



ほたるには花粉症などないから、当然、薬も飲んでいない。

「何で、お前まで?」

「だって、お前があんまり気持ち良さそうに寝てるから、見てたらオレも眠たくなったんだもん。」

「そ、そうなのか?」

「うん。それに、昨夜だって、せっかくの土曜日の夜なのに、オレをほっといて先に自分だけ寝ちゃうし・・・」

「そ、それは・・・・・悪かった、な・・・・」


きまりの悪いことこの上ない。

だから、語尾が消え入るようになってしまう。




「ほんとに、悪かったと思ってる?」

「あ、ああ。悪かった。」

「うん、じゃ、これからね」

そう言うと、ほたるは俺の寝間着を捲り上げて圧し掛かってきた。


「こ、こらっ、何をする!」

「何って、悪かったって、今、言ったじゃん」

「や、やめろっ、こらっ」

「やだ。やめない。シたらしっかり眼、醒めるからいいでしょ?」

「そんな馬鹿なっ! あっ、ああぁぁぁぁっ//////」








・・・・・・・あ、辰伶、また寝ちゃった。

ちょっと、激し過ぎたかな。

ゴメンね。



ま、いいか、今日は日曜日だし。

ゆっくり寝よう。ね、辰伶?



野球A 〜バッテリー〜 

2007年09月08日(土) 1時35分



マスクの奥の涼しい眼が、マウンド上のオレをまっすぐに見つめてる。

せっかくのキレイな顔が、太い枠で覆われてるのがちょっと残念だけど。

ま、でも、オレは後で十分によく見せてもらえるから。

もちろん、二人っきりでね。




超満員のグラウンドは、1点リードで迎えた9回裏二死二塁。

バッターは相手チームの4番、一発出れば逆転される。


でも、オレは全然不安を感じない。


あいつのサイン通りに投げれば、打てるはずなんかないから。




カウントは2-1、次のサインは内角低めのストレート。




キレイなあいつだけど、プレーは漢らしくて、強い。

強肩で、しかも舞うような優雅で素早い無駄のないフォームで、確実にランナーを刺す。

猛然とすべり込んで来る奴にも、少しも怯むことなくタッチする。

打っても、四番でチーム、いや、リーグ1のスラッガー。

今日の1点も、それまでパーフェクトペースで投げてた相手ピッチャーから、8回、強引にレフトスタンドに運んでもぎ取ってくれたもの。



リードも、もちろん強気。

時々、えっ?! て思うような、かなり無理な要求もしてくる。

だけど、それは、オレに全幅の信頼を置いてくれてる証拠。

オレなら難しい球でも必ず投げられるだろうって、信じてくれてるんだ。

だから、オレはいつも、迷わずあいつのサイン通りに、一球一球、全力で投げる。

そう、オレもあいつに全幅の信頼を置いてるから。

どんな球を投げても、必ず受けてくれるって。




最初は、正直、心配だった。

ポジションを聞いて、びっくりしたし。

キャッチャーって、普通、いかにもって感じの、逞しい身体つきの人が多いから。

こんな細身で、オレの剛速球が受けられるのかな って。



とんでもない間違いだった。



ユニフォームを脱げば、鍛えられた引き締まった筋肉で、でき上がった身体。

返球も、ずしっと重く、しかも少しもぶれることなくグラブに納まる。

ピッチャーでも、十分通用するんじゃないかな。




でも、キャッチャーでいてくれてよかった。

だって、オレの女房役をこなせるのは、こいつしかいないんだから。



息はぴったり。

攻めても、必ずいい所で点を取って、オレが楽に投げられるようにしてくれる。

阿吽の呼吸でプレーできる、オレだけの、恋女房。




それも、野球だけじゃない。

グラウンドを離れても、辰伶はオレの大切な恋女房だから。



これでラストだ。

全力を振り絞って投げた球は、構えたミットにまっすぐ納まった。

これも全力で振られたバットが、虚しく空を切る。



「ストライク、アウト、試合終了〜!」



球審が大きく右手を上げる。




プロテクターを外した銀色の髪と笑顔が、ライトの下で輝きながら、オレを暖かく迎えた。


野球 

2007年08月21日(火) 1時10分


カウント2-2から狙ってた内角低めのストレート。

ジャストミートだ! 手応えは十分!

会心の一撃は、きれいに三遊間を割った。

俺は余裕で一塁へ。



カープの一塁手は、ほたる。

俺より一年後に、ドラフト1位でプロ入りし、新人王のタイトルを難なく手にした。



アマ時代、どういうわけか、あまり関わりがなく、直接に話す機会がなかった。

しかし、俺は当時からこいつに注目していた。

お互いにプロ入りすれば、間違いなく、強力なライバルになるだろう、と。

打てば3割、塁に出れば俊足でかき回し、守っても超ファインプレーの連続。


今年も首位打者と盗塁王のタイトル争いを繰り広げている間柄なのだ。



しかし、変だな。

こいつは、いつもはショートを守っているはずだ。

何で、今日に限ってファーストにいるんだ?



こいつはセ・リーグ一、いや、球界一の遊撃手と言われている。

今のところ、こいつを打撃はもちろん、守備でも上回る内野手がカープにいるとは聞いたことがない。

故障があるようにも見えない。

この前の打席でも、内野安打と盗塁を鮮やかに決めたばかりだ。



ま、カープ側の何らかの事情なんだろうが。



「ねえ」


・・・・・? 俺?!


「ねえ、辰伶さん?」


・・・・・何だろう?

初めて、直に声を聞いた。

見かけによらず、低くて太く、漢らしい声だ。



「今夜、試合終わったら、飲みに行こ?」

「はあ?」

「いいでしょ? 明日はお互い、移動日だし。」


何だこいつは!?

話したこともないのに、いきなり飲みに行こうだなんて。



「・・・・・・・試合中、だぞ?」

「だって、話すチャンスが、なかなかないんだもん。オレ、あんたと話したくてファーストやってるのに。」

「はああ?!」



・・・おっと危ない。

刺されるところだった。


俺を牽制球でアウトにするための作戦か?


「今日だけって条件で、監督に頼み込んでファースト守らせてもらってんの。ね、オレの話、聞いて?」

「だから、試合中だと言ってるだろうっ////」

「じゃ、試合済んだら、オレの話、ゆっくり聞いてよ。」



一体、何なんだ。

いいライバルだと思っていたが、こんなへんな奴とは知らなかった。



人は見かけによらん。


「ねえ、終わったら、ホテルのラウンジで・・・・・」


まだ言うか。




あっ、打った!!



こんな馬鹿を相手にしている暇はない。

俺は二塁を蹴って、三塁に滑り込んだ。





次の打席もヒットで出塁。


・・・・・また来た。

ま、一塁手と一塁ランナーだから、近くに寄るのは当然と言えば当然なのだが。


「ね、お願い。ラウンジに来て。オレ、何時まででも待ってるし。」

「残念だが、俺は酒は飲めないんだ。」

「じゃ、コーヒーでもいいから。」

「一体、何の用だ。簡潔に用件を言え。」

「ここじゃ言えないし。」



何が言いたいんだろう?


まさか、タイトルを譲ってくれ なんて言うわけもないし。

そんなことはあり得んが、たとえ言われたって死んでも譲らんぞ。




チェンジになったので、話はそこで途切れた。



ああ、気が散る。

次の打席は、二塁打以上を狙っていこう。




気負いすぎたのか、考え過ぎか、内角の際どい所に来たボール球をとっさに避けきれなかった。

死球だ。

まあ、大して痛くもない。



・・・・あっと、またあいつが来たぞ。



「大丈夫?」

「ああ、何ともない。」

「よかった。無事で。」

鋭い眼が、ふわっと優しくなった。



・・・・・案外、いい奴だな。



俺はベンチの監督をちらりと見る。

盗塁のサインだ。

ここは思い切って行こう。



・・・・・ん? 視線を感じる。


ほたるが、俺をじっと見つめている。


こういう時は、普通、バッテリーの動きと交互に注意を配るものではないか?




眼が合ってしまった。

何で、だろう?


・・・・・・いかんいかん、こいつの思うつぼだ。


俺はピッチャーに視線を移して、そろそろとリードを取った。

ほたるもついて来る。



「好き、なんだ。」

「はあ?」

「オレ、あんたのことが好きなの。」

「はあああ?!」


一瞬、頭の中が真っ白になった。

つい、ほたるを正面から見てしまい、バッテリーへの注意が疎かになった。


そこへ、牽制球が飛んで来た。


慌てて一塁に戻ろうとした俺は、あろうことか蹴つまづいてしまった。

ほたるにタッチされる。

あっ! 一塁ベースに手が届いてない!


審判が片手を上げた。

「アウト〜!」




・・・・・屈辱だ!!


俺の野球人生で、こんなかっこ悪いこと、リトルリーグ時代にだって経験がない。

一気に点差を開けるチャンスだったのに、ここでチェンジになってしまった。


ショックで起き上がれずにいる俺の耳元に、ほたるが囁く声が聞こえた。


「オレ、本気だから。」



俺は呆然と、ベンチに引き上げて行く赤い帽子の後ろ姿を見送った。


京都錦小路紀行B 

2007年05月23日(水) 21時00分
「頼まれた用事は他にはないのか?」
「もう1つ、あるよ。生麩、買って来て、だって。」
「どこの店か、聞いて来たのか?」
「ううん、庵奈もお店の名前知らないんだって。でも、『道明寺』って生麩はそこしかないからすぐわかるって言ってた。」
「って、あれか?」
「あ、ほんとだ、書いてあるね。ありがと。」

「包みを見ただけではわからんが、道明寺粉が入っているのだな。桜餅みたいな食感なのか?」
「オレもよく知らないんだけど、白餡載せて食べたらおいしいんだって。買って来たら、ご馳走してくれるって言ってた。」
「それはおいしそうだな。多めに買って帰ろう。」

「いろんな種類があるね。コレ、『くじら麩』だって。くじらが入ってるのかな?」
「何何・・・いや、黒胡麻と白胡麻が二層になってて、くじらのような色合いだから、らしいぞ。わさび醤油で食べたらおいしいそうだ。お前向きだな。」
「うん、じゃコレも買う。」
「こっちにもいろいろあるぞ。この『バジリコ麩』っていうのも、お前、好きなんじゃないのか?」
「うん、それも買うね。あ、こっちは『キャロット麩』だって。食べてみる?」
「いや、遠慮する。俺はこっちの『梅肉麩』が食べてみたい。」
「少しずつセットになってるのがあるよ。これ買お。」
「あ、それ、いいな。でも、『キャロット麩』はお前が全部食べてくれ。」
「辰伶がオレの言うこと聞いてくれるならね。」
「はあ?」
「キャロット麩もお前も、オレが全部食べるの。」
「ま〜た、くだらんことばかり言いおって。次、行くぞ!」

京都錦小路紀行A 

2007年05月04日(金) 21時05分
「まずは用事から先に済まそう。庵奈さんに頼まれたものがあるのだろう?」
「うん。包丁を研ぎに出して来てって頼まれたの。たしか、天満宮からすぐ近い所にあるって言ってたけど・・・・・。」
「ほら、ここにあるじゃないか。食べ物を扱う店は多いが、金物屋はここ1軒だけだろう?」
「何で、そんなこと辰伶が知ってんの?」
「ガイドブックで確認しておいたんだ。お前に任せておくと、果てしなく迷いそうだからな。」
『・・・ムカつく。でも当たってるから言い返せないや。』

「創業永禄3年・・・西暦でいうと1560年か。桶狭間の戦いのあった年だよな。」
「壬生設定でも、オレたちまだ生まれてないじゃん。」
「そういうことか。それにしても、包丁ってこんなにいろいろな種類があるんだな。知らなかったぞ。」
「辰伶は料理自体知らないから・・・・痛いっ///」
「いらん事言ってないでさっさと頼まれ物を出して来い! 銃刀法違反で捕まっても知らんぞ!」

「・・・出して来たよ。あれ? 何見てんの?」
「いや、見てると飽きないなあ と思って。料理の道具って、こんなにたくさんあったのだな。」
「うん、日本料理ならここで全部揃えられそうだよね。」
「見てみろ。これ、野菜の抜き型だろう? 何でもできそうだな! こんなの見てると、俺も料理をしてみたくなったぞ。」
「あ、それは・・・・やめといた方がいいよ。」
「はあ? どうしてだ?」
「だって・・・(何て言おう。あっ、そうだ!) お前にはオレが作って食べさせてあげたいから。愛してるもん。」
「(聞こえないふり) さ、次、行くぞ!」
「待ってよ! (耳が真っ赤! 可愛いなあ、もうv)」



京都錦小路紀行@ 

2007年04月30日(月) 22時54分
「新京極って、どっちを向いても修学旅行生と外国人が多いよね。」
「そうだな。錦商店街はたしか・・・・あ、あったぞ。ここだ。錦天満宮から始まるんだ。」
「ありがと。オレ1人なら絶対道に迷ってる。」
「何言ってるんだ。京都の道は碁盤の目のようなものだ。通りの名前さえ判れば、迷うはずがなかろう?」
「だって、名前が判ったって、ちんぷんかんぷんだよ? どっちが東とか北とか、覚えられないもん。」
「まあ、そうかもな。」
「しんれー、頼りにしてます。愛してます。」
「(聞こえないふり)せっかく来たのだから、お参りして行こう。」
「オレは辰伶と一緒に行けるなら何処だって。」
「こ、こらっ! こんな所でくっつくなっ/// 不謹慎な! 罰が当たって馬鹿になっても知らんぞっ!」
「いーのいーの、オレはもうとっくに辰伶バカだから。・・・いたいっ!」
「天神様に成り代わってお仕置きだっ///」

「北野天満宮に比べると随分小さいね。」
「ああ、そうだな。しかし、歴史は古いぞ。菅原道真公の父上である是善卿の屋敷菅原院の跡地に創建されたものが源融の旧邸六条河原院に移され、豊臣秀吉の都市計画でこの地に移築されたのだそうだ。」
「ふ〜ん。・・・って、誰だっけ?」
「・・・。しっかり覚えられる頭になるよう、よく拝んでおけ。」

「なんだ、ここの正面からが錦商店街じゃん。」
「さっき俺がそう言ったじゃないかっ! 何を聞いてるんだお前はっ! もう、行くからなっ!!」
「あっ、待ってよしんれー///」


ムシキング 

2007年04月01日(日) 17時36分


ここは壬生城下町のおもちゃ屋さん。

今日もたくさんの子どもたちが、買い物をしたり、遊んだりしにやって来ます。



吹雪くんと遊庵くんが、ムシキングのゲーム機にくっついています。

「勝負だ、遊庵。今日こそキサマに勝つ!」

「へっ、オレの方がわざカードたくさん持ってんの! 楽勝だぜ!」



二人は機械にコインを入れて、スタートボタンを押しました。



吹雪くんの方に登場したのは、シンレイカブトムシ。

「どうだ、強そうだろう。水の技が使えるのだぞ。」

一方、遊庵くんの方には、ケイコククワガタ。

「こいつだって、火の技が使えるんだ。最強だぜ。」



お互いに自慢し合いながら、二人はゲームを開始しました。



しかし、何故か、ケイコクはシンレイを眺めているだけで、動こうとしません。

「おめー、何やってんだ? 早く技を出せよ!」

遊庵くんは焦りましたが、何もしていないうちに、吹雪くんの番が来てしまいました。

「ふふん、とろいヤツだな。では行くぞ!」



シンレイの水破七封龍を、ケイコクはまともに浴びてしまいました。

「やった! いいぞ、シンレイ!」

吹雪くんが髪を振り乱して叫びます。

ケイコクは岩にぶつかりながらも、すぐに体勢を立て直しました。

すぐさま、魔皇焔を放ちます。

続いて灼爛炎帝、悪魔の顎と連続技を受けて、シンレイはたまらず地に転がりました。

「やられた。いたい。」の文字が出ます。

すかさずケイコクは仰向けになったシンレイに馬乗りになりました。

「ここは一気に行け、ケイコク!」

遊庵くんが叫んだ途端、ケイコクの口を尖らせた顔が画面にアップになりました。

「何言ってんの。オレがイくんじゃなくて、先にこいつをイかせるの。」

「はあ? 何、バカなこと言ってんだてめーは?」

「黙っててゆんゆん。オレの勝手でしょ?」

そう言うと、ケイコクは、ゲームを無視してシンレイを犯し始めました。

「し、シンレイ! 何をしておる! 今のうちに、ケイコクをやっつけろ!」

「こら、ケイコク! 早くバトルに戻れっ!」

「やだ。邪魔しないで。」

吹雪くんと遊庵くんはゲーム機の前で怒りましたが、ケイコクはどこ吹く風で、自分のゲームに没頭しました。

機械からは、ゲームの電子音ではなく、ただ、シンレイの喘ぎ声だけがいつまでも聞こえていました。

萌えビール その2 

2007年03月04日(日) 23時36分

 また見つけました。鳴門の地ビールでございます。

 今度は2種類。赤地に金模様と、青地に銀模様。模様はうず潮。

 赤は「アルト」 少し色が濃く、麦芽の風味も濃厚。

 青は「ケルシュ」 アルトよりは薄いのですが、やはり普通のビールよりは若干色濃く、麦芽の味も濃い。

 この前のアサヒのビールもそうですが、やはり缶をきれいに洗って保管。

 うん、決めた。もし将来、SDをgetできたら、名前、アルトくんとケルシュくんにしちゃる。