52 

February 18 [Mon], 2008, 16:43
目が覚めると、


そこはまだ暗くて



この小さな照明がいつもと違うから、

ここから早く出たいと思うばかりだった。





今日は雨は降っていない。





朝一番で、チェックアウトして、
この旅館と別れを告げる。

ここからは


この荷物を抱え、




向かう。






そこは誰もいなくて





目を開けても





何も見えない。






だけど、





そこにはあなたがいるから。









私は安心して、



この扉を閉められる。






私はずっとここにいたいから。








時々、思い出せればいい。





そして、それがあなたと私である事が


わかれば、





それでいい。






空に広がる白い雲が

眩しくて、



私は




空の青さに






飛び込まずにはいられなかった。

































  










































51 

February 18 [Mon], 2008, 16:31
ふとんに入り、



最後の夜に興奮を覚えた。





楽しさとかではなくて、
本当に最後の夜だったから、

勿体無くて、


私は少しでも自分を振り返る。




目を閉じると



そこにはたくさんの思い出があるはずなのに、





そこはブラウン管に映るようなドラマでもなく



黒い物体が色々動いてるのがわかって、
それが誰なのか、
そこがどこなのか

わかる具合で、


どこからか響いてくる声は


私が発しているようだった。





50 

February 18 [Mon], 2008, 16:14
夕食の時間、昨日と同じ仲居さんが準備をする。




「ここの温泉は気持ちが良かったでしょう。


なんか、お客さん、

今日はすごくいい顔してますよ。」





その言葉が少し嬉しくて


はにかむのを隠せなかった。





眠りに就く前に、


誰もいない時間を狙って
お風呂に向かった。


雨も止んで、


屋根から覗く夜空に
はっとさせられる。


澄んだにおいと共に、



一面の星が輝く。





ここが静かで暗い場所だから、





思わず

星の流れる音が


聞こえてきそうだった。




ここのお湯は



柔らかくて


それを自分の肌に



染み込ませる。




自分の体を線をなぞるように


触る。





自分の体なのに、







少し恥ずかしかった。





体は成熟して、


ふくよかな体つきが




あなたを求めてしまうから。


49 

February 18 [Mon], 2008, 15:59
外はまだ雨が止む気配はなく、



蛍光灯が、時間を麻痺させる。






私はかばんの中に手を伸ばした。


持ってきた写真を


ひとつひとつめくっていく。




二人で撮った写真があまりに多くて、
かばんの重みが
写真の重みだった事に

顔の筋肉が

ほぐれていくのが


わかった。



今は悲しいというよりも、




苦しいというよりも




微笑ましい気分でいっぱいのような気がした。







自分でも不思議なぐらいに


穏やかで




この雨の中、



ここにいる事が

とても居心地がいい。






私はふと、


運転手が言った言葉を思い出していた。

48 

February 18 [Mon], 2008, 15:50
旅館に戻ると、フロントにある日めくりカレンダーに気づいた。



そうか、




今日は私の誕生日。






年齢を重ねると、




自分の特別な日が

いつしから

ただ知っている日に変わる。




いつしから、

友達にさえも

祝ってもらう事を忘れ、


この日が来ると

ひとりで

つぶやく。



「おめでとう」





部屋に戻ると、




少しだけ






甘い物が食べたくなる。














47 

February 17 [Sun], 2008, 16:04
どのくらい歩いたか分からなかったけど、


景色を見ていなかったから、




帰り道に迷ってしまった。






頭の中では、





あなたとの思い出ばかりで、





こんなにも鮮明で、




曖昧な記憶に






私は世界を支配されている。







絵本をパラパラとめくるように、




小さな子供が

好きなページを

何度もめくるように、


記憶の底で



たくさんの本で埋まってしまいそうだけど、




決して苦しいわけじゃない。






居心地のいいその場所から




立ち上がる事を






忘れてしまっただけ。





46 

February 17 [Sun], 2008, 14:48
この雨があなたの涙なら


心の芯まで



冷えきって






後ろめたい。












吐く息の白さが、






私の体がまだ



温かい事を








明らかにする。

45 

February 17 [Sun], 2008, 0:54
何人か入ってきたのをきっかけに、




私はお風呂を出た。






朝食も部屋で取り、



こんなにも





のんびりとした時間を過ごすとは思わずに、






フロントにもう一泊するという電話を入れてから、






出かける準備をした。








傘を借り、






私はこの寒さの中







行き先も決めず、


歩く。

44 

February 17 [Sun], 2008, 0:33
外がだんだん明るくなってくるのがわかった。




特別に何か考え事をしていたわけでもないが、




時間が過ぎていくのがわかる。








窓のふすまを開けると、



外は雨だった。






昨日は分からなかったけど、





ここから見える景色には






木々がたくさん植えてあって




まるで日本画を見ているようだった。







雨は実に予想外だった。





私の予定は変わり、






ここの温泉に入ることにした。








露天風呂には屋根が付いていて、







私はこの時間


まだ誰もこないこの場所で


少し優越感に浸る。




雨音が



野外のBGMになり、





私をいつまでもここに





留めさせる。

43 

February 17 [Sun], 2008, 0:23
朝方、私は早くに目が覚めた。


昨日はお風呂にも入らずに、




テレビもつけず、




ただ体に素直になって、





横になり、

睡眠をとった。






外はまだ薄暗くて、




ふとんの中から

小さな明かりを頼りに



部屋を見回していた。






隣に誰かいない事になど




もう慣れていたのに、






少し場所がいつもと違うだけで、






この部屋を出たら






この世界には






私一人しかいないような



錯覚に陥ってしまう。
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