☆小説☆    初恋花 

January 10 [Sat], 2009, 19:55
あきとくん・・・
お元気ですか?
私はあいかわらず 平凡な毎日を送っています。

〜12年前〜
キーンコーンカーンコーン
校庭・廊下・教室に鳴り響く鐘の音。休み時間が始まる音。
先生がいつものように終わりの挨拶をすると同時に、クラスの男の子たちは、教科書やノートを、乱暴に机の中に投げ込み、横につってある、サッカーボールを脇に抱え
「さぁ、行くぞぉ」
と、一人の掛け声とともに、教室を飛び出した。
女の子も、それぞれ新しくできた友達と話をし始める、ただ一人の私を除いては。

私の名前は、杉並しおん。小学1年生になったばかり。
人見知りが人よりも激しく、まだ一人も、友達がいなかった。
そんな私は、いつもある場所へ向かう。

そこは花が、たくさん咲き乱れるがっこいうの校庭。
そこにはいつも花の手入れをしている校長先生の姿がある。

「どうしたんだい?」
「・・・・・」
「友達はできたかい?」
「・・・・・」

私は首を横にふった。
校長先生はそんな私の姿をみていつもほほえんでくれた。

「心配することないよ。きっと君から笑顔でお話すれば、ステキなお友達がわんさかやってきてくれるさ」
そういうとまたやさしくほほえんでくれた。

この頃、私の家族はみんな病弱な弟にむいていた。なにかあるとすぐに入院。
そのたびに大好きだった母は弟のりくと一緒に付き添いで病院に泊まる日々がつづいていた。

「なんでいくの?なんで、りくばっかりなの?」

「ごめんね・・・お姉ちゃんだから我慢できるよね。お父さんと今日は晩御飯食べてね。いってきます。」

そういって手を振り、入院用の服やらいれたバックと紙袋を両手にかかえ母は病院に向かった。
病院にいるりくのもとへ・・・。
私は家族でだれよりも母が好きだった。
だから、お母さんのために、嫌いなりくのお姉ちゃんとしてふるまった。

りくがまだ元気な頃学校に行くとき、いつもは母は、かわいらしい髪型にくくってくれていた。
だけど、母が病院でりくにつきっきりになってからは、ほとんで毎朝ひとつに束ねるだけの髪型だった。
学校に行ったらかわいい髪型をした友達がうらやましくて、しかたなかった。
だけど私は母のため、我慢した。

だけど・・・・「お母さんはりくが好きなんだ」
幼かった私がそう感じてしまうのにそう時間はかからなかった。



「さぁ、こっちにおいで、今日また新しい芽が出たんだよ。」
私は校長先生の言葉を聞き、隣に座った。
そこには小さいながらも、曲がりながらも、たった一人で生まれたきれいな若葉があった。

「・・・かわいい・・・」
ぼそっと口からこぼれた言葉を校長先生はうなずくように小さく微笑んだ。
わたしもいつかこんなきれいで強い若葉になれたなら・・・


キーンコーンカーンコーン

休み時間の終わりの鐘が鳴った。

「あっ・・・」
花に見とれていた私はびっくりしたように、時計に目をやった。

「また、おいで」
校長先生はそういい微笑みながら、花に水をあげている。
私も同じように微笑み首を縦にふった。そして、かけあしで教室にもどった。



〜12年後〜

「いらっしゃいませ〜!」

カランカラン♪
お店の鈴の音がした。レジカウンターで包装し様のリボンをつけかえていた私は入り口へ向かった。
私が働くここ、”dicha(ディッチャ)”小さな花屋さん。もう働いて2年目になる。
今日は店長が朝から用事のため、店のすべての手伝いをまかされていた。
ようやくこうしてお店を任されるようになったのもここ最近のこと、初めは人見知りのせいもあり、お客さんとうまくはなせず、たじたじしていた私を優しく教えてくれたのがここの店長さん、田島昇店長。
普段は田島さんと、呼ばせてもらっている、ほんとに優しくて大人な男性。

「ありがとうございました〜!」

こうしてdichaで働くようになったことも、今では運命のようなものだった。