2009.07.13

幼稚園の頃,両親がお酒を飲んだ帰り,唐突に彼女は言った。

「あなたにはお兄ちゃんがいるんだよ」と。

「‥知ってるよ」と答えた。

誰がお兄ちゃんか,すぐにわかった。納得した。

彼女はしばらく間を置いて,「あらそう」と答えた。

2009.07.12

親だって苦労している,と,親の立場の大人は言う。
それはそうだろう。
おそらく私の想像を超えて,大変なこともあったろう。否定はしない。
私への配慮を全くしなかった,とも言わない。

でもだからといって,それが,私にしたことへの,正答な理由にはならない。

親の行いのすべてを,正当化することは許さない。

2009.05.30

彼女は変化を許さなかった。
ヨーグルトが好きだ,と一度言ったなら,私はヨーグルトをデザートに食べ続けなければならなかった。

幼稚園の頃だっただろうか。
付いていった買い物で,ゼリーが食べたいと伝えた私に,
ヨーグルトが好きだっていったじゃない,と彼女は返した。

確かに,言った。覚えていた。何も言えなかった。
どう伝えていいのかわからなかった。

2009.02.15

いつだったか,彼女は,自分をママと,養父をパパと,呼ぶように私に言った。
それ以前はなんて呼んでいたのか,覚えてない。

パパと彼女と私は,色んな場所へ行った。
パパは日曜日にモデルハウスを見るのが好きだった。
いつの頃からか,モデルハウスには彼女は付いてこなかった。
パパと2人で色んな家を見て,最後に自販機のピノを買ってもらう。
自販機のボタンが届かなくて,いつも押してもらう。

私はパパが好きだった。

2008.12.05

見てはいけない,と思っていた。

よその家と自分の家。違うことはわかっていた。

あの子に接する,あの子のお母さんとお父さん。
会社の人と話すときの彼女と,私に話すときの彼女。
みんなといる時の自分と,彼女といる時の自分。

見てはいけない。

2008.10.21

彼女は,子供を抱きしめない親だった。
だから私も,彼女に抱きついたことがない。

手をつなぐのに,勇気が必要だった。
振り払われ罵られることもあった。理由はわからない。

よく覚えている。
彼女は私の手をよく振り払った。
私が転んでも,気付かずに彼女は歩いていった。
はぐれたら,私はひとりで生きていけないから,必死に追いかけた。

知らない大人達が,距離を置いて,私を見ていた。

2008.10.21

一時期,一人っ子であることが寂しかった。

きょうだいが欲しい,と言ったことがある。
弟か妹か問われて,お兄ちゃん,と答えた。
お兄ちゃんが,とてもほしかった。
彼女は,しばらく黙って私を見ていた。

その後のやりとりは,覚えていない。

2008.10.19

自分を取り囲む色んな人達が大好きだった。

皆が好きだった。

ただ親だけが嫌いだった。

あの人さえ親でなければ、
自分の生死についてなんて、私は考えないだろうと思う。

2008.09.24

再婚を告げられたときのことを,よく覚えている。
私はその人に懐いていて,疑問はなかった。
今日からパパなんだよ,と彼女に言われ,パパだ!と言いながら2人に駆け寄った。

2008.09.17

いつだったか,よく覚えていない。かなり小さい頃だ。
日が落ちてから,近所の男の子が,窓の外で私の名前を呼んだ。
ベランダに出ると,男の子と,男の子のお母さんと,子犬が外にいるのが見えた。
おいでよ,と誘われ行こうとすると,彼女がそれを阻んだ。

なんで?と私は尋ねた。
彼女はダメに決まってるでしょう,と言い,何考えてんの,と私に言った。
彼女と男の子のお母さんは,友達だった。
夕飯は済んでいた。お風呂までは時間があった。
なんで,なんで,としつこく尋ねた。
叱られ,罵られ,でもドアを開けて外へ出た。

ドアの向こうで,鍵とチェーンをかける音がした。
P R
プロフィール
  • アイコン画像 ニックネーム:riku
読者になる





2009年07月
« 前の月    |    次の月 »
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31