case:3 waves of two of us・1 

November 13 [Mon], 2006, 23:18
「どれを観ようか?」
と彼は4,5本のDVDを手にして私に尋ねた。
彼の部屋のソファーで寝そべりながら、私は
「どれでもいい」
と答えた。
彼の手にしているDVDは、どれも観たことがあったから。
「分かった。本当に君はレイジーだ…。じゃぁ僕のお気に入りを観ることにしよう」
彼のお気に入り…?嫌な予感がした。
彼は箱の中からひとつDVDを取り出し、中のディスクをプレイヤーにセットした。
DVDの再生が始まる。スピーカーから波の音が聞こえ始めた。
サーフィンのDVDだ。
彼は子供のようなわくわくした顔つきで、早くも画面に見入っている。
画面では陽に焼けた水着の白人の男女が波乗りをしている姿が映っていた。
彼は何度観れば気が済むのだろう。
私は、つまらないサーフィンの映像を観ながら、そう思った。

彼と出会ったのは、とあるバーだった。
私は女友達と一緒で、彼は友人のバースデイパーティでそこにいた。
私たちは隣同士のテーブルで、お互い皆お酒が入っていたこともあり、
すぐうちとけて、皆テーブルの席も入れ替わり自由気ままに食事をし会話を楽しんだ。

私が彼と目が合うと、彼は「ハイ」と言って微笑んだ。
初めて会ったのに、とても心がなごんで落ち着いた気分になれた。
髪はブラウンで、瞳はそれよりももっと明るく薄いブラウンだった。
透き通った瞳の色に引き込まれそうだった。

彼はサーフィンをしていると言った。
両親はカナダ人だが、生まれも育ちもアメリカだった。
「波は生き物なんだ。自然はコントロールできない。恐怖すら感じる事もある。
でも、だからこそ惹かれてしょうがないんだよ。」

実のところ、私は散歩はするけど、汗を流してスポーツをするのは好きじゃないわ。
ビーチで寝そべるのは好きだけどね。
酔っぱらった私がちょっとひねくれてそう言うと、彼はいたずらっぽく笑って言った。
「でも僕はサーフィン以外にも惹かれることがあるよ。サーフィン以上に。」
「何?」
「可愛い女の子達…君みたいな」
私も、思わず笑った。

彼がサーフィンに夢中でも、私は全く興味がなかった。
週末に会う約束をしても、彼は波をインターネットでこまめにチェックし、
天気が良いと突然海へ友人と出かけたりする。
私は何度約束をすっぽかされたか。
「君を嫌いとか、忘れてる訳じゃないんだ。
ただ、どうしても、サーフィンの事になると夢中になっちゃって…」

彼の部屋に行くたびに、色んなサーフィンのDVDを一緒に見せられる。
私は一度映画のDVDを持参して訪ねたことがあったが、
彼は全く興味を示さず、観ようともしなかった。
相変わらずサーフィンの映像にのめり込んでは、
私に波の違いやら、テクニック、板の構造まで興奮気味に話した。
私は全く興味がないので適当に流して聞く。

こんなにも興味対象が違うふたりなのに、なぜだかうまくいっている。
度々喧嘩もするけれど、何故か一緒にいると落ち着く。
彼は海みたいに広い心を持っていて、ゆったりしているからなのかもしれない。
彼の海は絶対に嵐になんかならない。
いつでも波は静かで穏やかで、優しい----
たぶん、サーフィンも出来ないくらいに穏やかなんじゃないかしら?

case2: ココナッツの香・2 

September 14 [Thu], 2006, 23:17
一週間後、彼とパブで待ち合わせをした。
彼は相変わらずのヒップホップファッションで、私は彼を可愛いらしく思った。
「これ、こないだ買ったばっかりなんだ」
と、スタジャンを得意げに見せびらかした。

日本ではパブリックな場所でキスをするの?
最近はする人もいるけど…私はちょっと嫌かな。
私はタバコの煙を吐き出しながら、彼と会話した。
彼は時々マリファナはやるけど、タバコはやらない、と言った。
タバコなんか吸うもんじゃない、辞めなよ、と言いつつも、
私のタバコを勝手に箱から取って吸い始めたので、私はつい吹き出してしまった。
彼はいたずらっぽく笑顔を見せた。

彼が3杯目のビールを買ってきた。
そのまま席に着かず、椅子を私のすぐ側まで近づけてから座った。
彼は自分の片足を、私の両足の間に割り込ませた。
もっと近寄って、キスをくれよ。
他の人が見ているから嫌。
ここはイギリスだから、誰も気にしないさ。
彼は無言で私を見つめるので、私は耐えられなくなり、思わず目をそらした。
彼は私の顔にそっと近づき、唇にライトなキスをした。
彼の唇は、びっくりするほど柔らかかった。

彼は、もう一度キスを求めてきた。
自分の唇で、私の唇をそっと何度も左右にこすった。
感触を確かめるように。ゆっくりと。
私は目を閉じながら、その柔らかい感触を味わった。

今度は舌を入れてきた。
柔らかい唇と、温かくなめらかな舌。
「うん、さっきより、ずっといい。」
と、彼はそっと囁いた。

彼は私の手を、彼の股間へ持っていった。
そこはすごく固くなっていた。
私は太ももを、ジーンズの上から撫でられ、そのまま彼の手は
私の股の間へ伸びた。
股の間を、揉むようにして撫で上げる。
「ちょっと、やめてよ」
と言って彼から身を離したが、私の体が反応したのは事実だった。
体の奥が熱くなるのを感じた。
彼が欲しい、と思った。


タクシーに乗り込み、彼の家へ向かう。

彼の部屋は、思ったよりきれいだった。
スニーカーが5,6足、クローゼットの前にきちんと並べられていた。
彼はSEAN PAULのCDを流した。
「私、その曲、今朝聴いたよ。」
「俺も今朝聴いた」
2人でなんとなくついているテレビを無言で観ていた。
テレビの中の俳優達の演技が空々しく感じられる。
私も、彼も、きっかけを待っていた。

case2: ココナッツの香・1 

August 29 [Tue], 2006, 1:01
その日、私は鮮やかなターコイズブルーのスカートを履いていた。
後から分かったことだが、彼はそのスカートの色がきっかけで、
私に声をかけたのだった。

「バス、遅いね」
私がバスストップで、バスが時間通りに来ないことにイライラしていると、
短いドレッドヘアーのブラックの男の子が声をかけてきた。
「私、20分近くも待ってるのに、まだ来ないのよ?」
「いつもの事だから、まぁ仕方ないさ…」
そして私たちは世間話を始めた。
彼は、近くの総合病院でナースとして働いていると言った。
私は、彼がダボダボのヒップホップ系のファッションに身を包んでいる姿から
とても彼がナースであると言うことを信じられず、
思わず吹き出してしまった。
「本当にナースなの!?注射とか、できちゃうの?」
彼はちょっと不機嫌そうに
「本当だよ。」
と答えた。

彼と立ち話をしているうちに、バスがやってきた。
私たちは隣同士に座ると、またおしゃべりに夢中になった。
「どんな音楽を聴くの?」
「休みの日は何してる?」
「良くクラブに行く?」
「日本から来たの?」
「あなたのお母さんはアフリカにいるの?」
彼の家が近づいてきたので、彼はバスのレシートに自分の電話番号を書いて私に手渡した。
「近いうちに連絡して。今度一緒に飲みに行こうよ。」

case1: 無邪気な男 3 

August 25 [Fri], 2006, 23:22
空が白み始めると、我々は段々と、時間というものを感じ始めた。
交わり続けながら、頭上の時計を見た。
「もうすぐ、行かなくちゃね。」
「でも、まだ終わらせたくない。」
彼は、出発時間が迫ってくると、段々と激しくなっていった。
私の体は、ベッドの上で何度も大きく跳ね上がり、のけぞった。
彼は
寂しさや悲しみ、
この国を離れるというどうしようもない状況に対するいらだちを、
セックスに全てぶつけていた。
温厚な彼の性格、いつもの優しいセックスとは、まったく違った
とても荒々しいセックスだった。
彼は私の乳首を痛いほど噛んだし、
喉が渇いた犬のように、私の股の間に顔をうずめて
ずっと私の愛液をすすり、舐め回した。
私が絶頂に達するのを見たいと言って、
その為ならなんでもした。
シーツはめちゃくちゃになり、ピロウは床に散らばった。


お互いの体液と汗にまみれた体をシャワーで流し、
我々は駅に向かった。
私をじっと見つめる、彼の青い瞳。
私は彼の金色の髪の毛をそっと撫でた。
彼は、そっと私をやさしく抱きしめ、
私の首元に顔をうずめた。
ひっそりと泣いているようだった。
私は何も言わず、そっと彼を抱きしめた。
不思議と私の涙は出てこない。
我々はそっとキスをして、
その後、彼は吸い込まれるように
改札の向こうへと消えていった。
何度も手を振った。


駅に背を向けて歩き始める私。
今日からは、彼と出会う前と同じような一日が始まる。
いや、彼と出会う前のような生活を始めなくてはならない。
これは、ちょっとした夢だったのかもしれない。
彼が存在したことすら、夢だったのかも知れない。
そうだ、そうに違いない。
私は彼氏とのありふれた生活に戻り
彼も自分の国で可愛い彼女と一緒の生活に戻るんだろう。

ふと駅を振り返ると、いつかの黒人の駅員がいた。
彼は私に気付いていない。
ごめんね、彼は恋人じゃなかったの。
でも、もう悲しくない。
悲しむ代わりに、たくさんセックスしたから。
彼の愛を感じたから。
終わらせないといけないから。

初夏の早朝の光がまぶしくて、目がくらむ。
私のふくらはぎには、彼の歯形が残っていた。
私は思わず、笑った。

case1: 無邪気な男 2 

August 25 [Fri], 2006, 23:14
彼が去った後、突然涙が溢れてきた。
こらえきれない。
声を殺そうとするが、どうしても漏れる嗚咽。
黒人の優しそうな駅員が、私に
「大丈夫?」
と声をかけた。
「大丈夫です、恋人を見送りに来て…悲しくて…」
と答えると、優しく私の肩を叩いて
「僕も同じような経験があるよ…大丈夫、またすぐに会えるさ。
 だから笑顔を見せて」。

私には彼氏がいる。
彼には彼女がいる。
でも、彼の私に対する愛情は、痛いほど私に伝わっていた。
それでも私は、彼氏と別れることはできなかった。
ずるい女だ。ずるい人間だ。
「2人の人間を一度に好きになったとしたら、
それはどちらも好きではないと言うことだ」
という言葉が心を過ぎる。

彼が私の街を去った次の日、彼から連絡が来た。
「君と離れて、ものすごく寂しい。寂しくてひとりで泣いていた。
 明日、君の街へ帰るよ。そして一泊する。
 一泊して、次の日の朝早い電車で空港へ向かう事にする。」
そんなことはしなくて良い、時間とお金がもったいない、と私は言ったが、
彼は固く決心した様子で、それじゃぁsee you tomorrowと言って電話を切った。

彼は私の街へ再び帰ってきた。
私たちは、再会の喜びと共に、交わった。
彼が、この街にいる。
彼は、私と一緒にいる。
彼は私の体中を、まるで蜂蜜を舐めるように、舌で愛撫し、
私の味をいつまでも覚えていたい、と言った。
それから、そっと私の足のふくらはぎに歯を立てた。
私が思わず痛い、と言うと、いたずらっぽく笑い、
ごめんよ、と言って、噛んだ部分を優しく舐め始めた。
彼と絡め合う、舌。
唇を噛み、唾液を吸い合う。
躰を繋げて、ベッドをきしませる度に、彼の汗がしたたり落ち、
私の喘ぎ声が部屋に響いた。

ねぇ、私ずっとこうしていたい、ずっと繋がっていたい。
やめないで、ずっと私の中で動いていて。
あなたをずっと感じていたいの。
ねぇ、もっと体をくっつけてよ、私を感じてよ。
キスを頂戴、もっと強く抱きしめて。
私の頭がおかしくなるぐらい、気持ちよくさせて。
あなたとだから、気持ちよくなりたいの。

私たちは、寝ないで交わり続けた。時間を忘れて。
時間など、なかったのかもしれない。
それはまるで、永遠に続くと思われた。
しかし、3次元の世界とは残酷なもので、
現実の世界にふと戻ると、彼の出発時間が刻一刻と迫っているのだった。

case1: 無邪気な男 1 

August 16 [Wed], 2006, 1:14
彼は私をとても愛してくれた。
例え、短い間だったとしても。

私は彼氏がいたし
彼にも彼女がいた。
秘密の恋。

この街に彼はずっといたなんて。
それなのに、私たちはずっと、会わなかったなんて。

初めて会って、
次の週に初めてのデートをした。
私の買い物に無理矢理付き合わせたが、
いや顔ひとつせず、
ずっとニコニコ笑っていた。

その次の週にまたデートをした。
彼は手も繋ごうとしなかった。
一定の距離を保とうとする彼が
いじらしくもあり、物足りなくもあり。
その日、近くの公園で抱き合ってキスをした。

彼との共通語は英語だった。
彼はほとんど英語が話せないながらも
一生懸命私を楽しませようと
自分の気持ちを伝えようと必死だった。
そしていつでも、笑顔だった。

3回目のデートで、彼と初めてセックスをした。
とても優しく、スロウで、
いつまでもいつまでも、続けていて欲しかった。
彼も私も、お互いの唇を、躰を、汗だくになって貪った。

でも、3回目のデートを楽しんだ次の週
彼は自分の国に帰らなくてはならなかった。
彼は空港の近くの友人宅に観光がてら2,3泊して
それから帰るつもりだと言った。
彼が私の街を発つ日、駅まで見送りに行った。
私は、にっこり笑って、さみしくなるわ、と言った。
彼は泣きそうだったが、涙をこらえて電車に乗り込んだ。
P R
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