私がヤマハのピアノ講師になって、初めて会ったタイプの人のお話です。
その頃はセンター教室の他に、自宅でもレッスンをしていました。
そこに小学1年生の女の子が入会することになりました。
モデルのように長身のお母さんは、おっとりとした感じでとても素敵な人でした。
生徒になった…(下の名前を覚えてないのよねぇ、M子にしとくわ)
M子ちゃんは女の子らしくて可愛かった。
でも、ちょっと他の子と変わってたんだ。活字では表せないんだけど…。
初めてピアノを習う子で1年生になってる場合、私は「ぴあのどりーむ」を使います。
こんなの
あらゆるページに妖精やお花畑など、永田萌さんのメルヘンチックなイラストが
施されています。 楽譜も見やすいし、結構人気あるんです。
レッスンが始まって1ヶ月ちょっと過ぎた頃、M子ちゃんのお母さんからお電話がありました。
内容は「テキストを変えてほしい」とのこと。
せっかくレッスンに慣れてきとところだし、特別理由がなければもう少し
様子を見させて欲しい旨を伝えて電話を切った私。
ひょっとして見かけによらず、わがままママなのォ〜〜?
次のレッスンの日、テキストを持ってきてないM子ちゃん。
「忘れたん?」
と聞くと、少しの沈黙の後
「ママが捨てちゃった」
( ゚Д゚)ポカーン
私はすぐにM子ちゃんの家に電話した。レッスンどころではない。
この子、お母さんにテキストを捨てられて、おけいこなんてできてないはずだ。
「だからテキストを変えて欲しいって言ったはずです。私いやなんです、あの本。
ぞっとするんです。いや、あの本だけでははいんですけどね。とにかく変えて下さらないなら
やめさせます。」
お母さんはかなり強い口調でそう言い放ちました。
私はこの時初めて、「こういう人」がいるんだということを知りました。
このお母さんは、ディズニーのキャラが嫌い。サンリオのキャラが嫌い。
機関車トーマスなんて許せない。しまじろうなんて子どもに見せたくない・・・・。
わかります?
つまり、動物が洋服を着て靴をはいて日本語を話して、という非現実なことが許せないんです。
実際、オウムととらとウサギが仲良しなんてありえないことです。
でも幼児教材ってそれで普通ですよね。
子どもだって育っていくうちに、機関車には顔はなくておしゃべりもしないってわかっていますよ。
それを受け入れられない、そのお母さんは・・・一種の精神病らしいのです。
M子ちゃんが、他の子と少し変わった雰囲気がする理由がわかりました。
それから私はM子ちゃんに、おもしろくもなんともないバイエルを与え
毎週のレッスンをともにしました。
お母さんはそれからは何事もなかったかのように、おだやかなお顔で送り迎えをしていました。
若かった私は、お母さんの気の済むようにしてあげることしかできなかったのです。
M子ちゃんのお父さんは、近くの国立病院の医師をしていましたが、
ご自分で開業することになり、小3になる春に引っ越していきました。
それからは会っていませんが、M子ちゃんはもう20歳くらいにはなってると思います。
どんな大人の女性になってるんだろう・・・・。
そしてお母さんは・・・・・。
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