恋葬10 

2006年10月05日(木) 23時46分
映画を見に行った。
「パイレーツオブカリビアン デッドマンズチェスト」
多分、これが一番初めのデートらしいデート。
いつもは、お店に行く時の足になってもらうとか、私の暇な時間に付き合ってもらうとか。
いつも二人の間には何かしら、二人でいるための、理由付けを探していた。
きっと、お互い。
だって、二人でいる必要なんてホントはないのだ。
だって、彼女居るし。
だって、17歳も年上だし。
だって。だって。

この時から、あなたは理由付けすることを諦めた。
お互いの気持ちが見え隠れしたまま。何も言わない。

映画は、あなたがハイグレードシートを予約した。
たかが小娘相手に何をやっているのかと思った。
前日に、予約したのだそうだ。
ちゃんとエスコートしたかったのだそうだ。
今日の日を楽しみにしていてくれたあなたの気持ちがとても真剣に見えてしまった。
見ないふりをしたけれど、嬉しくて仕方なかった。

映画を見終わって、不満そうな彼に疑問を抱く。
「どうしたの?」と聞く私に、「ううん。」とだけ答える。
ずっと後から聞いたら、HGシートだと座席が広すぎて、手が触れ合わないのが不満だったらしい。
ホントは、色々喋りながら、見るほうがすきなのだそう。
映画館は黙って喋らずに見ないといけないので、私が遠くていやだったそう。

映画が終わった後、黄金山に登った。
ビックバイクで登るのは大変なのに、私が行った事がないというと、じゃぁ連れて行くと言って聞かないのだ。
私は登りカーブでサイドが擦れるたびに、きゃぁきゃぁいってはしゃいだ。

アイスを買ってもらった。
暑い暑い、生温い風に吹かれながら、眼下に広がる市街地を眺めながら話した。
アイスはどんどん容赦なく溶けた。
溶かしながらジュースになったのを下に落としながら、二人で笑った。

そんなに早く溶けなくてもいいのに。
そんなに早く、暑くならなくてもいいのに。
もっと、ゆっくりでいいのに。
そんなに急いだら、すぐにさよならのじかんになっちゃう。

物凄く夏だった。
空がとても濃くて、緑が痛いくらい鮮やかだった。
暴力的な太陽の光がまっすぐに突き刺して、私の肌を焦がす。
蝉の鳴き声が、呪いたくなるくらいうるさくて。
目の前で運転するあなたの背中は少し汗ばんでいた。
ヘルメットの中は、地獄みたいに蒸されて、逆に頬を撫でる風が気持ちが良くて。
そんな後ろめたさのかけらもない景色の中で、ヘルメットの持ち主のことを思うと、この鮮やかな景色に影がさすような気がした。

恋葬9 

2006年10月04日(水) 23時40分
御飯を食べに行った。
あなたは大人のクセにジャンクフードが死ぬほど好きな人だった。
まぁ、お金がないのもあるけれど。
それでもかっこうつけていつも奢ってくれる。
マックではいつもコーラをSサイズを頼む。
そして、ストローを抜きで飲むのがあなたのくせ。
コーヒーは砂糖とミルクを一つずつ入れる。
ときどき、砂糖は多めになる。
炭水化物はあまり取らなくて、御飯自体もあまり食べない人だった。
私は大食らいなのに、一緒にいるとお腹が減らなかった。
一緒にいるだけで気持ちがいっぱいいっぱいで、お腹の減る余地がなかったのかもしれない。
デミグラスソース系の御飯が好きだというと、タンシチューを食べにも連れてってくれた。
自分の好きなものも私にたくさん教えてくれた。

なかなか気持ちを顔に出せない私は、それでも精一杯の嬉しさを伝えようと必死になった。

「美味しかったよ。」

「私が好きなもの、考えてくれてありがとうね。」

「一緒に向かい合って食べるのがとても嬉しいよ。」

なんて恥ずかしいセリフだろう。
改めて考えると顔から火が出る。

それでも私は嬉しかった。
私が嬉しい、楽しい、を伝えるたびに、あなたは優しくうなづいてくれるから。

恋葬8 

2006年10月04日(水) 23時38分
一緒にカラオケに行った。
あなたはいつもB’zを最初にうたう。
17歳の歳の差を気にして、出来るだけ私に分かる歌を選んでくれた。
私は口では言えないことを歌に乗せた。
あなたは平気そうだったけれど。
私はいつも、二人きりになるのが手が震えた。
あなたの歌う歌、一つ一つを覚えていようと思った。
歌詞の裏の意味を求めて、横顔をずっと見つめていた。

恋葬7 

2006年10月04日(水) 23時16分
だが、しかし。
そんなうまくはいかないのだ。
二人で遊んだ後、帰ってから、人伝えに、彼には奥さんのような女性がいると言うことを知った。
結構長い間、一緒に住んでいるようだ。
結婚はなぜかしていないらしいけれど(このときは事情を知らなかった)、実質、夫婦のような二人らしい。


なんだ。そうだよね。
あんなに素敵な人だもの。
相手がいないほうがおかしいよね。
ていうか、それ以前に、そんな相手でもなかったし。
素敵なお兄さんだなって思ったんだ。
また遊びたいな。また、皆で遊びたいな。
皆で。皆で。

今思うと、この時ならまだ、止められたかもしれない。
激流になる想いを、小さな泉だったそのうちに止めておいた方が良かったのかもしれない。
何度思ったか知れなかった。
後悔先立たずというが、全く持ってそのとおりである。




人を好きになる瞬間っていつなんだろうか。
漫画や小説では、ここで主人公は彼に恋をした、とあからさまに分るのに。

私はいつの間にか好きだった。
気がついたら好きだった。

恋葬6 

2006年10月04日(水) 1時16分
彼と同じ位な常連の女性ともお話できて、四人で楽しい時間を過ごした。
Yさんという女の人も単車乗りで、すごく綺麗な人だ。
そのお店のオーナーも単車乗り。
皆、すごくおかしくて、へんてこで、魅力的な人だ。
こんな人たちもいるんだ。
私にとって、今まで会ったことのない種類の人たちに、ただ、驚いて、楽しくて。
その仲間に入ったように、カウンターに並んで喋れるのが、嬉しくて仕方なかった。


私の家は比較的厳しくて、門限が11時である。
彼はそれを聞いて、送ってくれた。
いつの間にか、会計も払ってくれていた。
「どうしてこんなことしてくれるんですか?」
「どうしてそんなにやさしくしてくれるんですか??」
聞きたい、でも聞かない。
そんなくすぐったい気持ちが胸に溢れた。
何かを予感するような、お腹の奥がムズムズするような。
そんな気持ちで、心が浮き足立っていた。

恋葬5 

2006年10月04日(水) 1時14分
次は、二人であった。
彼が誘ってくれたのだ。
「また逢いたいと思っているのは私だけじゃなかった。」
それが嬉しかった。
ヘルメットを借りて、彼の単車の後ろに乗せてもらった。
うまくつけられなくて、紐を結んでもらった。
顔が近くて、ドキドキして、どうしようもない。
こんなに大きなバイクの後ろなんて乗ったことがなかったから、わくわくした。
頬で風を切って、ピアスがシャラリとなる。
私と彼の髪がなびいて、尾を引いた。
夕暮れに遠くの観覧車が光って、夕凪に溶けた入道雲が、愛おしくなるほど美しかった。

夕暮れを過ぎた頃、何日か置きに二人が会ったお店に行った。
いつも、彼がうちの近くまで迎えに来てくれる。
坂の上にある私の家をみて、「お嬢様だなぁ。」と言っていた。
優しく、私を丁寧に扱ってくれる。

恋葬4 

2006年10月04日(水) 1時12分
私は、思い切って話しかけてみた。
彼は少し驚きながらも、笑って話してくれた。
とても可愛い笑顔だと思った。
17も下の私に、ちゃんと対等に話をしてくれた。
同じ田舎に住んでいたと分かって、話は更に盛り上がって。
小学校だったり、商店街だったり、遊んだ神社の場所だったりを夢中になって言い合った。
橋の名前を言っただけで、あーあそこね!と言い合えるのが嬉しいねと言い合った。
二人とも同じ神社で遊んでいたことが分かって、わくわくした。



また、逢いたいと思った。

もっと、話がしたいと思った。

恋葬3 

2006年10月03日(火) 8時46分
私と彼が出会ったのは、知り合いのお店で偶然のことだった。
その日、私の友人が企画したパーティがあって、私も一緒に行ったのだ。
その店の常連の彼も、たまたま店に来ていて、初めてカウンターで話をした。
物凄く恐ろしそうな風貌の人だった。
まず、髪の毛が金髪なのだ。そして真っ黒な服。
すごくしかめっ面をしていて、サングラスをしたまま、店のオーナーと話をしている。

絶対話できないと思った。
こんなやくざみたいな人、絶対絡みたくないと思った。

なのに、声に惹かれた。
サングラスの奥の優しい目もとに惹かれた。

恋葬2 

2006年10月03日(火) 8時43分
彼は、それはもう、冗談みたいに大変な身の上だった。
いろいろあって追われている身で、住所も動かすことが出来ないし、結婚することもできないし、ビザを取ることも出来ない。
足がつくからと、住むところも自分では借りられず、携帯も名義を借りなければならず、乗っている単車も、人の名義だった。


その全てを助けていたのが、彼の彼女さんだった。

恋葬1 

2006年10月02日(月) 20時20分
もしも。
もしも、なんて言っても始まらないこと、分っているけれど。
それでも、もし、あの時、私が彼のために何もかも捨てることができたら、何か変わっていたのか。

やっと、人を愛するということが分ったところだった。
彼を愛して、彼に愛されて。
誰よりも彼を想っているという自信があった。
そばにいるだけで、声が上擦る。
声を聞くだけで、気持ちが上昇する。
夜、ただ一時間だけでも会えるなら、どんな辛いことだって耐えられる気がした。

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