第十一話:レヴェン 

January 14 [Mon], 2008, 23:59
「そぉら、もう一丁ッ!!」

ホルスに声をかけた『男』は、再度の跳躍と共に、投剣を打ち出す。黒塗りで、風切り音を極力抑える形状を持っている特製の投剣――苦無、という南方に伝わる武器だ――が、立て続けにホルス右前方の暗黒信徒に突き刺さる。断末魔すら間に合わず、その場に倒れ伏せる暗黒信徒を視界の端で身留めつつ、これ見よがしにホルスの眼前へ立ちはだかった。腰の忍刀をすらりと抜いて、暗黒信徒たちへ、壮絶な笑みを向ける。

「さぁ、今度はこっちの番だ。俺も結構欲張りだぜ……?」

ホルスは、一刻も早く自分の呼吸を落ち着かせるように務めながら、闘気を迸らせるスコールの背中を見つめる。
……そして。ほぼ同時に、この場に近づく、新たな気配もまた、彼は鋭敏に感じ取っていた。


「……おのれぃ…………!!」

ローブの向こうに浮かんでいるであろう、暗黒信徒の苦悶の表情が透けて来そうな呻き声がこの場に響いた。
得物のモーニングスターを握りしめる手はブルブルと震え、歯噛みするその口元からは、ぎりぎりと低い音が漏れる。
男は、連れた手勢を再度見やる。残っているのは22名。隠れ家を出てくる時は、35名の部下が居たはずだった。


――こんなはずでは。

その想いが強く自身の胸を突き上げる。

「ええい、休ませるなッ!! 一気に畳みかけよ!!」

檄を飛ばし、部下が一歩目を踏み出した。まさにその時だった。




「風の精霊、ジンよ。我が誓約に応えよ。……ハリケーンッ!!」

透き通る声と共に巻き起こったのは、巨大な竜巻だった。
それは、暗黒信徒の一団中央で発生し、ホルスやスコールとわずか10歩ほど先にそそり立った。その効果半径に存在していた者達が、抗う暇もなく散り散りに吹き飛ばされる。

セフィーが術を使う時は、実のところ、少ない。特に、これだけの大型術式になると尚更だ。
その理由の一つとして、使う必要のある状況が発生しがたい、と言うことが挙げられる。彼女は、とてつもない享楽主義者である。放っておいても何とかしてくれる仲間の元では、敢えて自分がやらずとも誰かがやってくれる。そして、全員に対しては、「もしもの事態に備えて温存してるだけ」ということを巧妙に説いてやれば問題はない。もっとも、ディオテ辺りには何かしら感付かれているのかもしれないが、他のメンバーには所々の手抜きを見抜かれていない自信が、彼女にはあった。
ただ、そんな彼女も、その方針に反して術を行使することがある。理由は簡単だ。

――ただ、何となく打ちたかったから、である


「相変わらず、やるときゃ派手だねぇ、術師ってのは」
「……まったく、目立つのはあまり褒められたことではないのだが」

スコールの軽口に、ホルスは辛口の評で応えた。口元にはいつもの余裕が戻ってきている。先ほどまで、肩で息をしていたとは思えないような態度に、スコールは笑みを強くする。

「それじゃ、さっさと片付けようぜ」
「うむ。任せておけ」
「おいおい、さっきまでへばってたの誰だっけ?」
「フン、何のことだかわからんな……!」

スコールとホルスは、ほぼ同時に地面を蹴った。

第十話:文月 

December 31 [Mon], 2007, 21:23
「あら、そう」
特に関心を示さず、セフィーが淡々と答えた。驚きどころか心配する素振りすら見せないセフィーに、ノアは自分の感情が抑え切れなくなるのを感じた。
「なんでそんなにのんびりしてるんですか! 今にもホルスさんは死――」
「死なないわよ」
ノアの隣を通り過ぎながら、セフィーは相変わらずあっさりとした口調のまま。その割って入るタイミングのあまりの良さにノアは言い続ける事ができない。上りきった血が少し下がるには十分な間が流れた。
「な、なんでそんなこと分かるんですか」
しかし疑問は変わらない。セフィーだけではなく、先に戻っていたディオテも本を黙々と読んでいる。若いリースとノア以外、誰一人として慌てた様子が無いのは明らかだった。なぜ仲間が窮地に居るというのに、こんなにものんびりと支度していられるのだろう。もう一度問い質そうとノアが口を開きかけた時だった。
「みんな、信じてるからだよ」
答えたのはセフィーではなくリース。セフィは「どうかな」といったふうに口元に微笑を浮かべ目をそらした。スコールとディオテは肯定するかのように軽く笑い目を見合わせ、レナはノアに笑いかけた。
「さて、じゃそろそろその”自分の見せ場は譲らない男”を手助けしに行くとするか」
立ち上がるディオテ。その手にはいつの間にか杖が握られている。スコールも手早く整えていた武器をしまい、セフィは鼻歌交じりで既に扉を抜けていた。
「ちょ、ちょっと待ってよー!」
出遅れたリースとノアが隠れ家を出、レナが鍵をかけた時には、スコールの案内のもとセフィーとディオテは既に大通りの人混みの中に紛れていた。

第九話:城狐 

December 03 [Mon], 2007, 18:43
「……で、その時から付いた私の二つ名が「銀翼の担い手」ってわけだ」
聞き出した拠点に4人で向かう道すがら、ノアはホルスの隣で彼の戦場譚を聞かされていた。先頭の警戒をスコールが、後衛をリースがつとめているため、必然的にこうなってしまったのだが、正直、ノアはうんざりした表情を表に出さないようにするので大変だった。
二つ名付き、というのはすごいことなのだ。とはノアも知っていた。
冒険者や傭兵は普通、敬称や恭しい言葉遣いを嫌う。しかし、尊敬すべき偉大な人間が時に存在するということも勿論知っている。そんな時、ため口を聞くにはあまりに偉大な、しかし、あくまで傭兵や冒険者としての仲間意識が確かに存在する、そんな相手に対し、使うのが「二つ名」なのだ。
ノアが昔いた神殿にも、時に二つ名付きの傭兵や冒険者が訪れることはあったし、冒険者の店で二つ名付きの冒険者と出会ったこともある。しかし、そんな彼らが自分から二つ名をひけらかす様な事は決してしない。彼らは偉大な人物なのだ。大抵は、こっそり耳打ちされるのだ。「あそこの剣士、「○○」って呼ばれてる凄腕なんだぜ」という風に。
勿論、「太っちょ」とか「痩せのおおぐらい」の様な皮肉や侮蔑の二つ名もある。が、「銀翼の担い手」がまさか侮蔑とも思えない。それとも自分が知らない何か高度な皮肉なのだろうか?

話の中身は全く耳に入れずに、そんなことを考えながら歩いていると、突然、他の三人の足が止まった。
ノアも二三歩たたらを踏んで立ち止まる。
さっきまで歩いていた喧騒渦巻く大通りからいつの間にかラントハイム市の外城壁近くのひっそりとした路地裏に入っていた。右は外城壁の一部、左は兵舎か何かか大人三人分くらいの高い石壁になっている。高くそびえる外城壁が近くにあって西日をさえぎり、まだ日が沈むずいぶん前だというのにあたりは薄暗い。しばらく先に行くと兵舎らしき石壁が途切れ、雑然と家が軒を連ねているのが見える。

第8話:ARK 

November 27 [Tue], 2007, 16:03
 暗黒信徒。
 暗黒神ヴェイレスを信仰し、その破壊と渾沌の教義に忠実たらんとする者達を一般にこう呼ぶ。正義と秩序の象徴たるフェルガランド神を信仰する者にとっては、ゴブリンを始めとする妖魔やヴァンパイアといった不死者と並び、忌むべき敵の一つである。暗黒信徒の教団は、人間やダークエルフを中心として組織され、暗黒魔法を操る者や優れた武術・体術を体得した者が集う戦闘集団である。フェルガランド教団と暗黒教団の間には、古くから血で血を洗う凄惨な戦いの数々が伝えられており、フェルガランド神殿には、暗黒信徒こそ最大の宿敵とみなし、暗黒信徒討伐を最大の信仰の証として教える所もある。
 ノアが修行したシェトローの神殿でも、暗黒信徒の恐ろしさや邪悪さ、フェルガランド教団との因縁などについて十分に教えられる。ノア自身、フェルガランド神に仕える以上、そして冒険者として生きる以上、いつか暗黒信徒と戦うこともあるだろうと覚悟はしていた。しかし、こんなに早く暗黒信徒と相対することになろうとは。ノアが怖気づくのも無理からぬことであった。
 だが、駆け出し神官の新しい仲間達は、腕利き冒険者である。それぞれの経験や性格の差からリアクションは様々だったが、少なくともノアのように怖気づいてはいないようだった。
 スコールが美人局犯人たちの尋問を終えると、冒険者たちは早速作戦会議を開き、暗黒信徒と黄昏の雫について情報収集することを決め、それぞれ方々に散った。スコール、リース、ホルス、それにノアは、スコールが聞き出した情報を元に暗黒信徒の影を追って街へ、ディオテはシュレベール伯爵から黄昏の雫について詳しく聞くために伯爵邸へ、レナは黄昏の雫について文献を求めて図書館へ、そしてセフィーは彼女独自の情報網へと。

第7話:レヴェン 

October 13 [Fri], 2006, 4:12
「……ま、これも予想の範囲内だ。問題ない」
 まるで自分に言い聞かせるように呟いたホルスを、リースは横目で睨んだ。呆れ半分になりながら、両手にごろつき二人をぶらさげて先を急ぐ。さすがにここで話を聞くのは問題がある。「ちゃんとお話しできる場所」でじっくりと話を聞くのが基本だ。ぼやぼやしているのはよくない。セフィーやスコールなどはすでに移動を始めている。

 ふと、リースは自分の姿を想像してみた。年頃の少女が大の男をそれぞれ片手に引き吊りながら歩いている様を頭に巡らせ、思わずため息がついて出た。
「伯爵さん、やっぱり私は可憐でも美しくも無いよ……」
 自分の生き方に迷ったことはない。だが、女の子らしい生き方を羨むこともある。……それが叶わないことだと知っていても。そして、自分が戦士の適正が如何にあるかを今までの経験で知っている。贅沢だとしても、憧れるくらいいいじゃないか。いつもそう思ってる。
 つい、腕に力が入ったらしく、右手の男がうめき声を上げた。リースにしては珍しく、敢えて無視した。 

「さて……、さっきの話の続きを聞かせて貰おうか」
 簀巻きにされて地面に転がされたごろつき2人と女を、ホルスは見下ろし睨め付けた。
「……あたいらは、あのバカ男から宝石、えっと、何だっけ、何たらの滴? それを巻き上げて故売屋に売っぱらった。それだけさ。金は酒と食い物と賭けに使っちまってもう残っちゃいないよ。残念だったね」
 女は吐き捨てるように言葉を紡いだ。自棄っぱちの視線がしっかりとホルスを睨み付けている。後ろの二人のごろつきはというと、すっかり怯えてぐうの音も出ない状況だ。
「ほほう……。この状況でなかなかの強気。感心する。後ろのとは大違いだな。……だがしかし、貴様らの言い分をそっくり信じろと言うのも無理な話だ。故売屋に売ったというのも、怪しいな。あれだけの宝石を売るとなれば、すぐに商談がまとまるとも思えん。それに、一日でその金を全部使い切るなど、このスラムではとうてい不可能だ。つまり、貴様らは少なくとも、どこかで嘘を付いている」
 いつもの、勿体付けた冗長な喋り方でホルスは続けた。
「先ほども言ったように、素直に言うことを言ってくれればそれ以上の不利益を貴様らに与えようとは思っていない。そんなことは無駄だからな。しかし……、非協力的な態度をとり続けるのならば、致し方あるまい。……スコール?」
 ホルスは後ろを振り返った。呼びかけられたスコールは立ち上がり、ゆっくりと腕を回した。
「いつでもいけるぜ」
「それでは、あとは専門家にお願いするとしよう。……ああ、安心したまえ。スコールは決してしくじったりしない。死んだりはせんよ。死んだりは、な」
 ホルスは踵を返すと部屋の外へ出ていく。スコールはごろつきの一人をさらに奥の部屋へと連れ込んでいく。怯えきったごろつきの口から恐怖と呪詛との言葉が漏れ響く中、立て付けの悪い扉は、派手な音を立てて閉まった。

第六話:城狐 

September 26 [Tue], 2006, 23:44
「ぼろい依頼だ」
「あら、インテリにしては文学的修辞に欠ける表現ね」
セフィにそう突っ込まれて、必死に何かの引用をひねり出そうと頭を抱えるホルスを脇に見やりながら、ディオテはホルスの言葉に、心の中で頷いた。
 確かに、ぼろい。依頼主は伯爵。王国であるルーンバルトでは、公爵、侯爵といったもっと上位の貴族が存在するから、雲の上、というほどに高い地位ではないが、それでも、やはり貴族だ。報酬の未払いを勘定に入れながら前払い金の比率を交渉したり、時には依頼の最中に少しでも副収入を上げようと頑張ったり、依頼で得た成果を過小に報告するなどといった涙ぐましい努力とは無関係であることは間違いない。報酬の額自体も相場よりかなり高い。諸経費も全て向こう持ち。
 しかも、依頼自体は、彼らの様な高い技量と経験を持つパーティとしては、それこそ朝飯前という難易度の簡単なものだ。―ああ、若干一名、技量も経験も足りていない奴がいるが―と、ディオテは心の中で訂正線を引いた。それでも、足手まといが一名いようがいまいが、全く関係ない、というくらいに簡単な依頼なので、大した問題ではない。
 ほら、もう、見つけたようだ。

 シュレベール伯爵を、美人局でひっかけようとしていたゴロツキから助け、その場で、なくなった伯爵家の秘宝、『黄昏の雫』を探し出し、取り返してきて欲しいという依頼を受けた翌日。パーティは、ラントハイムの港近く、遠洋航海に出る船員達が多く集まる安宿街に来ていた。様々な国、様々な地域からやって来たり、そこへ行ったりする屈強の男や女が集まり、文化や習慣、言語が入り乱れ、そして、極め付きに、皆あまり懐が豊かではないか、持っていても一晩の博打に消えるような泡銭しかない。そんな場所柄、当然といえば当然のように、ここはラントハイムで体験できるあらゆる犯罪と犯罪者達の見本市の様な街でもあるのだ。
 「1.秘宝は伯爵がどじで間抜けでどこかに置き忘れたか、落っことしたか、ということが無いというのであれば、盗まれたに違いない。2.では、伯爵に最近絡んだ怪しい奴は誰か。3.それはすなわち例の美人局していたゴロツキ」という単純明快この上ない推理で、パーティは、美人局を探し、あちらこちらでその手の「商売」に顔を利かせている連中にちょっとした額の銀貨(もちろん必要経費として計上するのだ)を握らせたり、時には、病院の寝床と仲良くしたいか情報を話すかどっちが得かを優しく教え諭したりした挙句、あっさり、その日の午後のお茶の時間を過ぎる頃には、どんなメニューも一回煮沸しなければ食べる気になれないような場末の安酒場にいた件の美人局一味を発見したのだった。
 「奴らが店を出たところを抑える。私とリースが両側面。スコールは、扉の横に潜んで店内に逃げ戻るのを阻止。セフィが正面で、レナとディオテは援護を」
さすがに、やる時になれば少しはましになる性格に加えて、仕切りたがり屋のホルスが、素早く態度を切り替えて各自に指示を飛ばす。まがりなりにもウン十年のキャリアを積んだ元傭兵なので、日頃のボケもなく、もっともな内容なので、皆無言で従う。
 が、一人だけぼけっと突っ立っている奴がいた。ノアだ。自分で推したくせにホルスの作戦からすっかり抜け落ちていた。やはり、ボケはボケのままか。
 「お前は、正面でセフィの援護だ。白兵戦もそれなりにできるんだろ?」
突っ立ったままのノアに背後から声をかける。奴は、少し驚いた感じで振り向いた後、少し、ほんの少しだったが笑い、頷いて、メイスを構えた。
 その笑顔で、余計なものを思い出してしまった。

 

設定試案(男装女性神官キャラ主人公)第五話:ARK 

September 10 [Sun], 2006, 22:03
「美人局だろ、それ」
 思わず口をついたスコールの言葉が、皆の呆れた思いを代弁していた。
「つつもたせ?」
「つつもたせって、何ですか?」
 いや、美人局という言葉を知らない人間が二人いた。リースとノアである。
「何だお前ら、美人局も知らんのか。ならば私ことインテリホルスが教えてやろうではないか」
 自分の知識を披露する絶好のチャンスとばかりに、ホルスが嬉々として二人に説明し始めた。
 その様子をつまらなそうに眺めながら、ディオテは逃げ込んできた男の話を整理してみることにした。
 
 男の名は、ジェローム=セバスチャン=ド=シュレベール伯爵。自称、ラントハイム一の美男子。自称、男と女の愛の伝道師。「世界中の美女を愛でて回ることが自分に課せられた使命である」、と伯爵は自己紹介した。
 (つまりは女たらし、か。)
 自己紹介だけでもアホくさかったが、伯爵が嘆きのセイウチ亭に逃げ込んできた経緯と言うのもアホくさい。
 伯爵が、いつも通り別の高級な酒場で目ぼしい美女を物色していた所、エキゾチックな南方系の美女と目が合った。伯爵の言葉を借りれば「二人ともその一瞬で運命を感じた」ということになるのだが、とにかく伯爵はその美女に人気のない夜の港に誘い出された。そして伯爵が、美女を抱き寄せキスを、という矢先に先程のごろつき三人組が現れ、いきなり得物を伯爵に向けながら脅してきたらしい。
「おいこらぁ!ウチの親分の女に手をだそうなんざ、ええ度胸しとるやないか!!」
「おら!イチモツぶった切ったろかコラァ!!」
「とにかく金目のモン全部置いてってもらおやないか!!」
 温室育ちの伯爵は恐怖のあまり一目散に逃げ出し、三人組は怒号を発しながら追いかけてきた。そうして逃げ回っているうちに、まだ明りの灯っていたこの店に逃げ込んだ。
 そういうわけであるらしい。スコールの言ったとおり、おそらく美人局だろう。別に面白くもなければ特に金にもならなさそうな話だ。当初の予定通り、しばらくラントハイムでゆっくりするか。そんなことを考えながら、ディオテはつまみのチーズに手を伸ばした。
 (南方といえば、ハドリアンやシュレーゼンよりも南の、カルシュワルという国のチーズが絶品らしいな)

設定試案(男装女性神官キャラ主人公)第四話:文月 

September 02 [Sat], 2006, 19:03
「ふ、ふん、後で後悔しても知らねぇぜ……?」
 男が剣を大上段に振り上げ、構える。対するホルスはそれを真剣とは言えない表情で見返しながら、軽く身構えた。
 が。
「覚悟しやが……ぶべしっ!?」
「むっ?」
 ホルスに斬りかかろうとした男の顔面に、薄茶の円盤が文字通り、突き刺さった。周りの男達、もちろんホルスとスコールも、何が起こったのかと首を巡らせる。そこには、まさに戦神の如きオーラを纏った……ような錯覚を憶える人影が腕を組んで直立していた。小脇には、店の木製のトレーを数枚抱えている。さらに、魔族を彷彿とさせる闇を纏った視線が、色眼鏡の奥から男達を射抜いた。
「手前ぇら……うちの店で……」
 ホルスと相対していた男は最後まで話を聞くことが出来ただろうか。
「なにさらすんじゃこの○▽@×■◎野郎ぉぉぉぁぁあああ!!」
 一瞬のうちに男が、優男が開けたドアを逆向きに吹き飛んだ。ホルス達、そして2人の男は呆然としてそれを目で追った。否、追うことしか出来なかった。一撃のボディブローの元に男を3m程吹き飛ばした巨漢──「嘆きのセイウチ亭」マスターであるビリー=フォンディオルはゆっくりと振り返り続けた。
「さて……お前等もか……?」
「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」
その一言で我に返った2人の男は、外に放り出された男を肩に担ぐとよろよろと店を後にするしかなかった。

設定試案(男装女性神官キャラ主人公)第三話:レヴェン 

August 30 [Wed], 2006, 13:26
 成り行きを静観していたセフィーは、いつも通りに高笑いを上げるホルスを横目で見やりながら、新参の神官を観察していた。胸に下げた聖印がフェルガランドのそれであることが、彼女には気にかかっていた。

(やれやれ、面倒なことを口出ししてくるのじゃなきゃいいんだけどねぇ……)

 セフィーは、基本的に神官という人種を信用していない。神にすがるという価値観は、ティルピアという種族的にも、彼女自身の感覚としても、理解できるものではなかったからだ。そして、神官の中でもフェルガランド信者というものは彼女にとって一番の厄介者だった。合法と違法との境界線を巧みに歩いて生きてきた彼女にとって、小煩い正義を振りかざす彼らが疎ましく思えたのは無理もない。それなりに長い人生経験の中で大多数のフェルガランド信者とは相容れないことを痛感している彼女は、眼前の少年に対しても自分の本性を晒さないことを心に決めた。パーティーメンバーという、頻繁に命を預けなければいけない間柄で下手な軋轢を抱えるのは御免だ、という想いもあった。
 ただ、パーティーの純粋な戦力として考えるのであれば、神官の補充は必要不可欠であった。ディオテやセフィーは回復の術を持ってはいたが、それの専門家ではない。どれほど使える神官なのかは不透明だとしても、癒し手の数が増えるのはパーティーにとって喜ばしいことに間違いなかった。

設定試案(男装女性神官キャラ主人公)第二話:ARK 

August 29 [Tue], 2006, 22:11
「君?・・・・・・君?」
 女の人の声がする。私に呼びかけているのだろうか。そう思って、ノアは体を起こした。
「目、覚めたかしら?あの、悪いんだけど、もう店じまいの時間で」
 どうやらうたた寝をしてしまっていたようだ。ノアを起こしたのは、疲れた顔はしているが、一瞬まだ夢の中かと思う程綺麗な女だった。ノアのピンクブロンドの髪も皆に羨ましがられる程美しいが、この女のプラチナブロンドも非の打ち所がない。食器を片付けている途中らしくこの店の店員のようだが、魔術師が愛用するローブを着ているし、先ほどまでは店内にはいなかったはずだ。
「・・・・・・え?あの、もうそんな時間・・・・・・ですか?」
 そう言って周りを見回すと、他に客はいない。いや、冒険者パーティが一組入り口近くの机を囲んで何やら話し合っているようだ。が、店員達は片付けに追われている。
 冒険者の酒場の中には宿屋を兼業している店もあり、ここ「嘆きのセイウチ亭」も冒険者に宿を提供する店の一つだ。そういう店の、港町生まれの商魂逞しい店員ならば、寝るなら金を払って部屋を取ってくれ、とでも言いに来るかもしれない。
「ええ。・・・・・・君、大分疲れているみたいだけど、大丈夫?それに、こんな時間まで一人でなんて」
 店員は、冒険者の酒場の片隅で、閉店間際までたった一人うたた寝していたノアに違和感を覚えたのだろう、どうしたの?と聞いてきた。どうやら商魂逞しい部類の人間ではないらしく、懐の寂しいノアとしては一安心だ。
「あの、私、この店で仲間に入れてくれるパーティを探していたんですが・・・・・・。未熟者なのでどのパーティにも断られてしまって・・・・・・」
 この人は酒場の店員のようだし、もしかしたら運よくパーティを紹介してくれるかもしれない、ノアはそんな淡い期待を込めて言った。すると店員は、ノアの頭からつま先までを眺めて、こう言った。
「えーと、フェルガランドの神官さんよね?癒しの術はもちろん使えて・・・・・・メイスを持ってるってことは一応戦えるんだよね?で、パーティを探している、と」
「はい」
「じゃあ、ちょっと、待っててもらえる?」
 店員は笑顔を作って言うと、ノアの使った食器―と言ってもミルクの入っていたコップだけだが―を手に取り、立ち去ろうとした。だが、ふと何か気付いたらしく、立ち止まってノアとコップとを交互に見て言った。
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