『転々』 三木聡(2007年) 

February 05 [Thu], 2009, 12:43

歩けばわかる やさしくなれる



≪あらすじ≫
幼いころに両親に捨てられた孤独な大学8年生の竹村文哉(オダギリジョー)は、
孤独で自堕落な生活を送っていた。いつの間にか作った借金は84万円。
返済の期限まであと3日に迫っていた。そんな時、突然現れた借金取りの男、
福原(三浦友和)から、借金をチャラにする方法を提案される。
それは、吉祥寺から霞か関まで歩く“東京散歩”に付き合うことだった。
借金を返すあてのない文哉は、福原に従うより他なかった。
そして、井の頭公園の橋から、男二人の奇妙な散歩というか、旅が始まった。
調布の飛行場に着いた時、福原は文哉に、妻を殺したと告白する…。


イイ。 
私の中では、ロードムービーナンバー@かも!

まさか、こんなにステキな作品だったとは…
ハッキリ言って予想もつかなかった。
単なる爆笑モノで、コメディ映画なのかと思っていたんだもの。
コメディだなんて思い込んでいて、すみません。
反省しています。

とは言っても、大爆笑でしたww
お気に入りは、岸辺一徳さん♪
「街で岸部一徳に会うと、イイコトがある」
という都市伝説はツボ(笑)。
ちょこちょこ登場する岸辺さんには、
たっぷり笑わせていただきました。
私も今度探すわ〜。 あはは
「時効警察」の面々が脇役の範囲を超えるほど
面白くて。 「崖の臭い」ってww もう、最高(笑)
が、
至るところで笑わせておきながらも、
ストーリーの軸がしっかりしているのが
「転々」という映画の素晴らしいところです。
福原と文哉が徐々に本当の親子のように
なる姿には、ジーン。
この疑似家族的なシーンで、
小泉今日子さんが絶妙な存在感を出しているんです。
とってもステキなお母さんでした。
今でも「カレーライス」を見るとグッときます…。

ラストはなんともしんみりさせられましたが、
心温まる作品でした。


しかし、石原良純さんの登場には
ホント驚きました。 まさに出落ちです。
一時停止をして、お腹が痛くなるほど笑いました。
あはは〜。

大昔から、友和さんのファンなので
この作品、サントラと併せてDVD欲しいな。
まさか欲しくなるなんて、予想してなかったけど(苦笑)。


*2009.2.3観了

『有頂天家族』 森見登美彦 

February 04 [Wed], 2009, 14:27
第20回山本周五郎賞受賞第一作!
著者が「今まで一番書きたかった作品」と語る渾身の作。
偉大なる父の死、海よりも深い母の愛情、おちぶれた四兄弟
……でも主人公は狸?!

時は現代。下鴨神社糺ノ森には平安時代から続く狸の一族が暮らしていた。
今は亡き父の威光消えゆくなか、
下鴨四兄弟はある時は「腐れ大学生」、ある時は「虎」にと様々に化け、
京都の街を縦横無尽に駆けめぐり、一族の誇りを保とうとしている。
敵対する夷川家、半人間・半天狗の「弁天」、
すっかり落ちぶれて出町柳に逼塞している天狗「赤玉先生」――。
多様なキャラクターたちも魅力の、
奇想天外そして時に切ない壮大な青春ファンタジー。

面白きことは良きことなり!

うひゃひゃ。オモチロかったぁ〜!
今は、「樋口一葉」と聞いただけで、笑えます。ぶぶぶ

魅力的なキャラが満載です。
糺ノ森に住む狸の名門・下鴨家の父・総一郎!
ある日彼は、狸鍋にされ…この世を去ってしまった。
父・下鴨総一郎を継ぐ立場にあるのは
残された母(通り名は「黒服の王子」ww)を守る四兄弟。
しかしこの四兄弟というと・・・
長兄・矢一郎は、カチカチに堅い割りに土壇場に弱い性格。
通り名は「鴨虎」。
次兄・矢二郎は、引き篭もり、ひとり井戸で暮らす、姿は蛙…。
京都で一番やる気のない狸として勇名を馳せている。
三男・矢三郎は、高杉晋作(※)張りのオモシロ主義で周囲を翻弄。
通り名は「逃げの矢三郎」。
末弟・矢四郎は、史上未曾有と評される不甲斐ない化けぶり…。
通り名は「尻尾丸出し君」。
彼らは周囲(世間)から、
「あの下鴨総一郎の血を受け継ぎ損ねた、
 ちょっと無念な子どもたち」 と評価されているのです。

この四兄弟の他、
下鴨家と対立を続けている夷川家(狸)が、また強烈キャラ。
偽電気ブラン工場の拡大化に成功した、
成り上がり者の夷川早雲。(総一郎の実弟・婿に出た)
そのおバカ息子、呉二郎&呉三郎(双子)。
通り名は「金閣・銀閣」という、底抜けの阿呆兄弟(笑)。
矢三郎の元許婚だった海星、などなど。

主人公は一貫して三男・下鴨矢三郎。
阿呆の血のしからしむるところにより(笑)、
日々、くだらなくもオモチロイことを繰り返す彼。
人間に恋をして能力を奪われ落ちぶれた天狗・赤玉先生や
天狗を袖にし、空を自在に飛び回る美女・弁天様と関りながら
宿敵金閣・銀閣と嘲笑しあい、罠を掛け合う…。
夷川家の他にも、魅力的なキャラ大勢登場します。
そして最後は、
狸と天狗と人間が入り乱れて巻き起こす三つ巴の化かし合い!
詳しくは書きませんが、
その面白さと言ったら、ハチャメチャ。(読んでくださ〜い)

あっ! 本書の特徴として
忘れてはならないのが家族愛ですね。
タイトルからも読み取れるように
母と兄弟の絆・家族愛は、揺るぎないモノです。
家族の絆を描いた愛情溢れる作品でもありました。。
読中、金閣・銀閣に頭にきて怒り出したりもしましたが(苦笑)
読後は、温かい気持ちになれました。
とにかく、
楽しくて可愛らしい「狸」と「天狗」と「人間」のファンタジー♪
下鴨家一族は、
ずっーーーと有頂天な家族なのだ。 (拍手)

続編の刊行がめちゃめちゃ楽しみ!
(海星が…一番気になるところ)
早く皆に会いたいなぁ。 ふふふ




(※)=高杉晋作ばりのオモシロ主義とは、
    彼の辞世の句である
    「おもしろき こともなき世を おもしろく」 
    という心意気を指しています。(調べました…ww)


*2009.2.2読了

『ジョーカー・ゲーム』 柳広司 

February 02 [Mon], 2009, 20:21
このミス2位、納得です。
本屋大賞ノミネート作品、うんうん、そうでしょう、そうでしょう。
エンターテイメントとしても、ミステリィとしても秀作。
只ひたすらにカッコイイ!異能のスパイミステリィでした。

死ぬな。殺すな。とらわれるな。
五感と頭脳を極限まで駆使した、命を賭けた「ゲーム」に生き残れ。

舞台は大東亜戦争真っ只中の日本。
「魔王」―――そう呼ばれる結城中佐の発案で
陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。
超難関試験を突破した一期生は、外国語、学問はもちろんのこと、
爆薬や無電の扱い方、変装術、女の口説き方など多様な訓練を受け、
長髪、背広姿で互いを偽名で呼び合った。
「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」、
これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。
軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、
当然、猛反発を招いた。
だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」――結城中佐は、
魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げ、
陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。
東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる
最高にスタイリッシュなスパイ・ミステリー。


表題作を含め5編の連作短編集。
では、サラッと触りを。

「ジョーカー・ゲーム」
自身が優秀なスパイだった結城中佐の発案により
昭和12年秋に開設された情報勤務要員養成所。
スパイ養成所たる“D機関”の設立当初のエピソード。

「幽霊 ゴースト」
D機関の記念すべき第一期生蒲生の仕事ぶりから
スパイとはどういうモノなのかが示唆される。

「ロビンソン」
ロンドンにスパイとして潜入捜査中の伊沢は、
スパイ容疑で英国諜報部に捕まってしまう…。
手に汗握るスリル満点な一編。
『ロビンソン・クルーソー物語』の扱いが素晴らしい。

「魔都」
上海に派遣され、3カ月が経過した本間憲兵軍曹が主人公。
結城中佐の登場がなく、寂しかった(笑)。

「XX ダブル・クロス」
日本で、独ソの二重スパイシュナイダーが殺された。
彼の死の真相を担当することになった、飛崎。
彼はD機関の卒業試験として、
シュナイダーが二重スパイなのか、その身柄を押さえようとしていた矢先に
死なれたのだった。自殺なのか?他殺なのか?
この作品が一番好きだ。 ラストシーンには、感動してしまって。
結城中佐、最高です。


続編、出ますよね?


*2009.2.1読了

『町長選挙』 奥田英朗 

February 02 [Mon], 2009, 11:59
伊良部、離島に赴任する。そこは町長選挙の真っ最中で…。
「物事、死人が出なきゃ成功なのだ」直木賞受賞作『空中ブランコ』から2年。
トンデモ精神科医の暴走ぶり健在。
(「BOOK」データベースより)


いや、びっくり。 そうきたかぁ。

伊良部シリーズ第三弾。
文庫落ち待ち作品でしたが
図書館で目にし、我慢できず…借りてきました。
読後は、少々物足りなさを感じましたが
三弾ともなると、仕方がないのかも。

・オーナー
・アンポンマン
・カリスマ稼業
・町長選挙
の、4つの中篇が収録された作品。

最終話以外は、
実在の人物をモデルにしてしまった物語だ。
──いいんだ…コレ、ありなんだ(笑)。

では触りだけ。

「オーナー」
田辺満雄(ナベマン)78歳。
日本一の発行部数を誇る「大日本新聞」の取締役会長であり
プロ野球の人気球団のオーナーでもある、言わば財界人。
パニック障害患者。
「歴史を紐解いても、権力の座についた人間は、
 必ず回春と不老不死の研究をさせるからね。
 長生きしたいと思うのは、田辺さんだけじゃないよ」
「フツウの人の人生は、リタイアしてフェードアウトするけど、
 権力者の人生は終わりが死しかないわけ。
 だからみんな過剰に死を意識するんだな」
伊良部先生ったら、イイこと言うな。

「アンポンマン」
安保貴明(アンポンマン)32歳。
IT企業「ライブファスト」社長。秘書が美人(笑)
若年性アルツハイマー患者。
名言は、「一人で勝ってると遊び相手がいなくなるよ」
と言うマユミの台詞。
人の下で働いたことがないまま地位を得るのは、
ある意味損なのかもね。

「カリスマ稼業」
白木カオル44歳。女優。
東京歌劇団出身。
歳を取る恐怖に耐え切れなくなる。
とにかく、皺と脂肪が怖いんだって。
「一度太ってみたら?太ったことないんでしょ?
 一度経験してみると怖くなくなるよ。人間ってのは
 未知のものを恐れるわけだから」
言い得て妙ね、伊良部先生。

──簡単には戻れなくなるから止めたほうがイイ(私の心の叫び)


「町長選挙」
伊良部先生が千寿島(離島ね)に赴任するという設定がイイ。
所変わっても何処吹く風なのが、実に面白い(笑)。
宮崎良平(都の職員)が可哀想で仕方が無かった。
(何処にでも居そうな)良平くんに、エールを! あはは
しかし、選挙って一種のお祭りなんだね。
この島のお祭り騒ぎは、
伊良部効果によって面白おかしく描かれているけど、
選挙の裏側をストレートに表現しているのかも知れない。
この作品だけは、
長編にしても良かったのでは?と、思えてならない。

伊良部先生を取り巻くマユミやお父さん、お母さん。
相変わらず存在感がありますね。
次回作では、
是非、伊良部先生のご両親の登場と(家の様子などで)
お父さんとの絡みを希望します。  
あはは


*2009.1.31読了

『きのうの世界』 恩田陸 

February 02 [Mon], 2009, 10:58
塔と水路がある町のはずれ、「水無月橋」で見つかった死体。
一年前に失踪したはずの男が、なぜここで殺されたのか。 
誰も予想できない結末が待っている!!
恩田陸が紡ぐ、静かで驚きに満ちた世界。 ファン切望の最新長編。
(「BOOK」データベースより)

本書を読む上での注意点。
「ミステリィだと思って読まないこと」


冒頭からの二人称でのめり込み、
ひとつの死に関連して、次々と出てくる謎が気になり、
一気に物語の中へ引き込まれました。
なぜ、誰に殺されたのか?
彼は何を調べていたのか?
謎めいた塔の存在と、水路の町という設定が
なんともいえない幻想的な世界を作り上げています。
市川吾郎の人生や三本の塔が存在する本当の意味、
町をめぐる噂に、ある一族の秘密…。
三つの塔にそんな壮大な仕掛けがあったとは。
最後まで驚きの連続でした。
さすがは恩田陸です。 ラストは、仰天。

が、
彼の死の真相は、ミステリィではない上に、
絶対に予想不可能な結末なのできっと
賛否両論だと思う。
張り巡らされた数々の伏線に至っては、
回収されないものが多い…。多すぎる。
でもまあ、何はともあれ(苦笑)、
これぞ恩田ワールド、全開だ!と
一押しで言い切れる作品です。

さまざまな疑問点が残る作品ではあるが…
ファンとしては、受け入れなければいけないかも。
雰囲気を堪能できただけで、よしとしますかねぇ。
恩田テイスト、フルに満喫。
作品内容とは、ちょっと違った印象をもって
脳内に残りそうな作品だ。 ふふふ


それにしても、駅のステンドグラス…
『亀』『ハサミ』『天の川』の意味は何だったんだろう。
一番気になるところかも。
あと、一つだけ言わせてもらうと…
あの弟は、いらなかったのでは? あはは


まっいいか。

*2009.1.30読了

『HEROES』 シーズン1☆総評 

January 30 [Fri], 2009, 13:08


昨夜(1月29日)、昨年の12月15日から観始めた
シーズン1を、やっと観終えました。
良かったです。第一話からラスト(23話)まで、ほぼ全てが。
面白くて気に入ってしまったので(笑)、
このままシーズン2に入ろうと思います。

※内容は、こちらで。 →  HEROES trailer
(動画サイトの貼り付け方が分かりません;;)


──簡単に言うと、
ある日突然、超能力に目覚めた人々が何人もいて、
その人たちの物語が、複数同時進行で進むドラマ。
キャラクターたちの、リンクの仕方が絶妙なのだ。
面白い、面白い♪
で、
以下シーズン1の備忘録として、
登場人物を記載しておきたいな、と。 へへ;

*ピーター・ペトレリ = エンパス。能力をコピー(共感能力)
*ヒロ・ナカムラ = 時空間制御
*クレア・ベネット = 細胞組織の再生(不死身)
*モヒンダー・スレシュ = 能力者を研究する遺伝子学者
*ニキ・サンダース  = 怪力(二重人格)
*ネイサン・ペトレリ( ピーターの兄) = 空中飛行
*アイザック・メンデス = 未来予知(絵で描く)
*DL・ホーキンス(ニキの夫、マイカの父) = 透過
*マット・パークマン = テレパシー(読心術)
*マイカ・サンダース = 機械を操る
*ノア・ベネット(クレアの育ての父) = "組織"の人間
*サイラー(ガブリエル・グレイ) 
   = 直観直視。能力者の脳を見て能力を奪う(殺人鬼)
*モリィ・ウォーカー = 千里眼(人の居場所を探知)
*アンドウ・マサハシ(アンドウくん) =  ヒロの親友
*テッド・スプレーグ = 放射能を放出
*クロード・レインズ = 透明人間(元エージェント)
*チャーリー・アンドリュース = 記憶力
*イーデン・マッケイン = 意思操作
*キャンディス・ウィルマー = イリュージョン(幻覚を見せる)
*メレディス・ゴードン(クレアの生みの母)= パイロキネシス(発火能力)
*ハイチ人(ベネットの部下) = 知的操作
*アンジェラ・ペトレリ = ピーターとネイサンの母。何かの能力者。
*リンダーマン(大富豪) = 治癒

このくらいでイイかなぁ。


ここまでキャラが立っている作品も凄いが、
物語の展開が巧妙。ムダが無く、テンポも速い。
全11巻(23話)までという、長い作品でしたが、
全くイヤにならない上に、苦痛も感じなかった。

ジャンルなんて一言では表せないもの(笑)。
アクション、サスペンス、ホラー、SF(タイムスリップもの)、
恋愛ものからコメディまでww 
とにかく、盛り沢山! 厭きさせない、厭きさせない。 
また、しっかりと納得が出来る終わり方だったラストには、
たっぷり泣かせてもらいました。(涙もろいんです)

当初、「HEROES」を観たいと言い出したのは夫です。
反面、ドラマの長さを考えてしまい…
全く乗り気でなかったのが、私。 ほほほ
観終わった今は、夫に感謝しています(笑)。

私はリタイアするかも…なんて言っておきながら、
第一話から面白すぎて、即効で嵌ってしまい、
結局最後まで止まらなかった。 ふふふ
私は、ネイサンが好き。 
嗚呼…。

う〜ん、支離滅裂。
何をどう書いたらいいのか、判らないや(苦笑)。

とにかく観ていない人は、観てくださいね。
傑作ですから〜。
(観ていない人なんて…いないかぁ〜ww)

さて、「シーズン2」です。  
いつから観始めようかしらん。  ワクワク〜〜〜☆

『くまとやまねこ』 文・湯本香樹実 絵・酒井駒子 

January 28 [Wed], 2009, 10:50
本書は、仲良しのことりの死と、その死を嘆くくまの、
悲壮なシーンから始まります。
ことりの死を受け入れられず、引き篭もるくま。
くまの心情を理解してくれるやまねこの登場で 
くまはことりの死を乗り越えようとします。

短い絵本ですが、とても暖かく、深い物語です。

大好きなシーンを。

 くまは、きのうの朝、ことりと話したことを思いだしました。
 くまはことりにいったのです。
「ねえ、ことり。きょうも 『きょうの朝』 だね。きのうの朝も、おとといの朝も、
『きょうの朝』 って思ってたのに、ふしぎだね。あしたになると、また朝がきて、
あさってになると、また朝がきて、でもみんな 『きょうの朝』 になるんだろうな。
ぼくたち、いつも 『きょうの朝』 にいるんだ。ずっとずっと、いっしょにね」
 すると、ことりは首をちょこんとかしげていいました。
「そうだよ、くま。ぼくはきのうの朝より、あしたの朝より、
きょうの朝がいちばんすきさ」って。

 でも、もうことりはいないのです。
「ああ、きのうはきみがしんでしまうなんて、ぼくは知りもしなかった。
 もしもきのうの朝にもどれるなら、ぼくはなにもいらないよ」
 くまは、大つぶのなみだをこぼしていいました。




以下、本書への湯本香樹実さんからのコメントを写します。

 この『くまとやまねこ』は、ずいぶん長い時間をかけてできあがった絵本なのですが、できあがった今、時間をかけたかいがあったなあと心から思えるし、この絵本で私が書きたかったことも、やっぱり「時間」なのだな、とあらためて感じています。

 身近な人が亡くなることも含めて、大事な何かを失うというのは、自分自身の一部が死ぬことと等しい。死んだ自分を抱えている間は、時間が止まってしまったようにも思えるけれど、時間は実はきちんと流れていて、なにもしていないように見える人にも、深い変化をもたらしているのではないでしょうか。

 この絵本のなかのくまが、悲しみに閉じこもり、でもやがて外に出かけていったように、必ず死んでしまった自分自身の一部も、またよみがえる時がくるんだという、そういう時間というものへの深い信頼と感謝の念が、私にこの小さな物語を書かせてくれたのだと思います。

 酒井駒子さんの素晴らしい絵によって、くまやことりややまねこや、命あるものすべてに流れる時の一刻一刻が、一頁一頁、このうえなくいとおしいものとして描き留められました。お読みいただけましたら幸いです。


湯本さんのファンなので、どうしても欲しかった本書。
出会えて良かったと、心から思います。
一読後、息子に聞かせたい、と強く感じて…
久しぶりに読み聞かせをしました。お互いに大満足の一冊でした。
「喪失」の悲しみも然ることながら、「再生」へと繋がる「死」が、
とても自然に描かれています。
宝物が一つ増えました。息子には渡しません(笑)。


是非、読んでみてください。


*2009.1.17読了

『ガール』 奥田英朗 

January 27 [Tue], 2009, 16:19
わたし、まだオッケーかな。
ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。
滝川由紀子、32歳。仕事も順調、おしゃれも楽しい。
でも、ふとした時に、ブルーになっちゃう(表題作)。
ほか、働く女子の気持ちをありえないほど描き込み、
話題騒然となった短編集。
あなたと彼女のことが、よくわかります。
(「BOOK」データベースより)


文庫落ち待ちだったので、購入後早速手にしました。
大満足な一冊だった。 『マドンナ』<『ガール』。

ではザーッと感想を。

「ヒロくん」
大手不動産会社に勤める武田聖子35歳。
総合職に就き十四年目に、課長職を拝命した。
だが、彼女の課には三つ年上の男性社員がいた。
彼は仕事はできるが、男女平等の観念がない。
仕事でも家庭でも典型的な男尊女卑なのだ。
そんな二人のバトルは、無心で楽しめた(笑)。
年上男性の部下の扱いづらさ、男社会の憤りを感じながらも、
女性として毅然と働く聖子は強い。
何せ彼女には、聖子より給料が少なくても、
全く気にしない最愛の旦那様、ヒロくんがついているんだから。
「男が怒ればカミナリを落とした、女が怒ればヒステリー」名言だ。
5編中、三番目に好き。

「マンション」
大手生保会社の広報課に勤める石原ゆかり34歳。
男性社員が事なかれ主義ばかりで、
常に社内を向いて仕事をしている中、
「広報の石原都知事」と言われるほど辛辣な社員だ。
役員に媚を売ることばかりで、スケジュールの調整もできない
秘書室の女性を相手に、孤軍奮闘。
この戦いは思いっきりツボだった。面白い!
親友のマンション購入話を聞き、彼女自身も検討を始める。
身の丈にそぐわない青山のマンションに一目惚れしてしまい、
日夜悩む姿は実にリアルだ。
そんな中、記念誌の原稿をめぐり役員たちが。
この結末には、スカッとした。ゆかりお気に入りですww
5編中、一番好きな作品。

「ガール」
大手広告代理店に勤める滝川由紀子32歳。
社内外で、若い女の子に対する扱いと、自分への扱いが変わってきた。
自分はいつまで若作りと言われる行為を続けていくべきなのか…。
という、女性ならではの悩みや個性を全面に出している。
そこに由紀子より6歳上の光山晴子という最強キャラを置くところが、凄い。
ここまで面白おかしく展開されると、馬鹿らしくなってくる(笑)。
悩むのだったら卒業して欲しい、と感じる私は可愛くないかな(苦笑)。
でも、いつまでも「ガール」でありたいと思うことは自由だが、
30代で、判っていながら若作りしているのって、ちょっと痛いかも…。
「生涯一ガール」は、至言だね。

「ワーキング・マザー」
自動車メーカーの総合職、今年36歳になる平井孝子は
自らの希望が叶い、三年ぶりに営業部へ復帰した。
29歳で産んだ息子が小学一年生(6歳)になったからだ。
彼女は32歳で離婚をし、実家は北海道。
文字通りのシングルマザー。
残業は家でし、仕事と家庭を両立させる孝子。
そんな母に迷惑を掛けないようにと、背伸びする息子。
二人の関係は理想的だ。 ウルウルしっ放しだった(苦笑)。
職場では、
育児を錦の御旗にしない孝子に、周囲も協力を惜しまない。
そんな中、彼女の企画が販売部に奪い取られそうになる。
相手は同じ年の販売部社員、斉藤里佳子、独身女性。
仕事を守るため、ついに孝子は育児を錦の御旗にしてしまった。
販売部には孝子の境遇は知られてなかったので効果覿面。
が、やはり自己嫌悪に。
同年代で生活環境が異なる相手とだって、分かり合えるんだ。
爽やかなラストに、鼻の奥がツンときた。
5編中、二番目に好きな作品。

「ひと回り」
34歳の小阪容子が勤める老舗文具メーカーでは、
入社十年以上の社員が新人の個人指導にあたる
「指導社員制度」がある。今年、容子は指導社員を命じられた。
指導担当の社員は、
長身でハンサムで誰もが認める好青年、和田慎太郎。
ひと回り年下だと分っていながらも、舞い上がり、日々心ときめく容子。
彼女の心の声が、とにかく面白かった(笑)。
人生経験豊富な年代だけあり、女性を分析する能力の高さに感服。



一度しかない人生、どんな道を選んでも、
後悔するかもしれない。
けれど、幸せのかたちなんて、人それぞれだ。
少しでも悔いの無い人生を、全うしたいものだ。
これからも、しっかりと前を向いて生きて行きたい。

勇気と元気を、たーくさん貰えた作品だ。


*2009.1.19読了