第二話 

September 19 [Mon], 2005, 23:54
2030年、10月25日。新宿のとあるビルで、3人の男が話をしていた。
一人目はソファーで、もう一人は一人目の男の向かい側にそれぞれ座り、そして最後の一人は壁に背を向けて立っていた。
「ここ三ヶ月で何人だ?」一人目の男――泉北は向かい側に座っている男に問いかけた。
「憲次と健太郎の二人が同じ地域のビルでそれぞれ殺されちまってます。警察は連続殺人事件として捜査をしている最中です。」二人目の男――三村田は泉北に答えた。
「んなこたぁ、もうニュースで見たんだよ!!おい、姫田!お前のお友達は何て言っていたんだ?」泉北が姫田に問いかけると、姫田は静かな口調で答えた。
「・・そいつの話によると、検死の結果が出たのみで、まだ具体的には迫っていないようっす。」
「そう、か・・警察も使えねえな・・これ以上うちの組員が殺されたりするようなら大溝の親分に警護を頼まないといけなくなる。そうなると、うちのメンツは丸つぶれだ・・・分かるよな?」
「はい」
「大至急野田に連絡を取っておけ。あいつに調べてもらいたいことがある。」
「承知しました」
「全く・・どこの誰だか知らんがうちの組員を殺すとはいい度胸してるじゃねぇか。これは死で贖って貰うしかないなぁ・・のう、姫田?」
「はい」
泉北晋吾は部下の姫田に同意を求めるように呟きながら、革張りの椅子にすわり葉巻を燻らせていた。と、泉北はふと何かを思い出したかのように突然手元にある携帯電話を手にとって、電話を掛け始めた。殺された2人を泉北の元に紹介した男、野田に話をしたいと思っていたからだ。
「野田です。姫田さんからお電話を戴いてもうそろそろ来るとは思っていたのですが・・・どんなご用件でしょうか?」開口一番、野田は姫田を通じて泉北が掛けてくることを知っていたらしく、不安そうに聞いてきた。
「お前さんに調べてもらいたいことがある。」泉北は手短に答えた。
「何か不都合が?私が太鼓判を押したはずでは・・?確かに二人がニュースでたて続けに殺されたのは知っていますが・・」
「ちょっと気になったことがあるんだ。頼む。」
「・・分かりました。他ならぬ泉北さんの頼みですからね。では、一週間後にもう一度連絡いたします。」
「すまない。」
泉北は電話を切ると、ふうとため息をついて、机に背を向けて外をぼんやりと見た。ちょうど今、飛行機が飛行機雲を作りながら遠くへ飛び去っていった。

第一話 

September 18 [Sun], 2005, 18:51
―――昨夜11時ごろ、東京都新宿区東新宿12丁目にあります旧タケナカビルの3階にて男が倒れているとの通報があり東新宿警察署の警察官が出動したところ、旧タケナカビルの以前コンビニエンスストアがあった室内の中央部分で、矢上系暴力団組員春日井健太郎(33)が頭などから血を流して死亡しているのが発見されました。死因は頭などを拳銃で撃たれたことによる出血死と見られています。以前にも同じ矢上系暴力団組員瑠璃垣憲次(31)が旧タケナカビルから300m離れたトレモロビルで春日井健太郎(33)が殺害されたときと同じと見られる拳銃で殺害されているのが発見されており、警察では連続殺人事件と断定し捜査を進めています。

夜。
静かな夜。
時折、車のクラクションやヘリの音が聞こえる以外は全くの静寂が広がっている。
東新宿のとあるアパートの4号室にある男が住んでいた。
その男は、どこにでもいる男だった。普段街並みを歩いている同じ世代の男と変わらない男だった。
強いてあげれば、男の目の色は欧州人などに見られる薄い水色だったことだ。
男―――郭 大河は、自分のアパートの一室で深夜のニュースを見ていた。
ブラウン管の中では、ニュースキャスターと警察庁の元捜査官が犯人像について様々な予想を立ててあれこれ議論をしている。
郭はその様子を見ながら、なぜか不敵な笑みを浮かべた。
「ふふ・・・皆まるで見当違いな事を言っているねぇ。僕に辿り着くのはいつの事かな・・?」
こう言った。
そして、「もうすぐだよ。姉さん。後、3人だ・・・!」と呟くと、部屋の傍らにハンガーで掛けておいた黒のスーツに身を包み、テーブルに置いてあった拳銃――グロック17ロングヴァージョンを懐に忍ばせて鍵を掛け、外へと出た。
外には管理人のおばあちゃんがアパートの周りの掃除をしていた。
おばあちゃんは郭を見るなり、弱々しくお辞儀をした。どうやら、郭が誰だか分からないらしい。
郭は軽くお辞儀をして近くの交差点まで行き、タクシーに乗り込んだ。
その様子をおばあちゃんは弱々しげながらも満足げな表情で見送った。郭もそんなおばあちゃんを見えなくなるまで見続けた。

プロローグ 

September 08 [Thu], 2005, 0:06
――――姉さん、死んだらだめだ!
・・・ううん・・・もう、寝かせて・・・何だか疲れちゃった・・・
――――今救急車呼んだから!もうすぐ助かるんだから、死んだらだめだ!
・・・新ちゃんは、いつでも優しいねぇ・・・
―――――――――――姉さん・・・
あのね・・・これは・・・運命なのよ。
―――運命?
・・・うん・・・これはきっと、神様がお決めになられたことなのよ。私はきっと、生まれたときからここで・・・死ぬ運命だっ・・・た・・・のよ・・・ゴホッ・・・
――――死ぬ運命が何だ!そんなもの、そんなもの・・・!
もう目の前が・・・暗く・・・新ちゃん・・・
―――姉さん!!!!!!


2030年10月23日。
東京都新宿区のとあるマンションに、二人の男がいた。
一人は三十代に見えるの男。もう一人は、二十代になったばかりであろうか。
三十台の男はなぜかビルのコンクリートの上に正座をしていた。
そして二十代の男は何か黒光りする筒のようなものをもう一人の男に突きつけて何事かしゃべっていた。
耳をかなり欹てないと聞こえないぐらいの、かすかな声だった。
それを三十代の男は割れんばかりの声で返答をしている。
しばらく、そのやりとりが続いた。
とその時、二十代の男が何かを懐から出した。
三十代の男はそれを見て急にがくがくと震え始めた。同時に、二十代の男の立っている方角とは真逆の方角によろめきながら走り出した。

二十代の男はゆっくりと黒光りする筒のようなもの―――グロック17・ロングヴァージョンの撃鉄を起こすとその先端を逃げた男に向けて、引き金を絞った。
パン、と何かが破裂する音とともに、三十代の男が前のめりに倒れた。
身体の前の方からゆるゆると黒いどろどろした液体が出てきた。
「た・・・す・・け・・・・」
三十代の男はゆっくりと起き上がろうとした。まだ生きていたのだ。
しかし二十代の男はそれを哀れむ様子も、怒りに満ちた様子もない、まるで人形の様な表情のまま、もう一度引き金を絞った。
今度こそ、三十代の男は立たなかった。
その代わり、三十代の男の頭から飛び出たピンク色のグロテスクなものが、ビチャッと二十代の男の顔に付いた。
男はそれをこれまた懐にあったハンカチで拭うと、こうつぶやいた。


「もうすぐだよ、姉さん・・・もうすぐで、姉さんの仇が取れる・・・!」
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