?紅の華〜終焉の鳳仙花〜 

2006年07月17日(月) 6時31分
ふと目が覚めたら、辺りは一面の草原だった。
膝丈まで伸びた雑草が、穏やかな風に吹かれ右に左に靡いている。
近くに小川でも流れているのだろうか、先から頻りと川のせせらぎの音が耳朶に届く。
この光景を見た事は一度も無い。だが彼の眼には何故か酷く懐かしく映えた。
まるで故郷を思わせるかのような風、香、音。感傷に浸るには充分過ぎる。
彼は大きな木の根本に座り込んでいた。不思議と地面の感触はしない。
木漏れ日が程よい暖かさを与え、風が木影と共に少し涼しさを感じさせた。
例えるならば立春の辺りといった所か。

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時49分
「奥州筆頭伊達政宗…押して参る」

先陣をきったのは政宗の方だった。
名乗りを挙げ様六刀を振り上げ、真っすぐ元就へと突っ込んでくる。
まるで猪武者だな、と内心嘲笑いながら元就は采配で防御の形を取る。

ガキィィン!!

と、互いの武器同士がぶつかり合い、金属質な音をたてる。
続け様に刄を奮う政宗の攻撃に、元就はすっかり防御側に回ってしまった。
采配から攻撃による振動が腕全体に伝わり、思わず采配を手放しそうになる。

(なんという力だ…)
正直此れ程の力があるとは思わなかった。

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時49分
対して政宗はその逆だ、両手に持った六刀が何よりの証。
常に戦を生き甲斐としている様なものだ、それにそぐわぬ実力の持ち主だろう。
自分よりも明らかに政宗は強いだろう、こちら側が不利な状況と言うのは嫌でもわかる。
だが元就とて簡単に敗れたりはせぬ。
中国全土の数多もの敵将を討ち取り、こうして名を馳せた。

詭計智将毛利元就。

この名前は伊達ではない。
中国を支配する今、守るべき民がいる今、奥州の“小僧”如きに負けるわけにはいかぬ。

じりじりと互いに間合いを空けながら、相手に攻め入る時を狙った。

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時49分
だがいざ敵が来たらこの様だ、策など全く役に立たぬではないか。
否、元就の策が悪い訳ではない、政宗の力が策の範囲内に留まらなかっただけなのだ。

「何しに?そりゃ決まってんだろ。此処を頂きに来たんだよ。序でに言うならばアンタも貰ってくつもりだけどな」

言うなり政宗は両手の六刀を構えだした。
それに反応し、元就も右手の采配を強く握り締める。
話し合いでどうこう出来る相手ではない事など初対面でもわかる、だが出来れば戦いたくはなかった。
武力より知力、戦より城、刀より筆。
元就は戦いを好まないのだ。

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時48分
きっ、と見据えても政宗はまるで動じない。
この状況ですら楽しんでいる、そんな感じをおくびにも隠そうとしない。
それが元就の神経を煽っているようなものだった。

「そんな恐い顔すんなっての、折角の美人さんが台無しだぜ」

くくっ、と咽喉の奥で笑う。
舌打ちしたくなったがそれでは政宗の思う壺、わざと冷静を装う。

「我の城に何用だ、独眼竜よ」

政宗が此処高松城を攻めてきた理由はわかる、恐らく領地拡大を目論んでだろう。
詭計智将と称された元就だ、そのくらい当たり前の事だと思って常より備えてきた。

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時48分
政宗は元就の身体をまるで品定めをするかのように、舐め回して見る。
その無遠慮で卑しい視線に、元就は明らかに不快を露にした。

「OHーすっげー細ぇ腰、まるで女みてぇにslenderな身体してんだな。普通に同じ男だとは思えねぇぜ。
俺が今まで見てきた女の中でも飛び切りの上玉だぜ、アンタ」

男に対しては侮辱以外の何物でもない言葉をさらりと言ってのけた。
元就の眉間の皺も、先と比べて明らかに深くなっている。

「ふん、口の聞き方も知らん小僧が…戯けた事を言うな。女如きと我を比べるなど言語道断、不快だ」

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時48分
「知ったような口を聞くやつだ」

なるべく皮肉に聞こえるよう、声音を落として冷えた口調でそう言い返した。
相手の装いをじっくり見て、内心竦み上がった。無論表情にはおくびにも出してはいないが。
青の素材を基調とした鎧、大きな三日月を宿した兜、そして最も目につく六本の太刀を両手に、鞘は腰に。

???此処まで分かりやすいと苦労せぬな。

まるで他人事のように頭の隅でそう思った。
元就の目の前に立つその男、かの奥州筆頭伊達政宗であった。
政宗は先から今この時まで、一瞬たりとも笑みを絶やさなかった。

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時47分
かなりの数を倒した筈なのに相手の猛攻は収まるばかりか強まる一方。
なおも元就向かって無謀にも突っ込んできた足軽を横に凪ぎ、兵共の死骸の山に足していく。
このどしゃぶりの中、ぬかるんだ土に足を取られるわ顔にかかってくる雫は鬱陶しいわで兵達の士気は下がる一方だ。
その条件はどちらも同じ筈なのに相手の軍勢は全く衰え知らずだった。

???計算外だ。

思い通りに進まぬ展開に苛立ち、思わず舌打ちをした時だった。

「アンタ…元就サンだな?」

青の鎧を纏った青年が、六本の太刀を両手に目の前に現われた。

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時47分
どうやら身体が動かせないのは己自身に非があるらしい。
それとほぼ同時に、つい先まであったような戦の記憶が脳内にありありと甦ってくる。

高松城にとある軍勢が押し入ったとの報を受け、その高松城の城主である元就は城の防衛と共に迎撃を試みた。
だが予想以上に相手の兵の数は多く、迎撃は疎か防衛さえままならない状態に陥り、総大将たる自らが采配片手に闘う羽目となった。
どしゃぶりの雨の中、大勢の敵か味方かもわからぬ兵共を勘で見分けて斬り伏せていく。
気付けば、元就の周りには大勢の死体が積み上げられていた。

?徒然なるままにダテナリ 

2006年07月02日(日) 11時47分
思う通りに動かない右腕に腹が立った。
思う通りに動かない両足に嫌気がさした。
思う通りに動かない身体に嫌悪を覚えた。

(…身体が…全く動かぬ…)

目覚めれば、身に覚えの無い板張りの天井が目の前に広がった。
何時もとは全く感触の襦に自分は横たえられていた。
無論その感触は今までに触れた事のある物では無かった。
そして、まるで縫い付けられているかのように、ピクリとも動かせない己の四肢。
身体を捩らせても、唯一損傷を免れている左腕のみが申し訳程度にぎこちなく動くだけだった。
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:三江洛水
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 誕生日:1991年
  • アイコン画像 血液型:B型
  • アイコン画像 現住所:群馬県
  • アイコン画像 職業:小中高生
  • アイコン画像 趣味:
    ・ゲーム-TALES OF THE ABYSS、無双系
    ・音楽-THE BACK HORN、椎名林檎嬢、東京事変
読者になる
腐♀ですので苦手な方は避けた方が賢明かと。
Yapme!一覧
読者になる