動画づくり、Twitterと商店街 荻窪・教会通りをつなぐもの 

March 28 [Sun], 2010, 20:44
 パン屋、和菓子屋、八百屋、テーラー、クリーニング店……車1台がやっと通れる狭い道の両脇に、小さな店がぎっしり並ぶ。東京都杉並区・荻窪駅前の「教会通り商店街」は、1950年代から続く小さな商店街。古い店、新しい店、約90店が軒を連ねている。

 昨年12月。通りの脇に置かれたテレビの前に、人だかりができていた。マイクを向ける女性と、カメラに向かってインタビューに応える地元の人々。その様子が、テレビにそのまま映し出される。

 テレビ局の取材……ではない。教会通りのお祭り「みんなおいでよ!」の様子を、ライブ配信サービス「Sticam」を使って5時間にわたって配信し、同じ映像をその場に置いたテレビにも映していたのだ。

 福引きの様子など祭りの模様を伝えたり、商店主を紹介したり、手作りの店舗CMを流したり。地元に住む高橋明子さん(41)がメインMCとなり、ボランティアスタッフがカメラを回した。

 「仕事には自信あります!」――マイクを向けられ胸を張る商店主、「3本も当たるなんて! くじ運悪いのに」と、福引きが当たったことをうれしそうに話す主婦、カメラに映る自分たちに興奮する子どもたち。商店街の素のままの姿を、映像はとらえていた。

●「マスコミがちょっと取材する番組」ではなく

 「マスコミがその地域をちょっと取材しただけで番組を作るのは、何かが違う」。祭りのライブ配信は、そんな思いから生まれた「住民ディレクター活動」の一環だ。

 熊本県民テレビのディレクターだった岸本晃さんが1997年に始め、全国に広げてきた活動。テレビ番組制作で企画力を養い、その力を地域の活性化や情報発信に生かそうという取り組みで、「番組はあくまでオマケ」という位置づけだ。

 地域情報化のコンサルタントとして岸本さんと親交があった高橋さんは、出産・子育てをきっかけに2005年から、地元・杉並で住民ディレクター活動「杉並TV」をスタート。岸本さんやボランティアスタッフ、区の支援を得ながら、地域住民に映像制作や編集をレクチャーしたり、住民が撮った映像を、岸本さんが持つCSの番組「日本の國から」で放送するといった活動を行ってきた。

●地域住民同士で作る「二人三脚CM」やニュース番組も

 教会通り商店街と共同で作ってきた映像は数多い。商店街の店主や地元住民が近所の店を訪れてインタビューし、CMを作る「二人三脚CM」、女性の商店主が、ほかの店のお母さんたちをインタビューする「元祖キャリアウーマン」、「あの店の2代目が帰ってきた」など商店街のプチニュースを伝える「教会通りNEWS」……

 ハンディカメラを使い慣れない手つきで撮影した映像は、ブレたり見にくかったりもするが、「このお店、入ると楽しくて、いつ行っても出たくなくなるんです」「お子さん、大きくなりましたよねぇ」など、ご近所ならではの視点が新鮮だ。

 「外からでは見えない、商店街の“中”まで撮れているかもしれない。ほかの商店ともより深く仲良くなれた」と、和菓子店「榛名屋」の2代目・田貝大孝(たがい・ひろたか)さん(31)は、撮影を振り返る。

 幼なじみやご近所さんがカメラマンだと、被写体もリラックスできるようだ。「わたしは気取り屋だから、いいことを言おうと思うんだけど、カメラが回ると普段通り、普段着になっちゃう」と、商店街会長の斎藤敬子さん(72)は笑う。

 素のままの教会通りの温かみこそが、もっとも伝えたい「通りの顔」だという。「商店同士の付き合いから生まれる温かい雰囲気がお客様にも伝わり、やがて集客につながれば」(斎藤さん)

●手作りのサイト、Twitterも

 教会通り商店街は以前から、店主たちがネットを使って情報発信してきた。2003年、商店主の若手を中心に15人ほどで「Web委員会」を設立し、公式Webサイトを制作。ブログやTwitterにも取り組んでいる。

 商店主向けに「ホームページビルダー」講座を行い、手作りでサイトを制作・更新。「業者の決まり切った冷たいサイトではなく、教会通りらしい、温かみやぬくもりのあるサイトを作りたかったから」(斎藤さん)あえて手作りにこだわった。

 一部店舗は独自のWebサイトやブログも持っているほか、昨年12月ごろからは、高円寺ルック商店街の中澤一也さん(36)のすすめでTwitterもスタート。各店舗のアカウントと商店街のアカウント@kyokaidoriを使い、情報発信している

 「卒業式のお饅頭のご注文いただきました。心を込めて制作完了! http://twitpic.com/1ary77」「ロケットパンが揚がりました(^o^)/♪魚肉ソーセージ入りの揚げパンです☆ http://twitpic.com/1aq7kn」――和菓子の榛名屋(@harunaya)がその日のサービス品をつぶやいたり、ベーカリー「TAMAYA」(@Tamaya3621)がパンの焼き上がりを知らせたり。商店街のアカウントでは、商店街のできごとや天気などを更新し、各店のつぶやきをリツイート(RT)している。

 Twitter導入を主導し、商店街のアカウントも更新する「テーラー中山」の2代目店主・中山弘さん(53)はTwitterが商店街や店のファン作りに役立つと期待する。

 「『○○がセール中です』など販売目的の宣伝を流してもいやらしい。Twitterはお客さんの生の情報を得られる媒体。閉鎖性がなく誰とでもつながれ、つぶやきを見るとその人の人柄まで分かる。相当の可能性を秘めていて、今後“化ける”と思う」

 教会通りではすでに9店がツイートしており、参加店舗は徐々に増えている。ただ「商売人は飽き性なので」いかに飽きさせず、「化ける」まで続けてもらうか、店主たちのモチベーションの維持が課題だという。

 中山さんがネットを使ってやりたいことはたくさんある。Ustreamなどライブ配信サービスを使ったWeb委員会の“ダダ漏れ”もその1つ。テーラー中山の店舗にはFONのアクセスポイントを設置するなど、「誰でもネットにつなげられる商店街」も目指す。地元の人だけでなく、沿線の繁華街に向かう人が途中下車して来てもらえるような商店街にしたいという。

●「大人は、若い人のやっていることを受け入れないと」

 若者世代が進める商店街とネットの融合。会長の斎藤さんは「分からないことばかり」と戸惑いながらも、積極的に受け入れている。

 「大人は、若い人のやっていることをいい形で受け入れないと、先に進めないから。今はまだ親世代が元気だけど、若い人はいずれ、後を背負う人たち。若い子に何かを任せて、うまく世代交代してもらわないとね」

 自分の子どもや孫について話すような優しい目で、斎藤さんはこう話していた。 3月26日17時30分配信 ITmedia News
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100326-00000039-zdn_n-sci