【猫螺子】

December 04 [Mon], 2017, 10:43
 

猫螺子を回す
金毛の渦
臓腑はひらかれて
深く
冥府の淵へと

えぐられた夢を細い指がかばう
胎道を
肋骨の稜線がまた切り裂いて
白壁に穿たれた
眼窩に

声もなく
闇を侵す


 

【砦】

December 02 [Sat], 2017, 19:58
 

郷愁の総体から光が分離していく過程に/
斜線が引かれ
沈殿する
闇を
笑う二重像は
強制された抹消の否定によって
その行為の記憶を不可視の仮面にぬりこめられる

膨張する無限花序の亀裂に
潜勢態の
微かな出血を伴って

やがて乳化した上澄みとの境界から下垂する青のすべてを
──おまえの夜を
飲み干そう
俺は
ここに
守られた約束の残骸の中で


 

【瓜を齧る】

November 19 [Sun], 2017, 14:54
 

瓜を齧る
西の空の果て
まだ生々しい涙の傷口に
コルク銃を構える
射手座生まれのおまえの姿を眺めながら

瓜を齧る
まだ照準のあわせかたを教えているうちに
せっかちな指が暴発させたコルク弾が
それでも見事に景品を射ち落としたことに大笑いしながら

瓜を齧る
薄く引き延ばされた青い胸板の縁に無数の乳首が縦一列に並ぶ
その肉の先端に生えた鋭い鉤爪に触れながら

悲しみに濡れた果肉を削ぎ取る
波また波
灰色に
爛れた海に浮かぶ門歯の幻影に
おまえの唇が
血の糸を引いて

瓜を齧る
嘆くことにも倦み果てた
波また波の
彼方に肩を抱き寄せて
砂の
瓜を齧る
おまえの残した
瓜を齧る


 

【墓碑鳥】

November 17 [Fri], 2017, 14:16
 

砂の翼に洪水の痕跡を引きずって
石の鳥の
夢に刻まれた碑銘は
ゆるやかに構文の骨格を失っていく

灰色に枯れた荒野をよこぎる
外傷に似た
短いねむりの覚め際を
白衣の尼僧たちの群れが北へと低く飛び去っていく
まだ惜しまれる
死のざわめきに追われ

見棄てられた城門の彼方へ
減衰していく
声のない鳥たちの
悲痛なミゼレレを解体しながら


【浴室にて】

November 15 [Wed], 2017, 13:17
 

皎々と照らし出されるものはただこの裸身のみルクス・エテルナ



 

【井守】

November 05 [Sun], 2017, 7:12
 

濡れた水着を
呼吸する
おまえのイモリは
繊月の
秘めやかに閉ざされた海のまぶた


 

【軸索】

November 03 [Fri], 2017, 18:26
 

病み濡れた沼のほとりに臍帯でつながれて
俺は胎児の形を守っている
空蝉をつつむ手の
指は
からみつく粘液の
糸のあやとりを終わりなく続けている

泥にひそむ魚類の鰓孔を
そのまま奥へ
赤く静まりかえった眠りの奥へ

送り返す鼓動は
微分され
体腔の分岐を胚へと遡る


 

【匂いがする】

September 25 [Mon], 2017, 6:05
 

a. 赤ん坊の匂いがする

b. 砂糖を炙る匂いがする

c. 刈り立ての草の匂いがする

部屋の中に女がうずくまって動かない。
子供用の三輪車に跨がって何日もずっと、ただがっくりと首を垂れ、血を流している。
近づくと湿った菌床の匂いがする。

振り向くとおまえが立っている。
海を背に。
右の前腕を水平に顔の高さで保持して、両目を隠している。その指で空の裾を摘まむように軽くこぶしを握って──

水平線に赤く明滅する光が、落日なのか、曙光なのか、考えるほどに俺は悲しくなって目を閉じる。

d. やがて藁を焼く匂いがする


 

【非常階段】

September 22 [Fri], 2017, 20:44
 

先行する影の屈曲を追って
肘関節を器用に増殖させていく人の
右手は影を追い
左手は右手を追い
光は背後から無限に照射されるが
その人の骨格の秘密を明らかにすることはない

そんな幻術めいた三声のフーガに耳を傾けながら
おまえの頭部が傾いでいく
二十度三十度
四十五度
六十度

カミキリムシが鳴いている
どこか脳髄の奥で
キチキチと
キチキチと
白目を剥いた
恋人にむかって


 

【アスパラガス2】

September 22 [Fri], 2017, 9:46
 

おまえの右脚の表面に無数の小さな右脚が生え出て
その個々の右脚にまたさらに小さな無数の右脚が生えている
すべての脚の付け根には外陰部が付属してひっそりと唇をとじている

渚に置かれた安楽椅子にゆられながら
上体は岸辺の松の緑に溶融して主に肥大した下肢だけが波の飛沫にぬれている
肉の始まりは曖昧で
それが鳩尾なのか臍下なのかよくわからない

俺はおまえのためにアスパラガスを茹でながら
低く流れていく雲を見上げている
南西から北東方向へ
不安な気持ちがどうして去ってくれないのか

グラスには冷えたワインが注がれている

卵を茹で
肉も茹でる
おまえは落ち着かなげにしきりと脚を左右にうごかしている
俺は
すべてが水煮にされた
この岸の
高く張り出した恥骨筋にナイフをいれる


 
P R
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