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2007年02月07日(水) 14時28分
ここはR12号が書く小説の部屋です。

現在は妄想ライトノベル『機械じかけと元、魔王』の第一章を連載しております。

よかったら、読んでおくれやす

小説『機械じかけと元、魔王。』 プロローグ 

2007年02月07日(水) 17時23分
 世界の名は『エブス=カディース』。九つの大陸からなる世界。

 エブス=カディースは魔族の王たちに支配されていた歴史をもつ。
 九つの大陸は九つの魔王に支配されていた。
 魔族たちの願いは全ての魔族たちの上に立つもの、『魔族王』になることだった。
 それ故に大陸間の魔族たちの争いは熾烈を極めた。歴史が始まる以前から、魔族たちは争いを繰り返していた。
 その中で人間は魔族に支配されるだけの存在だった。
 魔族がもつ『魔力』の前では、人間はあまりにも卑小な存在だったのだ。
 永く永く、魔族たちは人間を支配し、人間たちはそれに甘んじることしか出来なかった。

 しかし希望は訪れる。
 人間たちも力を手に入れたのだ。その力とは『機械』である。
 はじめて持つ強大な力。魔族たちに対抗しうる唯一の光明。
 人間たちは『機械』の発展に尽力した。魔族たちに隠れてその牙を研ぎ続けたのである。
 そしてそれが十分な力となると、人間たちは魔族に対してそれをふるった。
 永年の憎しみを込めて、幾年の恨みを寄せてふるい続けた。
 いくつかの大戦が終わる頃には、人間たちは三つの大陸を魔族たちの手から解放するに至った。

 だが人間たちは『機械』の力に恐怖しはじめていた。
 強大な力を持ったことがなかった人間たちは、そのリスクも知らなかったのだ。
 勝ち取ったもの、なくしたもの、どちらも平等に大きかった。
 人間たちは『機械』を忌み嫌うようになった。しかしそれでも人間が持ちうる唯一の力だったので禁忌とすることも出来なかった。
 そこで人間たちは、力を扱うものを育て始めた。強大な力に負けない『意志』と『勇気』を持つものを。
 人間は彼らを『機械士』と名付けた。

 また魔族たちにとっても『機械』の力は脅威だった。
 絶対であったはずの『魔力』。それを揺るがす力に対峙することを迫られていたのだ。
 そんな時、魔族たちのあいだではまことしやかにささやかれる噂があった。
 お伽話のように語り継がれて来た、伝説の魔王『ニューク』の物語。
 史上最強で、唯一『魔族王』にまでのぼりつめたもの。その力の遺産がどこかにあるのだと。
 魔族たちはその話に飛びついた。血眼になってその遺産を探した。気付けば大陸を支配する魔王たちも、その話に巻き込まれ、いつしか『ニューク』の力を手に入れたものこそが、次の『魔族王』になれると囁かれ始めた。

 強大な力を扱う術を育む人間と、強大な力を求める魔族。
 膠着状態を生んだ最後の大戦から十年。
 世界はまた動き出そうとしていた……。

小説「機械じかけと元、魔王」第一章 ナノの一 

2007年02月08日(木) 9時45分
 レンチに力を込めて、ボルトを締める。
「あとはこの配線と……、この配線、……をつなげればぁ〜」銅線がむき出しの赤い配線と青い配線を手に持つ。大丈夫、これでイケルはず。今度こそは……。
 銅線がふれあった瞬間、火花が飛び、閃光で目がくらむ。
「うわぁ!?」やっぱりまた失敗!?
 そう思った時には、もう遅かった。おなじみの爆発! ……そして黒煙。
 毎度のことながら、この煙にはへこんでしまう。咳き込みながら、私はそう思った。ハァ〜、また失敗か。

 私の名前はナノ、ナノ=アポッド。『機械士』見習いの十六歳。
 私の家は代々『機械士』の家系で、私ももちろん『機械士』になるべく修行中……なんだけど、ちっとも進歩しない。
 今日もまた失敗しちゃった。設計図通りにやったつもりだけど、基本的には。やっぱりナノオリジナルのアレンジがすこし余計だったかな?
 でも、いいや。失敗なんか気にしない。いつかは大陸の魔王を片付けるくらいの、すっごい『機械士』になってみせるから。

「でも、とりあえずは部屋の片付けか」爆発で部屋の中はめちゃくちゃに散らかってしまった。せっかく造った『もろこしセブン』も木っ端みじんだ。あ〜あ、やっぱり、落ち込む。
「ま〜た爆発したんか、いつもの変な名前の『機械』」戸口で煙草をくゆらせながら、笑っている男が立っている。
 この憎たらしい男性はボゼ。一応、私の祖父で、私の師匠。
 私のおじいちゃんなんだから、もうそれなりに歳はとってるはずなんだけど、異様に若々しい。私も正確な年齢は知らない。下手したら私の父、いや兄といっても通じてしまいそうだ。その容姿を悪用して、いまだに女性と遊んでいたりする。

「変な名前じゃないもん。『もろこしセブン』っていうペーソス溢れる、立派な名前があるの! それよりボゼ、また女の人と遊んでいたの?」
 ボゼは煙草の煙を私の顔に吐き出す。また私は咳き込んでしまった。
「女性たちと付き合うのは、俺の生き甲斐なんだよ、孫よ。それよりいい加減おじいちゃんとは呼んでくれないのか〜。ま〜、ご〜」
「ボゼだって私のこと名前で呼ばないじゃない」『もろこしセブン』の回路盤
と右腕を拾いながら愚痴ってみる。
 でも答えはいつも決まっている。だからボゼが何をいうかはわかってる。
「名前なんて重要じゃないんだ。大事なのは役割だよ、つまり肩書きさ、孫よ」ボゼはニヤニヤしながらそう言ってる。いつもの通りだ。

「しかし、まぁ〜、進歩のない奴だね、お前も」ボゼは爆発して飛び散ったパーツを、指でつまんで、そう冷やかして来る。
「アポッド家史上、最悪の才能の無さだな。うん、間違いない」腕を組んでしきりに頷いている。
「うるさいなぁ、ほっといてよ」どうせ私は才能ないですよ。本当に意地が悪いな〜。
 でもいつかは絶対に立派な『機械士』になってみせるんだから。

小説「機械じかけと元、魔王」第一章 ザインの一 

2007年02月09日(金) 14時38分
 くそっ! なんでこんなことになったのか。
 そう月に吠えながら、俺は拳を震わせる。
 こんなはずではなかった。このザイン=フル=ノースフェルド三世ともあろうものが、こんな惨めな姿をさらさなくてはならないとは、なんという悲劇。
 一歩一歩、地を踏みしめるたびに、憤りが込み上げて来る。
 部下さえちゃんとしていれば、こんなことにはならなかったのだ。
 
 魔族のなかでも名門といわれるノースフェルド家の長男として俺は生まれた。
 エリート街道をひた走り、『大陸の魔王』まで一直線。このままゆけば、ゆくゆくは『魔族王』も夢でない。周りからもそう言われる存在だった。
 しかし人生いつ落ち目が来るかわからない。部下の一人が、私を支持する魔族に提出する報告書をのデータをねつ造してしまったのだ。
 魔族の力の源、『魔力』とはどれだけ信頼しているかに比例する。ようはどれだけ家柄がいいかに依るのだ。
 ねつ造が発覚すると同時に、私の評判はがた落ち。名門といわれた我がノースフェルド家の信頼は失墜することになってしまった。
 部下、城、その他、代々受け継がれて来た家宝の数々は借金のかたに取られ、手元に残ったのは、このスーツとマントだけ。
 夜逃げ同然に逃げて来て、今は人間どもの国にいる

 俺は頭に手を伸ばして、自慢だった角に触れる。魔力に満ちていた頃は、あれだけ雄々しかったのに、いまや小指ほどもない。外からは髪に隠れてしまって、ぱっと見、人間と変わらない。みじめだ……。
 しかし今はそれで助かっている。
 もし角が見つかって、魔族だとわかってしまったら、人間の国にいることは出来ない。
 魔力を失った俺は、魔王だったころのセレブリティな生活がたたって、運動不足。そこらへんのちんけな若者にも負けてしまうだろう。ましてや『機械』など取り出されたら、勝てる訳がない。
 
 だが俺はまだ夢を諦めた訳ではない。落ちぶれてもなお希望を捨ててはいないのだ。
 俺がもつ希望、それは最強の魔王『ニューク』の遺産だ。
 それを手に入れることが出来れば、また元の地位に返り咲ける。いや、一気に『魔族王』になることだってできるのだ。
 それまではどんなにみじめでも、耐え抜いてみせる。
 マントを翻し、俺は高らかに笑う。
「そうだ! 俺は(元)魔王だ! いつ何時も、己の気高さを忘れることはない魔王なんだ!」
 笑い声は夜の闇を切り裂いて、響き渡ってゆく。

 すると、壷が飛んで来て、俺の頭に直撃した。
「うるさいよ! 何時だと思っているんだい! 静かにおし!」
 俺は明滅する頭で、壷の飛んで来た方に、一瞥をくれる。どうやら思い知らせてやる必要があるようだ。ここにいるのは魔王なんだということを!
「……すんません、勘弁してくださ〜い」俺はなんどもなんども土下座をして、許しを請うてやった。ハッハッハッ、人間どもには出来んほどの鮮やかな謝りっぷりだった。ハッハッハッ……。
 ……一刻もはやく『ニューク』の遺産を見つけなければ。

小説「機械じかけと元、魔王」第一章 ナノの二 

2007年02月10日(土) 11時27分
 プデの街は『機械』とは縁の遠い土地柄で、工場も我がアポッド工場のほかには一件も建っていない。
 もちろんこんな土地は『機械』の修行なんて絶対に向いてない。窓を開けると、地平線まで広がる田園風景が眺めることが出来る工場なんて、ありえないでしょ!?
 こんなとこじゃ、いつまで経っても、『機械士』なんかになれないじゃない!

 お父さんから貰ったゴーグルを手に取って眺める。お父さんは腕のいい『機械士』だった。
 工場も都会の一級地にあって、王族からの仕事もこなしてたのに……。娘の私ときたら、若さ溢れる老人と一緒に田園生活。工具を握るより、農具を手にしてた方が長いっていう有様。

 でもなんでボゼはこんな田舎にいるんだろう?
 腐ってもあのお父さんの父親で、師匠だったんなら、『機械士』としての腕はそんなに悪いはずじゃないんだけどな。
 まさか前に言ってたことって、本当のことなのかしら……。

私「ね〜ボゼ。ボゼはなんで都会に工場を建てないの?」
ボゼ「あぁ〜ん、ツケがシャレになんないだよ!」
 そういってボゼは酒場に出向いて、べれべれに酔っぱらって帰って来た。

 あの時はまだ私もここに来たばかりで、冗談だと思ってたけど、今思い出してみると、笑い飛ばせない私がいる。
 もしかして「夜逃げ」してきたのかな。だとしたら、うちって借金どのくらいあるのぉ?
 そんな不安な私を置いて、今夜もボゼは酒場に遊びに行っちゃった。

 ちょっとくらい真面目に働いてよ!
 私がここに来てから、ボゼが『機械』を造っているところを見たことがない。 この工場の経営だって、私が丹誠込めた『機械』……じゃなくて野菜を売ってまかなってるんだから。

 私は窓を開けて、一番明るい星に祈る。
 どうかお願いです、お星様。私を立派な『機械士』……にもしてほしいんですが、それよりいまは、ボゼがちゃんと働いて、借金もちゃんと返して、工場も上手くいって、私にもちゃんと『機械』のことを教えてくれるようになりますように。
どうか、どうか重々お願いします、お星様。
 私が祈ると、お星様はそれに応えるように、輝いてくれた。

「ありがとう、お星様……」私は窓を閉じて、寝床につく。
 明日こそはちゃんとした『機械』を造るぞ! 

小説「機械じかけと元、魔王」第一章 ザインの二 

2007年02月11日(日) 6時00分
 いかん、このままではマズイ。
 落ちぶれていようが、俺は魔王なのだ。それが皮肉な運命を呼び起こしている。
 激痛が走る腹をおさえる。足取りは覚束ない。

 いくらこれほど落ちぶれたとしても、大陸の魔王という肩書きをもったことのあり、家柄も育ちも良い『魔貴族』だった俺様。 
 俺様を倒したら『魔貴族』を倒したという名誉は与えられる。うまくやれば『魔貴族』のはしくれになることだって出来るかもしれない。
 そんな俺様は雑魚どもにとっては格好のカモだ。
 底辺でくすぶっている魔族どもにしてみればそんな『魔貴族』の俺様が、いま魔力がないに等しい。まさに千載一遇のチャンスだろう。

 足に力が入らない。俺はその場に倒れ込んでしまう。
 思い出すのは大陸の魔王としての優雅な日々。
 幾千の兵隊を引き連れて、戦場を駆り、人間どもの鮮血にまみれた恍惚の日常。俺様の姿を恐れた魔族たちは、俺様のことを『疾黒のザイン』という字名をつけて恐怖した。
 そんな俺様が、力なく倒れ込んでいる。なんと無様なことか。

 蛍が俺様の指先に止まる。
 煌々と命を削りながら光る蛍に、おもわず俺様は自分の身を重ねた。
 俺様のしてきたことも、この蛍と同じことなのか? 一瞬の輝きのためだけ、わずかな栄光の為の人生だったのか?
 俺様は自分の生きて来た二千五百七十四年の人生を振り返ってみる。
 『魔貴族』として生まれた自分。将来を約束されてきた道程。そこになにがあったのだろうか? 本当に自分は満足だったのか……。
 蛍、そう蛍といえば思い出すのは俺様が幼い日のこと。辛く、寂しかった毎日を。

 両親は立派な魔王にするための教育を、容赦なく俺様に施した。しかし両親は俺様に直接関わろうとせず、たまに家の中ですれちがっても、俺様なんて存在しないかのように無視するだけだった。
 辛くて、さびしくて……、当時の俺様はよく一人で泣いていた。中庭の河のほとりで誰にも気付かれないように、誰かに気付いてほしくて泣いていた。
 魔族としてふがいなかった幼い俺様をなぐさめてくれたのが、執事のメーテルだ。
「ザイン様、またこんなところで泣いているんですね……」そういって彼女は泣いている俺様の髪をやさしく撫でてくれた。
「そんなに、勉強するのがお嫌ですか?」
「ち、……ちがうよ、ぼくは、ぼくはただ……」泣き声の嗚咽の向こうから、なかなか本音が出せなかった。
 彼女は泣き止むまで、優しく俺様を抱いてくれた。

「ザイン様、見てください」俺様が泣き止むと、彼女は河のほとりを指差した。
 辺りはすっかりと暗くなっていて、河のほとりには、無数の光が舞い踊っている。
「アレは……、蛍?」
「そう、蛍です。知ってますか、ザイン様。蛍というのは、ああいう風に輝けるのは一週間ほどらしいですよ。それが、彼らの寿命なんです」俺様は彼女を見上げる。
「私たち魔族に比べると、よほど短いですね、ザイン様。それでも彼らはめげることなく輝き続けています。ーーそれに比べてザイン様。あなたはそんなに恵まれた環境にいて、なにを不満たれブーなんでございますか? このガキァ」
「メ、……メーテル!?」
「泣いてる暇があるんやったら、ちょっとでも人間はたきまわすようないい手段考えんかい、このボケェ!」
「い、いぎヤあぁ〜〜〜!?」

 指先にとまっていた蛍が、暗闇の彼方に飛んでいく。
 彼女は感情の起伏が異様に激しく、よくぶち切れては俺様を半殺しにしていた。彼女の不条理なまでの怒りは、魔族とはかくあるべきだと、教えてくれた。
 そんな幼少の日々を思い出すと、いまのまま、落ちぶれてはいけないような気がしてくる。
 半殺しの目に遭いながらも、けなげに頑張ってきた幼いころの俺様に申し訳がたたないではないか。
 
 俺様は自身を叱咤する。こんなところでくじけていいような、俺様ではないのだ!
 手に力を入れ、身を起こす。足を地に立たせ、一歩を踏み出す。
 体中の力を込めて、俺様は立ち上がった。俺様は、俺様は負ける訳にはいかないのだぁ〜〜〜〜!!
「でも、やっぱ駄目だ」
 全身から力が抜けて、また俺様は地面に倒れこむ。やっぱ無理なときは無理だ。もうぜんぜん力が入らない。残りカスまで使い切ってしまった。
 俺様は腹に手をあてる。激痛はまだ治まらない。くそぉ、こんなことで。そのまま俺様は、夜の暗闇よりも、深く深く落ちていく。

設定画1 メーテル 

2007年02月11日(日) 14時48分


 私めの拙い文章力では、伝わるものも伝わらないので、絵を描いてみようと思います(それだって上手い訳ではないけど……)

 第一弾は『ザインの二』に登場した女性執事のメーテルさんです。

 いきなり主役ではなく、次の登場があるかどうかもわからない脇役から入るのには目をつぶって下せぇ。

 このキャラは、なんかエピソード加えたいな、と思ったときに思いついただけのキャラですが、結構お気に入りかもしれません。

 最初はでれでれ(?)するけど、最後はつんつん(?)するキャラ。ツンデレならず、でれつんですね。

 細かい設定もなんもないんで、これ以上言及することはありません(笑)が、またどこかで出て来るかもしれませんね〜

(ちなみに、魔族の角は後頭部にポニーテールのように生えています)

小説「機械じかけと元、魔王」第一章 ナノの三 

2007年02月13日(火) 0時10分
 太陽の光が、窓の隙間から差し込んで、さわやかな朝の訪れを教えてくれる。私はベッドの上で、身体を伸ばし、また一日の始まりを確かめる。
「今日はほんっといい天気!」窓を開けると、涼しい風が、朝の匂いを運んでくれる。「今日もがんばろっと」
 朝になると、毎日しなくちゃいけないことがある。それはこの工場の仕事のなかでもっとも大切なこと。
 服を着替えて、私は用具を準備する。「一日の始まりはやっぱり、これをしなきゃね〜」長年、愛用している用具は、やっぱり手になじむ。
「さて、それでは行きますか!」畑仕事に!

 ボゼはまだ帰って来ていない。夜、遊びに出かけると、翌日の昼頃にならなくちゃ、戻って来ない。朝になっても帰って来ないなんて……。まぁいつものことだけど。
 私は農具をもって、扉を開ける。畑仕事は、朝やるのにかぎる。今日は何から始めようかな? 時間があまったら、新しい畑でも耕そうかな? あぁ〜こんなにもわくわくすることが他にあるのかしら。
 私は一歩を踏み出す。ここまではいつもの朝だった。でも私の足下にはしっかりとした大地とは、ちがう感触が……。

「い、いたい……」声が聞こえた方をみると、男の人が倒れていた。
「ど、どうしたんですか! 人の家の前で、行き倒れないで下さいよ! どうせなら、あっちにある肉屋のまえで野垂れ死んでください。あそこの主人、全然まけてくれないんだ、これが」
「……そうじゃないだろう、普通……」男の人は息も絶え絶えだ。
「冗談ですよ、冗談。安心して倒れていてください。死んだら私が責任もって運んでおきますから、肉屋の前に」
「……それもちがう……、けどよほど恨まれてるな、その肉屋」よく見ると、男の人は腹を抱えて、倒れている。
「どうしたんですか、お腹になにかあるんですか? もしかして腹芸の顔でもかいちゃったんですか、油性で」
「そ、そんなもん、書いてある訳ないだろう……」
「じゃあ、私が肉屋への恨み節を、五寸釘で書き綴っても、無問題ですね」男の人の目は怯えではなく、憤りで鈍く光っている。
「……むしろ肉屋のまえに倒れとくべきだった……、ぜったいお前よりはマシだ」男の人の目には涙が浮かんでいる。埃でも入ったのかな?
「じゃあ、そうして下さい。私は畑仕事があるんで、これで失礼しますよ」私は畑に向かって踏み出した。ちょっと時間がかかちゃった。これじゃあ新しい畑を耕すのは無理ね。
「ちょっ、ちょっと待て! 本当に見捨てるのかよ!」男の人がこっちに手を差し出し、惨めったらしく見つめている。
「どうしたのよ、見たところどこも怪我してないようだけど?」確かにここで見捨てると、寝起きが悪くなりそうだしね。
「……腹、減ってるんだ、なにか食べさしてもらえんか?」

 農具を使わなかっただけでも、たいしたもんだと思う。私は男の人を思いっきり踏みつけた。

設定画2 肉屋の主人 

2007年02月13日(火) 0時11分


ふたつめの設定画はナノの三に登場する『肉屋の主人』です。

ナノが異様なまでに、憎しみを抱く人物。「まけるくらいなら 五臓六腑をたたきつぶすんだから、もぅ知んない」がモットー。

プデの街モンゴル相撲選手権の初代チャピオン。王座に輝いた後にすぐ引退表明。「空があまりにも蒼かったから」がその理由。現在はそろばん王と腹話術王の二冠をもつ。

ナノは家計のやりくりのために、他の店ではまけてもらうのだが、この店だけは一度もまけて貰ったことがなく、根にもっている。だがその肉は天下一品。「妥協を許さない主人の意気込みが、肉からすけて見えるようだ」と白髪まじりの食通、初期のころよりだいぶ器がでかくなりましたね、でおなじみあの人からも絶賛されている。

趣味は手乗り文鳥を手には収まらなくすることと、偽造四葉のクローバーをどこかに埋めること。

・・・・・また脇役の設定です。むだにいろいろ書きましたが、また登場するかはわかりません。設定画というよりは落書きだね、こりゃ(笑)

小説「機械じかけと元、魔王」第一章 ザインの三 

2007年02月13日(火) 13時19分
 気がついてみると、俺様はベッドに寝かされていた。
 記憶を辿ってみるが、あのイカレ小娘が俺を踏みつけたところから、記憶がない。ここはどこなのだろうか?
 ベッドから起き上がって、部屋を眺めてみる。板目の質素な木目の床がみすぼらしい。人間とはこんなところに居を構えているのか?
 俺様はベッドが置かれていた部屋を出た。するとそこは板目の床ではなく、かたい鉄板の床になっていた。
「な、なんなんだ、ここは」俺様は思わず声を上げてしまった。広い部屋の至る所に野菜ばかりが置いてあったのだ。
 たしか工場のようなところの前に倒れていたような気がするが。どうみても工場ではない、ここは野菜倉庫だ。やはりここはあのイカレ貧乳娘の家ではないのだろうか?

 不意に正面のシャッターが開き、薄暗かった野菜倉庫のなかに、日の光が照らされた。シャッターを開けたのは、あのイカレ貧乳吝嗇(読:りんしょく、けちということ)小娘だった。
「あぁ、目が覚めたんですね」小娘は大量の野菜を担いでいる。やはりここはこいつの家だったのか。ではこいつが俺様を助けてくれたのか。
「ーー助けてくれたのだな、一応、礼を言う」俺様が魔力失わなければ、人間なんぞに礼を言うこともないのに、口惜しさに身体が震えるのをおさえつける。
「いえ、いいんです、別に」小娘は肩にかけていた鍬を床に置きながら、話している。「あの後、肉屋の前に置いといたんですが……」
「ちょっと待て、あの後すぐにここへ運んだのではないのか?」
「ちがいますよ、なに言ってるんですか。そんなことするわけないでしょう、見ず知らずの他人を家に上げるなんて、嫁入り前のこの私が。はしたない」小娘は野菜を入れたかごを置いて、肩なんぞを揉んでいる。
「見ず知らずの人間を踏みつけて、見捨てるばかりか、他人ちの前に放置するのも、十分はしたないのではないか?」あれ、おかしい。口惜しさが消えて、純粋な怒りで震えてる。魔力が消えてなきゃ、絶対『魔族王』になれてた。

「まぁ、とにかく肉屋の前に置いて様子を見てたんですが、ちょっと聞いてくださいよ、あの肉屋ったら! 他人が自分んとこの店先に倒れてるのに、ちっとも助けようとしないんですよ、あのヤロウ。すじ肉くらいまけろってんだ」
「この街はそんな奴ばっかなのか……」泣けて来る、なんでこんな街に来ちゃったかな、俺様。

「あのまま放置しとくと、なんか肉切り包丁などで、斬ってはいけないものを斬り出しそうな雰囲気を感じて、それはさすがに後味が悪いということで、肉屋の主人の気をそらした隙に救出しときましたよ。感謝して媚びへつらいながら、涙とよだれのなかに溺れるか、もしくはてっとりばやくお金をください。現金で」小娘は右手をこちらに差し出し、手のひらを向けている。よく見ると、その手にはなぜか血がついている。
「おまえ、肉屋の主人に何を……」小娘の口の端が、ゆっくりと上がって、顔が笑顔を形づくる。
「あぁ、あの人は丈夫だから、心配ないですよ?」とびっきりの笑顔を向ける小娘をまえに、俺様の足は完全にすくんでいた。
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    ・読書-村上春樹のファン。最近は伊坂幸太郎も読んでます。ちなみに今読んでるのは『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?」
    ・マンガ-日本橋ヨヲコ、新井英樹、羽生生純がお気に入り
    ・ゲーム-だいたいRPGが主だけど、最近あまりやってない
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脳みそから絞り出してはいけない、妄想を繰り広げるライトノベルです。
珍妙な戯れ言ばかりではなく、真面目なものも、いつかは書いてみようよ……、ね?
2007年02月
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