無題(龍如/真島)
February 02 [Tue], 2010, 12:52
「うぅ、寒…っ」
ぼそりと零した言葉が息を白く染める。今夜は都心でも雪がちらつくらしく、一段と冷える。その為か、いつもは人で賑わっている、ここ神室町も心なしかひっそりとしている。誰しもこんなに寒い夜は早く帰って暖まりたいと思うのだろう。かくゆう私もその一人だ。今夜は塚本先生と二人鍋と洒落こんで早々に寝てしまいたい。
首に巻いたザックリ編みのマフラーを口許まで引き上げて、手袋で滑るスーパーの袋をギュッと持ち直して、足を早めた。
「あ、」
塚本医院の前まで来ると、冬の寒さも何のそのと言ったいでたちの人物が目に入った。
素肌にパイソン柄の上着を羽織って、金属バットをズルズル引き摺りながら歩く男。いつもはたくさんの取り巻きを引き連れているが、今日は珍しく一人のようだ。
「…こんな寒い中なにしてるんですか」
彼の背中にそっと声をかけると真島吾郎は独眼を細めて「ああ、先生」と関西特有のイントネーションで答えた。その息は私と同じく白い。
「真島さんの恰好、見ているこちらが寒いです」
「先生はいつも以上にモコモコやな」
「今夜は都内でも雪が降るそうですから、私の防寒は至って普通です」
「なるほど。そんで先生は鍋でも食ってさっさと寝てまうつもりやろ」
「い、いけませんか」
「いけなくないで。先生らしいわ」
図星をさされて、おまけにニヤリと笑われて、何だか居心地が悪い。
「…それで、真島さんはこんなところで何してらしたんですか?」
「ん〜、なんやろ?」
「はい?」
「なんや先生の顔見たなって、気ぃついたらここにおった」
「まさか、ずっとここにいたんじゃないですよね?」
「一時間くらいか」
「寒いでしょ!風邪引くじゃないですか!」
思わずである。自分の首に巻いたマフラーを脱いで、寒々しい彼の首もとに乱暴に巻いてやった。他意はない。医者として人間として、当然の反射である。
「ぬくい」
「それだけ冷えてたってことですよ。上がってて下さい。あったかいお茶煎れますから」
「早速のお誘いなんやけど、今日はええわ」
珍しい。断られるとは思っていなかったのでなんだか拍子抜けである。
「お忙しいんですね」
「なんや、がっかりしとるんかいな」
「がっかりなんかしてません」
「そないバッサリ否定せんでも」
がっくし、とわざとらしく肩をおとすものの、全く堪えてはいないようだ。異常なまでのタフさはここでも発揮されている。
「ほな、そろそろ行くわ。襟巻き、」
「邪魔じゃなければ持っていって下さい。お貸しします」
「ええの?」
「ほんの気休めでしょうけどないよりはましでしょう」
「…おおきに」
そう言うと、彼はさっき私がしていたように口許までマフラーを引き上げて、金属バットを肩に担いで行ってしまった。
「いってらっしゃい」
なんで、そんなことを言ったのか自分でもよくわからないが、ヒラヒラと振られた手を見て、「顔が見たいと思ったらいた」という彼の理由が妙にしっくりきた。
私もただ言いたいと思ったら言っていた。息は変わらず白かった。
(思わず都内で雪が振った記念。新作の4が楽しみすぎて「りゅうがごとく」の狂犬組長です。今年初夢文)
ぼそりと零した言葉が息を白く染める。今夜は都心でも雪がちらつくらしく、一段と冷える。その為か、いつもは人で賑わっている、ここ神室町も心なしかひっそりとしている。誰しもこんなに寒い夜は早く帰って暖まりたいと思うのだろう。かくゆう私もその一人だ。今夜は塚本先生と二人鍋と洒落こんで早々に寝てしまいたい。
首に巻いたザックリ編みのマフラーを口許まで引き上げて、手袋で滑るスーパーの袋をギュッと持ち直して、足を早めた。
「あ、」
塚本医院の前まで来ると、冬の寒さも何のそのと言ったいでたちの人物が目に入った。
素肌にパイソン柄の上着を羽織って、金属バットをズルズル引き摺りながら歩く男。いつもはたくさんの取り巻きを引き連れているが、今日は珍しく一人のようだ。
「…こんな寒い中なにしてるんですか」
彼の背中にそっと声をかけると真島吾郎は独眼を細めて「ああ、先生」と関西特有のイントネーションで答えた。その息は私と同じく白い。
「真島さんの恰好、見ているこちらが寒いです」
「先生はいつも以上にモコモコやな」
「今夜は都内でも雪が降るそうですから、私の防寒は至って普通です」
「なるほど。そんで先生は鍋でも食ってさっさと寝てまうつもりやろ」
「い、いけませんか」
「いけなくないで。先生らしいわ」
図星をさされて、おまけにニヤリと笑われて、何だか居心地が悪い。
「…それで、真島さんはこんなところで何してらしたんですか?」
「ん〜、なんやろ?」
「はい?」
「なんや先生の顔見たなって、気ぃついたらここにおった」
「まさか、ずっとここにいたんじゃないですよね?」
「一時間くらいか」
「寒いでしょ!風邪引くじゃないですか!」
思わずである。自分の首に巻いたマフラーを脱いで、寒々しい彼の首もとに乱暴に巻いてやった。他意はない。医者として人間として、当然の反射である。
「ぬくい」
「それだけ冷えてたってことですよ。上がってて下さい。あったかいお茶煎れますから」
「早速のお誘いなんやけど、今日はええわ」
珍しい。断られるとは思っていなかったのでなんだか拍子抜けである。
「お忙しいんですね」
「なんや、がっかりしとるんかいな」
「がっかりなんかしてません」
「そないバッサリ否定せんでも」
がっくし、とわざとらしく肩をおとすものの、全く堪えてはいないようだ。異常なまでのタフさはここでも発揮されている。
「ほな、そろそろ行くわ。襟巻き、」
「邪魔じゃなければ持っていって下さい。お貸しします」
「ええの?」
「ほんの気休めでしょうけどないよりはましでしょう」
「…おおきに」
そう言うと、彼はさっき私がしていたように口許までマフラーを引き上げて、金属バットを肩に担いで行ってしまった。
「いってらっしゃい」
なんで、そんなことを言ったのか自分でもよくわからないが、ヒラヒラと振られた手を見て、「顔が見たいと思ったらいた」という彼の理由が妙にしっくりきた。
私もただ言いたいと思ったら言っていた。息は変わらず白かった。
(思わず都内で雪が振った記念。新作の4が楽しみすぎて「りゅうがごとく」の狂犬組長です。今年初夢文)
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