今帰り道で。 

December 02 [Wed], 2009, 17:12
帰り道に妙なモノを見た。
私の住む町には古い町並みの残る区画がいくつかある。
それらは、どうやら都市計画などで保存を義務付けられたものではなく、ごく自然に、あるいはひどく不自然に、近代的な町並みの裏でひっそりといきづいている。
そこを歩くと変なモノに行き遭う、とよく祖母は私に語っていた。
祖母のいう「変なモノ」が何なのか、私にはあまりよくわからなかった。
不吉なものなのか、それともそうではないのか。よいものなのか、わるいものなのか。祖母は、恐らくそういう評価を一言も口にすることはなかった。
ただ。ただただ、懐かしむような眼差しを。遠くを見通すような優しげな目つきをして。それらのことを、語っていた。
話を戻そう。
帰り道に、時間にとりのこされたような街で、私はひどく奇妙なモノを見た。

薄暮のなか、私は家路を急いでいた。
図書館に寄っていたら、すっかり遅くなってしまった。
辺りはもう薄暗い。その薄暗い街のなかに、ぼう、としろく見える何かがあった。白いものは、大人の拳ほどの大きさをしている。目を凝らすと、どうやら、あちらにふらふら、こちらにふらふらと、実に気ままに動き回っているようだった。鼠か何かだろうか。しかし、鼠ほど素早い動きではない。もう少し――何というか、そう、まるで蟹のような動きをしている。
止まりかけた足を再び動かして、その白い何かに近寄ってみる。沈みかけた太陽は、昼間ほどモノの輪郭を明らかにしてはくれない。
あと一、二歩、というところで足を止めて、じぃ、と目を凝らす。
ひ、と出かけた叫びを呑み込めたのは、我ながら大したものだと思った。

そこには――
そこには、青白い右手がぼとり、と無造作におっこちていた。

朝のこと。 

September 27 [Sun], 2009, 14:01
朝起きたら枕元に小さな人がいた。
視界の中で、短い髪の生えた頭がゆらゆらと揺れている。
縮尺を無視してみれば、普通のおっさんだった。
なんだかいそがしそうにしているので、邪魔をするのも悪い様な気がしてくる。
起きることも開き直って二度寝することもできずに薄目を開けて見ていると、おっさんの形をした小人は、私の枕元を必死で歩き回っている。

ないよう。ないよう。

内容?いや、無いよう、か。
どうも何かを探しているようだ。何がないというんだろうか。

見つからないよう。

おっさんの癖に泣きそうな声を上げている。何が見つからないのだろうか。
気の毒になって、聞いてみた。

――何が見つからないんだ。一緒に探そうか。

びくりとこちらに向けられていた背中が縮こまる。恐る恐るといった感じで、おっさんが振り返る。

――何を探してるんだ。

もう一度そう尋ねると、おっさんは目をまんまるく見開いたまま動きを止めてしまった。

――おい?どうしたんだ。なあ…

少し面白かったのと、急に動きを止めたのが心配だったのとで、突っついてみようと手を伸ばしてみる。
すると。

きゃっ。

といっておっさんは3センチほども飛び上がったかと思うと、目にもとまらぬ速さでベッドと壁の隙間へと落ちて行った。

やってしまった。
どうやら怖がらせてしまったらしい。
体を起こして僅かな暗闇を覗き込んでみるが、おっさんの姿は認められなかった。
こまったなあ。ゴキブリと間違えて潰さないといいんだけど。
とはいえ、網で捕まえるわけにもいかない。
取り敢えず朝飯をこしらえてから考えようと思って、私はベッドから立ち上がった。

もしかしたらご飯のにおいに連れられて出てくるかもしれない。
P R
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