Brownlee (2012 forthcoming)

2012年02月29日(水) 0時22分

Jason Brownlee, Democracy Prevention: The Politics of the U.S.-Egyptian Alliance (Cambridge: Cambridge University Press, 2012 forthcoming)


版元情報はここを参照.


「エジプトの権威主義体制が米国の「援助」を受けて,いかに存続してきたのか」という問題に着目する一冊.

本書の洞察には,

エジプトの同時代史,

開発援助,

ひいては,

権威主義体制の国内政治に対する外的アクターの役割など,

様々な論点への貢献が期待できる.



………………

修士のころから私淑し続けている

Jason Brownlee の新刊(新作)につき,

いかなる内容であれ,

個人的に興味津々.


村田(2012)

2012年02月28日(火) 0時21分

村田奈々子 『物語・近現代ギリシャの歴史:独立戦争からユーロ危機まで』(中公新書2152,東京:中央公論新社,2012)


版元情報はここを参照.


折に触れて刊行される中公新書の『物語○○の歴史』シリーズに,近現代のギリシャ.

 本書は,1821年の独立戦争(第1章)から,1920年代までの領土拡大の流れ(第2章),言語問題(第3章),戦間期のギリシャ政治(第4章),第2次世界大戦中とその後(第5章),移民とキプロス分断(第6章),までを歴史的に論じ,1980年代以降の政治的展開(終章)にも触れる.

 ギリシャと言えば「古代ギリシャ」ばかりが注目されがちだった中で,本書の着眼点は貴重である.とはいえ,願わくば近現代だけではなく,ギリシャ政治学者が第2次世界大戦後のギリシャ政治経済史から現在の政治的騒擾の流れを体系的かつ詳細に論じた新書も読んでみたくなります(…本書では,2011年末のギリシャの騒擾を踏まえて慌てて終章を追加したかのような印象を受けたもので).




山内(2012b)

2012年02月27日(月) 0時08分

山内昌之 『中東・新秩序の形成:「アラブの春」を超えて』(NHK books 1188,東京:NHK出版)


版元情報はここを参照.


今後の中東地域の政治力学の変容を見通す一冊.

 本書は,「中東の民主化変動と新たな秩序形成の意味を,世界史,ことに国際関係史の上で考えようとする試み」(p.5)として,チュニジア,エジプト,リビア,シリア,イエメン,バーレーン,オマーン,サウジアラビア,イラン,トルコという中東地域各国の様々な状況を渉猟するとともに,アメリカの対中東関係や日本の対中東外交にも注意を払う.



民主主義への移行に向けた何らかの転換があるにせよ,

従来のような権威主義体制が新たに生じつつあるにせよ,

変化の只中の中東地域,

そんな中東地域がどんどんおもしろい.



[関連記事]
山内(2012)」(2012年2月18日)

………………

個人的には,

本書のような概説書から何かしらの「通説」を見出して,

それを理論的・実証的に反証したいと思ってみたりします.

こうした営為こそが比較政治学者(のたまご)の仕事だと思っております.


松原(2012)

2012年02月26日(日) 0時13分

松原隆彦 『宇宙に外側はあるか』(光文社新書564,東京:光文社,2012)


版元情報はここを参照.


宇宙論の知見を平易に紹介する一冊.

 本書は,初期の宇宙,宇宙の始まり,宇宙の形,宇宙を満たすもの,宇宙の外側などなど,宇宙論の様々な問いに答えようとする.とりわけ,「宇宙に関する一般書の中には,確実にわかっていることと,まだ仮説にすぎない憶測とが,紛らわしく書かれている場合」もあることを考慮し,「すでに確立した理論と憶測を含んだ仮説とが明確に区別できるよう」心掛けているという(pp.9-10).

 また,著者は本書の末尾に「宇宙論の十大疑問」として以下の問いを掲げる(pp.253-254).

  @何がこの宇宙を始めたのか
  Aインフレーションは本当に起きたのか
  B時間と空間の本質とは何か
  C宇宙にはなぜ構造があるのか
  D宇宙全体に量子論の原理を適用できるのか
  Eダークマターの正体は何か
  Fダークエネルギーの正体は何か
  G人間原理に意味はあるのか
  Hこの宇宙の他にも宇宙が存在するのか
  I二元は親の宇宙の姿を理解できるのか

素人目には,生きてる間にこれらの問いの全てに答えが出るとは思えませんが,それでも今後の宇宙論の観測的・実証的・理論的な展開に興味津々.


池上(2012)

2012年02月25日(土) 23時54分

池上英洋 『西洋美術史入門』(ちくまプリマー新書174,東京:筑摩書房,2012)


版元情報はここを参照.


図解も満載な西洋美術史の概説.

 「美術史とはなにか」.本書は,美術史を「なぜそのような作品がその時代にその地域で描かれたのか」や「なぜそのような様式がその時代にその地域で流行したのか」(p.14)を思考する学問として位置付けた上で,美術史における「絵の読み方」(学問としてのアプローチ),絵画と社会との関係(文脈),絵画のジャンルを論じ,これらを踏まえて実際の美術史の流れを概説していく.


美術関連の新書や文庫は,

何年か置きに読んでみたくなるときがやってきます.


湊(2011)

2012年02月24日(金) 0時18分

湊一樹 「書評論文:分析・解釈・エンサイクロペディア:広瀬祟子・北川将之・三輪博樹編著『インド民主主義の発展と現実』を読む」『アジア経済』第52巻第12号(2011) pp.31-49


一見すると挑発的だが,研究分野の成熟と発展を求める研究者の健全な姿を鮮やかに示す書評論文.


 本稿は,『インド民主主義の発展と現実』に多数存在するという「看過することのできない重大な問題」(p.31)を指摘し,それを踏まえて,分析と解釈の妥当性を高めるための注意点として,以下の4つを提示する(pp.44-45).

@「分析を行ったうえでその結論から何らかの解釈を導き出そうとする場
  合,一足飛びに結論にたどり着こうとするのではなく,ひとつひとつ
  のステップが客観的にみて妥当なものであるかどうかを慎重に検討す
  る」
A「取り組む研究課題に応じて柔軟にさまざまなアプローチを組み合わせ
  るという『トライアンギュレーション』の発想をもつ」
B「複数の対象を類型化したうえでそれらを比較することを通して因果関
  係を明らかにしようとする比較分析の可能性を常に考慮に入れるべ
  き」
C「その意味するところをよく吟味しないまま,『大文字』言葉に安易に
  頼るのは絶対に避けるべき」


 本稿で展開される議論には,比較政治学のディシプリンに基づいて適切に先行研究に異議を申し立て,その結果としてインド政治研究の発展を促すという,学問の健全な姿を見て取ることができる.上記の4つの注意点の明快さも相俟って,この書評論文は,比較政治学者を志す学部生や大学院生にとって必読の論文の1つになるかもしれない.



浜中(2011)

2012年02月23日(木) 1時53分

浜中新吾 「ハイブリッド型権威主義体制の与党支持構造:エジプト・シリアの比較分析」『アジア経済』第52巻第12号(2011) pp.2-30


権威主義体制下の与党に新たな光明を投じる一編.

 権威主義体制研究において,他の類型と比べて最も長く存続しうると実証された「ハイブリッド型権威主義体制」(軍部支配・一党支配・個人支配の混合型).エジプトとシリアは同じくこの類型に分類されているにもかかわらず,2011年初頭にエジプトのムバーラク政権が崩壊の憂き目に会ったのに対して,シリアのアサド政権は盤石に権力を維持し続けている.このような違いが生じるのはなぜか?

 著者は,与党の支持構造の違いに着目し,エジプトとシリアで一般国民からの支持の調達に違いが生じていたことを世論調査の結果に基づいて実証する.とりわけ,与党への支持態度を従属変数とし,与党への支持要因として,@パトロネージ(利益誘導),A社会問題の認識(汚職や格差是正に対する認識など),B情報操作(情報依存など),C安定志向(政治的安定の重視),Dイデオロギー(アラブ民族主義・国民主義・イスラーム主義)を,独立変数として分析を行なう.

 ロジスティック回帰分析の結果,シリアの与党が,@・A・B・C・Dの全ての変数で有意な効果を示し,盤石な支持構造を維持していたのに対し,エジプトの与党は,@とBで有意な効果を示しただけであり,世論調査が行われた2008年の時点ですでに支持構造の「腐食」(p.22)を露呈していたことを明らかにした.



 本稿の議論は,「権威主義体制下の与党には一般国民からの支持調達が重要である」と論じるだけではなく,その支持調達の手段を細分化し,その違い(あるいは手段の多寡)が与党の脆弱性に影響を与えていると指摘したという点で非常に重要である.

 しかし,分析上,気になるところがないわけではない.重箱の隅を突いているとの謗りを受けるかもしれないが,2点だけ挙げてみたい.

 @「ハイブリッド型権威主義体制」と銘打っているにもかかわらず,軍部支配・一党支配・個人支配の組み合わせに基づく要因ではなく,与党だけにしか着目していない.与党の支持構造だけに着目するのであれば,それは一党支配型の権威主義体制に関する分析と言われても差支えがなくなってしまう.加えて,Geddes (1999) は当初,この「ハイブリッド型」(三種混合型)を軍部支配型・一党支配型・個人支配型の枠に収まらない残余範疇として消極的に分類しただけであった.本稿のように,その「ハイブリッド型」の体制に積極的な分析的意義を見出そうとするのであれば,与党・軍部・支配者個人の組み合わせ(とその事例間の相違)がいかに体制存続・崩壊に影響を与えているのかを明らかにすることが望ましいかもしれない.

 例えば,Dan Slater (2010) は,同じく「ハイブリッド型」として分類されているスハルト政権下のインドネシアを取り上げる.曰く,スハルトは「軍部と文民の組織を曖昧な均衡に位置付け,その上で自分が唯一の支配者として君臨した」という.つまり,スハルト(個人支配)は,軍(軍部支配)とゴルカル(一党支配)のそれぞれの組織や制度をうまく使い分け,その制度の複雑な状況によって政権への支持の均衡を図ったと論じるのである.分析対象として「ハイブリッド型」を銘打つならば,このように単なる一党型の権威主義体制には見られない三種混合の「ハイブリッド型」特有の要因に着目する必要があるかもしれない.

 A一般国民からの支持構造の不備によって与党の脆弱性が高まったとしても,それがそのまま体制崩壊の蓋然性の高さにつながるわけではない.すなわち,本稿の議論は,実証分析の項で提示される「支持構造の少なさ」→「与党の脆弱性の高さ」という因果関係と,問題意識や考察の項で提示される「支持構造の少なさ」→「与党の脆弱性の高さ」→「体制崩壊の蓋然性の高さ」という因果関係を混同しているきらいがある.

 データ収集上,非常に困難であるかもしれないが,望むらくは,与党と体制全体の関係を一足飛びに済ますのではなく,「与党の脆弱性の高さ」→「体制崩壊の蓋然性の高さ」という因果関係か,「与党への支持構造の少なさ」→「体制崩壊の蓋然性の高さ」という因果関係を分析対象とした実証分析が求められるだろう.そのためには,「ハイブリッド型」だけではなく一党支配型の権威主義体制全体を母集団にし,体制崩壊の有無を従属変数にし,本稿で提示した複数の「与党への支持要因」を独立変数とした国家横断的な分析が必要となるであろう.


もちろん,これらの疑問点は,本稿の議論の欠点というよりも,本稿の議論を踏まえた今後の論点である.



[参考文献]
Barbara Geddes, "Authoritarian Breakdown: Empirical Test of a Game Theoretic Argument" (Paper prepared for presentation at the annual meeting of the American Political Science Association, Atlanta, 1999)

Dan Slater, "Altering Authoritarianism: Institutional Complexity and Autocratic Agency in Indonesia" in James Mahoney & Kathleen Thelen eds., Explaining Institutional Change: Ambiguity, Agency and Power (Cambridge: Cambridge University Press, 2010)


………(最後に極めて個人的な一言)………

注(1)で,

私の論文が引用されておりました.

ありがたいことでございます.


「新時代の模索:エジプト革命1年」.

2012年02月21日(火) 0時38分

「新時代の模索:エジプト革命1年」
                2012年1月30-2月9日・朝日新聞夕刊


「1月25日革命」1周年を迎えたエジプトの動向を伝える計8回の連載.

@では,「エジプト潮流党」を結成し,ムスリム同胞団からの除名を余儀なくされ,「革命継続連合」の一員として選挙に参加しながらも,落選を喫してしまう若者の蹉跌を取り上げる.

Aでは,人民議会選挙後の女性議員の少なさと,その中で当選した女性議員の選挙活動について触れる.

Bでは,「ムバラク打倒」から「軍政打倒」へと主張を変えながら,あくまでもデモ活動を続ける若者に着目する.

Cでは,軍事政権が女性活動家に対して行なってきた「処女検査」に対して,人権侵害との批判が高まっている現状を明らかにする.

Dでは,自由公正党との選挙連合によって議席を獲得したカラマ党議員を一例にして,ムスリム同胞団の草の根の支持基盤について論じる.

Eでは,アズハルの内部改革の試みとその頓挫,さらに,ある種の現状維持を求めるような法案が人民議会開会前に成立したことを伝える.

Fでは,政権崩壊後の観光業の現状,古代エジプトの「多神教」を論難するサラフィー(急進イスラーム主義)勢力への観光業者の困惑を取り上げる.

Gでは,風刺の効いた漫画雑誌『トゥクトゥク』の執筆に情熱を傾ける若者たちの動きに注目する.



エジプトの流動的な状況は,

まだまだ留まることを知りません….


ソーカル&ブリクモン(2012)

2012年02月19日(日) 0時12分

アラン・ソーカル&ジャン・ブリクモン 『「知」の欺瞞:ポストモダン思想における科学の濫用』(翻訳:田崎晴明・大野克嗣・堀茂樹)(岩波現代文庫G261,東京:岩波書店,2012)


版元情報はここを参照.


人文学における科学用語の濫用に対して極めて真っ当な猛省を促す一冊.

 それらしい言葉で飾り立てられた人文学の衒学的な「議論」の虚飾を暴こうとする試み.本書は,1990年代中頃の「ソーカル事件」という「悪戯」(p.iv)を端緒に始まったこの試みを発展させ,物理学と数学の立場から,現代思想や哲学におけるラカン,クリステヴァ,イリガライ,ラトゥール,ボードリヤール,ドゥルーズ,ガタリ,ヴィリリオのそれぞれの「議論」に氾濫している科学用語の濫用をつぶさに取り上げ,その問題点を指摘していく.

著者たちは科学用語の濫用を次の4点で特徴付ける(pp.7-8).


 @どう見てもごく漠然としか理解していない科学の理論を長々とあげつ
  らう
 A自然科学の概念を,概念的なあるいは経験的な正当化を少しも行なわ
  ずに,人文科学や社会科学に持ち込む
 Bまったく無関係な文脈に,恥もなく専門用語を投入して,皮相な博学
  ぶりを誇示する
 C実際にはまったく意味のない言葉や文章をもてあそぶ


 「日本語版への序文」でも書かれているように,刊行当時,こうした試みに対する反論や(情緒的・感情的な)反発はかなり強かったようであるが,特定の専門用語を他分野に援用するときに慎重さと正確さを求める著者たちの主張は真っ当である.とりわけ,エピローグ(esp. pp.275-281)において,著者たちは,科学の濫用に関して以下のような教訓を導き出している.


 @自分が何を言っているか分かっているのはいいことだ
 A不明瞭なものが全て深遠なわけではない
 B科学は「テクスト」ではない
 C自然科学の猿真似はやめよう
 D権威を笠に着た議論には気をつけよう
 E個別的な懐疑と極端な懐疑主義を混同してはならない
 F曖昧さは逃げ道なのだ


 こうした科学用語の濫用への注意は,ある面では比較政治学(政治科学)においても他人事ではない.方法論や理論において科学哲学への配慮が求められることはもちろんであるが,(歴史的制度論者と定性的方法論者の一部が陥ってしまったように)複雑系・経路依存性・進化などの科学用語を用いる積極的な意義を明確に示さないまま,そうした用語を安直に用いてしまうことは,研究分野の発展に無用の混乱を招いてしまいかねない.上述のBの教訓と関連付ければ,「〔科学における〕言葉をメタファーとしてだけ用いると,容易に無意味な結論を下すことになってしまう」(p.277)のである.比較政治学の理論の発展を目指し,メタファーとして科学用語などの何らかの概念を用いるのであれば,まさしく「自分が何を言っているか分かっている」ことが求められるであろう(自戒の念を込めながら).



山内(2012)

2012年02月18日(土) 0時34分

山内昌之 『帝国とナショナリズム』(岩波現代文庫G262,東京:岩波書店,2012)


版元情報はここを参照.


『帝国と国民』の抄録の文庫化に「アラブの春」にまつわる37ページに及ぶ書き下ろしの論考を加えた一冊.

 著者は本書を「歴史を通して帝国の解体プロセスを分析しながら,そこに新たに姿を現した国家や国民の担うことになった歴史の重みを理解しようとした試み」(p.vii)であるとして,20世紀以降の様々な地域の「帝国」の顛末を渉猟していく.



……………

「結局は自分の研究には直接関係ないかも」

…なんてことを思いながらも,

その問題関心の広さに感銘を受けたくて,

山内氏の文庫や単行本をいつも購入してしまうのです.



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