盗まれた手紙 2012

January 21 [Sat], 2012, 12:33
何の用意もなしに、ミステリが書けるだろうか。
という無謀なチャレンジ。
トリックを考えるのに使った時間は、約20分でした。
で、ここからスタートです。
現在22時13分。
では執筆開始。
というのは去年の7月です。
後半23を、さっき仕上げました。
半年放っておいたトリックを思い出すのが大変でした笑では、完成版スタートショートショート盗まれた手紙2012私立探偵というのは、警察とはちがう。
社会正義のために働くわけではない。
ただ依頼者のために尽くすのである。
依頼者が持ち込むトラブルは、簡単なものばかりとは言い難い。
しかし、今度ばかりはあっけなく解決できた。
不思議に思うだろうが、これも偶然のなせる業である。
というわけなんですその依頼者は明らかに困っている様子であった。
決して演技ではないということは、長年のカンというか、人間観察の結果として、オレにはよくわかる。
それで、私に何をしろとおっしゃるのですかな手紙を取り返していただきたい。
ただ、それだけなのです依頼とは簡単に言えば、重大な秘密を書いた手紙が盗まれた。
これを取り返して欲しいということである。
どのように盗まれたのか、何かわかっている事情はありますかそれがですね依頼者は小さな会社を経営しているとのことで、商談のための手紙を相手先企業と取り交わしたのだという。
ところが、その手紙には、相手先の企業秘密が書かれていた。
あくまで取引先として情報を好意的に教えてもらったのだから、これを外部に漏らすことは商道徳上、重大な裏切りになる。
まかりまちがえば、相手先企業の株価に大きな影響を与えかねない。
その程度には重大な秘密であるという。
その手紙をこともあろうに、スーツのポケットに入れて出かけたところ、見事にスリ取られた。
もちろん、スリを追いかけたのだが、相手が某大型書店に逃げ込んで見失ってしまった。
やっと捕まえて、手紙を返せと言ったら、もう手紙はないとシラを切られた。
手紙が欲しければ書店の中を探しな。
どこかの本のページの間にでもあるさと言って逃げられたのだという。
それで、どうしました私は書店に入って闇奄、いろんな本をめくってみました。
でも大型書店だけに本が多すぎて、やつがどの本に手紙をはさんだのか、まったく見当もつかなかったんですふむ。
そもそもそんなに重要な手紙を、ポケットに入れて持ち歩くこと自体が不見識ですな。
いや、これは失礼いいえ。
私が気軽に考えすぎたのです。
反省しなくてはあなたはこれまで、商売上一度も失敗をした経験がないのでしょうはい。
どうしてそんなことが手紙のことと言い、あなたは油断のしすぎですな。
そのポケットの札は何ですかなえあ、あぁ。
そうです。
これが良くないんです。
何と申し上げたら背広の内側を一瞬ちらっと見て、依頼者はあわててボタンをかけ直した。
札束を輪ゴムで束ねてポケットに無造作につっこんでいたのである。
商売の欲はあっても、事務的なことについては実にルーズな性格なのだろう。
これでは手紙をスラれるのも無理はない。
で、何とかならないでしょうか。
手紙がもし人手に渡ったら私はよろしい。
とりあえず、あなたの会社のライバルになる会社があれば、教えていただけますかはなるほど、ライバル社の仕業だとわかりました。
心当たりはありますでは、今日はこれでお帰りください。
結果が出たら会社に電話を入れますたったそれだけでいいのかと、依頼者は不審がったようだが、わりと素直に帰っていった。
数社の社名を書いたメモを手にして、さっそく行動開始だ。
社長の名前まで、ご丁寧に書いてある。
実に好都合だ。
それにしても大した会社でもあるまいに、そんなにお互いをライバルと考えているのか事件なんかより、そっちの方がずっと不可解だ。
わずか1時間後。
もしもし、株式会社。
え、社長ですか今つなぎます電話の向こうから取り次ぐ声が聞こえる。
この程度で保留音もなしに社長が出てきたら、それこそ会社の規模がわかろうというものだ。
、もしもし。
そうです。
えっ見つかったそうですか、すぐに伺います事情も聞かずに切られた。
もちろんその声は、先の依頼者にまちがいない。
オレはこの会社と社長の行く末が心配になってきた。
手紙の件がなくても、遅かれ早かれ。
ずいぶん早い解決でまことにありがとうございます。
間違いございません。
確かにこれです。
一体どこにありました詳しいことは企業秘密です。
とにかく手紙を取り戻せばいいわけでしょう私にも探偵として、商売のネタを明かしたくはありませんからな、ごもっともです。
では、謝礼をオレは早期解決のボーナスの意味も含めて、値段を吹っかけてやった。
わかりました。
それではこれでポケットから輪ゴムごと札束を取りだしてきたのにはまいった。
この社長、全然反省の色がない。
少しは行動で示せばよいのに。
さて、話はこれで終わりだが、読者はそれでは不満だろう。
手紙がどこにあったのかを明かさねばなるまい。
まず、手紙は確かに書店の本の間にはさんであった。
では、オレがどうやって本を特定できたか。
大型書店の本をしらみつぶしに探そうなどととんでもない企てをしたわけではない。
簡単だ。
ライバル企業の社長の名前で、店内の本を検索したのだ。
レシートのような感熱紙を切り取って、その該当するフロアに行き、たった2社目の社長の著書にはさんであった。
それだけのことである。
スリは、正確には産業スパイは、こう考えたのであろう。
自分が去ったあとで、手紙が見つからないようにして、しかも後から来たスパイの依頼企業の社長が、確実に手紙を受け取れるようにするには、どうしたらいいか。
その社長の著書にはさめばいいのである。
あなたの本にはさみましたそう言えば済むのである。
ライバルの社長にとっては自分の本だ。
書店でみつけるのはわけもない。
え見つける前に、その本を第三者に買われたらどうするのかってそんな心配はいらない。
その素股本は自主出版である。
確認はしていないが、多分そうである。
小さな会社を作って成功した成金には、そういう自慢をしたがる人間はいる。
商売の成功談や苦労話を本にしたところで、そんな本を欲しがる人間は果たしているのかいない、と踏んだからこそ、スパイは隠したのである。
ずいぶん見くびられたものだ。
オレとしては、依頼者の会社も、ライバル社も、この際利用させてもらうかな。
依頼者の会社も長くはあるまい。
電話をかけよう。
もちろんライバル社の方へ。
もしもし。
社長をお願いしたい。
耳寄りな情報があるんですがね事務所に帰る前にコンビニで取っておいた手紙のコピーを手に、オレはライバル企業の社長と商談を始めた。
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:q5l7ju6pwb
読者になる
2012年01月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
最新コメント
Yapme!一覧
読者になる
P R
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
http://yaplog.jp/q5l7ju6pwb/index1_0.rdf