今回のiPadに関しては入手のために試行錯誤を重ねたことも、ましてや初代iPhoneのときのように1日がかりで並んだなんてこともなく、ほとんど苦労もなく至ってスムーズに購入できた。
【動画:販売が始まったApple Storeの様子】 【拡大画像や他の画像】 というのも、今回のiPadでAppleは予約制をしいており、事前予約さえしておけば当日に簡単に入手できたわけだ。なので今回は、予約開始から当日までの現地の様子をご紹介する形で、購入までの状況をリポートしていこう。
AppleがiPadの発売予定日を発表したのは3月5日だ。それまでWi-Fi版がスペシャルイベント開催の1月27日から60日以内、3G版が90日以内とされてきたが、4月3日というほぼ60日きっかりでの提供が正式に決定したことになる。ここで判明したのは最初に提供されるのは米国のみで、3月12日より事前予約を開始するということが伝えられた。
購入方法は「Pre-order」と呼ばれるオンラインストア経由での事前注文と、「Reserve and Pick-up」というApple Store店舗での取り置きの2種類が指定されている。iPadについては事前にアナリストらによって製造委託メーカーであるFoxconnでの製造トラブルが伝えられており、当初米国のみでの提供となったのも、こうしたトラブルを背景にしたものである可能性が高かった。ゆえに4月3日に確実に入手するためには、いずれかの方法を選択しなければならなかった。オンラインストアでの配送はトラブルによる遅延の可能性もあるため、今回はすばやく入手するべく後者の予約での取り置きを選択することにした。
そして3月12日、予告通りオンラインでの予約受付がスタートした。確実に入手するため、ニューヨーク等のある米東海岸時間(EST)で12日に日付が変わる瞬間を狙って予約を入れようと待っていたが、AppleのWebサイトには何も変化もなく、その日は諦めてそのまま寝てしまった。だが予約自体は同日の早朝8時(EST)からスタートしていたようで、筆者がベースとするサンフランシスコの西海岸時間(PST)ではまだ夜明け前。開始から4時間遅れほどで予約プロセスを済ませたが、特に何の問題もなしに終了。確認メールも無事に届いたため、これで「iPadを確実に〜」が終了してしまった。
これだけだとつまらないので、ちょっとだけ後日談を加えておこう。あとで同業者らとの話をしていたところ、すでに3日目の時点で「4月3日の購入は難しいのでは?」という意見が出ていた。だがこれは間違いだったようで、3月末の時点でPre-orderでの届け予定日がはじめて4月12日に変化し、予約開始から2週間が経過するまで4月3日当日での配送が確約されていたようだ。だが予約が少なかったのかというと、そんなわけでもなく、アマチュアの投資家集団らによる予約状況の事前予測では、1週間経過時点でのPre-orderの台数が20万に達しており、関係者からのコメントで、それ以外の店舗取り置き分でさらに15万台近くが確保されているという話が伝わっていた。計40万台近くが1週間で売れていたわけで、発売日当日には少なくともそれ以上の台数が用意されていた可能性が高い。結局、Appleが商品を潤沢に用意していたことは当日分かることになるのだが……。
●発売日前日の行列リポート……のはずが、サンフランシスコは人影もなく
予約完了から2週間ほどイベント取材で米国じゅうを徘徊した後、サンフランシスコへと戻ってきた。そしてiPad購入に向けて準備していたところ、Appleから当日の販売方法についてアナウンスが正式に行われた。iPadの販売はApple Storeだけでなく、同社認定販売業者、そして大手家電小売りチェーンのBest Buyでの販売が行われることが明らかにされた。この日Apple Storeのサンフランシスコ店に顔を出してみると、今までになかった4月3日発売を予告する“のぼり”が入り口に立っていた。
店員によれば、すでに予約リストが準備されているとのことで、当日は身分証とクレジットカード(または現金)を持ってくるだけで購入可能だという。午前9時のオープンから午後3時の取り置き終了まで6時間あるので、購入するのは明らかに余裕。以前のように早朝からは並ばず「開店1時間前の午前8時くらいに顔を出せばいいや」程度に考えていた。「今回は行列をゆっくり取材しよう」などとプランを練りつつ、Appleから新たに発表された販売店舗のBest Buyにリサーチに行ってみることにした。
サンフランシスコ市内には2つのBest Buy店舗がある。そのうちの1つ、丘の高台にある店舗に行って店員に話を聞いたところ、今回のiPad販売の件について何も連絡を受けていないという。直前まで指導が行われない可能性も考えたため、数日後にもう1つのフリーウェイ沿いの店舗に行ったところ、こちらは発売直前だけあって詳しい話を聞くことができた。それによれば、同店舗に用意される端末はわずか5台であり、次の入荷予定も不明だという。前述のApple Online Storeの予約日の変化を考えれば、4月12日に改めて入荷する可能性はあるが、わずか5台では開店前の行列で一瞬でなくなってしまうため、選択肢としては論外だ。おそらく、予約がなくてもApple Storeの店舗に並んだほうが入手が容易だろう。
そうして発売日前日の2日となったわけだが、なんとこの日のサンフランシスコは大雨。外出もままならないレベルで、雨が止む夕方過ぎまで1日大人しくしていることにした。本当は徹夜組がいないかどうか行列をチェックしようとしていたのだが、「この雨では行列なんてないだろう」と考えて……。実際、最初の行列はサンフランシスコ店で20時過ぎにできたようで、しかもわずか3人だけ。「数日前から張り付くファンのいた米ニューヨークの5番街店に比べれば、西海岸は随分とおおらかだな」などと思いつつ、しばらく様子を観察することにした。
夜になると若干人が集まってきて、賑やかになっている。だが人数はほとんど増えておらず、行列組の1人が持ってきたタブレット端末「JooJoo」を手にまわりの人間が談笑しているだけだった。形状が似ていたせいもあり、JooJooをiPadと勘違いして近付いてくる野次馬も多かったようだ。しばらくすると、宣伝を兼ねて炭酸ジュースを配りに来るお姉さんが出現した。Appleファンとの会話に楽しく参加している。話によれば、サンフランシスコ市内にあるほかのApple Store店舗をいくつかまわってきたが、どこも行列どころか人っ子一人おらず、宣伝キャンペーンが行えず空振りだったという。
さすがに事前予約が徹底していただけあって、今回は以前のiPhoneのような行列は期待できなさそうだと思い、素直に部屋に戻って寝ることにした。部屋に戻ると同業者のY氏からのメッセージが残っていたので携帯に電話してみると、Apple本社にほど近いApple Storeパロアルト店舗からの様子を教えてくれた。なんとそちらはすでに20名以上がテントを張って野営しており、深夜1時からバーベキュー大会まで開催する予定だという。街の中心部の道ばたで深夜のバーベキュー宴会とは迷惑きわまりない気もするが、それはそれで楽しそうだ。この店舗はシリコンバレー中心部だけあって著名人が多数集まることで知られており、Apple共同創業者のSteve Wozniak氏がよく遊びに来るほか、CEOのSteve Jobs氏がiPhone発売日に視察に来たことが話題になっている場所でもある。
●恒例の発売前行列と怪しい集団たち
さて当日の朝、作戦としては朝一でBest Buy店舗の様子をチェックし、それからゆっくりと取り置き予約をしてある店舗に並ぶつもりだった。ところがBest Buy店舗に行く前にちょっとApple Storeのチェックをしようと午前7時ごろに顔を出してみると、なんとすでに大行列がそこにはあった。ざっと目視で60〜70人程度。行列は予約組と、それ以外の予約なし組の2列に分かれており、予約組の列だけで50人くらいはすでにいた。Best Buy店舗に行って帰ってくると軽く1時間はかかるため、行列は倍以上になっている可能性があり、入手時間もかなりかかりそうだ。なので予定を急きょ変更し、すぐに並ぶことにした。
とはいえ、2時間程度の待ち行列であればiPhoneの12時間行列を経験した身からすればたいした苦ではない。行列はあっという間に伸びて交差点に差し掛かり、並んでから15分後にはすでに最後尾は見えなくなっていた。このころになると、例によって各社の宣伝マンが出現して、チラシやグッズを配り始める。
以前のiPhoneのときと違うのは、宣伝の多くがiPadにリンクしていたことだ。例えば、セグウェイで宣伝ビデオを流していたUSA Todayは、iPad用の専用リーダーアプリの配布を行っている。宣伝マンによれば、こうしたキャンペーンはサンフランシスコのほか、ニューヨークとシカゴでも行っていたという(筆者が行列に並んだ時点で、時差の関係ですでに両都市ではiPadの販売が開始されている)。恒例のApple Storeスタッフによる食糧配給も始まり、朝食抜きで行列に混じった筆者の空腹も満たされた。こうした和気あいあいとした雰囲気は米国ならではだ。
午前9時のオープン1時間前になると、報道陣や野次馬が増えてきた。周囲ではあちこちでカメラマンの撮影やコメント取得風景が見受けられる。筆者も知り合いの記者と挨拶して、「報道関係者がすごく多いね」などと話したりしていた。このように現場に報道陣が多すぎると、たまに知らずに同業者に対してコメントをとってしまうこともある。以前のiPhone発売のときは、知らずに近付いてきたロイター通信やCNNに筆者もコメントをとられたことがある。
こうした取材風景自体は見慣れた光景だが、以前と異なる点がいくつかある。1つはいわゆる大手メディアの取材だけではなく、ブロガーを名乗る人物らが行列に対してビデオカメラをまわし、独自取材を行っていたことだ。もう1点は取材機材で、いわゆる本格的なデジタル一眼カメラや業務用ビデオカメラではなく、Webアップロードが容易な小型カメラやiPhoneで写真や動画を撮影している関係者や野次馬が多数いたことだ。そもそも発売前で、iPhoneが存在していなかった以前の行列では見られない光景で、時代の変化を感じさせる。
●大行列をスムーズにさばくApple Store、在庫状況は……
今回は行列が作られていた時間も短く、Apple Store側も統率がきちんととれているため、定期的な交通整理のような指導は特になかった。午前9時になると急に行列の前方が騒がしくなり、無事に店舗がオープンした様子が伝わってくる。店舗まで30〜40メートル以上離れた位置にいるため、残念ながら何が起こっているのか詳細までは分からないのだが、最大ズームでカメラを上方から構えて様子を観察することにした。人や報道陣のカメラの構え方から、かろうじて最初の購入者が出てきたことだけは分かった感じだ。近付くことに大歓声が聞こえてくるようになり、スタッフが総出で購入者に拍手喝采している様子が伝わってくる。
さすがに大行列のさばき方にも慣れていたようで、ものの10分しないうちに筆者も店舗内に入ることができた。事前にリスト化していたようで、入り口のスタッフがiPhoneを使って筆者の名前を検索すると、予約機種や台数等が一覧になって表示されていた。購入者1人に対して1人のスタッフが充てられ、予約機種のピックアップからアクセサリの購入アドバイス、実際の決済、セットアップまで、全部面倒を見てくれる。
以前はレジ前に行列ができてなかなか人が減らなかったのだが、いまではスタッフ全員がクレジットカードリーダー付きの専用iPhone端末を持っておりすぐに決済できるため、スムーズに人が流れているようだ。このあたりも時代の変化を感じさせる。なお、ここで依頼するとアクティベーションから最低限のセットアップまで店舗スタッフが行ってくれる。その場で利用可能になるので親切だ。実際、セットアップ完了後に店舗内にとどまってiPadをずっと操作している人もいる(Apple Store内には無料無線LANが完備されている)。
なお、これは後で分かったことなのだが、当日の在庫は潤沢にあったようで、サンフランシスコ店では午後3時を過ぎても“行列に並ばず”にiPadを購入できたようだ。オープン時にあったもう1つの予約なしの列はすでに消滅しており、後から来た人も続々と商品を購入して店舗から出てくる。前述のBest Buyや予約状況のタイトさに比べて、驚くほどあっけなく購入できることに驚きだ。供給不足が指摘されていたiPadだが、4月末の日本での発売も思った以上に入手が容易かもしれない。
以上、ざっと3月の予約開始から当日発売までの購入風景を紹介した。パッケージの開封からセットアップ、実際の使用感については、追ってリポートしていく。【鈴木淳也】
【4月5日10時33分配信
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