もみあげを自由自在に操れる男
2007年05月27日(日) 15時09分
俺の名前は鈴木圭壱。俺はもみあげを自由自在に操れる能力を持っている。
実はこの能力、以外に役に立つ。勿論人前で使えないから一人の時だけだが。
例えば、両手が塞がっている時に鼻の頭を掻いたり、携帯を掛ける時にもみあげで持ったり。
他の人が聞いたらしょうもない事かも知れないが、あればあるで結構重宝していた。
しかし、三年前からその能力はつかっていない。何故なら学生の時の就職活動で切り落としたのである。ロン毛とともにその便利な能力ともお別れをしたのだ。そのおかげか、銀行にも就職出来、今は安定した生活を送りっていた。元々あったら便利程度だったので、普段の生活に支障が出るような事もなかった。
そんなごく平凡な毎日に突然事件が起こった。
「金をだせ!」
銃を持った銀行強盗だ。
目の前に銃を突きつけられているというのに、俺はあまりに突然の出来事に動けなかった。
「何をボサッとしてんだ!早くしろ!」
「は、はいっ!」
俺は急いで現金を袋に詰め込み始めた。
俺がすぐに動けなかったのには訳があった。
それは、銃を四丁も持っていたからだ。
両手と…もみあげに。
銃を突きつけられるだけでも普通は動けなくなるはず。しかもそれが、自分以外にもみあげを操れる男によってだったら尚更だ。
俺がモタモタしていたせいなのか、誰かが通報するのが早かったか分からないが、銀行はあっという間に警察に包囲されていた。
『犯人に告ぐ、人質を解放し、おとなしく投降しろ!』
「うるせー!逃走用の車を用意しろ!早くしねぇと人質を殺す!」
シャッターは全て下ろされ、中の様子は外からは分からなくなってしまった。
強盗が入ってから13時間は経とうとしている。
その間にも警察の説得により、一般客は解放されたが、俺たち行員男女合わせて11人は以前人質のまま。完全な膠着状態というやつだ。
精神的にも肉体的にも限界が来ていた。
「…鈴木くん」
小声で名前を呼ばれた。上司の小宮さんだ。俺は、定年も近いのにこんな事件に巻き込まれた小宮さんを気の毒に思っていた。バーコードヘアも更に薄くなるんだろうなぁ…と考えていた俺の心の内を知らない小宮さんは、「犯人は一人だし、見たところ疲れも溜っているみたいだ。男全員でかかれば取り押さえれるんじゃないか?」といった作戦を持ちかけてきた。
小宮さんの言うことももっともだ。よくみれは、犯人は小宮さんと同じ位の年の様だし、こっちには男は六人もいる。しかも俺らは人質だというのに縛られてはいない。最初はロープか何かを要求されたが、縛るのに丁度いいものが無かったので、人質をひとかたまりにして床に座らせるまでで、犯人は諦めたのだ。その作戦に乗ることにした。
小宮さんの作戦は簡単で、まず最初に一人が飛びかかって、その後に残りの全員が飛びかかるというものだ。
小宮さんはまず自分が最初に飛びかかるといい始めた。他に若くて体格のいい奴もいるのだから、変わってくれと俺たちは頼んだ。別に小宮さんを心配してではない。作戦の成功率を少しでも上げるためだ。しかし小宮さんは「責任者である自分が行かないといけない」と全く譲る気はなさそうだった。結局小宮さんが最初に行く事で決まった。
犯人の一瞬の隙を小宮さんは見逃さず、俺たちが想像もしなかった機敏さで犯人に飛びかかった。
「てめぇ!何しやがる!離せ!う、うわぁ!」
犯人はかなり動揺してた。俺たちはもっと動揺していた。小宮さんのバーコードヘアがウネウネと伸び、犯人をがんじがらめにしていたのだ。
…うわぁ…気持ちわる…
「もみあげを操れるのが自分だけだと思って油断したな!私も昔はもみあげを動かせていたが、特訓の末今はここまで動かせる様になった!しかも伸ばせる!私の方が一枚上手だったな!フフフ…フハァーッハッハハッ!さぁ野郎共飛びかかれぃ!」
どちらかというと、犯人より小宮さんの方が悪役の様に見えてきたと言うのと、単純に気持ち悪いというので俺たちは飛びかかれず、一歩引いた形になっていた。
その時、『ブチブチィ!』犯人が渾身の力を振り絞り、謎の触手を…いや、小宮さんのバーコードヘアを引き千切った。
「うぎゃぁーーー!」
小宮さんの悲痛な叫びが銀行内に響きわたった。
結局最初の状態に戻り、俺たちは床に座らされていた。
横には息を切らし、瀕死の状態の小宮さんが横たわっている。
女性はシチュエーションに弱いのか、俺と同い年でロングヘアーの木下さんは、「小宮さん死なないで」と泣きながら濡れたタオルで毛の無くなった頭を冷やしていた。
…ただ髪の毛を引き千切られただけじゃねぇか…
それによく見れば、よく見なくてもだが、木下さんは器用にもみあけでタオルを絞っていた。
………………まぁいっか。
俺は心の中で突っ込む事にも疲れていた。
それに、こんな騒動だったのに、誰一人殺されたり危害を加えらてはいないので、犯人は殺しまではする気はないのだろう。そう思ったら急に眠くなってきた。後は警察に任せておとなしくしてようと、心に決めた瞬間だった。
突然大きな爆発音がし、催涙ガスが投げ込まれ、辺り一面は真っ白になった。
機動隊の強攻突入により事件はあっけなく解決した。
あれから一週間、普段の生活に戻っていた。
しかし俺には心に引っ掛かるものがあった。
まず一つ目は犯人のもみあけの事、二つ目は小宮さんのもみあげの事、三つ目は木下さんのもみあげの事、四つ目は目の前のテレビに映るニュースキャスター。『一週間前に起きた銀行立てこもり事件は…』
もみあげでニュース原稿をめくっていた。
実はこの能力、以外に役に立つ。勿論人前で使えないから一人の時だけだが。
例えば、両手が塞がっている時に鼻の頭を掻いたり、携帯を掛ける時にもみあげで持ったり。
他の人が聞いたらしょうもない事かも知れないが、あればあるで結構重宝していた。
しかし、三年前からその能力はつかっていない。何故なら学生の時の就職活動で切り落としたのである。ロン毛とともにその便利な能力ともお別れをしたのだ。そのおかげか、銀行にも就職出来、今は安定した生活を送りっていた。元々あったら便利程度だったので、普段の生活に支障が出るような事もなかった。
そんなごく平凡な毎日に突然事件が起こった。
「金をだせ!」
銃を持った銀行強盗だ。
目の前に銃を突きつけられているというのに、俺はあまりに突然の出来事に動けなかった。
「何をボサッとしてんだ!早くしろ!」
「は、はいっ!」
俺は急いで現金を袋に詰め込み始めた。
俺がすぐに動けなかったのには訳があった。
それは、銃を四丁も持っていたからだ。
両手と…もみあげに。
銃を突きつけられるだけでも普通は動けなくなるはず。しかもそれが、自分以外にもみあげを操れる男によってだったら尚更だ。
俺がモタモタしていたせいなのか、誰かが通報するのが早かったか分からないが、銀行はあっという間に警察に包囲されていた。
『犯人に告ぐ、人質を解放し、おとなしく投降しろ!』
「うるせー!逃走用の車を用意しろ!早くしねぇと人質を殺す!」
シャッターは全て下ろされ、中の様子は外からは分からなくなってしまった。
強盗が入ってから13時間は経とうとしている。
その間にも警察の説得により、一般客は解放されたが、俺たち行員男女合わせて11人は以前人質のまま。完全な膠着状態というやつだ。
精神的にも肉体的にも限界が来ていた。
「…鈴木くん」
小声で名前を呼ばれた。上司の小宮さんだ。俺は、定年も近いのにこんな事件に巻き込まれた小宮さんを気の毒に思っていた。バーコードヘアも更に薄くなるんだろうなぁ…と考えていた俺の心の内を知らない小宮さんは、「犯人は一人だし、見たところ疲れも溜っているみたいだ。男全員でかかれば取り押さえれるんじゃないか?」といった作戦を持ちかけてきた。
小宮さんの言うことももっともだ。よくみれは、犯人は小宮さんと同じ位の年の様だし、こっちには男は六人もいる。しかも俺らは人質だというのに縛られてはいない。最初はロープか何かを要求されたが、縛るのに丁度いいものが無かったので、人質をひとかたまりにして床に座らせるまでで、犯人は諦めたのだ。その作戦に乗ることにした。
小宮さんの作戦は簡単で、まず最初に一人が飛びかかって、その後に残りの全員が飛びかかるというものだ。
小宮さんはまず自分が最初に飛びかかるといい始めた。他に若くて体格のいい奴もいるのだから、変わってくれと俺たちは頼んだ。別に小宮さんを心配してではない。作戦の成功率を少しでも上げるためだ。しかし小宮さんは「責任者である自分が行かないといけない」と全く譲る気はなさそうだった。結局小宮さんが最初に行く事で決まった。
犯人の一瞬の隙を小宮さんは見逃さず、俺たちが想像もしなかった機敏さで犯人に飛びかかった。
「てめぇ!何しやがる!離せ!う、うわぁ!」
犯人はかなり動揺してた。俺たちはもっと動揺していた。小宮さんのバーコードヘアがウネウネと伸び、犯人をがんじがらめにしていたのだ。
…うわぁ…気持ちわる…
「もみあげを操れるのが自分だけだと思って油断したな!私も昔はもみあげを動かせていたが、特訓の末今はここまで動かせる様になった!しかも伸ばせる!私の方が一枚上手だったな!フフフ…フハァーッハッハハッ!さぁ野郎共飛びかかれぃ!」
どちらかというと、犯人より小宮さんの方が悪役の様に見えてきたと言うのと、単純に気持ち悪いというので俺たちは飛びかかれず、一歩引いた形になっていた。
その時、『ブチブチィ!』犯人が渾身の力を振り絞り、謎の触手を…いや、小宮さんのバーコードヘアを引き千切った。
「うぎゃぁーーー!」
小宮さんの悲痛な叫びが銀行内に響きわたった。
結局最初の状態に戻り、俺たちは床に座らされていた。
横には息を切らし、瀕死の状態の小宮さんが横たわっている。
女性はシチュエーションに弱いのか、俺と同い年でロングヘアーの木下さんは、「小宮さん死なないで」と泣きながら濡れたタオルで毛の無くなった頭を冷やしていた。
…ただ髪の毛を引き千切られただけじゃねぇか…
それによく見れば、よく見なくてもだが、木下さんは器用にもみあけでタオルを絞っていた。
………………まぁいっか。
俺は心の中で突っ込む事にも疲れていた。
それに、こんな騒動だったのに、誰一人殺されたり危害を加えらてはいないので、犯人は殺しまではする気はないのだろう。そう思ったら急に眠くなってきた。後は警察に任せておとなしくしてようと、心に決めた瞬間だった。
突然大きな爆発音がし、催涙ガスが投げ込まれ、辺り一面は真っ白になった。
機動隊の強攻突入により事件はあっけなく解決した。
あれから一週間、普段の生活に戻っていた。
しかし俺には心に引っ掛かるものがあった。
まず一つ目は犯人のもみあけの事、二つ目は小宮さんのもみあげの事、三つ目は木下さんのもみあげの事、四つ目は目の前のテレビに映るニュースキャスター。『一週間前に起きた銀行立てこもり事件は…』
もみあげでニュース原稿をめくっていた。
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