二十歳の誕生日 

April 01 [Sun], 2007, 20:10
私はこの日のために生きてきた。
20年間、このために食事をとり、睡眠をとり、排泄してきた。
私だけでない、命あるものはすべてそうである。
動物も草も結局は、死んでゆくんだから。
死に行く運命…それはすべて平等で、形あるものはいつか壊れていくことは誰にも止められないのだ。
私はこの最後の時こそすべてにおいて、1番美しくあらねばならないと思っている。
それは、物心つい時からあった。
私は幼い頃から、美しかった。
何をしていても、どこにいても多くの人たちから褒められ、大切にされた。
それが当たり間なのだ。今の私もそのまま美しい。
私は美しくあらねばならないのだ。
だから20歳を迎えるこの日、私はその美しさを永遠にする。
死にしか永遠はないのだから。
私のこの若さは急がねばすぐに消えてしまう。
若さというやつはもう二度と手に入らないものなのだから。

この日のために日々手入れし、伸ばした髪。カラーもパーマも入れず、こまめにカットとトリートメントだけしてきた。少しでも傷んでいては美しくない。
私の体も同じだ。日々手入れし、美しいボディラインと真っ白な肌。もちろん男も知らない。誰かに汚されていては美しくない。
今日、私はもちろん他の誰よりも、今までのどの私よりも美しくならねばならないのだから。

しかし、私は恋をしてしまった。
それもどこにでもいるような普通の男に恋をしてしまった。
妻も子供もある男に恋をしてしまった。
その男に「死ぬのはまだ早い」と言われた。
人を愛する苦しみと喜びを知ってこそ、人は美しくなると、男は言った。
ならば私の美しさはまだ完璧ではないのだろうか。

二十歳の誕生日。
死ぬために生きてきた私は、本当の美しさを知るためにもう少し生きてみようと思った。

帰り道 

April 01 [Sun], 2007, 19:37
満月がやけに大きく見える日だった。
疲れているのに家に帰りたくない、そんな日だった。

大人になんてなりたくなかった。
私はいつまでも子供でいたかった。
あの頃なりたくなかった大人になってしまった気がして、寂しくなった。
夢は大人になってから叶うものなのに、それは遠退いて行くばかりだった。
平凡、安定…それが一番いい物なのだと思うようになってしまった。
楽しくなくても楽な人生を歩もうとしている。
結婚に逃げるのは絶対嫌だと思っていたのに。
そこに合わせて、人生設計をしている自分がいる。
いつからなのだろう。
いつから、大人になるのだろう。

全部壊したくなる。
毎日決まった時間に会社に行って、家に帰る。
休日は着飾ってデートに出かける。
そんな毎日にうんざりする。
でもそんな日々に安心している自分にもっとうんざりする。
いっそ、こんな日々を壊してくれるような人が現れてくれればいいのにって思っている。
こんな他力本願な自分にもうんざりするのにね。

いつ死んでも後悔しないように生きて行きたいのに。
人生は自分が主役のドラマだと思いたい。
ドラマチックに生きたいように生きて行きたい。

毎月20日に振り込まれる給料を楽しみに生きて、増えてゆく通帳の数字を愛おしく眺めるような、そんな人生はつまらないと思っていたのに。
毎月、決まった日に決まった金額をもらう生活に安心感を得ている。

いっそ、水商売でも始めてみようか?
堕ちてみるのもドラマチックではないか?

こんなことを考えていたら、普通の幸福が得られないってことはわかっている。
でも結局、私はそれを望んでいないのだ。
どこに行ったって、このままじゃ壊して終わることはわかっているのに。

私は男がほしいわけじゃない。
恋がしたいのだ。
終わらない恋はないことはわかっているからこそ、刹那的な美しさがそこにはある。
形あるものはいつか壊れる。
だから恋は形になったその瞬間から失うことへの恐怖になる。
でも、それが私にはたまらなく美しい。
私が欲しているものはそれなのだ。
仕事も家庭も男もなにか形にしては壊して行く。
私はきっと誰よりも自分が好きなのだと思う。

こんな私だから敵を作りやすい。
それは幼い頃からわかっている。
嫌いなものは嫌いだし、嫌なものは絶対嫌。
わがままで自己中心的な考え方しか出来ない。

就職してまだ一年。
地元の小さな地方銀行の小さな支店で働いている。
田舎にあり、近くに他に銀行がないので、来店客数が多く仕事は毎日とても忙しい。
同じ仕事を毎日繰り返す。別に面白くはない。

コートのポケットの中でかすかに震えた携帯電話に気づき、何かを期待している自分を滑稽に思った。
メールの相手は、彼氏か家族か友達に決まっているのに。

案の定、彼氏からのメールだった。彼とは高校の同級生で付き合い始めて5年になる。調理師の専門学校を卒業して、今は日本料理店に就職し、真面目に働いている。彼はとても優しく誠実で、結婚したら良い夫になるだろう。
でも今の私はそれすら壊してしまいたいと思っている。

軽くため息をついてメールを開く。
「仕事お疲れ様。大好きだよ。」
そんなメールを毎日送ってくる彼を馬鹿だと思った。
こんな私を愛してくれる彼は本当に何もわかってないんだなと思った。
でも、こんなたった一行のメールで、やはり彼のことが大好きだと思った。
誰かに必要とされ、愛され、平凡だけれど温かいこの日々に身をゆだねるのもそう悪くはないのかな?と思った。

顔を上げると真ん丸の月が私を照らしていた。
家に帰ったら、彼に電話しよう。大好きだと伝えよう。
満月の黄色い光を浴びて、いつもの帰り道が少し輝いて見えた。

はじめまして。 

April 01 [Sun], 2007, 14:54
みなさん、はじめまして。
管理人のほうき星と申します。

どこにでもいる21歳のOLです。
そんな私の作り話や考え事を更新して行きたいと思います。
何か興味や感想がありましたら、話しかけてみて下さい。
プロフィール
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ほうき星は平凡な銀行員。
ディズニープリンセスが大好きな21歳。

平凡、安定、素敵な恋人。
でも壊してしまいたくなるんです。
手に入りそうになると、形になりそうになると。

そんなお話を思いつきで書いて行くブログ。
破滅的で破壊的で、だからこそ刹那的で美しい恋愛のお話。
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