夜、チェコで本気の迷子になった話。

October 02 [Fri], 2015, 23:18


私が旅をしたくなるのは、
きっと自分の好奇心を
満たすためなんだと思う。

好奇心といっても
なにか知りたいことが
明確にあるわけでもなく

ただ、できるだけ広い世界を見て
たくさんのひとに会って
いろんなスタイルの生き方や社会、価値観・・

そんなものに広く触れて
ココロの彩り豊かに生きていたい。
なんてそんな気持ち。


だから、私が旅をするときの
興味の対象は専ら人なのです。

旅には色んな出会いがある・・。


今日は、私がチェコで体験した
ちいさな一期一会の話をひとつ・・。





その日私はオーストリアの
ザルツブルクから電車で
チェコのチェスケーブデヨビツェという街に入った。

このブデヨビツェは
あのブドヴァイザービールで有名な街で
ビール工場の見学なんかもできたりする。

私はこのブデヨビツェの近くにある
フルボカー城というお城を訪れるために
この街へやってきた。

私が駅を出た時にはもう既に
外は薄暗かった。

駅で手に入れた地図を見た瞬間から嫌な予感がした。

自分が予約していた宿の場所を
確かめたかったのだが・・
地図に載っていない・・。


というより私はこの街の全体図と
自分の宿の位置関係に関して
読みをおおきく外してしまったらしい。


私が思ったよりも遠い場所に
位置している宿は私が手に入れた地図の
範囲外にあるようだった。


それでもまあ、
パソコンを持ち歩いているし
WIFIの環境さえあれば行き方は
確認できるから大丈夫。

・・その考えも今思えばかなり甘すぎた。



その街の駅周辺は私の予想を超えて
なんにもなかった。
辺りが暗いので、なおさら
そういった環境がありそうな
お店も探しづらかった。


仕方なしにホステルの名前と
住所の紙を片手に
周辺の人に尋ねてまわるも
英語が全然通じない。


英語で話しかけた段階で
「ごめん、言葉がわからないから。」と
立ち去られてしまう。


それでも時折カタコトで
答えてくれる人や
ポーランド語チェコ語で
応じてくれる人はいたが
結局は彼らもよく知らないようで
みんな言うことがバラバラ。


4番のバスに乗るだとか、
直通はないから10番のバスと
8番を乗り継ぐべきだとか。
ここからはあなたの宿の周辺に
行くバスはないから少し遠いところの
バス停まで歩くんだとか。
本当にバラバラ。


結局、
4番のバスと答える人が多かったので
とりあえず半信半疑のまま
バスに乗ったが今度はチェコ語の
アナウンスが聞き取れず
降りる場所が判断できない。

今考えれば、
考え方のすべてが甘かったし
行動のすべてが間抜けだった。

でも、焦れば焦るほどどんどんまた
間抜けに間抜けを上塗りする。


これはもうだめだ。
とにかくネットが使えるところに行って
調べなおさないとどうにもならない。


でももうバスを降りるにも
どうしたらいいかわからない。

不安で不安で仕方なくなって
隣に座っているおじさんに
英語で話しかけてみる。

「英語はわかんねぇよ」
と冷たく返される。


宿にたどり着けなかったら・・
ここまで来ては新たに宿を探すのも難しいだろう。
ああ、これはとうとう野宿か。
2月のチェコで?・・たぶん凍え死ぬ。


そんなことをひとりで考えて
呆然と仕掛けた時、
「英語、わかるよ。
何を困っているの?」と
私の席の後ろで声がした。


その人は私と同い年か、
少し年上の青年のように見えた。

もうその時の私には
英語で話していいよと言ってくれる存在が
もはや神様のように感じられた。

たぶん私はすごい勢いで
自分がなにをどれだけ困っているのか
青年に話していたと思う。


「・・残念ながら君の宿のある地名を
僕もよく知らないんだけど・・」

・・やっぱりそうだよなぁ。
ああ、どうしようか、と思ったとき

「とりあえず君はネットが使えれば
いいんだろ?うちに来たら?」

思いがけない提案だった。正直
もうなんでもいいから助けて欲しい、
という心境だった。

でも、そんなに簡単に信じてついていっていいわけもない。

戸惑って考え込んだ私の
頭の中を読むように彼は
「ママも家で待ってるから、安全だよ。」と言った。






これも今考えれば、ママという単語には
なんの信ぴょう性も
安全性の根拠もないのだけど、

私はこの提案にのらなければ
きっと野宿して凍え死ぬだろうという
恐怖の方が強くて
結局彼についていくことになった。

バスを降り、
彼のアパートに向かって歩き、
エレベーターに乗る。
この一連の流れの中で彼は、今自分が
どこの馬の骨かわからないアジア人に
遭遇して、突然家にまねくことに
なったことに、なんの疑問も示さず、
私になにかを質問することもしなかった。

あまりに躊躇いなく
彼の部屋の前まできたので、

「ちょっと待って。
おかあさん突然アジア人つれてきたら
驚くだろうし、怒られるんじゃないの?」と聞いた。

「たぶん、大丈夫だよ。」


彼の言葉通り、
彼のママも私に対して何も問わなかった。


大方のことは彼が
話してくれたようだったけれど
自分の家族が逆の立場だったら・・
突然私が家に外国人をつれてきたら・・
きっと、彼や彼のママみたいに
自然な振る舞いにはならないだろう。


そうして私は、ついさっき
偶然出逢ったチェコ人の青年の家に
図々しくお邪魔して、ネット回線を使わせてもらった。


気づくと彼のママは
なにも言わずにココアまで用意してくれていた。

もう、涙が出そうだった。

私がパソコンをカチカチしている間も
何度かママが顔を出して


「ねえ、お夕飯食べてってもいいのよ。
寒かったし、疲れてるでしょ?」と声をかけてくれた。

そんな言葉をかけてもらえることが信じられなくて
本当に嬉しかったし有難かったのだけど
長居をしてはいけない気がして断った。

ネットが使えたおかげで私は無事に
宿までの道のりを調べなおし、
再出発する準備が出来た。

と言ってもこの時既に
時間は夜の8時を過ぎていた。
辺りは暗闇だった。


「あなた、これから本当に
この宿まで行く気なの?」

彼の家からなら
そう遠い道のりではなかったけれど、
彼のママは私を心配してくれた。

「今日、うちはパパが出張なの。
だからベットが丁度一つ空くのよ。
うちに泊まっていったらどう?
外は寒いし、あなたが心配。
あなたが良ければ、私たちは
あなたがここにいることに関して
なんの問題もないのよ。」


突然やってきたアジア人を
なにも言わずに家にあげて
夕飯を食べていけというだけでなく
一晩泊まっていけばいいと言う。

大げさかもしれないけれど、
このときの私は彼らを
天使のような人たちだと思った。

はじめて出会った、しかも異国の人を
差別もせず疑いもせず
自分たちの損得も考えずに
ただただ優しくしてくれた。

けれどその時私は
この家にお世話になることを断って
やはり宿を目指すことにした。

もう、宿までの行き方もわかっているに
彼らにそこまでしてもらうのは
申し訳ないという気持ちの方が勝った。

なんのお返しもすることはできなかった。

ただお礼を言って立ち去るしかできなかった。

私は彼らのアパートを出て
もう一度バス停に歩き出した。



と、しばらく歩いた時
後ろから青年が追いかけて来た。

「待って、やっぱり僕も行く。
きみ一人じゃどうしても心配だ。」


その時ちょうどバスが来て、
私がなにか答える間もなく
彼は一緒にバスに乗り込んでくれた。


それからバスのなかで、
色々話をしたのだが
残念なことにあまり多くは覚えていない。

自分が置かれている状況や展開が
夢の中の話のようで呑み込めなかったし、
なにより少し緊張していたんだと思う。


「きみみたいに
頼りない女子がひとりで
ヨーロッパを歩いているなんて驚きだよ」

そう言って彼が笑うのを見て
そりゃあそうだよなと
情けなく思ったのは覚えている。

バスを降りて、
暗いなかをトボトボ歩いた。
私の前を歩いている青年の姿を
そのときはじめてじっくり見た気がする

私より遥かに身長が高かった。
180cmは余裕で越えていただろう。
加えて鼻も高かった。
堀が深くて、綺麗な金髪に青い瞳だった。

私はそのときまで、
彼を完全に年上だと思っていた。

前を歩く青年に私は一言聞いた。
「あなたにはあなたの
予定があっただろうに、
私が邪魔をしてしまったように
思うけれど
一緒に来てもらって大丈夫だったの?」




彼は笑いながら、答えた。
「いいんだよ。勉強したくなかったし。
君が来たおかげで今日はママに
勉強しろって言われなかった。
そのおかげでハッピーだ。」

「勉強?」

「そう、
宿題をしなきゃいけなかったんだ。」

「宿題って・・
あなたはいったい何歳なの?」





「17歳」


ずっとずっと年上だと思っていた彼は
私よりも年下の、しかも高校生だったのだ。


私は高校生に助けられてしまったのだ。
私は思わずびっくりして声をあげてしまった。

「なんだ、君おねえさんだったんだ。
僕、絶対16歳とかだと思ってたよ。
なんでこんな若い子が
こんなとこひとりで歩いてんだろうって
すごい不思議だったんだけど、
そうか。君は19歳だったんだ。」

驚きのあまりまともなことが
何にも言えない私に反して
彼はずっとケラケラ笑っていた。


宿の前まで来て、お別れの時が来た。
「ほかに手伝うこと
なんかあったりする?ひとりで大丈夫?」
と、彼は最後の最後まで私を心配していた。

「ひとりで大丈夫。
あなたたち家族のおかげで
本当に助かりました。
ママにお礼を伝えてください。
本当にここまでありがとう。」

と伝えると、彼は
「こちらこそ。」と言って、

それから
「またどこかで。」と言った。


私も、「またどこかで。」と返したけれど
結局私たちは連絡先もなにも
お互いに知らないままだったし




またどこで会うことは、おそらく
もう二度とないんだと思う。

でも、絶対に私は
この出来事を一生忘れられないし
彼らにしてもらったように
誰にも差別なく、躊躇いなく
手を差し伸べることできるような
そんな人になりたいと感じた。

それにはまだまだ、遠いけれど。




写真、あまりいいものがないけれど
ブデヨビツェの広場。
迷子事件から一夜あけて、翌日撮影。




プロフィール
  • プロフィール画像
  • ニックネーム:オーリー
  • 性別:女性
  • 誕生日:1993年3月8日
  • 職業:大学生・大学院生
  • 趣味:
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なんとなく東欧に憧れつづけ、
気づけばいつの間にか留学や
一人旅を経て、
なんとなくどころではない熱烈な
東欧諸国ラバーになっていました。
そんな私が遭遇した様々なエピソードを
自己満的にまとめただけのブログですが
面白いと思ってくれる人がいたなら幸いと
ここを開設してみました。どうぞよろしく。
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