アネモネ。第一章-2 

2006年03月17日(金) 2時48分


見放される。悲しい言葉が自分にぴったりだと笑う彼に、胸の奥が痛んだ。
―俺は彼に惹かれているのだろうか。
ここに来る3度の間に何度も頭を巡ったこの質問が痛みとともに胸の奥をよぎる。未だ土方自身で答えを見出せずにいる“恋”という質問。自分らしくない、と思う。
きっとこれはこの花の香りのせいだ、といつものように無理矢理言い聞かせ乱暴に頭を掻けば女性のように綺麗な手が自分の手に重ねられた。
「ねぇ、お兄サン。お名前教えてください」
自分を見上げるその瞳の中に艶やかさを垣間見て、思わず手を出しそうになりながら土方は舌を打つ。笑顔はとても無邪気なくせに、やはり花魁と言われるだけの艶やかさは持っているのだと確認させられる事はこれが初めてではなかった。
「土方」
「ひじかた、さん…下の名前は?」
「…教えねぇ」
「えー!なんでですか!?減るもんじゃなし!」
単語だけのようにぶっきらぼうに一言だけを返す土方への反応は、表情とともにころころと変わる。まるでドロップの色の様だと、そう思った時にはアネモネと名乗った彼の表情は不満そうなものへと変わっていた。
「なんでかって、お前の本当の名前も知らねぇんだ。名字だけで十分だろが」
「なんですかその理不尽な理由!…それに言ったでしょう?花の名前は自分の名前と引き換えに貰うものなんです。もう前の名前なんて」
最後の方は小さくてなかなか聞き取れなかったが、そんな事よりも彼の表情が切なく変わる様が鮮明に目に映ったことは確認できた。重ねられたままの手に力がこもる。
「ねぇ、土方さんはどうしてここに来るんですか?欲を吐き出す為の女の人なら沢山いるでしょ?」
「…そうだな、相手に不自由したことはねぇよ」
「なら、どうしてですか?いつも気になってたんですけど」
続けられた質問に、返す言葉が見つからなかった。
黙り込んだ土方を見、薄い桃色の口紅が引かれた唇を一度噛み締める。
「中毒症状」
ひとつ息を吐くように、声が響いた。


もっとじっくりねっとり二人が馴れ合っていく様子を書きたいんですけど難しいなぁ…;
≫トラックバックありがとうございます★アネモネの花言葉、他の意味はそのうち使っていく予定です!
けどいまいちトラックバックの意味がわからな…死。

アネモネ。第一章-1 

2006年03月16日(木) 14時23分


「あれ?こんにちは」
音もなく戸を引けば、彼が振り返る。

それが、日常と化していた。


アネモネ。
  〜 一章 〜



「あれから3回目くらいになりますけど、お兄サンは私を抱きませんよね」
遊郭には似つかわしくない無邪気な笑顔を貼り付けて、彼は言う。
“いつものように”隣に腰を降ろし本を開いていた土方は顔を上げた。
「そういうお前はいつまでたっても名前を教える気はねぇんだな」
目を細め彼を見据えながら呟いてみる。その言葉にきょとんとした彼は、土方の顔を覗き込むように身を乗り出して、首を傾げた。
「それを言うならお兄サンだって。教える気ないですよね?」
「……」
「…知りたいですか?私の名前」
言葉を切り顔を背けた土方と無理矢理に視線を合わせて、彼は一度瞬きをする。その中にやはりどこか子供っぽさを見出して土方は本を閉じた。
「じゃあ、私の名前を教えたらお兄サンも教えてくださいね!」
約束、と微笑んで土方の小指に自分の小指を絡めればそれをきゅっと握ったまま彼は口を開く。
「ここの遊郭の女郎全員に“花の名前”が付けられてるのは知ってます?」
「花の名前?」
そういえばこの部屋へ足を運ぶ三度の間、周りの部屋から女の喘ぎに混じって男が花の名前を呟くのを聞いた気がする。と暫し思考を巡らせて、ふと気がつけば彼と目が合った。
「女郎になる時、私たちは自分の名前と引き換えに花の名前を貰うんです」
補足するように付け足して懐かしそうに寂しそうに細められた黒い瞳。一度は閉じられた綺麗な瞳を再び目にする前に、透き通る声が耳に届く。
「私は、アネモネ」
「……異国の花、か?」
僅か驚いたように目を開いた土方を見、彼は笑った。
「ええ。日本では紅花翁草、牡丹一華なんて呼ばれたりもするみたいですよ。…アネモネの花言葉はご存知ですか?」
知りませんよね、悲しげに笑って呟くと繋いでいた小指を切り離して土方を見つめる。
「花言葉は、はかない希望・はかない恋・見放される。我ながら私にぴったりな花だ、って思うんですよね。そう思いませんか?」
「……」
「さーてと、今度はお兄サンの番ですよ」



アネモネ。 -序章- 

2006年03月16日(木) 0時19分

「アネモネ。花言葉はご存知ですか?」

そう言って悲しく笑った“彼”は、この世に存在する何物よりも美しく、そして
何よりも儚かった。


 アネモネ。
   〜序章〜



「来なきゃよかった」
何度目かわからないその言葉を内心で呟いた土方は、小さな舌打ちと共に溜め息
を吐いた。此処は島原の一端にある遊郭。相手には不自由しないはずの土方が遊
郭に入ったのは、町の外れとしては意外と小綺麗な店内から漂ってきた花の香り
に誘われたからだった。…のだが。
先程から一体何分待たされているのか、土方にはイライラが募るばかりである。
「お客様、大変お待たせ致しまして…」
聞こえた声に眉を寄せたままの顔を向ければ、人の良さそうな―恐らく店主であ
ろう―老婆が膝を折って座っていた。


      *
     

「…随分客を待たせるんだな」
「ええ、申し訳ありません。素敵なお客様にはうちの“一番”をご用意したかっ
たのですよ」
老婆の後に続き店の奥へ奥へと進んでいく。所々で女の甲高い喘ぎを耳に入れな
がら、土方は強くなる香りに目を細めた。店内の花の香りはどうやら催淫効果を
もたらすお香のようで、散々嗅がされ続けた土方の体は最早熱に纏われている。
長い間待たされたのは、この為か。
そう思った矢先、老婆がある部屋の前で立ち止まった。
「つきました。ここは特別なお客様、常連様にしかご案内していないのですよ。
うちの一番の――」
言いながら、皺だらけの手が戸を引く。カララ、と音がして中を覗いた土方は思
わず息を飲んだ。
「いらっしゃいませ、お客様」


それが、出会い。






さっそくご覧頂きまして有難う御座います。こんな調子で進んでいきます、アネモネ。うーんとかなり話のオリジナル色が強いので、ピスメご存知じゃない方もお読み頂けるかな、という感じですw感想等ありましたらコメント頂けると嬉しいです★えっと花魁沖田さんのイメージ的には、こんな感じ。つ、拙い絵ですみません!;サイトのパロから引用致しました(ちょ、おま!
この人を出してほしい!などあればコメントでどぞですw
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